「あれ~たきな?もしかしてまた機嫌悪い?」
千束が団子を食べていると、そんな事を言いながら、菜月が裏から呑気に出てくる。
しかし何も持っていなかった。千束は疑問に思う。
「菜月~!座布団どうしたの~?」
菜月はハッとした表情をする。
それは座布団忘れていた事か?
それとも団子を見つけたためか?
菜月が横に座ると千束は団子を遠ざけた。
「え~!いいじゃん。1個頂戴よ!」
「ダ~メ!自分で貰いなさいよ!菜月。それより座布団は?」
またハッした表情になる。今度はしっかり座布団の事だったようで。
頭を掻きながら、菜月は反省していない声を出す。
「ごめ~ん!忘れちゃった!」
「こら!なにしてんの~! ごめんたきな。変わりに取ってきて」
「はい」
たきなはすれ違う瞬間に菜月を睨む。
しかし菜月は違う事に夢中な様でまったく気づかない。
「こら!だめだって言っているでしょ!」
「ちょうだいよ~」
ミカが兄弟喧嘩のようなものを見ていると、千束から不意に質問が飛んで来る。
「てか先生~。なんで菜月は作戦のこと知ってたの~?」
「菜月も演技へたくそそうじゃん」
「たきなにスナイパーやらせば良かったのに~。わざわざ健診だなんて嘘ついてさぁ」
ミカはやっている作業を止め、腕を組み始める。
「いや本当に健診だったんだ。でもどうしても参加したいって言うからな」
「途中参加させたんだ。」
「へぇ~そうなんだ。菜月、何で参加したかったの?」
いつの間にかコーヒーを飲んでいた菜月に質問する。
するとこっちを向きニヤッと笑う。
「お団子くれるなら教えてあげるよ?」
千束は団子を持って立ちあがる。
「千束~。どこ行くの?」
「あんたに取られないように裏で食べる」
千束が裏に逃げて行くと、菜月はカウンタに頬杖を突く。
ミカはその様子を見ると、冷蔵庫からパフェを出す。
「先生!ありがとう~!」
「今日は良くやってくれたからな。お前をサポートに付けておいて良かった」
「そうでしょ~。もっと褒めてあげて」
おいしそうにパフェを頬張る菜月。
ミカは質問をする。
「菜月。裏であいつと何をしていたんだい?」
「うん?ナっちゃんと?」
菜月は腕を組み、考え出す。
しかしすぐに答えが決まったようだ。
「ヒ・ミ・ツ゚♡」
▽
「うむ、ここはいい。なかなか快適だな」
ボクが此処にやってきてはや1時間。
良い場所が見つけられなかったので住むのをやめようと思ったが、
この押し入れは最高だ。やっぱり暗い場所はすばらしいな。
「あれ?どこいったかなぁ?」
扉の向こうに誰か来た。
まぁこの感じだと2択だな。
「あっ!此処にいた!」
二重人格の方だった。
「ホント似てるな」
「えっ~?何が?」
「なんでもない。それで二重人格。何か用か?」
ボクがそう呼ぶとコイツは、ばつの悪そうな顔をする。
「聞いてたんだ・・・」
「まぁおもしろそうな事を話していたからな」
こいつは腕を組み、考え始めた。
ボクの事を口封じでもするつもりか?
「じゃあアキと会話させてあげる!」
そう言うといきなり眼鏡を外しだす。
一般的に眼鏡を外すと眼つき
が悪くなる。コイツもそんな感じだった。
「こんばんは。ウォールナット」
「お前本当に二重人格か?ただ眼が悪いだけに見えるぞ」
「信じるも信じないもあなたの自由。そんなことより依頼したい事がある」
そう言うと胸元からネックレスを取り出す。
これは・・・
「アラン機関のフクロウか?」
「そう」
「で・・・?これがなんだと?」
このタイミングでそれを見せられるのは不愉快だ。
ボクの気持ちを知ってか知らずか、コイツは淡々と話しを進めていく。
「これの持主を探してほしい」
「お前のじゃないのか?」
「違う。これはおかあさんの物」
母親?リコリスっていうのは身寄りのない孤児で構成されているんじゃあないのか・・・?
「お前ら身寄りがないんだろ?じゃあ母親も死んでいるんじゃないのか?」
「違う!」
急に声を荒げる。
なんだよ、ビックリするな・・・!
「急に声を荒げてごめん。でもおかあさんは生きてる」
「そうそう死ぬ人じゃない。わたしなら分かる」
そんな事だけで?
「まぁいい・・・で?どうしたい?」
「会いたい。なんでわたしを此処に預けたのか・・・理由が知りたい」
なかなか面倒そうな話しだ。まぁ金次第だな。
「まぁ・・・引受けてやってもいいが。お前金持っているのか?ボクは高いぞ」
「そうだね。お金はそんなに出せない。でも他に変わりの物がある」
変わりの物・・・?なんだ?
どうやらボクは無意識に首を傾げていたらしい。
コイツはニヤッと笑う。
「わたし」
「はぁ?何を言っているんだ?」
「あなた。アラン機関に興味があるんでしょ?」
「わたしの依頼を引受けてくれれば、手となり足となり働くし」
「それに秘密も教えてあげる。どう?悪くないんじゃない?」
ボク・・アラン機関に関してなにか喋ったっけ?
「なんで分かったのか?って顔しているね。簡単だよ」
「まずこのネックレスを出した時、不機嫌な顔になった。なにか因縁があるんでしょ?」
「あと一つ。あなたは緊急でリコリコに国外逃亡を手助けする様依頼してきた」
「あなた程のハッカーが場所を知られるなんてただ事じゃない」
「余程の大きい組織があなたを消したがっているんじゃない?」
「で。その二つの答えを足せば簡単」
「あなたは直近でアラン機関に追われるような何かをした」
「でも今は逃げることができている」
「そんな状況であなた程の人物が、「やり返したい」って頭になるのは普通じゃない?」
コイツは目の前で首を傾げながらボクに聞いて来る。
まったく・・・頭の中を覗かれているみたいで不愉快だ。
「・・・で?秘密っていうのは?」
「あれ?引受けてくれる気になった?」
「秘密次第だ!まだ決めたわけじゃない」
「そう。じゃあ秘密っていうのはこのネックレスの事。よく見てみて?」
「なにか違くない?」
よく観察してみる。・・・・うん?
「分かった?そう目が赤いじゃん?普段ネットとかで見るのは同色でしょ?」
「なんで違うか分かる?」
「これは・・・もしかして才能によって違うのか?」
「正確には才能を表に出せるか出せないかで決めてるんだと思う」
「知っている赤目フクロウを持っている奴は、到底世間で見せられない人物だった」
「となると。お前の母親も世間に見せられない人物ということになるが?」
「そうかも。「アキは私と同じ才能を持っている」なんて言ってたし」
「お前も何か才能があるのか。じゃあ何故お前はコレを持っていない?」
「さぁ?まぁあなたが持っていない時点でたかが知れてるんじゃない?」
まぁそれもそうだな。
ボクが持っていない時点で何の価値が無い。
「で?どうかな?」
「まぁいいだろう。ムカつくが奴らの手がかりになりそうだからな」
「ありがとう。じゃあまたよろしくね」
コイツは話を用事が済むと早々に話しを終わらせた。
そして直に眼鏡をかけ始める。
「よし!じゃあなんて呼び合う?」
「えっ?」
「名前だよ!ウォールナットは死んだでしょ?どう呼べばいいのか分からないよぉ」
なんだよいきなり、調子狂うな・・・。
それにしても名前か・・・。他に呼ばれたことないから、何にするべきか?
「ナっちゃんは?」
「えっ?」
「ウォールナットでしょ?訳してナッちゃん」
「・・・そうだなクルミにするか」
「え~。そのまんまじゃん!ナッちゃんにしようよ~。私はアッちゃんでいいからさぁ~」
「お前の菜月なんだろ。なんでアッちゃんなんだよ!?」
「菜月だとなっちゃんで、被っちゃうでしょ?」
「“アキ”のアッちゃんだったら丁度いいじゃん!」
こんなに性格が変わると二重人格っていうのも本当かもな。
「よろしくね!ナッちゃん!」
「よろしく菜月」