射撃音が止まらない。
10分?20分?1時間?いやもう2時間が経過しているのでないか?
時間の感覚が無くなるくらい集中して銃を撃ち続けていた。
だが本当の意味で集中できていなかったかもしれない。
撃つ銃弾は時間が立つと共に的の中心とは違うところを正確に射貫くようになっていった。
たきなはリロードをしようと目線を下げる。
だが目の前に有るのは空箱だけ。
たきなは「ハァ」とため息を吐くと、銃を置き耳当てを外した。
外の音が聞こえるようになったお陰か自分を観察している人物の存在に、たきなは気が付く。
耳当てを外したからなのか、その人物はたきなに声を掛けた。
「頭ですか。へえ~ヤバいっすね」
たきなは声を掛けてきた人物を観察する。
“セカンドリコリスそれだけ”。
やはりたきなの記憶の仲ではその人物を見たことがなかった。
するとその人物が手を差し出し、自己紹介を始めた。
「ど~も~っす。乙女サクラっす」
たきなは疑いの眼を向けながらも一様、手を差し出す。
しかし“痛い”という感覚が来る。
たきなは自分を疑い自分の手をよく見る。
しかしたきなは間違ってなどいなかった。
たきなは目線を上げサクラを睨む。
サクラもたきなに怯まずにふざけた質問を始める。
「命令無視した挙句。仲間にぶっ放したって本当ですか?」
たきなは自分の手を取り戻すように手を離す。
サクラは答えが分かったかの様に笑い始める。
「HAHAHA!マジなんすね~」
「違う。わたしは・・・」
たきなも言い返そうとする。
しかしサクラはたきなの話を聞かず、勝手に話を続ける。
「やっぱ“敵より味方を撃つほうが燃える~”みたいな?」
「やめてください」
「おっと~おっかない撃たないでくださいよ?」
「あっ・・・殺しの時しか笑わないんだって?」
確かにたきなはあまり笑わない。しかしそんな事実は無かった。
「誰がそんなウソを・・・」
たきなは思わず心の呟きが漏れる。
しかしサクラはたきなを見ようとせずに独り言を続ける。
「いやあ~しは好きっすよ。映画の殺人鬼みたいでかっこいいっす」
「まぁ安心してくださいよ、先輩が抜けた穴は後任の私がしっかり埋めますから」
「後任・・・?」
たきなには意味がわからなかった。
それが分かったからなのか、サクラは聞いてもいないのに補足しだした。
「あれ?聞いてんなかったんすか?」
「自分がこれからフキさんのパートナーを務めるっす」
「あんたの席はもうないっすよ」
「おいクソガキ。たきなから離れろ!」
突如ベージュの服を着た手がサクラの手を強く掴む。
サクラは驚き、
思わず後ずさむ。
「あんた・・・誰っすか?突然失礼っすね」
「わたしが誰だかなんてどうでもいい。とにかくたきなから離れろって言ってんの!」
「なんすかあんた。こっちが先輩と楽しく話してたっつーのに」
「お前が楽しくても、たきなは楽しくねぇんだよ。分かったらとっとと消えろ」
「なんなんすかサードの分際で。お前に指図させられる筋合いはねぇんだよ!」
2人が初めた言い合いは次第に喧嘩へとなり始める。
たきなは2人を止めることができなかった。
困っていると、突如後ろから仲裁者が現れる。
「やめな菜月!喧嘩はだめだよ!」「サクラお前・・・何をやってるんだ!」
千束とフキが2人の間に入りそれぞれを止める。
「だって千束!コイツがたきなの事・・・」「先輩!コイツが・・・」
2人は言い訳を言い始める。
しかし千束とフキは2人の言い訳に耳を傾けない。
「静かにしなさい」「静かにしろ」
「「はい・・・」」
怒られて2人は声のトーンを下げる。
フキとサクラはたきなから離れて行く。
すると落ち着いたサクラがフキに質問を始める。
「でもフキ先輩、誰なんすか?あのファーストとふざけたサードは?」
「ファーストが千束、サードが菜月だよ。千束は知ってるよな?電波塔のアホだよ」
「菜月は・・・」
サクラは“菜月”と言うワードを聞いた瞬間声のトーンを上げる。
「菜月って吉岡菜月っすか!?」
「そ・・・そうだよ。なんだよ・・・突然」
「だってアイツ只のサードですよね!?吉岡菜月なら・・・」
しかしサクラは質問を続けることができなかった。
2人が会話できない程の大声で話す人が居たからである。
たきなは自分達の成果を楠木に報告し始める。
「司令!私達は銃取引の新情報となる獲得し提出しました!」
「この成果ではDAに復帰できませんか?」
たきなは返答を待つ。しかし楠木の返答は遅い。
ようやく口を開けたとたきなは思った。
しかしその返答はたきなには想像できないものであった。
「復帰?」
「成果を上げれば私達はDAに・・・」
「そんなことを言った覚えはない」
「おい!ババア!」「楠木さん!」
菜月と千束は楠木を非難する。特に菜月は楠木を睨み続けている。
楠木は菜月の目線に臆せずたきなを見続ける。
たきなは弱音を呟く事しか出来なかった。
「諦めろって言われてるのがまだ分かんないすか?」
サクラは再び嫌味のような独り言を始める。
しかし菜月は楠木を睨むのみ。
今度は千束がサクラと言い合いを始める。
「おい!」
「お~怖っ。さすが電波塔のヒーロー様。ウワサ通り迫力がありますねぇ」
「サクラ訓練の時間だ。行くぞ」
キリがないと思ったのか、フキがサクラに声を掛け訓練場を出て行こうとする。
フキがたきなの横を通る。その瞬間たきなは思わずフキの腕を強く掴んだ。
「・・・・なんだよ!」
止まるフキ。一瞬考えこむような動作をする。だがすぐにたきなの腕を突き放す。
たきなも自分がしたことに気いて、フキに謝罪する。
「すいません・・・」
フキはたきなを睨む。そして心に決めた。
たきなの足掻きにとどめを刺す。
「あの時ぶん殴られたので理解してなかったのか?だったら言葉にしてやる」
「お前はもうDAには必要ねぇんだよ」
たきなの中で何かが弾けた。
「やめろフキ!」
千束はフキを止めようとした。しかし動き出したフキを止めることなど出来ない。
「ハッ。まだ理解できないか?なら今から模擬戦でブチのめして分からせてやるよ」
「お~お~お~いいじゃん。たきな一緒にやろう!」
どうにかフキを止めようと、千束は無理やり話しを合わす。
同時にたきなを元気づけようとした。
しかし千束の想いはたきなに伝わることは無かった。
「たきな?」
たきなは自分を捨て、その場から走りだした。
「HAHAHA!逃げやがったよ」
後ろでサクラが何か言っている。
たきなはその意味が理解出来なかった。
千束は眼を閉じ大きく息を吐く。
心臓が落ちつく。その瞬間眼を大きく開き千束走りだした。
「お前も逃げんのか~?」
後ろでサクラが何かを言っている。
千束は意味が理解できる。しかし何も気にしない。
それはなぜか?
まだ”相棒”が残っているからだ。