【本編完結】お菓子作りが得意なトレーナーと、無慈悲するマヤノトップガン 作:出遅れ系トレーナー
「「え?」」
「…あちゃー」
「尊いです萌えます推せます本当にありがとうござい……(バタリ」
マヤノとデジタルを連れて寄付のために訪れたいつもの幼稚園で出会ったのは、保母服を着たフラワーだった。そして当然のようにデジタルは速攻で尊死した。
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「トレーナーちゃん、何度も何度も聞いたけどさ。何か言うことは?」
「深く深く反省しております」
「そう言って毎回これだもん!どうせ今回も全然懲りてないんでしょ~っ!?」
「ひょひぇんひゃひゃい(ごめんなさい)~~~」
「いやあ……バカですよね、ほんと。いっそ清々しいレベルですよこれは」
今日も今日とて私はマヤノに頬を引っ張られながら正座させられていた。昨日の段階で、いつも早めに来るフラワーが用事があるとかで不在、そしてマヤノもデジタルも遅くなるとのことだった。つまり普段より時間に余裕があったので、張り切ってタルトを作っていたのだ。もうお分かりだろう。そう、誰もストッパーが居ないのである……。
「……で、いくつ作っちゃったの?」
「1カゴ200個ずつ詰めたから……600個?」
「トレーナーちゃんのおバカ!そんなに食べられるわけないでしょっ!」
「あ痛ぁっ!?」
「そもそも5時間で作れる量じゃないんですがそれは」
「私が増えれば行ける」
「は?」「え?」
「嘘ですごめんなさい単純に効率を極限まで求めてやるとやれます」
冗談を言ったら真面目に冷たい目で見られてしまった。我々の業界でもご褒美じゃないです……。
「そもそもトレーナーちゃん、材料費はどこから出てるの?最近マヤ、レース出てないから、お給料かなり減っちゃったでしょ。フラワーちゃんのレースもトリプルティアラにスプリンターズSでクラシック3冠や有馬記念とかに比べたらかなり低いし、デジタルちゃんはまだメイクデビューだけだし」
「ぽ、ポケットマネーをつぎ込んで……」
「ちゃんと貯めなきゃダメでしょー!」
「あだっ!?」
「もはや何も言いますまい。……長くなりそうですし、あたしは終わるまで寝てるので、終わったら起こしてくださいね~」
「見捨てられた!?」
こうしてマヤノがオカンになってしまったので、平謝りするしかないのであった。なお、お説教は30分続いた模様。
「(くどくど)……いい?もうやったらだめだからね!」
「はい……(やっと終わった)」
「デジタルちゃん起きて。大井の幼稚園に行くよ」
「ふああ……?やっと終わりましたか?」
「キリが無いから終わりにしたの。このままだと日が暮れちゃうし」
「(せっかく作ったのに……)」
「……まだお説教が足りないのかな☆」
「なんでもないです!!!」
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「はえ~。あたしは初めて来ましたけど、そこそこ広いんですね」
「幼稚園って大体広くない?子供って走り回るし、狭いと危ないでしょ。というか私も初めて来たよ。いつもの府中の幼稚園じゃないんだね」
「この前モンブラン押し付けたばかりだし、絶対消費しきれてないでしょ」
「なるほど?どこかの誰かさんの仕業ですね」
「うぐっ!心当たりしかない」
そうして珍しいものを見る目で服の裾を引っ張ってくるやんちゃな子供たちを避けながらタルトを運んでいるときに、ふと教室内を見てしまったのだ。
「「え?」」
ここで冒頭に戻る。目が合ってしまったのは、今日は不在だと言っていたフラワーだ。その彼女が保母服を着て子供たちをあやしていたのである。目が合った彼女は、抱えていた子供を降ろしてこちらにやってきた。
「と、トレーナーさん!?どうしてここにっ!?」
「いやその……マヤノの紹介で」
「ええっ!?……前にマヤノさんが言ってたのってここじゃなかったじゃないですか!?」
「府中も今は在庫溢れだよ!」
「それはそうですけど!」
内緒だったらしい。アレ……?でもフラワーって飛び級だから実際まだ小学生……。
「ん?」
気づいたら自室のベットの上だった。私が覚えているのは、すごくいい笑顔のフラワーだった。
「━━━という夢を見たんだ」
「へ、へぇ……。それは大変だったね」
マヤノが目を合わせてくれないが、何かあったのだろうか。それはそれとして来週は京都で秋華賞がある。おいしい勝負スイーツを用意しないとだな。