【本編完結】お菓子作りが得意なトレーナーと、無慈悲するマヤノトップガン 作:出遅れ系トレーナー
「おかしいですわね?先々週のハーヴェストが終わった後に酷い目に遭ったと思いましたけど、今度はハロウィンで酷い目に遭う未来が見えますの……」
「あはは、そんなわけないじゃないですか~」
「現実を見てくださいまし!このカボチャのスイーツを!どう見てもあの方の罠じゃありませんの!?」
秋の天皇賞が終わり、エリザベス女王杯やマイルCSが控える10月最終日の31日。ハロウィンのお祭りだと騒ぎ立てるデジタルによって、またしてもスイーツのお店が開店することになった。
変態に行事と資金を与えた結果がこれだよ!!!
「罠……?食い意地張らずに食べ過ぎなきゃ良いだけじゃん」
「「こんなに美味しそうなスイーツを見逃せって言うんですか!?(言うんですの!?)」」
「ダーメだこりゃ」
昨年まではレースの準備時間として使っていた期間を地獄の減量で使い果たしたメジロマックイーンとスペシャルウィークだが、全く懲りずに新たなスイーツに手を出す模様。そんな2人を見たトウカイテイオーは、これは処置なしだー!と早々に諦めてしまった。余計な口を出して巻き込まれるのは、既に転がされて床を舐めているゴールドシップだけでいいのだ。
そんな愉快なスピカのメンバーの横では、ハルウララ、ライスシャワー、そしてミホノブルボンが看板を眺めている。
「ねーねー、ライスちゃん!マヤちゃんのトレーナーが今回はパンプキンパイを作ったみたいだよ!しかも、たくさん食べるとご褒美が貰えるんだって!」
「そ、そうなんだ……」
「つまりライスちゃんの出番ってことじゃない!?」
「ふええっ!?そ、そんなことないと思うよ!?」
謙遜するライスシャワーだが、実際彼女はよく食べる。それを考慮して演算し、シミュレートした結果をミホノブルボンが出した。
「いえ、もし大食いチャレンジにライスさんが出場した場合の完食確率は33.4%。決して悪くない値です」
「ブルボンさんまで!?」
「さらにライスさんの運動量を考慮すると、次のレースまでに減量が間に合う可能性は150%。ここは行くべきかと」
「ふええっ!?崖で落ちそうになってるから一所懸命に踏ん張ってるのに、後ろから笑顔で押されてる気分だよっ!?」
「頑張ってねライスちゃん!」
「どうあっても出る流れになっちゃってる!?」
ミホノブルボンがポンコツロボットと化してしまい、ハルウララと合わせてボケ担当2人に押し切られてしまうライスシャワー。彼女が諦めて大食いチャレンジに出場することを決めるのに、そう時間はかからなかった。
そして、そんな話を横で聞いていたメジロマックイーンとスペシャルウィークの目が光る。
「なるほど豪華景品ですか。これはメジロの誇りを賭けて負けられませんわね」
「こんなことに誇りを賭けないでいいから」
「私も豪華景品欲しいです!あのトレーナーさんのことですし、きっと新しいスイーツに違いありません!」
「な、なんですってー!」
「誰もそんなこと言ってないでしょ」
トウカイテイオーのツッコミが追いつかない勢いでボケまくるメジロマックイーンとスペシャルウィーク。彼女たちの明日はどっちだ。
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「また、これを着るんですね……」
「むはーっ!堪りませんなーっ!あたしの中の荒ぶる勇者の魂の昂りが止まりま……ぐふっ」
「あっ。デジタルちゃんが尊死した」
「……ハッ!?危うくウマ娘ちゃんハーレムという名の桃源郷へと旅立つところでした」
「その時は笑顔で見送ってあげるね☆」
「辛辣ッ!?」
フラワーに花嫁ドレスを着せてご満悦のデジタル。またしてもごり押しで接客させられることになったフラワーだが、このヘブン状態のデジタルには何を言っても話にならないのが目に見えているので早々に諦めていた。
「それで?フラワーのことはともかく『ともかく!?』ハロウィンと言ったらカボチャしかないけど、パンプキンパイで良いの?」
まあ一般的なハロウィンで使われている無駄にどでかいカボチャは食用には適さない。だから実際には食べられないんだけど、お祭りとしてはカボチャのお菓子が使われてるんだよね。
「そうですね。やはりハロウィンならカボチャかと。というか既に発注済みなので、変更されると困りますね」
「既に発注済みなのか……」
ドヤ顔で発注書を見せつけてくるデジタル。うわ、金額やっば。最高級の素材ばかりじゃないか。
「最近のデジタルのお金の使い方が荒すぎる件について」
「「「トレーナーちゃん((さん))は人のこと言えないからね(言えませんよ)(言えませんぞ)」」」
「ハモらないで?」
3人して真顔で言ってくるんだからこの子達はまったく。
「で?さりげなく置いたみたいだけど、堂々と書いてある大食いチャレンジってのは?」
発注書の横に置かれた紙には、『大食いチャレンジ開催のお知らせ!豪華景品もあるよ!』と書かれている。
「前回は何だかんだで食べ損ねたウマ娘ちゃんが多かったようなのd『そうだったの?』『デジタルちゃんはウマ娘に関してはアンテナと頭がおかしいから』はいそこ!デジたんの悪口になってますよ!」
紛れもない事実だよ。
「でもどうしてそんなことがわかるんです?私注文取ってましたけど、全然気づきませんでした」
「見てればわかりますよ普通」
「「「いや無理でしょ(ですよ)」」」
「ひょええっ!?」
驚きの声を上げてひっくり返るデジタル。大げさすぎるリアクションだけど、この子分かっててやってるからもういいや。
「……とりあえずここに書いてある通りの仕様で作るけど、問題ないんだね?」
「大丈夫ですぞ!」
「なら用意するか。パパっと作っt『トレーナーちゃん?』……どうしたのマヤノ。顔が怖いけど」
腕をまくっていざ鎌倉ってところでマヤノからその腕を掴まれた。心なしかマヤノの背景に般若が見えるんですが……。
「あのね、トレーナーちゃん。もしかしなくとも、ここ最近でかなり痩せたでしょ。……1週間で10キロぐらい」
「ギクッ!?」
「え……?10キロを1週間で……?それもう病気じゃないですかっ!」
「びょ、病気……」
病気扱いは流石に酷くない?
「お菓子作りに夢中になるのはいいけどさ~?それでご飯食べないのは……話が違うよね?」
「……そうですね。流石にそういうのは、よくないですよね……」
笑顔でこちらを見る担当ウマ娘たち。……あ、あのねマヤノさん腕はそっちには曲がらないんですよ。フラワーさんも、空いている方の腕を掴んで持ち上げないで?身体浮き上がってるんですけど!
「トレーナーちゃん。あっちでちょっと……O・HA・NA・SHI。しよっか?」
ハイライトの消えた目で口だけ笑いかけてくるマヤノ。こ、これはまずいぞ!
「……た、助けてデジタル!」
「すみませんトレーナーさん。既にあたしも捕まってしまいまして……」
「Oh……」
しかし頼みの綱のデジタルは既に縄で縛られて転がされていた。原因を作ったのがデジタルなので、連帯責任らしい。
この後めちゃくちゃお説教されて、ご飯食べさせられた。
……体重は戻らなかった。
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「行きますわよ~!」
「ちょ、待ってください~!」
「全てのメニューを制覇すれば大食いチャレンジは勝ったも同然!豪華賞品をゲットですわ!」
迎えたハロウィン当日。開店と同時に駆け込み、キッチンとの距離が最短のカウンター席を確保するメジロマックイーン。追いついたスペシャルウィークがその横に座るのだが、2人とも着席と同時に置かれていたメニューを開き、書いてあった全てのスイーツを注文した。こいつらまるで成長していない……と、沖野トレーナーがこの状況を見たら頭を抱えるのは間違いないだろう。
そんなチームメイト達から目を逸らし、トウカイテイオーとゴールドシップは、彼女らとは少し離れた2人用の席に座った。あの2人のペースに巻き込まれず、かつ問題が起きたときにすぐに対応できる位置である。
「……最近アタシ、こういう時って何も出来ずに全てが終わってるんだよな~。いっつも突然フォークが飛んできてて、気づいたときには全てが終わってるんだよ」
「あー……。食べ物の恨みは恐ろしいモンニ。仕方ないよ」
「ん~?アタシ何かやったか~?」
そんな覚えは無いぞとゴールドシップが記憶を呼び覚まそうとするも、一向に出てこなかった。トウカイテイオーとしては荒れに荒れたメジロマックイーンを宥める役目を押し付けられて酷い目に遭ったため、記憶に大いに残ってしまっているのだが。
「ゴルシちゃんスーパートルネード!!!とか叫びながら、マックイーンが食べてたミルクレープに一味唐辛子ぶちまけたじゃん!アレだよアレ!」
「……一味唐辛子……?いえ、知らない子ですね?」
「どうしてスピカってスイーツ狂いとこんなのしか居ないんだ……ッ!」
そういう自分ははちみー狂いだろ……とボヤいたらまず間違いなく全てが終わってしまうので、ゴールドシップはそこには突っ込まなかった。彼女の中では、彼女は賢いボケ担当なのである。
「ご注文はお決まりですか?」
「……ボクはこのスペシャルはちみーウルトラスーパーデラックスパイってやつ」
「アタシは普通のパンプキンパイで」
「かしこまりました」
手を上げてホールを回っていたフラワーを呼び、普通に注文する2人。片っ端からパクパクして、空になった皿が積みあがったカウンター席は見えない。見えないのだ……。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「あ、フラワーちゃんだ!今日もドレス似合ってるね!……ってあれ、マヤちゃんは?」
「マヤノさんは厨房でトレーナーさんの監視ですね。トレーナーさん、前回のハーヴェストで、まともに食事をとらずに10キロ瘦せたそうなので」
「えぇ~?それ病気じゃん」
「ですよねぇ……っと。ブルボンさん、ライスさんと3人ですね。奥の席へどうぞ」
「ありがとうございます。フラワーさん」
「ふえぇ……」
結局連れてこられてしまったライスシャワーは、終始ふえぇ……しか言えていない。が、今日のメインはライスシャワー。ハルウララは、自分はライスちゃんの応援団長なのだ!と気合の入ったハチマキを頭に巻いて戦闘態勢で、ミホノブルボンもそれに続いてしまっている。もう逃げられないぞ!
「ねえねえフラワーちゃん!ライスちゃんが大食いチャレンジってやつにチャレンジするんだけど、メニュー表に書いてないよ?」
「あ、大食いチャレンジに挑戦するんですか?」
「えっと……はい」
ようやく喋れたライスシャワー。そしてそれは彼女の大食いチャレンジ挑戦が確定した瞬間であった。
「わかりましたっ。準備してきますねっ」
フラワーが注文をキッチンに伝えるために戻っていく。しかし、まだ自分の注文をしていないことに気づいたミホノブルボンが、慌ててフラワーに注文を伝えた。
「ああ、フラワーさん。私は季節のフルーツ盛り合わせ限定ホールケーキを」
「えっ!?それもう終わってますっ!?」
「……?」
しかし、ミホノブルボンが注文したそれはハーヴェスト限定品だった。注文不可の衝撃で、宇宙の背景を出しながらミホノブルボンは口を半開きで硬直する。
そうして硬直したミホノブルボンを気にしつつも、大食いチャレンジの準備をしなくてはならないフラワーは、キッチンへと入る。代理でマヤノがキッチンから出てきて配膳していくが、マヤノはフラワーと違って注文前に求めているスイーツを配膳してくるため、マヤノのことを詳しくないウマ娘からは畏怖の目で見られることになってしまった。勘はほどほどにね!
それから10分ほどで、フラワーが戻ってきた。
「お待たせしましたっ」
「おお~。やっと来たみた……えっ?」
「こ、これは想定外です……」
フラワーが運んできたのは超特大パンプキンケーキだった。パイじゃないじゃん!と思われつつ、そびえたつケーキの段数は7段。最下段の直径は60センチ程ある。即座に、これは1人で食べるモノじゃない!と散々ライスシャワーを煽ってきたハルウララとミホノブルボンはドン引きしてしまった。
「うーん……足りるかなあ?」
「「「ええっ!?」」」
「ふえ?」
しかし、ライスシャワーはこれで足りるかどうかを心配していた。というのも、彼女は大食いチャレンジのために朝食を抜いていたのだ。そのため、出てきたケーキが昔サクラバクシンオーらに聞いたケーキと比べて小さかったために、そう呟いてしまったのだ。
勿論、大きすぎて驚いていた2人と、食べられなくても持ち帰りが出来るから問題ないことを伝えようとしていたフラワーは更にドン引きしてしまう。
「えっと……時計、要りますか?一応制限は30分なのですけど」
「うんと、それだと長すぎるから要らないかも……?むしろ、もう1つ同じのを注文はできないかな?」
「は、はい……わかりました……」
この後ライスシャワーは、当然のようにペロリとパンプキンケーキを完食した。景品は勝負スイーツ体験招待券で、ライスシャワーは更に幸せになった。
「おかしいですわね?大食いチャレンジって書いてあったのに、そのスイーツが出てきませんわ!」
「でもお腹いっぱい食べれて満足です~~~」
「……マックイーンやスぺちゃんはいいかもしれないけどさ!動けなくなるまで食べないでってボク散々言ったよね!」
「こうなるのは知ってた定期」
キッチンとホール間をフラワーに40往復させた上でそれらを全て完食して丸くなったメジロマックイーンとスペシャルウィークは、トウカイテイオーとゴールドシップに転がされて寮に戻ったのだった。
不幸はなかった。