「あちゃ~・・・・何処だっけな~?」
あたしはたきなと別れてからキルハウスに向かっていたはずであった。
だけどキルハウスへの道を覚えていなかった。
まぁキルハウスなんて何年も行ってないしなぁ・・・しかたない。
一瞬戻ろうか考えた。だけどやめた。
あたしは必至に道を思いだそうと周囲を見渡す。
そんな時だった。横の道から走ってくる子を見つけた。
赤みがかったピンク髪の子、なんとなく見たことがある気がした。
急いでいる様子だったので声を掛けるのを躊躇していた所、
その子はあたしに声を掛けてきた。すごい勢いでね。
「千束さん!フキと模擬戦をするんですね!」
「千束さんとたきなと菜月がいれば絶対勝てます!私・・・応援してますから!」
「あ・・・ありがと・・・う」
「じゃあ失礼します!上で見てますから!」
その子は再び走りだした。
あまりの勢いにあたしは質問する事を忘れた。
しかし良い。思わぬ収穫を得たからだ。
思わず笑みが出る。
「菜月・・・別に嫌われてないじゃん」
しかしキルハウスへ行く手段は今だ分かっていなかった。
あたしは道を思いだそうと必死に考える。
そういえば・・・・さっきの子!
「上で見るっていったよね!付いて行けばいいじゃん!」
再び周囲を見渡す。
菜月の先輩は、もうあたしの視界の中に居なかった。
▽
「はぁ・・・やっと着いた・・・。あの子足早いよ~」
菜月の先輩には撒かれたけれど、自分で頑張ってようやくキルハウスに
たどり着くことができた。
あたしフィールドを見渡す。フキと相棒の子が居た。
「じゃあどうしたらいいんすか!」
なんか喧嘩しているみたい。
あたしは仲介に入る。
「フ~キ~?」
フキは喧嘩を辞め、あたしの方に振り向く。
「やっと来やがったか。サクラ、話はまた後だ」
「・・・はい」
「何やっているの?相棒と喧嘩なんて」
「喧嘩なんてしてねぇよ!ただ・・・コイツの話しを聞いてただけだ」
「また~、言い訳なんかしちゃって。ホント負けず嫌いだな~」
「違うっていってるだろ!それよりお前の相棒共はまだこねぇのか?」
「菜月はいないの?」
フキは菜月の名前を聞くと、拳を強く握る。
「いねぇよ!アイツ・・・!喧嘩を売っておきながら逃げたんじゃねか!?」
菜月が?逃げる?その姿が想像できなくて思わず笑みが零れる。
「なに笑ってんだよ」
「なにって・・・菜月が逃げる訳ないじゃん。嘘が1番嫌いなんだから」
「じゃあ嘘を吐くことになるかもな」
フキはニヤッと笑う。
もしかしてさぁ・・・
「たきなの事?あれれ~?もしかしてさぁ3対2で模擬戦やるの?なんで?」
フキは顔を背け。そのクールな顔を赤くしながらね。
その姿がおかしくて、あたしは思わず爆笑した。
「菜月に煽られたんだ!ホント負けず嫌いだなぁ~」
「うるせぇな!結局たきなも来てねぇじゃねぇか!」
「たきなはエースだからねぇ~。体力を温存してんの!」
「落ち着いてください2人共」
突如聞いたことがあるような?ないような?そんな声の持主があたし達を止める。
フキとあたしは声の主に振り向く。
驚いたことにそこに居たのは、眼鏡を外した菜月だった。
「うん・・・菜月!?なんで眼鏡付けてないの?」
「何を言ってるんですか千束。眼鏡を付けたらゴーグルを付けられないじゃないですか」
菜月はいつもと違う口調だった。
だから誰だか分からなかったんだな。
「なにどうしたのぉその口調。なんか変な物でも食べた?」
「ちょっと緊張してまして・・・」
緊張して口調が変わるなんて・・・変わってるな~。
まぁ菜月だから気にしなくていいや。
「そうなんだ・・・。そういえば!ゴーグルが必要だね。取ってこないと」
「菜月は付けてないけどどうしたの?」
「壊しました」
「えっ・・・なんて?」
「壊しました。だから無いです」
「何やってんのぉ・・・仕方ないなぁ~。おねぇさんが新しいのを取ってきてあげるよ」
「別に良いです・・・」
「何言ってんの~!眼に当たったら危ないでしょ!」
「だから良いですって!早く自分の分だけ取ってきてください!」
菜月は珍しく私に反発してきた。
なに~・・・そんなにゴーグルを付けるのは嫌かい。
「もぉ当たっても知らないんだから!」
「当たらなければいいんですよ!」
「まったく・・・」
何を言っているのだか。当たらない私が付けるって言っているのに。
あたしは強情な菜月を置いて、ゴーグルを取りに倉庫へ行く。
倉庫は近くに合ったので比較的簡単に思いだすことができた。
入口の扉を開ける。
すると倉庫に居なさそうな人が居た。
「楠木さん・・・こんな所で何をやってるんですか?」
楠木さんは倉庫壁に寄りかかりあたしを見ていた。
「千束か・・・。見て分かるだろタバコだ。お前ら来るのが遅いからな」
楠木さんの手をよく見ると煙がもくもくと湧いていた。
あれ?楠木さん喫煙者だっけ?
「どうした固まって?目的の物はあそこだぞ」
楠木さんが指をさした所を見る。
そこにはゴーグルが綺麗に並べてあった。
「どうしてわかったんですか?」
「なんとなく・・・だ」
楠木さんは珍しく歯切れが悪そうであった。
あたしは楠木さんの行動に違和感を覚えながらゴーグルを一つ掴む。
するとまたしても楠木さんはエスパーの如き言動をした。
「まて、菜月は持っていないだろ。もうひとつ持っていけ」
「なんで分かったんですか?もしかして菜月のゴーグル壊しました?」
楠木さんはタバコを1回吸う、その顔に笑みを浮かべながら。
「そうきたか。考えた物だな」
「えっ?なんですか?」
「私は行く。お前も早く準備しろ」
楠木さんはあたしの質問を無視して倉庫を出て行こうとする。
あたしは菜月にゴーグルを渡す事が難しいと説明する。
「でも・・・菜月ゴーグル付けたがらないですよ」
楠木さんは足を止めるとあたしの方へ振り向く。
まだ顔は笑ったままだった。
「お前も知っているだろ?模擬戦をする際ゴーグルを付けることが“ルール”とされている」
「守らないようであれば模擬戦をしない。分かったな?」
そういえば、そんなルール有ったな・・・。
まぁゴーグルを付けない奴なんていないから、無いような物だけど。
「はぁい。菜月にはそう伝えま~す」
「よろしい。お前は菜月の事をよく見ておくように」
楠木さんは倉庫を出て行った。
あたしは楠木さんが最後に言った言葉の意味が分からず固まっていた。
「なに言ってるんだろ?あたし程菜月の世話をしている人はいないのに」
あたしが呟き終わると倉庫の中が静かになる。
あたしはゆっくりと廊下に出る。
廊下は誰かがしている大きな咳で、とっても騒がしかった。