夏やアキでも雪は降る   作:tokoya

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千束は良い人

DA本部。富士山の麓にある此処に来たのは1年ぶりくらいかな?

あたしは此処が好きと言われれば好きかもしれない。

でもやっぱりリコリコの方がいいかな。此処は堅苦しいし、なにより付近に何もない。

そんな印象の本部に、今回はたきな・菜月と共にやってまいりました。

 

あたし達は堅苦しい入口検査を抜けると受付に行く。

直接医療棟に行ければ簡単なんだけどね。

此処ではそういうことはNGだし、なにより今回はたきなが居る。

楠木さんの予定を聞かないとね。

 

たきなはやっぱり此処が好きなのか足取りが軽い。

一方菜月は足取りが重い。よほど此処が嫌いなのかな?

 

そんな事を考えているとたきなは受付でお姉さんと話し初めていた。

あたしと菜月が合流する。

 

「お姉さんこんにちは」「こんちは~。お久で~す」

「こんにちは錦木さん。吉岡さん」

「医療棟に行ったらいいですか?」

「はいお願いします。井ノ上さん、申し訳ございません。」

「司令は現在会議中です。お戻りになるのは2時間後ですが?」

 

あっちゃ~タイミング悪い。まぁたきななら1日でも1週間でも待ちそうだけど。

 

「あれ?ほら味方殺しの2人」

「DAから追いだされたんでしょ?」

 

うん?後ろの奴が不穏な事を言っているなぁ・・・。

あたしは怒る思いを抑えつつ後ろに振り向く。

しかしすでに言い合いが始まっていた。

始めたのは菜月。どうやら3人とは知り合いみたいだ。

 

「お久しぶりです!春風つくしさんとお供のみなさん!相変わらずみたいですね」

「あら?お久しぶりですね吉岡さん。気づかなかったですよ!戻っていらしたんですね?」

「はい楠木さんに呼ばれまして。あれ?つくしさん、セカンドに昇格したのですね?」

「おめでとうございます」

「これはご丁寧にありがとうございます。すいませんね?あなたより先にセカンドなんて」

「いいえ?まったく問題ありませんよ?私にはそんな事どうでもいい事です」

「あら?これは失礼しました。まぁ追い出されたあなたには関係ない事ですねものね」

「はいその通りです。つくしさんもファーストになれる様精々頑張ってください」

「どうも!指令無視のあなたに言われなくても頑張りますので。ではこれで、さようなら」

 

あれ?結構穏便に終わっている。菜月の事だからもっと事を荒立てると思ったのに。

菜月がすっきりした顔で戻ってくる。

 

「お疲れ菜月。菜月って結構大人だねぇ」

「へへ・・・そうかな?あれたきなは?」

 

あれ?いない・・・。

おねえさんに聞くとどうやら訓練所に行ったらしい。

今の聞いちゃったかな? あとでフォローしとかないと。

 

「あれ?エリカ先・・・いなくなっちゃった・・・」

 

菜月が急に大声をあげた。どうやらまた知り合いがいたらしい。

 

「菜月?先輩がいたの?」

「うん・・・仲良くしてたんだけど・・・嫌われちゃったかな・・・」

 

「ハハハ」なんて笑っているけど、表情が暗い。

そんな顔始めてみた・・・ちょっと意外。

 

「じゃあ千束?いこっか?」

 

そんな事を思っていたけど、菜月の表情はいつも通り。

何だろう?この胸が苦しい感じは。

 

「うん・・・じゃあ行こう」

 

 

 

 

「ねぇ菜月。そういえば再検査って何するの?」

 

しばらく歩いていると千束が質問してくる。

答えるのやだなぁ。まぁ・・・適当に誤魔化すか。

 

「私が聞きたいよぉ~」

「へ?なんか知ってそうだったじゃん。昨日露骨にテンション下がってたし~」

 

ヤバイ・・・表情に出てた?

最近ダメだなぁ・・・。

 

「まぁ私。此処に来たくなかったからなぁ~。それが表情に出ちゃったかも」

「そぉ?なんかそんな感じじゃなかったなかったけど?」

「多分楠木さんの名前が出たからだよ」

 

まだ知り合ったばかりだし、流石にこんな事喋れないよなぁ。

いかんいかん・・・そんな事考えているとまた顔に出ちゃう。

 

「じゃあ千束私こっちだから」

「うん?あぁ場所も違うんだ。じゃあ終わったら訓練場ね」

 

2人とはもっともっと、仲良くなりたいなぁ。

唯一の相棒だしね。

 

「了解!また後でねぇ~」

 

急いで千束から離れる。

しばらく走ると私お馴染みの場所に到着。

此処は他と違ってなぜか暗証番号が必要だ。私はいつも通り扉を開ける。

中を確認する。だがそこに居たのは・・・

 

「菜月。来たか」

 

扉が「バタン」と大きな音を立てて閉まる。

 

「あれ~?場所間違えたかな?」

 

今度はゆっくりと暗証番号を入力して、少しだけ扉を開け中を確認する。

 

「何をやっている。早く中に入れ」

「楠木さん・・・。こんな所でなにしているんですか?」

「休憩だ」

「はいはい。そうですか・・・で何の用です?」

 

私は中に入り長細いベットに腰掛ける。

楠木さんは椅子を回転させて、顔をこっちに向ける。

 

「どうだ?向こうの生活は?」

「なんです?まさか雑談したい為に呼んだんですか?」

「違う。お前は向こうで活動的すぎるみたいだからな。忠告のためだ」

「それはどうも。まぁあっちは基本自由ですからねぇ。がみがみ言う人も居ませんし」

「あまり無茶をしないでもらいたい。今後に関わるぞ?」

「今後ねぇ・・・じゃあなんで転属なんかさせたんです?此処捕らえておけばいいのに」

「人聞きの悪い事を言わないでもらいたい。お前は命令違犯を犯した、当然の処置だ」

「じゃあたきなは戻してあげてくださいよぉ。最初に言い始めたのは私なんですから」

「それはダメだ。お前1人では弱い」

「サード1人じゃ物足りないと・・・はいはい」

「物分かりが早くて助かるな」

 

また嘘ばっかり。

楠木さんは嘘を吐くとき人の目を見ない。

きっと何か意図がある。じゃなきゃ楠木さんが私を異動させるはずがない。

一体何の意味があるのか?検討もつかないなぁ・・・。

 

「では私離れる。いいか?先生に迷惑かけるなよ」

「へいへい。分かりましたよ」

 

楠木さんはこっちを見ず立ち上がり、出口に向かう。

扉が開く。「早く出てけ」なんて思っていた。

だけど楠木さんは扉を抑えて止まっていた。

 

「なんです楠木さん。なにかまだ様でも?」

「そういえば一つ聞き忘れていたことがある。どうだ千束は?」

「千束?まぁ元気ですよね。面倒見もいいし。まぁあまり一緒の仕事をしてないけど」

「好きですよ千束」

 

「そうか」と呟き、出ていく楠木さん。

その後ろ姿はなぜか寂しそうだった。

 

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