クソボケ指揮官を逆わからせするだけの話   作:マロニー

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ユニコーンの場合

 

 

 

 

「はっ、はっ…

どう、かな。お兄ちゃん」

 

 

「ああ。悪くない…

いいや、凄く気持ち良いよ」

 

 

「えへへ、そう?

それならユニコーン、もっと頑張るね」

 

 

 

横ばいになった大柄な男性の上で、横に、縦に動く年端も行かない少女。

 

…と、なって。

何かいかがわしい行動であったり、事件性がある訳ではない。そこで行われているのは、ただのマッサージだ。執務室で行われているのはしかし、或いは異常ではあるが。

 

 

連日のデスクワークになまり切った身体。何の気は無しに首を鳴らした指揮官の姿を、ふと部屋に来たユニコーンが心配をし、申し出た。

 

流石に申し訳ないと断ろうとしたが、すると少女は悲しそうに顔を俯かせてしまった。なれば断る理由もないと、

 

経緯としては、そのようなものだった。

 

 

「うむ、そろそろ十分だ。

ありがとうユニコーン。楽になった」

 

 

「あ…も、もう少しだけ…!」

 

 

そっと立ちあがろうとした指揮官の手先を、ユニコーンが咄嗟に抑える。

すると彼女が思っていたよりも呆気なく床に押さえつけられ。そして指揮官は、予想よりよほど強い力にびくりと驚いた。

 

 

 

「…!ごめんなさい、お兄ちゃん!

ユニコーン、こんなことするつもりじゃ」

 

 

「あ、ああ…嫌、解っているとも。ユニコーンはそんな事をするような子では無いからな。

それに驚いただけで痛くはない」

 

 

今度こそ、そっと立ち上がる指揮官。

それに退かされるように、妙に名残惜しげに少女は立ち上がった。

 

 

「……えっと、ごめんね。

迷惑だったかな…」

 

 

「まさか。むしろ、どうしてそう思った。

不思議でならん」

 

 

「急に、言い出したから…

お兄ちゃんの役に立ちたいと思ったんだけど、その、今思うと、ユニコーンのわがままだったんじゃないかって…」

 

 

おずおずと、さっきまでのような嬉しそうな顔を潜めて申し訳なさそうにする少女。

その俯く姿を見て、指揮官はそっと膝を折り、俯いた彼女に視線を合わせるように覗き込んだ。

 

 

「手を拝借」

 

 

「え?…きゃっ!」

 

 

 

ユニコーンは驚き、顔を赤らめる。

それもその筈、指揮官は彼女の手を取ったかと思うと自らの胸にそっと当てさせたのだ。

人肌の温度、弾力のある感触。

 

急なそれに、ユニコーンはあたふたと、しかし振り払おうとはしない。力の差では幾らでも抜け出せる筈だが。

 

 

 

「感じるか、己の鼓動だ。

己の心臓が、脈を打っている音だ」

 

 

「え?あ、あの…うん。

お兄ちゃん、その、この手、えっと」

 

 

「己は、ユニコーンの事を一度も迷惑だと思った事は無い。

…さあ、どうだ?己の鼓動が変わったか。嘘を吐いた時のように、不自然な動きをしたか」

 

 

「え?し、してない、けど」

 

 

「応、それは当然だ。

嘘など、吐いていないのだから」

 

「…だからこれは己の、偽らざる本心だ。

俺は君に、君の存在全てが嬉しい。

君に、心から感謝してるよユニコーン」

 

 

 

そう、しっかりと語りかける。

しかし指揮官は、そうしていてもユニコーンが俯いた顔を戻さない事に気がつく。

言っていることが頓珍漢だったろうか。それとも、何か彼女に失礼な事を言っただろうか。

 

そんな事を不安に思い。

 

 

「…重ねて失礼」

 

 

「ぁっ…」

 

 

そっと、顎を持ち上げるようにユニコーンの顔を見る。そして、指揮官は驚愕の声を挙げた。その顔が、紅潮していたのだ。

それは少し身体が火照ったなどという生やさしいものではなく、赤く。ホノルルの髪の色よりも赤くなっていた。

 

 

 

「大丈夫か、ユニコーン!そうか、どこか様子がおかしいと思っていたら…

 

「…熱が有ったのか!KANSENが病気になる例は今のところ聞かないが、例外が有ったとしてもおかしくはない!待っていろ、今明石に話をし」

 

 

 

がちゃり。

 

部屋の鍵が、かかる音がした。

外から誰かに、というわけではない。

音の原因はすぐ目の前。

ユニコーンが、掛けていた。

 

 

「…?どうした。鍵をかけずとも、ノックをせずに入ってくる者は居ないと思うが」

 

 

 

「………ユニコーンいっぱいガマンしたもん、これはもう仕方ないよね、これについては、もうお兄ちゃんが悪いよね、もうガマンいっぱいしたんだもん…」

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

「えへ、えへへ…お兄ちゃん、力弱いよね。さっき、ユニコーンが乗った時も少し抑えたら動けないみたいだったし…」

 

 

「ごめんね、ごめんねお兄ちゃん…

でも何回も言ったからね、ユニコーン、そんなに良い子じゃないよって…

そんな子に、こんなに優しくしちゃいけないって、何度も言ったのに…」

 

「もし嫌なら言ってねって。あんまり、優しくしすぎないでって。なのに…なのにお兄ちゃんはいっぱいいっぱい、ユニコーンに優しくしてくれるし、いっつも甘やかしてくれるし」

 

 

「さっきみたいな事、身体に急に触らせて来たり、無防備な姿見せたりするんだもん…もっとちゃんと警戒しないといけないのに…ユニコーン、必死にガマンしてたの、頑張ったんだよ」

 

 

 

「…ごめんね」

 

 

「ユニコーン、悪い子になっちゃうね♥︎」

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

「……という事が有ったのだ。

これについて、俺のミスはどこだと思う。

何処からして間違っていたのだろうか?

参考までに聞かせてくれないか」

 

 

「何もかも全てで御座います、ご主人様」

 

 

「何故だッ!?」

 

 

 

 

 

 

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