暁のスイーパー 〜ガンスミスに花束を〜   作:さんめん軍曹

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こんばんは、さんめん軍曹です。
前回では獠とラリーの邂逅を書きましたが、今回はどうやって島から脱出するのか。
書いてて非常に楽しかったです。

それでは本編どうぞ!


Checkout 〜獠とラリーの危険な脱出劇〜【後編】

 

「ここか」

「ええ」

 

獠たちは先程船が係留されていた場所と反対側の岬へ来ていた。

 

「時間がない。早くこれを着るんだ」

「なにこれ?」

「脱出に必要な道具さ。もうすぐ迎えがくる」

 

そう言いながら普段着の上から素早くオーバーオールを着た獠は、布切れにヘリウムガスを注入していった。

ぷくぷくと膨れていった布切れの正体は、丸い形をした小さな気球だ。

 

「ちょっと待って。こんなの上げてたら敵に私達はここにいますよって言ってるようなものじゃない!」

「だから言ったろ?一か八かって」

「本当に無茶するわね…」

 

獠はしばらくガスを入れていたが、ある程度のところで見切りをつけてタンクと気球を切り離す。

そのまま空へ浮かび上がる気球を眺めていたラリーは、先程から抱いていた疑問を投げかけた。

 

「ねえミスター冴羽」

「獠でいいよ」

「なら獠。どうしてあなたはあたしを知ってるの?」

「会う前に君のことを少し調べさせてもらったんだ。本名はアイリーン。獲物はCZ75の1stモデルで、相棒のミニー・メイと銃工店を営んでいおり、愛車はフォード・マスタングのキングコブラ。もっとも、これは2台目で最初はシェルビーGT500に乗っていた」

「よくご存知で」

「歳は23歳。彼氏なし。普段はタイトスカートに黒のパンストを履いていて、愛用の下着はレース付きの…」

 

ラリーは無言でホルスターから銃を抜く。

 

「そしてバスト・ウエスト・ヒップはそれぞれ…」

「それ以上喋ると脳天に鉛玉ブチ込むわよ」

 

額に青筋を立てながら撃鉄を起こすラリー。

 

「じょ、冗談だってば」

「まったく」

「あ、武器はしまっておいた方がいいよ」

「どうしてよ」

「スカイフックって知ってる?」

「へ…?」

 

彼女はきょとんとする。

獠に詳しいことを聞こうとしたが、森の中からいくつかの気配と足音が聞こえてきたのでそれ以上の質問ができなかった。

 

「どうやらすぐそこまで来ているらしい」

「隠れた方が良さそうね」

 

どうにか隠れられそうな場所を探すが、周りにはほとんど影になりそうなものはない。

 

「これってもしかして」

「ん?」

「とんでもなくまずい状況じゃ…」

「まあね」

 

どんどん近づく足音。

 

「どっ、どうすりゃいいのォ…!」

「どうにもならなそう」

 

そして森から多数の深海棲艦が姿を現した。

 

「カンネンシタヨウダナ。ニンゲン」

 

多数の深海棲艦から砲を向けられる2人。

 

「さあてどうだかね。それより、ちょっと聞きたいことがあるんだが」

「シヌマエニキイテヤロウ」

「お宅らの中に空母はいる?」

「こんな時に何聞いてるのよ!」

 

彼女は獠に抗議をするが、彼は気にするそぶりを見せずに囁いた。

 

「喋るな。舌噛むぞ」

「え?」

「で、どうなんだ?いるのかいないのか?」

 

彼は深海棲艦に向き直ると、もう一度質問をする。

 

「メイドノミヤゲニオシエテヤロウ。オマエラノカンムストタタカッテイルノデ、コノナカニクウボハイナイ」

「それを聞いて安心したよ」

 

暗闇の中から微かにプロペラの音が聞こえてくる。それは明らかにこちらへ近づいてきていた。

 

「ナ、ナンダ!?」

「時間切れだ。迎えが来た」

「迎えって…まさか!」

 

ラリーは、この時になってようやくスカイフックの意味を察した。

 

「やっと気づいたかラリー」

「待って…冗談でしょ?!」

 

次第に青ざめていく彼女だがもう遅い。

 

「クッ、ナニヲシテイル!ウテ!!」

 

深海棲艦たちは砲を向けようとするが、目の前にいる人間に撃つか空に撃つかで迷っていた。

そうこうしているうちに、暗闇から颯爽とMC-130が姿を現す。

 

「ま、待って。あたし、心の準備が」

「喋るなラリー!行くぞ!!」

 

上空の輸送機が通過すると同時に彼女に抱きつく獠。

 

「やっ、」

 

その直後、ハーネスがぴんと張ると共に衝撃を感じて2人の足は地面から離れていった。

 

「いやあああああああああ!!!!!!!」

 

ぐんぐんと空高く持ち上げられる2人。

 

「ニガスナ!ウテ!ウテェ!!」

 

地上の化け物たちは次々と発砲するが、ひと足遅かった。

砲弾は彼らにかすりもしない。

 

「ひいいいいいいいいい!!!」

「どうだい!空の旅は!!」

「いいわけないでしょ!!」

「俺は幸せだけどなあ!こうしてもっこり美女ちゃんと密着できるんだもの!」

「空は得意じゃなかったんじゃないのーーーーっ?!!」

「そこに美女がいれば空だって飛べるさ!!」

 

時間にしておよそ6分。しばらくの間2人は空中を漂っていたが、ウインチによって巻き上げられ、輸送機に収容された。

 

「ご苦労だったな冴羽殿」

「武蔵ちゃんでないの」

 

武蔵によって引き上げられた2人。獠はすぐにオーバーオールを脱ぐが、ラリーはぺたんと座り込んで放心状態のままだ。

 

「彼女、ずっとああだが大丈夫か?」

「すぐに気を取りなおすさ」

「ははは…はは…」

 

 

ラリーを武蔵たちに任せて獠はそのままコックピットへ行くと、操縦席には海坊主がいた。副操縦士は夕張が務めている。

 

「さんきゅー海ちゃん」

「フン。なにがプランBだ。もう少しマシな作戦を考えろ」

「まあそう言うなって」

『海ちゃん聞こえる!?』

「ああ。どうした」

 

撤退中の鈴谷から通信が入った。

どうやら追手がいるらしい。

 

『こっそり帰ろうとしたら見つかっちゃった!』

「大丈夫か」

『うちらは今んとこ平気だけど、さっきからこいつらしつこいんだよねえ!ちょっちヘルプお願いできない!?』

「燃料があまり無い。一回だけだぞ」

『さんきゅー!獠ちんたちは無事に拾えた?』

「ああ。このもっこり男が死ぬわけないだろう」

「ぬぁんだと?!」

『あっはっは!んじゃよろしくぅ!』

 

通信が切れると、海坊主は機体を左へ旋回させた。

 

「獠。お前は銃座に回れ。艦娘たちのサポートをしろ」

「はいはいっと」

 

実はこのMC-130はただのフルトン回収用輸送機ではない。

機体こそMC-130ではあるが、攻撃型のAC-130Hをベースに対深海棲艦向けに艦娘用の艤装を搭載している。名付けてAC-130Mだ。

本来GAU-12ガトリング砲のある場所には25mm3連装機銃を、ボフォース40mm機関砲は65mm/64単装速射砲を、そしてM102・105mm榴弾砲のある場所へは試製51cm砲をそれぞれ装備。

これは明石と夕張が共同でかつ2人の趣味としてやりたい放題に開発したものであり、今回が試験を兼ねた初の実戦投入である。

もはや艦娘たちの戦い方そのものを覆してしまうようなシロモノであるが、そこは気にしてはいけない。

 

獠がコックピットから戻ると、それぞれの銃座に不知火、摩耶、武蔵が座っていた。

 

「さて、君たちの出番だ。海上にいる鈴谷から航空支援の要請があった」

「うっしゃ!待ってたぜ!」

 

思わずガッツポーズをする摩耶。

 

「不知火はいつでも用意できています」

「空から奴らを攻撃するなんて初めてだ。本当にうまく行くのだろうか」

「なあに心配はいらないって。そろそろ見えてきたぞ」

 

 

「ぬわあああああ!!!」

 

同じ頃、付近の海上では鈴谷達が弾幕の張られた間を掻い潜って敵から逃げていた。

 

「もーほんっとにしつっこい!!」

「鈴谷さん!航空支援は要請したんですか?!」

「あったりまえ!そろそろ来るはずだからみんな頑張って!」

「ひ〜、避けるので手一杯だわ」

 

飛んでくる砲弾をするりと躱す北上。弾道を見切ってギリギリで避ける様子はまさに彼女の戦闘力の高さを表していた。

 

「よく避けられるわね…」

「これでも頑張ってる方だけどね〜」

「す、凄いのね…あら?」

 

陸奥が空を見ると、幾つもの光の筋が落ちてきているのが見えた。

 

「…流星群?」

 

のように見えたが、そうではない。

光の雨は瞬く間に敵の上へ降り注いだ。

次々と爆発炎上する深海棲艦たち。

空からの攻撃だとようやく察知したヲ級から艦載機が放たれるが、機銃と速射砲によってあっという間に撃墜されていく。

そして、敵の中心部には一定の間隔で51cm砲が炸裂し大打撃を与え、彼らの部隊はAC-130Mから放たれた砲弾によって速やかに壊滅。気がつくと鈴谷達の目の前には死屍累々の光景が広がっていた。

 

「凄い…あっという間…」

「なんていうか、気合入ってるねー」

「気合いというか、チートすぎるっしょ」

「か、帰りましょっか…」

 

圧倒的な大火力で敵を制圧し窮地の鈴谷達を救ったAC-130M。しかし、作戦後アーマーピアシング弾と共に消費した資源の総内訳を見た提督は静かに泣いていたという。

 

 

「へへっ!やったぜ大成功だ!!」

 

満面の笑みを浮かべる摩耶。武蔵や不知火も満足げな様子だ。しかしラリーだけは若干引き気味である。

 

「えげつない火力ね…」

「まあね。しばらくは奴らも大人しくしてるだろう。さて…」

「ん?」

 

獠はラリーの手を取り引き寄せる。

 

「うぇ?!」

「邪魔者は片付いた。これでゆっくり君ともっこり出来るな」

「ちょ、やめ」

「大丈夫、怖くないから」

 

彼女にキスをしようとする獠。彼の顔を掴み必死に逃げようとするラリー。だが屈強な男を前に、女性の力では歯が立たない。

 

「ひ、ひぃっ!」

「むーん…ぎょえっ?!」

 

あともう少しの所だったが、彼は摩耶からの踵落としを喰らったのでもっこりを果たせなかった。

 

 

「ありがと海ちゃーん!」

『へっ。気をつけて帰れよ』

「夕張っちもおつかれさーん」

『ありがとう!おかげで今回は貴重なデータが取れそうだわ』

 

ぐるりと旋回して本土へ戻っていく巨大な攻撃機。作戦成功を祝う花火のように大量のフレアが夜空に散りばめられていった。

 

 

 

 

 






いかがでしたか?
ぶっちゃけやりたい放題が過ぎました()
本来ならあり得ない事だらけですが、そこは獠ちゃんのもっこりパワーと妖精さんの努力という事で(((

それでは次回をお楽しみに!(書くのも楽しみですw)
※感想お待ちしておりますm(_ _)m

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