【本編完結】お菓子作りが得意なトレーナーと、無慈悲するマヤノトップガン 作:出遅れ系トレーナー
ダートウマ娘かわいさ全振りなのズルいと思います(唐突)
『苫小牧のロコドル、ホッコータルマエです!応援よろしくお願いしまーす!』
『コパノリッキーだよ!応援してくれるみんなに、ラッキーとハッピーを届けるね!』
マヤノが出走するかしわ記念。パドックではダートに適性のあるウマ娘が、インタビュアーに向かって出走への意気込みとかを話していた。
今回はかしわ記念だけに柏餅を用意したら、マヤノに『ぶぶーっ!タルトにチェンジ!』って言われてしまった。お任せって言ったのマヤノじゃん。
というか何が悪かったんだろう?柏餅も美味しいのにね?
「あむあむ……。あたしもそう思います。それにしても今日がマヤノさんのかしわ記念、今週末にあたしのNHKマイル、さらに来週はフラワーさんのヴィクトリアマイルで、1週空けてマヤノさんの目黒記念。トレーナーさん今月結構忙しいですよね、お菓子に送迎にで」
「そうかな?基本的にはお菓子作るだけだから問題無いよ。送迎も夜中のうちに現地入りしちゃうから渋滞にはならんからね」
「深夜運転の方がツラい気がするのですがそれは……。でも電車や新幹線の公共交通機関はマヤノさんが断固拒否ですからなあ」
デジタルの言うように、何故かはわからないけど、公共のは嫌!トレーナーちゃんの運転がいい!って聞かないからなあ。
「でも、あのくらいのわがままなんて可愛いものじゃない?」
「甘やかしすぎですよ、まったく。まあトレーナーさんもトレーナーさんで、トレーニングのメニュー作りをマヤノさんに任せっきりですし、似た者同士ではありますが」
「はっはっは……。以前私がこっそり作ってみたメニューと、マヤノが作ったのを見比べたんだけど、後半に追加があったとはいえ、内容が全く同じだったんだよね。似た者同士ってのは言い得て妙かもしれない。まあマヤノの方が圧倒的に作るの早いから、いらない子だったんだけど」
本当に全く同じだったもんなあ。追加でいくつも増えてたけど、私がなんとなく作ったものと全く一緒。マヤノが作ってるのを見たわけじゃないんだけど、不思議だなあ。
「(そりゃ効果があろうが無かろうが、前半はマヤノさんがトレーナーさんと2人で一緒に考えたメニューを再現してますから、似るのは当たり前なんですよねえ)」
「ん?どうかした?」
「いえいえ別に」
ちなみにフラワーはどうしても外せない用事があるとかで、マヤノの応援に来れたのは私とデジタルだけ。……そんなことより今は別のことが気になって仕方がないんだよ。
「ねえねえデジタル」
「なんでしょう?」
「あのホッコータルマエって子、足太くない?」
「はい?」
そう。ホッコータルマエである。マヤノもフラワーもデジタルも、実際にはそうじゃないけど、ちょっと触ったら折れそうなくらい細い。けどあの子はすごく太い……。
「え、ええ〜?トレーナーさん、どこ見てるんですか?エッチですねえ。スピカのトレーナーさんみたいに蹴られちゃいますよ?」
「え!?エッチじゃないよ!?トレーナーならウマ娘の足を見るのは普通だよ!」
「まあそれはそうですけどね。あんまり女の子の下半身ばかりジロジロ見てると、通報されちゃいますよ。スケベな変態がいるって」
「す、スケベな変態……。で、でもさ、デジタルも自分と比べてみなって。明らかに太さが『太くないです!』……うわっ!?」
デジタルと太い太くない論争をしてたら、突然音割れするほどの声が響き渡った。耳がキーンとして痛い……。
『ど、どしたのタルマエ?突然大きな声出して。耳がキーンってなっちゃったじゃん』
『なんか私の足が太いって言われた気がして』
『え。……いや普通に太いでしょ』
『太くないもん!適正だもん!』
『いやいやタルマエ、そのおっぱいと太ももでアイドルは無理でしょ。明らかにむちむちすぎだから』
『そんなこと言ったらリッキーだってそのおっぱいで風水は無理だよ!』
『いやアイドルはともかく、風水におっぱいは関係ないでしょ』
『それはこっちのセリフ!というかアイドルじゃなくてロコド……』
『インタビューの途中でしたが、これにて終了とさせていただきます!ありがとうございました!』
『『あ、ちょっと!?』』
パドックの2人が騒がしくしてしまったからか、インタビューは中断、そのままそれぞれのトレーナーに手を引かれてパドックから退場させられた。
「あ〜あ〜。トレーナーさんが変なこと言うから〜」
「私のせい!?絶対聞こえてないよね!?」
「さーて、マヤノさんは外枠ですか。船橋レース場は最終直線が300mありますから、大外からぶち抜きも容易ですし、どうするんでしょうね」
「流れを完全に無視して投げっぱなしにしないで?今日のマヤノは先行じゃないかなあ」
「ほう。その心は?」
「気分」
「そんなめちゃくちゃな……」
「まあただの勘だからね」
なおマヤノは好位から3コーナー直前でスッと抜け出して1着だった。
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「あたし思ったんですけど、マヤノさんみたいにスペックでゴリ押しとか、フラワーさんみたいに領域で大逆転とか、そういうものがあたしには足りないんじゃないかって」
「どうした急に」
NHKマイル前日。相談があるからと宿泊しているホテルでデジタルに呼び出され、部屋を訪ねると開口一番にこれだ。急すぎて話の流れがさっぱりわからないんだけど。
「あたしの領域って、パワーが無いんですよ。こう……ガッといく感じの」
「いや知らないけど」
「それでいて本格化がマヤノさんやフラワーさんに比べると遅れているので、レースをしてもパッとしないというか」
「個人の感想じゃないの?」
「というわけで、あまりお金が掛からずにパパッと強くなれる方法知らないです?」
「ダイエットの宣伝文句じゃないんだからさあ……」
ツッコミどころしかないじゃないか。楽して痩せられる、みたいなことは現実にはあり得ないからね。無駄に高価なサプリや超高額のエステに加えて食事制限、さらに割としんどい運動が必須だよあれは。
「ということでここに50諭吉をレースで増やした2万諭吉があります」
「は?」
「トレーナーさんには、デジたんがファン活しながら楽にレース勝てるようになる勝負スイーツを研究して作ってもらおうと思いまして」
「お金が掛からない前提条件どこ行ったの?2万諭吉って……2億じゃん。というかお菓子の力でレースに勝てたら誰も苦労しないでしょ」
勝負スイーツにそんなインチキ効果はないです。不正はなかった。
「そうですかね?(いやいや思いっきりインチキしてますよ!不正ぱなかった!!!)」
「まあやる気が出そうなメニューは考えておくよ。でも材料費に1億もかからないし、これはきちんとしまっておいてね。なんだったら経費で……経費で……うっ!?」
「ライスさんの依頼のお見舞い、ほとんど経費で落ちませんでしたからねえ」
「やめて思い出させないで!もうお説教は嫌だ〜っ!」
そう。経費の申請をしたら、たづなさんからNGくらって危うく全額自腹になりかけたのだ。幸いにも理事長のポケットマネーで援助を得られたが、それもごく僅か。通帳に記帳した段階でフラワーにそれがバレて、またしてもお説教。いつになったら許されるんですか。
「あれは安請け合いしちゃったトレーナーさんが悪いですよ。あたしからしたら報酬も決めずに何やってるんですか〜って感じです」
「ぐぬぬ」
「とにかく勝負スイーツの件、頼みましたよトレーナーさん」
「はいはい、やっておくよ」
そしてその翌日。
「トレーナーちゃん」
「ん?どしたのマヤノ」
「トレーナーちゃんさあ……昨日デジタルちゃんの部屋に行ったんだって?」
「ん?そうだけど」
「よ・る・に」
「………」
マヤノの笑顔が……おかしくない?このあとやっぱり正座させられた。なんでや……。