【本編完結】お菓子作りが得意なトレーナーと、無慈悲するマヤノトップガン 作:出遅れ系トレーナー
最終話ですが、いつも通りです。
『豪雪吹き荒ぶあいにくの天気となってしまいました今年の有馬記念。今年もあなたの、そして私の夢が走ります』
『この天気ですが紛れはあるのでしょうか。怪我には十分注意して欲しいですね』
とうとうマヤノのラストラン(といってもトゥインクルシリーズのだが)の有馬記念のゲートインが始まった。思えば彼女におんぶに抱っこされ……?いや振り回されてただけ……?な数年間だった。
……楽しかったからこれはこれで(と思いたい)。
「いよいよ始まりますねトレーナーさん。マヤノさんのラストランが」
「ちゃんと見えてるよ。……こっちにばかり手を振って、ひたすら投げキスし続けてるマヤノが……」
「あ、あはは……」
「………けぷっ」
フラワーと一緒に手を振り返したら、その瞬間マヤノの周りから他のウマ娘がざっと逃げるように離れていった。雪で滑るから慌てると危ないぞ。
なおデジタルは。
『マヤノさんの心からの笑みがっ!?と、尊みっ!……ば、馬鹿なっ。同じチームに入って耐性を得たというのに耐えきれぬというのかっ……!?ううぅぅぅぅ……ウボァー!!!』
とか言いながら後ろに倒れてた。久しぶりに見たねそのオタク芸。
『さあ本日の主役はこの子をおいて他にいない。この有馬記念がラストランの3枠5番マヤノトップガン。他のウマ娘を突き放しての堂々の1番人気です』
『なんと言っても今年の凱旋門賞を制し、日本の夢を叶えたウマ娘ですからね。トゥインクルシリーズの総決算、期待がかります』
『ゲートイン完了、出走の準備が整いました……スタートしました!各ウマ娘一斉にスタートを切りました。先行争いはマヤノトップガン、ビターグラッセ、リトルココン。……おおっと、この組み合わせは?』
『春の天皇賞と同じ3人の鍔迫り合いからスタートしましたね。グングンと前に出ていきましたよ』
なるほど。今回もマヤノは逃げを選んだみたいだ。……頑張れ、マヤノ。
──────────
「「このまま勝ち逃げなんて許さないぞ!」」
「ふふ~ん☆マヤに追いつけるかな~?」
泣いても笑っても最後のレース。マヤのトゥインクルシリーズはここで終わり。
いつも通りの場所にしまってあったトレーナーちゃんのハンコ。それを勝手に使って出走したホープフルステークスから始まった、長いようで短いG1戦線の終着点。
……ううん、トレーナーちゃんと初めて会えたあのチーム部屋から始まった、長い長いマヤの旅路がようやく終わる。
「2500、しかも豪雪で大荒れの重バ場で大逃げはスタミナが持たないはず。ここは温存して終盤で仕掛ける!」
「今はあまり離されずについて行って中盤で巻き返すわ!」
アオハルの赤青以外はマヤについてくる子は居ないみたい。流石に春の天皇賞でもボコボコにしただけあってマヤのひとり旅は警戒してくるよね。まあその考えは甘いんだけど。
1回目のホームストレッチは特に問題なし。やたらうるさい2人が後ろにいるけど。さーて?トレーナーちゃんはどこかな?……むっ!見つけた!
「トレーナーちゃ~ん!マヤの愛を受け取って~☆」
『ちょ、マヤノ!?』『マヤノさん!?』『もうデジたんのライフはゼrあばばば!?』
笑顔で手を振ったら反応が返ってきた!よ~し!マヤの愛が届いたよ!マヤのやる気がすご~くアップ!
「「くっ……!真面目に私たちとレースをしろ!!!」」
『なんということだ!マヤノトップガン、正面スタンド前で余裕の表情!観客席に手を振りながら走っているぞ!確かに戦績の差は歴然だが、これは他の娘の心を折りに来ているのか!?』
『これも彼女の作戦でしょう。過去のレースでもメジロマックイーンやスペシャルウィークといったG1で活躍していた名ウマ娘も掛かってしまっていますし、現に後方のウマ娘のペースが上がっています。冷静さを取り戻せるといいのですが……』
『『そんなところで名前を出さないでください(まし)!?』』
あ。マックイーンちゃんとスぺちゃん居たんだ。あれ?でも今日はスピカの子は出てないし、どうしたんだろ。ただの観戦……なわけないよね。ドリームトロフィーリーグでまた一緒にレースすることがあるはずだから、マヤの走り方の調査ってとこかな。
……そんなことを考えていたら正面スタンド前を超えて第1コーナーへ入ってた。どんどん行くよ!
『第1コーナーに入って相変わらず先頭はマヤノトップガン。そのすぐ後ろにビターグラッセ、さらに横にリトルココン。10バ身ぐらい離れて6番……』
ん~……。離されずについてくるって言ってた子は結局ついてこれてないね。……まあ仕方ないか、これ短距離のペースだし。それに重バ場なのもあって普通は走りづらいはず。
今までこういうレースはたくさんあったからマヤには関係ないんだけどさ。
「……っ!ここで仕掛けて前に出させてもらう!」
「前を塞げばお得意のロングスパートも出来ないはず。勝負はここからだ」
「おおっと~?」
『向こう正面に入ってビターグラッセが上がっていく!リトルココンもそれについて行ってここで先頭が入れ替わった!先頭はビターグラッセだ!2番手にリトルココン!マヤノトップガンは3番手に後退した!』
『まだまだゴールまで長いですが、今までマヤノトップガンは向こう正面からのロングスパートでしたからね。前を塞いで簡単にスパートさせない作戦でしょうか』
『これは面白い展開だ!マヤノトップガンはどうするのか!?ロングスパートをするなら大外を回らされてしまうぞ!』
第2コーナーを過ぎて赤青が強引に前に出てきた。マヤノトップガン前が壁!ってやつかな。マヤもブライアンさんやモンジューさんに相手に前が壁は使ったけどさ……。この2人はちょ~っと考えが足りなさすぎだよね。あれは狙いたい子"以外"を掛からせて、前と横を塞がないと意味が無いんだよ。まあ風避けには出来るから有効利用させてもらっちゃうね。
『さあ向こう正面も終わりが見えてビターグラッセがスパートを掛けた!僅かに遅れてリトルココンもスパート!さらに遅れてマヤノトップガンもラストスパートだ!』
『3番人気までのウマ娘がほぼ一斉にラストスパートに入りましたね』
『中山の直線は短いぞ!後ろの娘たちは間に合うか!?』
残念だけどもう間に合わないし、間に合わせないよ。大事なトレーナーちゃんとの時間を削ってトレーニングしてきたんだもん。ステップレースで出走権を得ただけの子たちに、本気の本気でトレーニングしたマヤとの実力差を見せてあげる。
『最終コーナーを回って先頭はビターグラッセ!すぐ横にリトルココン!先頭2人の競り合いだ!』
「このまま行って私が勝つ!リトルココンは引っ込んでな!」
「私が勝つって前から言ってる。ビターグラッセは詰めが甘いんだからさっさとスタミナ切れでバテて『おおっと大外から何か1人突っ込んでくるぞ!』……ん?」
『トップガンだ!トップガン来た!大外からマヤノトップガンが突っ込んできた!』
「「……んなぁ~っ!?」」
内がダメなら大外から追い込めばいいってみんな言ってる。全力で逃げて最後に差す、これに限るよ。それと根性で粘ろうとしてるところを悪いけどマヤは並んですらあげないよ。最後まで油断しないで有終の美を飾るって決めてるからね。
『マヤノトップガンがグングン伸びる!先頭で競り合っている2人に並ばない!そのまま一気に抜き去ってゴールイン!1着はマヤノトップガン!圧倒的な実力差を見せつけレースを制した!2着はリトルココン、3着に入ったのはビターグラッセ!』
ゴール板を駆け抜けて後ろを見ると、赤青が絶望の顔をしてた。マヤは2人が追い抜いたところで少し息を入れたけど、2人はそうじゃなかったし……大外を回っても余裕だったね。まああれだけのペースで走ればスタミナ切れは当たり前っちゃ当たり前。掛かるのはトレーニング不足だよ、本を読もうね。
……ということで~?
「ライディングキ~ッス☆マヤちん大勝利☆」
──────────
「トレーナーちゃ~ん!はやくはやく~!」
「ぜぇ……ぜぇ……!ま、待ってマヤノ……。人間は……ウマ娘みたいには……走れな……」
「ならマヤがトレーナーちゃんのこと抱えちゃうね!」
「ちょ、それは恥ずかしいからやめうわっ!?」
「ハハハ。相も変わらずトレーナーさん殿がマヤノさんにだっこされておられますぞ」
「トレーナーさんは人間さんですからね……」
今日はトレセン学園の体育館を貸し切ってチームのみんなでパーティ。トレーナーちゃんお手製の料理とお菓子を並べて、ね。
え?トレーナーちゃんが食べ物を用意したならマヤは何やったのかって?もちろんマヤは、やよいちゃんを脅h……じゃなかった。やよいちゃんとお話して貸し切りの許可をもぎ取ったのだ☆
「ちょっとマヤノ!久しぶりに全員が集まったからってはしゃぎ過ぎだってば!?」
「だって本当に久しぶりなんだもん。デジタルちゃんは海外に行ったままなかなか帰ってきてくれなかったし、フラワーちゃんは高等部に入ると思ったら更に飛び級して大学に行っちゃうしさ~?」
「マヤノさんの凱旋門賞で海外のウマ娘ちゃんを見る機会が得られましたので!せっかくなので世界中のウマ娘ちゃん観察をしようと思った次第ですハイ!」
「えへへ。大学入試の試験を受けてみたらありがたいことに合格できましたし、早く大人になりたかったので頑張っちゃいました」
マヤがトゥインクルシリーズを引退して3年が経った。その間、短距離が得意なフラワーちゃんが出走を疑問視されつつ長距離レースに出て春の天皇賞や有馬記念を勝って春秋3冠を勝ったり、デジタルちゃんが海外のレースで芝ダートのG1を勝ったりした。
トレーナーちゃんはマヤの戦績を考慮されて理事会のメンバーにされちゃったせいで事務処理で忙しくなっちゃって、マヤはマヤで招待レースで海外に出かける(もちろんトレーナーちゃんも一緒だよ?)ことも多かったの。
だから全員が揃うのは本当に久しぶりなんだよね。
「そういえば私もデジタルさんも今年でトゥインクルシリーズを引退しましたけど……。トレーナーさんはどうするんです?」
「え?何が?」
「だってトレーナーさん。マヤノさんにデジタルさん。そして私が引退してしまったので、来年から担当ウマ娘誰もいないじゃないですか」
「……ああっ!?」
「気づいてなかったんですね……」
フラワーちゃんの指摘で担当ウマ娘が居なくなってしまったことに気づいてしまったトレーナーちゃん。そうなんだよね。フラワーちゃんとデジタルちゃんが同じタイミングで引退しちゃったから、猶予なく無職になっちゃったんだ。
「どどどどうしよう!?たづなさんから来年の担当ウマ娘の最低ノルマが3人になるって言われてるのに!?」
「……え?それ有情すぎません?」
「スピカやリギルなんて5人以上いるのにね」
「ぐふっ」
「あの……えっと……。わ、私と同い年の子はほとんどチームに加入済みですから、紹介できないかもです」
飛び級のフラワーちゃんは高等部に知り合いが居るみたいだけど、まあそうだよねって感じ。
……ということで~?
「ふっふっふ。マヤに良い考えがあるよ!」
「そうなんですか?」
「もちろん!それはね~?」
「……それは?」
「その辺で走ってる子を適当に攫ってきちゃえばいいんだよ☆」
「は、犯罪じゃないですか!?」
ドヤ顔で提案したマヤの考えはフラワーちゃんからバッサリ却下された。良い考えだと思うのにな~?
そしてそれを見たデジタルちゃんがドヤ顔。次はデジタルちゃんが提案をするみたい。
「何言ってるんですか……。大丈夫ですよフラワーさん」
「そうですよね、冗談ですよね」
「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ!」
「デジタルさんも何言ってるんです!?」
デジタルちゃんも大概だった。
「ということで食べ終わったら探しにいこっか」
「ですね。フラワーさんにも手伝ってもらいますよ?」
「……トレーナーさん、このままでいいんですか?この2人に任せておいて」
「私がスカウトしても何故か失敗するしね。……もうどうにでもな~れ!」
「トレーナーさん!?」
あはは!やっぱりトレーナーちゃんはこうじゃなきゃだよね!
この後マヤノが小悪魔系妹ギャルなウマ娘や、普通で平凡なウマ娘を攫って加入させたりしたけどそれはまた別のお話。
ということで完結とします。
見切り発車な上にゲーム自体の運営に問題が多くてモチベ維持が非常に困難でしたが、なんとか完結までこぎつけて良かったです。ありがとうございました。