合魂‼   作:阿弥陀乃トンマージ

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第10話(4)目には目を

「おらあ!」

 

「……!」

 

 建物の北側の出入り口で仁が見張りの生徒たちを殴り倒す。

 

「よし……これで大丈夫ですよ、竹村先輩」

 

「なんとまあ……大胆なことをしますね……」

 

 四季が呆れ気味の視線を向ける。仁が後頭部を掻きながら答える。

 

「先輩の魂道具なら、潜入のようなことも出来たかもしれませんが、先輩の魂力をいたずらに消費するべきではないかなと思いまして……」

 

「なるほど……そういう考えをお持ちならば構いません。では、行きましょう」

 

 仁が先に走り出し、四季がそれに続く。

 

「ん! なんだ、お前ら!」

 

「うらあ!」

 

「がはっ!」

 

「そらあ!」

 

「どはっ!」

 

 見張りを次々と倒して、仁たちは上の階に進む。

 

「……ここまではまずまず順調かな?」

 

「~♪」

 

「ぐおっ⁉」

 

「外國君!」

 

 軽快な音楽が流れたかと思うと、小さな爆発が起こり、仁が吹き飛ばされる。

 

「ふん、ここまで来るとはな……」

 

 ポニーテールで額に白いハチマキを巻いた学ラン姿の女性が颯爽と現れる。

 

「合魂団団長、志波田睦子先輩……」

 

「ほう、文化系の生徒にも知られているとは意外だな……」

 

「それはもちろん、貴女は校内でも屈指の有名人ですから」

 

「そうか? ふふっ、悪い気はしないな」

 

 志波田は垂れた前髪をかき上げる。すると、白いサラシを巻いた豊満な胸が揺れる。

 

(部長の悪い予感が的中してしまいましたか……各勢力のトップクラスが待ち構えているとは……どうにか出し抜けないものでしょうか……)

 

「竹村四季……頭の回る貴様なら会長も歓迎するだろう。投降を勧める」

 

「……あの会長がお許し下さるとはとても思えませんが」

 

「なに、すべては交渉次第だ。上手く事が運ぶように応援してやるぞ? なんといっても、私は鬼の応援団長だからな?」

 

 志波田が両手を大きく広げてみせる。

 

「ふむ……」

 

 四季が顎に手をやって考える。志波田が首を傾げる。

 

「悪い話ではないと思うが?」

 

「……」

 

「まあ、もうしばらく考えてみても良いかもな」

 

「……天秤にかけるとしたら」

 

「ん?」

 

「私をここで始末してしまった方が会長の覚えは良いはず」

 

「む……」

 

「油断させておいて後ろからひと突き……その手には乗りません」

 

「ふん、チャンスをやったつもりだったんだが……まあいい」

 

 志波田が右手を掲げ、指を鳴らす。打楽器の音とともに四季の足元が爆発する。

 

「!」

 

「消えてもらおうか」

 

(こ、これが、『魂羽闘行進曲』! 通常なら楽器が必要なはずなのに楽器なしでも用いられるほど、魂力を高めている! 恐るべき練り込み! しかし!)

 

 四季が魂昔物語集を取り出そうとする。

 

「させんぞ! ~~♪」

 

「む⁉」

 

 志波田が両手を指揮者のように振る。管弦楽器の音が流れ、四季の動きがピタッと止まる。

 

「……ふん」

 

(う、動きが止められた……⁉)

 

「私の魂道具ならばこういうことも出来る。貴様に本を読ませるとなにかと厄介だと喜多川から常々聞いていたからな」

 

(くっ……)

 

「勿体ないが、フィニッシュといこうか」

 

 志波田が右手をさっと掲げる。

 

(ぐっ……)

 

「そうはさせるか!」

 

「なっ⁉」

 

(⁉)

 

 仁が魂棒を振るって、志波田の右腕を払う。志波田が顔をしかめる。

 

「ぐっ! まだ動けたか!」

 

「舐めるなよ!」

 

「ならば貴様から先に片付けてやる!」

 

 志波田が距離を取り、両手を掲げる。

 

「!」

 

「終わりだ! ~~♪」

 

 管弦楽器のメロディーが流れる。

 

「! ……」

 

「動きが止まったな! 派手に爆発させてやろう!」

 

「そうはいくか!」

 

 仁がキックを繰り出し、志波田の掲げようとした右腕を蹴る。志波田が驚く。

 

「ば、馬鹿な⁉ 何故動ける⁉ ……はっ⁉」

 

 志波田が目を丸くする。仁が両耳に魂棒を突っ込んでいたからである。

 

「要は音を聞かなきゃ良いんだろう! 魂棒で両耳を塞いだ!」

 

「お、大きさ的に無理をしているだろう! 絶対聞こえているはずだ!」

 

「あ~あ~! 聞こえない!」

 

 仁が両手で魂棒を抑えながら大声で叫ぶ。

 

「嘘をつけ! 嘘を!」

 

「今は昔、近江守……」

 

「ん⁉」

 

 志波田が目をやると、四季が口元をわずかに動かして、自らの傍らに巨大な朱色の化け物を召喚していた。

 

「ちっ! 馬鹿に気を取られて、音の効果が少し切れたか⁉」

 

「……語り伝えたるとや……口さえ動けばこちらのものです!」

 

「……!」

 

化け物が刀かと思われるような鋭い爪を振るうと、志波田の体が切り裂かれる。

 

「があっ⁉」

 

「……‼」

 

 化け物がなおも追撃を加えようとする。志波田が忌々し気に叫ぶ。

 

「調子に乗るなよ!」

 

「⁉」

 

 志波田が右手を思いきり掲げると打楽器の音が流れ、派手な爆発が起こり、化け物は消滅する。周辺には白い煙が立ち込め、その煙が晴れると、そこには志波田の姿はなかった。

 

「ちっ! 逃がしたか!」

 

「撤退してくれたのならそれはそれで結構……私たちが今、優先すべきなのは生徒会の打倒です。先を急ぐとしましょう」

 

 地団駄を踏む仁に対し、四季が上の階を指し示す。仁が頷きながら尋ねる。

 

「わ、分かりました……しかし、先輩、あの化け物は一体……?」

 

「目には目を、鬼には鬼です……」

 

「そんなものまで呼び出せるんですか……末恐ろしい人だ……」

 

 仁は思わず背筋を正す。

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