【本編完結】お菓子作りが得意なトレーナーと、無慈悲するマヤノトップガン 作:出遅れ系トレーナー
『スタートしまおおっと!?1番人気のマヤノトップガン、出遅れたか!?』
『ホープフルステークスでもクラシック3冠レースでも、非常にきれいなスタートダッシュを決めていた彼女ですが、ここにきて大きく出遅れてしまいました』
『先頭から大きく離されてしまっているぞ!大丈夫か!?』
『今までは前目でレースを運んでいましたからね、徹底的にマークされているのもあって、これは厳しいかもしれません』
「うわあ、これはひどい」
「…完全に出遅れてますね。実況さんの言う通り、先頭とかなり差が開いてしまってます。マークも厳しいですし、どうするんでしょう」
フラワーちゃんが加わって1か月後。ジャパンカップに出走したマヤノは…思い切り出遅れていた。今までは先団に付けていたが、今日は後方から2番目を走っている。場内のどよめきがすごいな。
「やっぱり勝負服を変えたのが悪かったんじゃ…」
「そんなことはないと思いますけど…?」
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『トレーナーちゃん!マヤね~、勝負服を新調することにしたの!ほらこれ!』
『勝負服を新調…?って、それ勝負服っていうかウェディングドレスじゃん』
『わぁ…。素敵ですね』
『でしょでしょ~?ビューティーさんに作ってもらっておいたんだ~』
『いつの間に』
くるりと回るマヤノ。かわいい。ティアードは2段、ひらひらしすぎて走りづらいイメージしか湧かないんだけど。
『その勝負服すごくかわいいけど、そんなにひらひらしてて走れるの?』
『だいじょーぶだよ!こんな感じでスカートの下にスパッツ履いてるから、パンツ見えないもん』
マヤノがスカートの部分をめくってスパッツを見せてきた。ちょ、おまっ!?
『マ、マヤノさん!?女の子がスカートの中を見せびらかしちゃダメです!?』
『私は何も見てない見ていません私は悪くありませんクビだけは勘弁してください』
『パンツじゃないからだいじょーぶだよ?ま、それはそれとして。ジャパンカップはマヤの本気をちょっとだけ出して、かっこいい所を2人に見せちゃうから♪期待しててね☆』
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「…かっこいいところを見せるって言ってたし、マヤノの勝負勘を信じるしかないな」
「ですね」
レースはそのまま向こう正面へ。マヤノは相変わらず後方から2番目を走っていた。マヤノが興味を示していたナリタブライアンは中団。最後尾はヒシアマゾンか。
「…なんかおかしくない?」
「何がです?」
「いや、マヤノの前にいた娘がちょくちょくスピードを上げたり下げたりしてるように見えるんだよ。アレで疲れないのかなって」
「え…?」
マヤノの前を走っている娘が入れ代わり立ち代わりで前に出たり下がったりしている。目くらましか何かの作戦なんだろうか。
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(撃墜ミサイル、テイクオ~フ☆ってね)
待ちに待ったブライアンさんとのレース。あの阪神大賞典で負けてからブライアンさんがそのまま引退しちゃって、今まで再戦の機会がずっと無かったけど…ようやくその機会が巡ってきた。今日は勝たせてもらうよ。
『2番上がっていきます!おおっと?4番も上がっていくぞ!』
『掛かってしまっているかもしれません。冷静さを取り戻せるとよいのですが』
「チッ、なんだこいつらは。さっきから周りをウロチョロと」
「…ふふっ」
「うわぁ…えげつない」
ネイチャちゃんがものすごく嫌そうな顔でこっちを見たけど、ネイチャちゃんは掛かりそうにないので知らんぶり。観客席を見ると、どうやらトレーナーちゃんは気づいたっぽい。そう、私が他の子を掛からせているのだ。エアプレッシャーで掛からせるのは会長さんのお得意戦法らしいけど、会長さんだけが出来るわけじゃないんだよね。
『向こう正面に入って、先頭は相変わらず9番。レースはよどみなく進んでいます。1番人気のマヤノトップガンも相変わらず後方から2番手の模様』
『今までと違って後方を走らされていますからね。タイミングを取りづらいのかもしれません』
『と言っている間に9番が第3コーナーから第4コーナーへ!』
『勝負所!ウマ娘たちが続々とスパートをかけていきます!』
「さて、ここからが本番…だよッ!」
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「なんだこれ。青空…?」
「これは…領域…」
第4コーナーに入ってマヤノが踏み込んだその瞬間、辺り一面に青空が広がった。
「マヤのハートをブーケに込めて~。ん~ちゅっ♪この想い、トレーナーちゃんにとどけっ☆」
『マヤノトップガン、強烈な追い上げ!すごい脚で次々に他のウマ娘たちを抜き去っていきます!』
『そのあとに続いてヒシアマゾンもすごい脚であがってきたぞ!』
『ナリタブライアンは外をマヤノトップガンとヒシアマゾンに塞がれて前が壁!これは厳しいか!』
「マヤノの加速すごいな。ヒシアマゾンが僅かに追いすがってるけど、どんどん離されてるじゃん」
「強烈ですね。しかもブライアンさんへの囲い込みもすごいです。あれはなかなか出られないです。無理に出ようとしたら斜行で降着ですよ」
前半で掛からせた子で前に壁を作り、自分が横を走り抜くことで斜行判定で道をふさぐ。そんなことできたのか。
「本気でレースをしてるマヤノを初めて見たけど、本当にすごいな」
「え?クラシック3冠レースのときも見てたんじゃないんですか?私も映像を見ましたけど、レース中はちゃんと本気に見えました」
「見てたよ。ちゃんとまじめに走ってた。ただ、今までは綺麗にスタート切って先頭に立って、そのまま譲らず実力で押し切ってゴールって感じで、使えるものをすべて使うようなレースは初めてだよ」
「そういえばそうですね」
「たまには本気を出すって言ってたけど、想像以上だよこれは」
そのままマヤノは逃げていた子を追い抜き、高低差200mの坂の段階では既に先頭だった。
『マヤノトップガン、強い強すぎる、完全に抜け出した!2番手のヒシアマゾンとの差は9バ身!これはセーフティリード!』
『マヤノトップガン、大差で今ゴールイン!圧倒的な実力を見せつけレースを制した!』
『2着はヒシアマゾン!3着に入ったのはナイスネイチャ!』