【本編完結】お菓子作りが得意なトレーナーと、無慈悲するマヤノトップガン   作:出遅れ系トレーナー

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マヤノの育成評価がUE6→UD2になったので初投稿です。

追記:暇人mk2 様 誤字報告ありがとうございます。


ハーヴェストとお約束

「ちょっとよろしくて?」

「どうしたんだよマックイーン」

「私、今週は学園内でハーヴェストのお祭りをするって聞いておりましたけど……」

「おうよ!今日からしばらくはトレーナーも居ねえし、自由に遊べる時間だぜ~!」

(((いつも遊んでばかりでしょ(じゃない)(だろ))))

 

 

トレセン学園内で開催されるハーヴェスト。本来ならば、チームに所属しているウマ娘は行事に関係なくトレーニングを行うため、こういったモノに関わることはあまり無い。

しかし、溜まりに溜まったツケを払わせるために、沖野トレーナーはおハナさんによってリギル主催のバーのバイト要員として攫われてしまった。そのため、スピカのメンバー全員がハーヴェストの全日程で自由行動になってしまった。

マヤノたちがおかしいだけで、普通のウマ娘はトレーナーの監督や指示のない状況でトレーニング内容を決めたり行ったりはしない。したがって、沖野トレーナーが帰ってくるまで彼女らは何も出来ないのだ。

かといってトレーニングもせず、時間を無駄にするのは流石に勿体ないとのことで、お祭りを楽しんでいた。とあるド派手な看板を見るまでは。

 

 

「ならどうしてハーヴェストのお祭りでスイーツのお店があるんですの!?収穫祭関係ないじゃありませんの!?」

「何言ってるんだよ〜。そりゃお祭りだからに決まってるじゃねえか。お祭りと言ったら商売、これに限るんだぜ?マックイーン、お前ついに気でも狂っtうぎゃああああ!?」

 

 

件のトレーナーのスイーツと感じて反射的に身構えてしまうメジロマックイーンと、それを笑いながら煽るゴールドシップ。しかし例によって例の如く、メジロマックイーンの手から放たれたティーカップがゴールドシップに直撃し、ゴールドシップは地面をのたうち回る羽目になった。

 

 

「やれやれ。雉も鳴かずば撃たれまいってやつ。それはそれとして、マヤノのとこのトレーナーが、収穫祭にちなんで秋の味覚で色々作ってるらしいよ。すごくいい出来なんだ~ってマヤノがドヤ顔してたもん。どうして食べる専門のマヤノがドヤ顔してたのかは分からなかったけど」

「うふふっ。私たちはドリームトロフィーリーグまで時間ありますし、今回もご相伴に与れそうですね」

 

 

スピカのほとんどのメンバーは既にトゥインクルシリーズを引退し、ドリームトロフィーリーグへと移籍している。そのレースはトゥインクルシリーズのグランプリレースの後、年2回しか行われないため、自由な時間が多く取れるのだ。その間に多少デブ活したところであまり問題はない。

要は期限までに痩せればいいだけの話なのである。

 

 

「くぅ~!羨ましいぜ!俺も食べたいのにレースがあるからなぁ」

「ウオッカも食べてもいいのよ?ま、何をしても次のレースもあたしが勝つんだけど」

「俺が勝つに決まってるだろ。スカーレットこそ食べてもいいんだぜ?」

「生憎とアタシは我慢ができるのよ。誰かさんと違ってね」

「は?」「何よ?」

「……まーた始まったよ」

 

 

いつでもどこでも口喧嘩できる2人に呆れかえるトウカイテイオー。そんな口喧嘩する年少組をいつものことだとほったらかして、スペシャルウィークは看板を覗き込む。

 

 

「あ、メニューが書いてありますよ。えっと……林檎のタルトタタン、桃のシャーベット、葡萄とマスカットのパフェ、梨のベイクドチーズケーキ、栗とカスタードのダブルシュークリーム、季節のフルーツ盛り合わせ限定ホールケーキ、etcetc……。えっと……量多すぎません?」

「ざっと20品目か~。しかも条件付きで割り引いてほぼ無料……?これ採算取れないじゃん。資金どこから調達したんだろ?あのトレーナー、確かフラワーにカード管理されてるって聞いたけど?」

 

 

スペシャルウィークが読み上げたメニューのレパートリーと、それにそぐわないトレーナーの置かれている状況に、トウカイテイオーの頭には疑問しか出てこない。フラワーにカードを取り上げられているのは、愚痴と言う名の惚気でマヤノから散々聞かされている。よって彼がこんな商売を出来るはずがないのだ。

 

 

「あら、よく見たら1番下に何か書いていらますわね?ええと……割引はデジタルさんと2人でのチェキを撮ることが条件……?ああ、なるほど。資金源はこれですわね」

「デジタルさん、学園をお酒を飲む夜のお店と勘違いしてません?」

「ま、まさか〜?流石にデジタルでもそんなことは……あるかもしれない」

 

 

あのウマ娘ちゃんマニアのことだ、もしかしなくともありえる、と苦笑いを隠せない3人である。

 

 

「デジタルさんといえば、凱旋門賞で5000人の諭吉が50000人の諭吉になったとかで、学園内で話題になってましたわね。いくらあのマヤノさんとはいえ、単勝に5000万は突っ込めませんでしたけど」

「あれ?マックイーンもマヤノに?」

「ええ、20枚ほど。新しいトレーニング器具の購入資金にさせていただきましたわ」

「すごいですね!」「いいな〜」

 

 

やいのやいので盛り上がるチームスピカ。開店の時間は目前に迫っていた。

 

 

 

━━━━━━━━━━

 

 

 

「トレーナーさん。あたしから良いお話があります」

「ふーん。じゃあ今日の3時のおやつは……」

 

 

ハーヴェスト開催の1週間前、チーム部屋にて私に良い考えがある、と笑顔で言い切ったデジタルをスルーするトレーナー。さっくり流されてしまったデジタルは慌てて彼の裾を引っ張った。

 

 

「ちょ、スルーしないで!?流石のデジたんでも完全スルーは心に来ますので!」

「でもそういうのは大抵碌な話じゃないしなあ」

「それはそうですけど」

「だろ?」

 

 

自分でもヤバい言い方になってしまった自覚はあるので、あまり強く言い出せない。が、ここで引き下がってしまうとせっかくの大チャンスを逃す羽目になるので、デジタルは食い下がった。

 

 

「そうじゃなくてですね、実はトレーナーさんにお願いがあって。次のハーヴェストで激安スイーツのお店を開いて欲しいんです」

「激安スイーツ?作るのは構わないけど……」

 

 

トレーナーとしては、お菓子に関わる案件なら断るつもりはない。さらに今回のように質に拘らずに量を作るだけなら時間も掛からないが、了承するか悩む。先立つモノが無いと何もできないからだ。

 

 

「ああ、資金なら問題ありません。あたしがスポンサーになりますので」

「ふーん?凱旋門賞の利益使っちゃうんだ?」

「そうなんですマヤノさん。たまには還元しないと、周りがうるさいですからね。……ってひょええっ!?マヤノさんにフラワーさん!?いつからそこに?」

「最初から居ましたけど……」

「チーム部屋の扉を開けるなり開口一番から捲し立ててたから、話しかけづらかったね」

「あわわわ」

 

 

デジタルはマヤノとフラワーを見てソワソワし始める。明らかに挙動不審だ。

 

 

「んー?デジタルちゃん、マヤたちに何か隠してない?」

「いえいえそんなことは!あたしもトレセン学園の一員として、奉仕していく所存でありますぞ!」

「そうなんですか。……では本音は?」

「それはもちろん資金力にモノを言わせてウマ娘ちゃんへの推し活を……ハッ!?」

 

 

流れに任せて本音をぶちまけるデジタル。ハッとなるももう遅い。既に全員知ってるので。

 

 

「いやまあそんなに慌てなくても良いんじゃない?元はと言えばデジタルちゃんのポケットマネーだし」

「同人活動で集めたお小遣いをどう使おうと自由ですしね」

 

 

本音をぶちまけられたマヤノとフラワーだが、ああ、いつものデジタルちゃん(さん)だ。と思うだけで、特に問題があるようには感じていなかった。

 

 

「……あれ?思ってたより悪くない反応です?」

「学生の常識の範囲内でやる分には構わないんじゃない?誰かに迷惑かけてるわけじゃないでしょ?」

 

 

説教を覚悟していたデジタルだが、結果的に3人全員からの反応が悪くなく拍子抜けだった。

だからこそ開き直った。そうだ、この機会に計画を成就させてしまおうと。

 

 

「なら色々と注文してしまいましょうかね!」

「……色々と?」

 

 

デジタルは鞄を肩にかけて立ち上がる。と同時にチーム部屋の扉を全力で開け放った。

 

 

「皆さまそれでは今日は失礼します!トレーナーさん、激安スイーツの材料の発注はお任せを〜〜〜……」

「え、ちょっとデジタルちゃん!?」

 

 

そして颯爽と部屋から駆け抜けていった。

 

 

「……うーん?去り際にこちらを見てたのが少し気になりますね」

「デジタルちゃんだし、フラワーちゃんが困るようなことはしないだろうから大丈夫じゃない?」

「それはそうですけど」

 

 

 

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「しょぼんぬ」

「いやまあこれは……うん」

「デジタルちゃんの観察眼って本当にすごいな〜と思うよ」

 

 

3日後、チーム部屋では顔を真っ赤に染めたフラワーによって、デジタルが正座させられていた。

 

 

「ど、どうして私のスリーサイズが知られているかのようにピッタリなんですか!?というか何ですかこの花嫁ドレス!?」

「不肖デジタル、フラワーさんのために新しい衣装を用意させていただきました!」

「誰も頼んでないのですけど!?」

「頼まれていませんからな!」

 

 

デジタルが発注したのは、ハーヴェストの露店で使う大量のスイーツの材料とマヤノ及びフラワーの花嫁衣装だった。衣装に関してはデジタルが仕様書を作り、それを元にビューティーな人が一晩でやってくれたようで。だからこその圧倒的な速さでの納品となったわけだ。

 

 

「というかマヤのもあるし。最近ちょ〜っと胸の周りがキツいな〜とは思ってたけどさ。ぴったりフィットさせてくるのは流石だよね」

「……そこでこっち見ないで。私まで正座しなきゃいけなくなるでしょ……!」

 

 

サイズ調整についてマヤノに同意を求められるが、口を挟めばまず間違いなく巻き込まれて説教コースなので、知らぬ存ぜぬでそっぽを向くトレーナー。マヤノもそれを分かっているので、深くは追求しなかった。たとえトレーナーの視線が自分たちの胸に釘付けだったとしても。

 

 

「ま、頼まれていなくとも作るのがファンというモノです。さあフラワーさん、是非ともこれを着てお店で接客を!」

「どうしてそうなっちゃうんです!?」

「衣装に罪はありません!そしてこの衣装はフラワーさんのサイズに合わせて作られているので、フラワーさんにしか合いません!つまりッ!フラワーさんにはこの衣装を着る未来しか残されていないのです!」

「そんなことないですよ!?」

「さあ早く着てください!最終調整をしますので!ハリー!ハリー!!ハリーアップ!!!」

「えっ、ちょっと!?」

 

 

デジタルはここが攻め時!とばかりに正座から立ち上がると、その勢いのままにフラワーを壁に追い詰める。気づけば完全に攻守逆転し、デジタルがフラワーに衣装を着せるのをゴリ押しする展開に。

 

 

「ど、どうしてこんなことに……?」

「勝ちましたッ!我々の勝利ですッ!」

「「我々……?」」

 

 

そしてそのまま押し切られ、フラワーは花嫁ドレスを着せられてしまう。さらにその衣装で接客することも承諾させられてしまうのだった。ウマ娘含めて誰しもゴリ押しモードになった厄介オタクには敵わないのである。

 

 

 

━━━━━━━━━━

 

 

 

「むぐむぐ。これは何個でもイケますわね」

「このケーキ美味しいです〜。減量を気にせずお腹いっぱい食べられるなんて、なんて幸せなんでしょう〜」

「ホント、美味しくできてるよね。量産型なのにこの出来かぁ。腕上がりすぎじゃない?……というか2人とも食べ過ぎでしょ」

「「そんなことないです(ですわ)」」

「……ボクはちゃんと言ったモンニ。……あ、フラワーちょうど良かった。悪いんだけど、この蜜柑丸ごと牛乳寒天ってやつをお願いしていいかな?」

「はーい」

 

 

午前11時、お昼直前に開店したアンタレスのスイーツ店。レース前で食べられないウオッカとダイワスカーレット、そして轟沈させられたゴールドシップを除いた3人は、そのスイーツに舌鼓を打っていた。

何かを察して甘さ控えめの注文をするトウカイテイオーを除き、店を訪れたほとんどのウマ娘が超高カロリーの激甘スイーツを注文していたため、辺りには遠くからでもわかるほどの濃厚な甘い匂いが漂っている。

 

 

「トレーナーさんっ。5番テーブル、蜜柑丸ごと牛乳寒天ですっ」

「りょーかい。……デジタルはムフムフ言ってないで5番テーブルにこれ持っていって」

「かしこま!」

 

 

そのお店では、約束通り(?)花嫁ドレスを着させられたフラワーがテーブルを回りながら注文を取り、デジタルが配膳しながらチェキを撮ってムフムフ。

厨房ではデジタルによってお菓子の材料という名の水を得たトレーナーが、無限の菓子製(アンリミテッドスイーツワークス)の固有結界を発動させ、ひたすらお菓子を作っていた。

いくらお菓子作りが得意だとはいえ、冷やしたり焼いたりする時間は必要なため、在庫が目減りする一方だからだ。

 

 

「トレーナーちゃ〜ん。そろそろ飽きないの〜?」

「この機会に速度の方を上げておきたいんだよ。最近ずっと凝ったモノばかりで、数は作れてなかったから」

「うぐっ。原因マヤだから強く言えない……」

 

 

花嫁ドレスこそ着たものの、今週はトレーナーにあまり構ってもらえないことが確定しているため、マヤノの機嫌はあまり良くない。

だが大好きなトレーナーちゃんのためなら……と、あまりわがままを言わずに我慢するとも決めてもいた。

だがそれはそれとして構って欲しいのが我らがマヤノさんなのであり。

 

 

「ぶーぶー!それでも寂しいよー!」

「はいはいそうだね」

「遊んでよー!」

「はいはいそうだね」

「……じゃあマヤがトレセン学園を卒業したら、マヤと結婚してね☆」

「はいはいそうだね……ん?」

「……ふふっ」

 

 

反応が雑になった瞬間言質を取った。もちろん、前後の会話は残さず、マヤノと結婚する、の部分だけを録音して。

当然、マヤノの機嫌は絶不調からスーパー絶好調まで跳ね上がる。

 

 

「むふふ〜。マヤ、フラワーちゃんを手伝ってくるね☆」

「え?うん。いってらっしゃい」

 

 

突然機嫌が良くなったマヤノに困惑するトレーナーだが、今は目の前の注文のことしか考えていなかった。

大マヤ王からは逃げられない!

 

 

 

━━━━━━━━━━

 

 

 

「注目ッ!それではこれより身体測定を開始する!」

「「「な、なんだってー!?」」」

「あーあー。やっぱり。懲りないよね〜みんな」

「……マヤは悪くないよ?」

「誰も責めてないってば」

 

 

後日、学園全体のウマ娘たちの体格が明らかにふくよかになっているのを危惧した秋月やよいによって、緊急の身体測定が行われた。

当然のようにスピカの食いしん坊ズや芦毛の怪物が引っかかるのだが、それはまた別のお話である。

 

 

 





もうすぐ完結。話を最後まで書き切って、最初期の頃の修正を入れたら完結とします。
見切り発車だったので、エタらないとは思わなかったのが本音。
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