しかしそれを認めない者達により少女は復活する。
そとて始まるカーニバル、何故か四人のサーヴァントのマスターになっているわ、
死んだ筈の知り合いは生きてるわで、てんやわんや。
これはそんな世界の物語。
この作品はFate/EXTRAとCCCのキャラを使った短編集です。
月にあるセラフ内で起きた聖杯戦争。
その優勝者として聖杯にアクセスし、聖杯がもたらしていた争いなどを解消し、自身は消滅した
少女、名前は岸波白野。
しかしそんな事実は認められないと立ち上がった者達の手により、
こまけー事はどうでも良いんだよ。
と、ご都合展開そのままに白野は助け出された。
その結果、気が付けばムーンセルはサクラーズによって掌握されているわ、白野が契約しているサーヴァントが四体となってるわ、地上には白野の知り合い達が聖杯戦争や一連の騒動の記憶を持ったまま全員生還しておるわ、白野オリジナルも元気に毎日を過ごしているわとやりたい放題の状態となる。
これはそんな世界の話である。
「ええーーっ、ご主人様の頭からウサギの耳飾りが取れなくったんですか!?」
叫ぶキャスターの前には、頭を押さえるザビ子で少女な白野がベットの上にちょこんと
座っていた。
その近くでは、これはどうしたら良いかと、セイバーがおろおろとしている。
今は手で押さえられてヘタっているが、白野の頭にはウサギの耳が生えていた。
白野が手を離せば、ぴょこんと立つであろう。
「う、うむ、そうなのだ、余が奏者の頭にウサギの耳飾りを付けたら、こうなってしまった」
くっと、握り拳を握って顔を逸らすセイバーを余所に、必死に隠そうとする白野の手を掻い潜り、
キャスターがウサギ耳をモフル。
「うわー、これ完全にご主人様の頭にくっついて一体化しちゃってますよ」
やめてやめてと涙ぐむ白野に、キャスターは、フッハーご主人様モフル、マジ堪んねー、
これでタマモはあと10年は萌えられると息巻く。
「どうしてこんな事になったんですか?これ一種の呪いですよ、セイバーさんもしかして
外すな、外すんじゃない、外させはせんぞぉぉぉって、余程の邪念を籠めて付けました?」
キャスターと白野に責める目付きで見られ、セイバーはまたも、くっと顔を逸らす。
「余は、余はそんなつもりではなかったのだ、ただ奏者の、奏者の」
「ご主人様の?」
「バニーガール姿を見たかっただけなのだぁぁぁぁぁぁ」
だぁぁぁ だぁぁぁぁ だぁぁぁぁぁぁ
と、サクラーズがムーンセルを掌握し、四人のサーバントと一人のマスターのテリトリーとなったセラフの一部に建てられた豪邸、スーパーゴージャス・パクスローマナ・二人の愛の巣マイルーム邸内にセイバーの声が木霊した。
滅茶苦茶、邪な念籠ってるよねと、白野はじと目でセイバーを見る。
そんなセイバーに憤りを見せたキャスターが詰め寄った。
「何やらかしてんですか、セイバーさん見損ないましたよ!」
うんうんと頷く白野。
「どうして最後まで突っ走らないんですか、ご主人様の頭からウサ耳が生えたぐらいで、驚いて
止めるなんて、それでも唯我独尊のセイバーさんですか!」
うん?と首を傾げる白野。
「ご主人様のバニーですよ、バニー、そのままパクッと捕食するぐらいの勢いを持たないで、
よくもそれで奏者は余の嫁、異論は認めないってドヤ顔出来ますね」
「うぐぐぐっ」
ちょっとキャスターさん、何て事言いだすのと、白野は暴走し出す雰囲気を止めようとするが、
いきなりキャスターに抱き締められる。
キャスターはそのまま、うにゃっと驚く白野を嘗めんばかりに頬ずりし。
「ああん、もうタマモはタマモは堪りませんっ、うへへへっ観念するんだな、オレをケダモモと知って誘ったお前が悪いんだぜって、言いたく言いたくなっちゃいますっ」
完全に言ってるキャスターに、床を荒々しくひと踏みしたセイバーが憤りを見せる。
「ちょと待て、狡いぞキャスター、奏者にウサ耳を付けたのは余だ、奏者をふにふにする権利は
余にこそある。そこを退け」
ちょっとセイバー、何言ってるの? もう反省タイム終わり?短すぎる。
文句を言おうとする白野をキャスターが、くんかくんかと匂いを嗅ぎ、
「べーです、ああご主人さま、良いに・お・い、まるで媚薬のようですぅ」
ちょーーーとぉ、キャスターどさくさまぎれに変な所触ろうとするのは止めてっ、あと変な事
言うのも止めてっ。
などと言う白野に対してキャスターは狐耳をパタンと降ろし、まさに聞く耳持たない体勢で
対応する。
いよいよ追い詰められた白野。
私、女、女だから、女同士でこんなのフケツッ
どっちもウェルカムオーケーと呪術でなんとかするからオッケーな二人に対し、なんの効果も無い事を言いつつ、もぞもぞ動いて何とかキャスターの魔手から逃れようとするが、
サーヴァントの中では非力とは言え、そこは人を超越した存在の英霊、本気で取り押さえられれば、白野如きでどうこう出来るものでは無い。
「ふへへへ、なあ見ろよ、抵抗してやがるぜ、オレの下であ・が・け」
「むうううううっ、余の下でも足掻くが良いっ」
このままR指定の基準が跳ね上がりそうな展開になるかと思いきや、救いの手が入る。
パコンパコンと良い音がしたかと思うと、叩かれたセイバーとキャスターが頭を押さえた。
「いい加減にしたら、どうかね、マスターが怯えきっているぞ」
あまりの二人のはっちゃけ振りに、流石に拙いと思って助けに入ったアーチャーの後ろに、白野はささっと隠れる。
「ぐぐっ、お玉で頭を叩くなんて、アーチャーさん、それでも料理人ですか」
「ふっ、私は料理人ではなく、マスターを守るサーヴァントなのでね、こうして危機に参上した次第だ」
「相変わらず美味しい所を掻っ攫いやがりますわね、この紅茶」
「まったくだ、これから展開されるめくるめく余と奏者との甘美なるひと時。
それは、千年の後にも称えられる程の蠱惑的で優美な饗宴、芸術家達は揃って至高の美を描き、
作家は物語と為して貴婦人達の心を捉え続ける。
そんな美を、貴様はぶち壊したのだぞ、後世の者に詫びるが良い。」
いや、従者にうさ耳付けられた挙句、襲われたなんて事を千年も語り伝えられたくありません、
それよりセイバー、後世の人間じゃなくて私に謝って。
と、白野は睨むが、ウサ耳をつけたままなので、どうにも迫力が無い。
「むしろ可愛い、むしろ良い」
そんな白野に逆に鼻息を荒くするセイバー。
駄目だこのサーヴァント、もう反省の心なんて欠片も残っちゃいない。
脱力する白野の頭に手を置くアーチャー。
慰めてくれるのと、顔を上げる白野だが。
「君も君だ、こんな耳を付けたら二人が暴走すると分かっていただろうに、どうしてそう自爆する方向へ進むんだ?」
予想外のアーチャーの言葉に、カクンと顎が落ちた。
え?もしかしてこれ自主的に付けたと思われてる?
変態さんいらっしゃーいって誘ったと思われてる?
「うっふっふっ。ご主人様のご意志、このタマモよぉぉぉぉぉく分かりました、その誘い
乗っちゃいます、ええ、もうご主人さまに乗っちゃいますから♪」
全然分かってない、いや分かろうとしていない肉食狐がまた捕食モードに入る。
駄目だこれは、この場にいたら犯られる。
小動物的本能で危機を察知した白野はアーチャーを盾に逃げ出そうとするが
「ふふふふ、奏者よ、余の胸へ飛び込んでくるが良い」
白野はセイバーに回り込まれた。
残念、皇帝様からは逃げられない。
くるりと急回転してアーチャーの方へと戻る白野。
ここは最早アーチャーを頼りに二人のサーヴァントの魔手から逃れるしかない。
「ふふふふっ湯あみは済ませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でぷるぷる震えて誘い乞いする
心の準備はOK?」
ニヤリと笑うセイバーの犬歯が異常に長くなったように見える。
「よっしゃぁぁぁぁ、犯ぇぇぇぇぇぇって犯るぜぇぇぇぇぇぇぇ」
キャスターはキャスターで盛大に気焔を上げる。
二人の迫力にガタガタ震える白野。
「君はよくこんなフリーダムな二人のマスターをやっていられるな、寝首を別の意味でいつ掻かれてもおかしくないだろうに」
そんな白野を見て、アーチャーは呆れるやら、感心するやら。
しかしセイバーとキャスターも大概だが、よく考えると、もっとフリーダムな奴のマスターも白野はしている。
全く君って奴はと、米神を指で押すアーチャー。
しかしここでアーチャーがケアに回らなければ、白野のSAN値は一日で0まで削り取られるだろう。
流石にアーチャーも、マスターである白野にくとぅるふ的発狂をさせる訳にはいかない。
やれやれ面倒な事だと思いつつも、見捨てるという選択肢は頭をよぎりもしない律儀者なアーチャーは、お玉とシャモジを両手にそれぞれ握って構えを取る。
二匹のケダモモと対峙するアーチャーの後ろで、白野はううっと唸る。
確かにセイバーとキャスターは少々問題がある。長い戦いを経て培った信頼感に揺らぎは無いが、
愛が深すぎる故の暴走には白野も身の危険を感じすぎる。
そもそもこの騒動の発端はセイバーの、奏者のバニーガール姿が見たいという頭が痛く成り過ぎる行動から始まった。
この手の迷惑をかけられた数は両手の指の数にまさる。
アーチャーにからかわれる所以である。
けど、
キュッと白野はアーチャーの腰の外套を掴む。
それでも、それでも私の大切な人達なんだもんっ、一緒に居たい
「待て、マスター、今の状況でその答えはまずい」
白野をセイバーとキャスターから守ろうとしていたアーチャーが慌てる。
何故君は敵に塩を送るどころか、燃え盛っている炎目がけて盛大にガソリンぶちまけ発言を
するんだ。
アーチャーはそう叫び出したくなった。
しかも涙目で言ったのである、その頭にあるウサ耳もあって効果倍増である。
(被捕食される側という自覚が全くないっ!?)
アーチャーは頭が痛くなる。
「奏者ぁぁぁぁぁぁっ、余は余はもう色々堪らんっ」
「ご主人さまっ、タマモはもう感極まって、尻尾増えちゃいました♪」
案の定、さらに猛り狂う二人。アーチャーは死闘を覚悟した。
さあはじまるザマスよ
いくでがんす
ふんがー
これから狂宴の始まり、逝くぜ逝くぜと鼻息の荒い二人と、マスターの考えなし発言に頭が痛いアーチャーが激突しようとしたその時。
「うるさぁぁぁぁぁぁぁぁぁい」
BBの叫び声が響いた。
「さっきからなに盛っているんですか、少しは周りの迷惑を考えて下さいっ」
突如空中に現れたBBの映像が持っていた指揮棒を一振りすると、セイバーとキャスターの足元にぽっかりと穴が開き、悲鳴を上げて二人は落ちていく。
「さてと」
邪魔者はいなくなりましたと、BBはちらりとウサ耳つけた白野に見てから盛大に溜息をつく。
「センパイ、貴女は本当に馬鹿ですね」
なっ!?心外だ、私は被害者なのにと白野は抗議するが
「しゃらっぷ、です、センパイ」
ぴしゃりと言われて、口を封じられる。
「あの二人がどんな存在が知らない筈はないのに、ほいほいダイナマイトを業火に投げ込む真似をするなんて、全く、本当に、お馬鹿さんですね、というかそのウサ耳早く取ったらどうです?」
口調はキツイが、白野のうさ耳をチラチラ見るBBの視線は熱い。
頬もほんのり赤くなっている。
それに気が付かない白野は、これ取れないのと言いながら自分の頭のウサ耳を掴んで引っ張る。
しかしどんなに引っ張っても取れないので、やがて諦めた。
「なんか、頭から生えてるんですけど、何時からセンパイはウサギになりました?月のウサギって
ベタすぎません?」
BBは白野の頭にあるウサ耳の付け根を見て、その耳が耳飾りじゃなく、本当に頭から生えているのが分かって、この上愛玩動物っぽさ増やしてどうするんですと呆れた声を出す。
白野はこのウサ耳はセイバーがふざけて付けたものであり、何時の間にか取れなくなって、こんな身の危険を感じる程の騒動を起こしたと説明した。
その説明を聞いて何か考え込んでいたBBだったが。
「こんな話をセンパイは知っていますか?ある時お腹を空かせて行き倒れになった旅人に何も
あげられる物が無いウサギは、焚火の中にその身体を突っ込ませ、自分の身体を差し出して旅人を救った、それを見た帝釈天がウサギを憐み、月へと昇らせた」
知らないと言う白野の方を見ず、BBは苛立たしげに床を叩くように足先を動かす。
「私の大嫌いな話なんですけどね、何様ですかその旅人、それにその帝釈天、憐れむなら旅人の
一人や二人助けろっていうんです、神とか仏とか言われてるぐらいなら、それぐらいしなきゃ嘘ですよね」
まあ、物語ですから、そこまで細かい事言わなくて良いんでしょうけどと言いつつ、BBの不機嫌さは収まらない。
ここまでBBが苛立つのは、その話が目の前にいる人物がかつてした行動の事をどうしても思い
起こさせるからだ。
いずれ燃え尽き灰になろうと、後に続く旅人たちの薪となろう。
オレの役目はその種火を守る事。
そんなやり取りをしくさった二人。
(月に居てウサギになるなんて、嵌りすぎって言うか、ほんと、どういうことですか。)
まさかその逸話の再現として白野の頭にウサ耳が生えたとでも言うのだろうか。
BBは馬鹿馬鹿しいと切り捨てる。
消滅する時を待つだけだった白野を救い出す為、数多の別世界の想いすら結集したのだ。
誰もが否と言ったのだ。
地上に帰った者も別世界の者すら否と叫んだ。
それぞれの世界で力技とはいえ、白野を消滅から救ったサーヴァント達の分御霊を現界させ、
BBもまた一万と二千回の果てに救われた事実を元に、この世界のムーンセルをもう一人のサクラと協力したとはいえ、掌握した末での救出劇。
その結果、今のサーヴァント四人というカーニバル状態となり、サーヴァント達に白野を取られっぱなしのBBはその事だけでも気に入らないのに、この上誰かが白野を奪おうとするのなら。
徹底的に潰してやると、BBは心に暗い炎を燃やす。
BBは、ちらりと横目で白野を見る。
全く本当に誰の目にも触れないように監禁して、二度と出さないでいてやろうかとも思うが、
様々な者に見せる様々な表情と想いがとても尊く見えるBBには、どうしても実行に移す気に
なれない。
はあっと溜息をつき、私も日和ったものですと思いつつ、どうしたの?と聞いてくる白野のウサ耳を八つ当たり気味に引っ張る。
「ま、別に良いんですけどね」
9393と電子な存在らしく感情を数字で表した後、BBは、
「兎に角、私がなんとかしてみます」
白野の頭からウサ耳を取り除く作業を請け負う。
本当!? ありがとう
てらいも無く素直に感謝の意を白野だが、BBが何か企んでいるような、小悪魔的な表情で自分を見ているのに気が付いて首を傾げた。
そこへ、空中にモニターが出現し、セイバーとキャスターが檻から逃げ出してそっちに向かったと、
白桜が慌てて報告する。
「やれやれ、猛獣は解き放れたという事か」
今までずっと黙って白野とBBのやり取りを見守っていた、アーチャーが肩を竦めた。
「私の作業が終わるまで、頑張って逃げ回って下さいねセンパイ♪」
顔から血の気が引いた白野にBBは悪戯っぽく笑いかけた。
数日後、白野の頭から無事ウサ耳はとれ、なんとかその間、自分の身を守り切った白野は安堵して気が抜けた事と、その間の心労のせいで数日間寝込む羽目になった。
そして、この騒動の間、一度も姿を現さなかったギルガメッシュは
「我のマスター、マジ愉悦」
傍観者に徹して一人、ワイン片手に愉しんでいた。