月のお宿
「ほう、温泉かね」
白野達が住むスーパーゴージャス・パクスローマナ・二人の愛の巣マイルーム邸のバトラー、
では無く、クラス:アーチャーは、拭いていたガラスのコップをキッチンに置いた。
時々本気で自分のサーヴァントのクラスが分からなくなる白野と、他のサーヴァントである
セイバーとキャスターの三人が台所のアーチャーの元へとやって来たのは、昼食が終わって
暫く経った頃だった。
どうも昼食を食べた後、三人で何か話し合って、その結論が出たので知らせに来たらしい。
「そうなのだ、余もローマ人の一人として入浴に関しては並々ならぬ関心がある、日本もまた
入浴については色々と深い造詣があり、その最たるものが温泉だと聞いた」
アーチャーはキャスターをちらりと見た。
キャスターは日本出身の英霊だ、セイバーに温泉の事を教えたのも彼女だろう、白野は一応
オリジナルが日本出身であるので、同じく日本出身と言えるが、なにせ生まれたのが月である、
風俗に関して詳しくは無い。
「ご主人様も入った事が無いと言いますし、ここは一つ体験してみようという事になりまして」
キャスターの言葉を裏付けるように白野も頷いた。
「それは良いが」
アーチャーは白野を見て何か言いかけるが。
「なら決定、すぐ決定、はい出発の日取り諸々などは、私にお任せ下さい」
「うむ、では余も支度せねばな」
キャスターとセイバーは続きを言わせずに温泉行きを決定事項にすると、バタバタと自分の部屋へと走って行った。
「本当に良かったのかね?」
温泉行きを楽しみにしている様子を見せている白野に、アーチャーは尋ねた。
何が?
白野が首を傾げる。
「いや、温泉と言えば入浴の事だ、つまりは裸となる」
何を当たり前の事を言うのかと、白野は益々不思議そうな顔をする。
「だから、中で男湯と女湯で別れてしまうが、良いのか?」
アーチャー、もげろ
白野が手の甲にある令呪をことさら見せて、言い放つ。
「あ、いや、すまん、言葉が足りなかった」
混浴じゃ無いのが不満かこのドンファンと、怒りを見せる白野をアーチャーは慌てて宥めた。
「つまり、私が言いたかったのは、あの、二人が暴走した時に止めに入る者が居ないという事だ」
白野はアーチャーの言葉の意味を考える。
風呂に入る→当然裸→二人が野生にかえる→捕食行動→サーヴァントにはサーヴァントでないと
駄目→残念、男は入れませんでした→計画通り、ミッションコンプリート。
白野の顔が青ざめる。
「まあ、あの二人も風呂場で馬鹿騒ぎをするとは、それ程、いや、きっと多分、まあ少しは覚悟
しておいた方が良いか」
セイバーは純粋に温泉を楽しみにしていたようだし、キャスターもきっと純粋に楽しんでもらいたいとの想いで提案した筈、そう二人とも純粋に温泉を目的としているだけだ、
純粋にそうなんだ。
やたら頭の中で純粋という言葉を繰り返しながら、二人が不純な目的で温泉行きを決定した
なんて、考え過ぎだと自分を落ち着かせようとしていた白野を不安にさせるアーチャー。
「そういえば、ローマの浴場ではある位置に座った者は、夜のパートナーを募集している者だと
いう風俗があったとか」
何故、今その事を思い出した!
白野がアーチャーをグーぱんちで殴る。
「いや、マスターを殊更不安にさせようと言うわけでは無いが、非常時の事を考えて対応策を考えた方が良いんじゃないか?」
殴られても大したダメージを負ってないアーチャーに言われ、白野も顎に手をあて考えた。
アーチャー。
暫く考え込んでいた白野が、アーチャーの顔を真剣に見る。
「ふむ、何か手を思いついたかね?」
女装って好き?
「なんでさっ」
思わず自分でも意味不明な言葉を発してしまうアーチャー。
「いや、待て、どうしてそんな・・・・まさかマスターは、私に女のフリをして女湯に入れとでも言うのか」
うんうんと頷く白野に、アーチャーは額に手をやる。
「落ち着けマスター、風呂場での女装は意味が無い、それにもし仮にだ、それで誤魔化せたとしても私との混浴になるのだぞ、良いのか?」
目隠しして、拘束着で雁字搦めにすれば大丈夫。
目にキラキラと星を浮かべてナイスアイデアと言う白野。
「その状態の私に何か意味はあるのか?」
魔除けの意味があるよ、きっと。
ていっと、混乱状態にある白野の頭をアーチャーは軽くチョップする。
「冷静になって、もう少し現実的な案を出したまえ」
じゃあどうしろと?
叩かれた部分を両手で押さえ、恨みがましい視線を送ってくる白野に、やれやれとアーチャーは溜息をつく。
「まあ、単純に考えれば、誰か抑止力となり得る別の女性に同行してもらえば良いだろう。ふむ、該当するのは桜君達か」
桜で、イケイケ状態になったセイバーやキャスターを止められるんだろうか?
疑問に思う白野に、アーチャーはニヤリと笑いかける。
「もう一人のサクラ、BBにも同行してもらえば問題は無いだろう?」
確かにBBならあの二人にも対抗できるだろう、桜もムーンセルに働きかけは出来るのだが、
どうしてもその性格上、荒事に向いていない。
折角の旅行なんだから、みんなで行った方が楽しいよねと、危機回避の為というより、みんなで
楽しめるのは良い事だという事に意識の重点が移った白野が、嬉しそうに頷いた。
「それで私達にも温泉旅行に付きあえって、そう言うんですかセンパイは」
桜と共に呼び出されたBBは、何時もの様に少し不機嫌な様子を見せていた。
「確かにセイバーさんとキャスターさんが暴走したら、先輩の身は危険ですし、あ、いえ命の危険があるとか、そう言うんじゃ無いんですよ、あのお二人だって先輩を大切に想ってますし、
ただその・・・・」
隣に居た桜はとりなすように口を開いたが、途中でごにょごにょと口ごもった。
「なに桜、はっきり言ったらどうなの、貴女最近少し大人向けの少女マンガとか読んでるじゃない、そういう表現の仕方色々知ってるんでしょ?」
「な、何故それを!? じゃなくて、わ、私は人の心の機微を知るための参考資料として色々な
文献を閲覧しているだけです、ドキドキしたり、思わず先輩とだったらなんて考えた事
ありません」
完全にちょっぴりイケナイ事も考えちゃってますと暴露する桜。
白野はその発言を聞かなかった事にした。その横ではアーチャーが、桜くんも色々感情豊かに
なって良い事だと、どこかズレた感慨を胸に抱いていた。
「ふーん、ま、その知識欲を拗らせて薄い本の文化までドップリ浸からないと良いわね」
「浸かりません!」
珍しく桜が大きな声を上げた。
「まあ、それは置いとくとしてです、なんで私がセンパイに付合わなければいけないんですか? あの二人の思惑にまんまと乗せられて、自業自得です、だいたい危険があるなら温泉行きを
止めればいいじゃないですか」
もっともな発言をするBBだが。白野はそれは出来ないと言う。
セイバーとキャスターも別に邪な考えはもたず、ただ純粋に温泉を楽しみたいだけかもしれないし。だったら温泉旅行を無かった事にするのは可哀想だし。
あたふたと二人を弁護する白野を、BBは馬鹿にしたように見る。
「それ、本気で言ってます?」
BBに聞かれ、そうだとー良いなーと目を逸らす白野。
そもそも、二人に信じられない所があるからBB達に助けを求めたのである。
ここで本気だと言っても信用しないだろう。
「ま、センパイのそんな所、今更言っても直らない事はよく分かってます、仕方が無いですね、
見捨てても寝覚めが悪いですし、特別に付き合ってあげましょう、なにせ私は、
健気ーーな後輩ですから」
白野にウインクし、頬に指をあてたポーズを取ってわざとらしく言うBB。
ありがとうBB、一緒に温泉を楽しもうねと笑顔で答える白野に。
「ふんっ、そんな取って付けたような言葉で私が喜ぶと思っているんですか、私は忙しいですから、当日また会いましょうね」
途端、先程までの余裕綽々の態度を一変させ、BBは逃げ出すように姿を消した。
そして温泉旅行の当日。
「それで桜、これから行く温泉宿とはどんな処なのだ?」
温泉旅行に行くのは白野、セイバー、キャスター、桜、BB、アーチャー、それとどこからか温泉行きを聞きつけ、この我の目の届かぬ所で、愉快な事をするのでは無いと言ってついて来たギルガメッシュの七人。
「はい、海に面した山の中腹あたりにある鄙びた温泉宿です。
宿からは海と山の景観を楽しめ、海の幸、山の幸を堪能出来るようになっています」
桜は手の中に端末の画面を出して確認しながら言う。
「まあ、イメージとしては熱海を思い浮かべれば良いですね」
キャスターが補足説明するが、白野やセイバーにはその地名を言われても余りピンとこない。
「あー、分かりませんか、とにかく落ち着ける良い所と思ってくれれば良いですよ」
苦笑いしたキャスターは、宿が見えるようになると、白野の手を引き、あれですあれと宿を
指さした。
着いたのは少々古びた感じの受ける木造の建物の温泉宿。
白野は辿り着いた温泉宿の玄関の戸をガラッと開けた。
「温まりますか?」
目の前に神父(カソック服の上に温泉宿の法被を重ね着した言峰37歳)が居た。
黙って戸を閉める。
「どうしたのだ?奏者よ」
くるりと温泉宿を背にして額に手をやる白野に、セイバーは首を傾げた。
うん、いや、有り得ない者を見たというか、ちょっと場所を間違えたみたい。
そんな事を言った白野に、桜はきょとんとした顔をして手元に端末の画面を呼び出すと検索する。
「そんな事ありませんよ、確かにこのお宿で間違いありません」
桜がナビで確かめて頷く。
そう・・・なんだ
間違いであってくれなかったんだと、顔色を悪くした白野に、
「はい」
桜が屈託なく答える。
じゃあ、もう一度勇気を出してみてみるね。
なんで勇気が必要なんだろう?と、皆が首を傾げる前で、白野は慎重に戸を開ける。
「おいでやす」
京都弁で、オ・モ・テ・ナ・シ・をする神父(ガタイの良い渋すぎる声の中年)が居た。
ピシャッと戸を閉める。
「だから、どうしたというのだ、奏者よ」
真っ青な顔をした白野に訝しげに尋ねるセイバー。
どうも私は疲れているらしい、幻覚が見える。
力なく頭を振る白野を見て、セイバーは、それは大変と、
「ならば早速湯につかり心身ともに癒さねばならぬな、では余が先陣を切ろう」
白野の横をすり抜けセイバーが温泉宿の玄関の戸に手を掛け一気に開く。
「・・・・・・・・」
暫く中を見たままセイバーの動きが止まる。
やがて、無言で戸を閉めた。
「嫌な事件だったな」
しみじみ言って、白野と同じく頭を振るセイバー。
「あの、何か変な物でありましたか? 特におかしな物は配置して無い筈ですけど」
言いながら、今度は桜が玄関の戸を開けた。
桜の動きが止まる。
やっぱりと納得する白野とセイバーの方へと桜は振り返り。
「言峰さんがお出迎えをしてくれてるだけで、後は何も無いんですけど」
それが魔境的におかしな点だろ!?
と、驚いて声を上げる白野とセイバーとは逆に、桜は平然としている。
BBもまた、それがどうしたという顔で居た。
キャスターは微妙な顔つきをしていたが白野とセイバー程、動揺はしてはおらず。
アーチャーはこめかみを指でおさえ、ギルガメッシュは我関せずの態度で居た。
なんで、あんなのが当然のような顔して居るんだと、問い詰める二人に桜は困惑の表情を顔に
浮かべた。
「その、言峰さんは優秀な上級AIです、色んな事を卒なくこなしてくれますから、このお宿の
従業員を一時的にお願いしたんですけど」
何故お願いしたんだと、どんより顔をする二人にBBが桜の説明の補足をした。
「まあ、使い勝手が良いですし、遊ばしておくのも勿体無いですから、それにあの神父が暇を
持て余しているほうがセンパイ的には怖くないですか?」
BBの指摘に、確かにそれはもっともだと思い、白野は言峰従業員化に不承不承納得する。
宿に入ると、白野一行は言峰による案内は不安過ぎるので断り、この温泉宿を設定した関係で、
内部構造を良く知っている桜に案内を頼み、廊下を歩いていた。
いきなり物凄い歓迎を受けてしまったね
白野がしみじみ言うと、
「強烈だったな」
セイバーが応じた。
「それで部屋で荷物を置いた後、どうしますか?」
今後の予定を尋ねる桜にセイバーが答える。
「何か凄く疲れた、とにかく風呂に入って癒されたい」
白野も頷き、キャスターもご主人様がそう望むなら異存は無いと言い、BBも付合う意志を見せると桜も頷いた。
男性陣には、この後は自由にしてくれて構わないと、桜はおまけ扱いするが、元々この温泉旅行は白野とセイバーの為のもので、自分はその付添と思っているアーチャーには別に不満は無い。
ギルガメッシュはフリーダムが基本なので、初めから我は好きにするという態度である。
白野達は部屋に荷物を置き、お風呂セットを持って、温泉宿のメインである浴場へと入る。
「ほう、湯船の周りを岩で囲っているか、ふむ、加工もせずにそのままに置いてあるのだな」
セイバーは珍しげに浴場を眺め回す。
「木やら何やらあるが、彫像は一つも無いな、日本では彫刻で飾り立てる事はしないのか?」
「まあ、日本の温泉宿では普通はしませんね、ここでは自然と一体化した風情を楽しむんです」
何十本も植えられている松と松の間に海が見える、その先に連なる山々が霞んで見えた。
「ふむ、なるほど」
キャスターの説明を聞きつつ、セイバーは浴槽の縁まで進んでしゃがみこみ、手で湯を掬う。
指の間から流れる湯を見ていたセイバーは満足げな顔をし、
「よい湯のようだな」
「勿論ですよ、ここは泉質最高の美人の湯なんですから」
この湯を再現するには苦労したんですよと、キャスターが自慢する。
セイバーは持参したMY湯手桶を引き寄せ、中に手を突っ込む。
「ふむ、ならば後は薔薇の花を浮かべれば完全だな、それっと」
「待てや」
キャスターはセイバーの頭をガッシと鷲掴みにする。
「む、何をするかキャスターよ」
「セイバーさんこそ、何しでかそうとしてるんですか、私が桜さんに色々言って、苦労して
調整したんですから余計な手を加えないで下さい」
最高の状態そのままを白野に味わってもらいたいと言うキャスターに、セイバーは頬を膨らます。
何か揉めそうな気配に、白野は新しいお風呂を楽しむ為にここまで来たのだから、そのまま
楽しもうよとセイバーを宥めると他の者に先駆けて、そっと温泉へと入る。
湯船に身を沈め、心地よさげにする白野を見たセイバーもそれ以上不満を口にする事もなく白野に続いて湯船の中へと入った。
元々風呂好きということもあって、一度湯に身を委ねれば、セイバーも先程の不機嫌さも
吹き飛び、上機嫌な様子を見せる。
キャスターと桜とBBも湯の中へと身を浸す。
「あ、そうそう、念のために言っておきますけど、ここでのはっちゃけは許しませんからね、
もしそんな事をしたら」
BBは目を細め、右腕を上げる。
すると湯煙の中に鎮圧用に改造された黒イカ、シェイプシスター改の姿が朧げに浮かんだ。
ゲッという顔をするセイバー。
「何故そんなものを持ち込む、風呂に武器など無粋の極みで禁止の筈だろうが」
セイバーの剣幕にもBBはどこ吹く風と涼しい顔で、
「これは武器ではありませんよ、あくまで発情した獣を縛るロープですよ、セイバーさん」
ワザとらしくニッコリと笑う。
そんなロープがあるかと食って掛かるセイバーだが、BBは有無を言わせず、文句があるなら
入浴禁止と申し渡す。
大丈夫、セイバーやキャスターはそんなマナー違反はしないよ、私は信じているから。
白野がちゃっかりもう一人の問題児であるキャスターも含めて、追撃する。
ターゲットが自分である事が分かりきっているので、白野も動きが素早い。
セイバーもこの連続攻撃には沈黙し、キャスターも内心はともかく、笑顔で当然ですと答えた。
こういう解放感のあるお風呂も良いよね。
お湯に浸かっている白野が伸びをする。
その隣で静かに手で湯を掬い、顔にかけるセイバーも同意する。
「確かに余も大規模な浴場を作ったが、流石に壁が何も無いのとでは比較にならぬな」
「この湯と自然との一体感を味わえるのが良いんですよねー」
キャスターは手に持った御猪口にとっくりから酒を注ぎつつ言う。
「って、待てキャスター、お前は風呂に何を持ち込んでいる」
「何って、日本酒ですよ」
クイッと日本酒の入った御猪口を傾けるキャスター。
「こういう楽しみ方もあるって言う事です」
悪戯っぽく笑うキャスターに、成程その手もあったかと、セイバーは顎に鍵型にした指をあてる。
「センパイは駄目です」
興味深げな視線をキャスターが持つ徳利に向けていた白野が何かを言い出す前に、
BBが釘を刺す。
私にもちょっとだけ良いかな?
と、口を開きかけていた白野はBBにピシャリと言われ、身体を僅かに縮こませる。
桜はそんな白野を見て苦笑していた。
その時、隣の男湯ではギルガメッシュが不満をぶちまけていた。
「何故、我がお前などと一緒に風呂に入らねばならぬのだ」
ビシリと指さす先にアーチャーが湯に浸かっていた。
「それがこの温泉の醍醐味だ、共に入り、共に湯を愉しむ、お前は愉しみを十全に味わわぬ
つもりか?」
口から出まかせだが、日本の風俗にそれ程詳しくないギルガメッシュには分からない。
「それとも何かね、未知の快楽には気後れするかね?」
更にこのように言われては、ギルガメッシュも引き下がる事などしない。
「ふん、良いだろう、ならばこの我が試してくれる」
湯に浸かり直すギルガメッシュに、口八丁での誤魔化しではあったが、隣に白野が居る状況で
騒ぎにならずにすんで安堵するアーチャー。
ギルガメッシュと共に入浴したのは勿論共に未知の快楽を追及する為で無く、ただ単にこいつを
一人で野放しにしておきたくは無いという考えからである。
なにせ隣には白野が居る。
白野が入浴するという意志を示した時に、ギルガメッシュが、よし我も入るぞと言い出した時にはアーチャーは肝を冷やした。
それで無くとも危険人物が二人、白野と共に入浴するのだ、この上暴走の規模ではその二人に勝るギルガメッシュをフリー状態にするのは危険すぎる。
内憂は桜とBBで封じる事も出来るだろうが、外患については自分が抑えるしか無いとアーチャーは気が進まないが、ギルガメッシュとの二人で入浴する事を決意した。
「ふはははは、マスターよ、許す、この我の背中を流せ」
などど、いつ言い出さないかと警戒するアーチャーの前で、ギルガメッシュはまだ不満を表し、
手で湯を叩いた。
「それにしてもだ、貴様と入浴するという不快感を別にしても、この温泉には我慢が出来ぬ」
「良い湯だと思うが?」
キャスターを除けば、旅行のメンバーの中では最も温泉に造詣が深いアーチャーは湯に目を落として言うが、
「狭い!」
ギルガメッシュは一言で切って捨てる。
「そうか?十分な広さを持っていると思うが」
アーチャーは周りを見回す。
優に10人以上は入れる浴場である。狭いとは思えない。
だがギルガメッシュはそんなアーチャーの感想を聞いて鼻で笑う。
「たわけ、お前と我の器の大きさを同じにするではない、こんなものはタライだ」
「・・・・・ならお前はどのくらいのサイズが良いのだ?」
「我に相応しいサイズはあれよ」
ビシッとギルガメッシュが指さすその先。
「海・・・・なんだが」
「ふはは、我を感心させたくば、あれくらいもってこい」
「・・・・・・」
「ふははははは、この我のスケールの大きさに恐れ戦いて言葉も出ぬか」
「ああ、本当にお前の(馬鹿さに)恐れ戦いて言葉も出ないな」
「で、あろうな」
満足した様子でふんぞり返るギルガメッシュにアーチャーは何も言わない。
ここで下手にギルガメッシュの気分を害して暴れられた挙句、男湯と女湯の壁を壊されるなどど
いう桃色展開をされたら、またエロゲ主乙などと不名誉な事を言われかねない。
とにかく何事も無いよう祈りながらアーチャーは湯に浸かっていた。
その時、女湯の方では
程好く出来上がった様子のキャスターが白野に枝垂れかかっていた。
そんなキャスターに、セイバーは湯にのぼせた訳でも無いのに、顔を真っ赤にする。
「何をするかキャスターよ、奏者から離れろ」
「あららん、セイバーさんは知らないんですか?」
「こういうお宿でお酒が入った時は、ブ・レ・イ・コ・ウ・と言って少々の痴態は許されるって
いうルールがあるんですよ」
ルール
その言葉にキャスターを止めようとしていた桜とBBの動きが止まる。
「そんなローカルルールがあったんですか」
「調べる必要がありそうね」
元々が管理AIである二人は、それがルールと言われてしまうと、つい確認作業を優先して
しまう。
その隙をキャスターがつく
「ご主人さまぁー、タマモ酔っちゃいましたー、えい」
にゃあ
と変な声を出す白野。
それ以上は駄目だと、白野に纏わりつくキャスターの腕をセイバーが掴む。
「何をするんですか、セイバーさん」
「何をではない!そんな事は余の目の前ではさせん、混ぜろ、いや、止めろ」
一瞬、湯にのぼせた訳でも無いのに眩暈がした白野。
「あらあら、酔ってもいないシラフのセイバーさんが止めに入るとは、なんて無粋なんでしょう」
「む、無粋とな」
「そ、ブレイコウにシラフの状態で真面目くさって注意する人はとーても無粋です、
そうなってます」
知らないのを良い事にヘンテコルールをどんどん付け加えるキャスター。自称至高の芸術家であるセイバーは、無粋と言われるのは嫌だと思考停止し、手が止まる。
「だからそこで黙って見てて・・・」
「いや待て、それなら余も酒を飲めば良いではないか、その手に持っている酒をよこせ
キャスター」
「嫌でーす」
ベーと、キャスターはセイバーに舌を出してみせる。
・・・・・。
キャスターの気がセイバーの方に向かっている隙に逃げ出そうとした白野だが、そろりと離れた
瞬間、キャスターの尻尾にモフッと首を絡め取られて動きを封じられた。
その頃男湯では
「なにか、女湯のほうが騒がしいな」
少し前から男湯と女湯を仕切る壁の向こうから、バタバタと誰かが争う音が聞こえてきたので、
思わず誰とは無しにアーチャーは呟いたのだが、ギルガメッシュが耳聡くその声を拾った。
「ふはは、ついにその時が来たということよ」
「その時だと?どういう事だギルガメッシュ」
「ふん、やはり貴様は無知だな、知らぬのか、こういう温泉場において女湯から女どもの姦しい声が聞こえてきた時、それは漢達よ動けという狼煙よ」
胸を反らすギルガメッシュに、アーチャーの眉が跳ね上がる。
「何? まさか、お前!?」
「ふはははは、そうよ、こういう温泉シーン時には必ず起こる、いわゆるお約束
ノ・ゾ・キ・だ」
やはりかとアーチャーは手で顔を覆う。
「この我は全てを愉しむ、この必須イベントも愉しみ尽くしてくれよう」
湯から立ち上がり男湯と女湯を仕切る壁の方へと進むギルガメッシュを、アーチャーは慌てて立ち上がり、止めようとする。
「ふん、何をびくついている、ぷちゲートオブバビロンで一本投射するだけだ。
大丈夫だ、問題無い」
「それは駄目というフラグだ!だいたい宝具なのだぞ、一本だけでも十分クレーターが出来る、
というかそれはもうノゾキでもなんでも無い」
そんな制止の言葉をギルガメッシュが聞く筈も無く、白野達の安全の為にアーチャーもやむを得ず干将莫邪を作り出そうとしたその時、
女湯と男湯を仕切る壁の一部が吹き飛んだ。
「ちょっとセイバーさん、なに思いっきり人を突き飛ばしてくれるんですか」
「うるさい、お前がさっさとその素敵アイテムをよこさぬからだ、だいた・・・い」
「は?、セイバーさん何突然固まって、一体どうし・・・・・た」
縺れ合ったまま壁を壊したキャスターとセイバーの目の前、ソレはあった。
湯から上がったギルガメッシュとアーチャー、そして少女達、遮る物は、何も無い
「あ」
「あ」
「あ」
「あ」
・・・・・・・・。
ちなみに無言で固まっているのは白野。
何とも微妙な空気を切り裂いたのは馬鹿では無く高笑い。
「ふははははは、見ろフェイカーよ、やはりラッキーイベントが起きたぞ」
誰もが押し黙ってしまったそんな中で一人ギルガメッシュが実に愉しそうに笑う。
その高笑いで我に帰った女性陣が、タオルで慌てて身体を隠す、湯の中に深くつかるなど行動を
起こし、事もあろうにこちらから乱入してしまった事を恥じて、どう謝ろうかと思っていた
その時、衝撃の第二撃が放たれる。
「全く持って、壊す手間が省けたというものよ」
そのギルガメッシュの言葉で、その場にピシリと亀裂が入る。
「壊す?」
「手間?」
「ですって?」
「もしかして、これも」
・・・・・・・。
女性陣の視線が厳しいものとなる
「ち、違うこれは誤解だ、というか壊したのは君達だぞ」
「その通りだフェイカーよ、我はお約束に従い、壁に風穴を開けようとしていたのだが、
よもやそちらから攻めてくるとはな、少し意外だったが、それもまた良し、貴様らがそれほどまでに求めるならば応えよう、この雄姿、見せ付けてくれる、女達よ思う存分堪能するが良い」
お前は黙れとアーチャーが止める暇もあればこそ、ギルガメッシュが自らを詳らかに披露する。
途端、それを仕舞ってください、やめろこの馬鹿と悲鳴と怒号が浴場内に上がる。
「ふははははははははは、どうしたどうした、貴様らには高貴すぎたか」
・・・・・・・・。
壁が破壊されてからずっと無言状態の白野。ギルガメッシュはそんな白野の様子に気が付く。
「どうしたマスターよ、お前はかつて我の神話礼装すら見たではないか、怯む必要は全く無い」
「「「「「 全然ちげーーーよっ 」」」」」
白野以外のものが突っ込む。
「む、反応が無いな、湯気でよく見えぬか、ならば近寄ってよく見るが良い」
などと言いながら、自分から白野に近づいて行くAUO。
白野が湯に沈んだ。
「来るなギルガメッシュ、それ以上奏者に近づく事は余が許さぬ」
BBの手により水着着用となったセイバーがギルガメッシュの前に立ち塞がる。
「ふん、なんだ雑種よ、貴様ルールを知らぬのか、温泉に水着着用は不可だ」
「黙れ、というかBBよ早くこいつにも何か着けろ」
セイバーが怒鳴り、BBがはいはいと指揮棒を振る。
二人の野郎にイチョウの葉装備。
「なんでさっ」
まともな水着を着けてくれと叫ぶアーチャーをBBが冷めた目で見る。
「貴方達に割くリソースはそれで十分です、そんな事より今から、お・仕・置・き・ですよ」
突然湧いた黒イカの足にギルガメッシュは縛り上げられる。
「あ、この黒いのってギルガメッシュさんはトラウマものでしたっけ」
ぐるぐる巻きにされたギルガメッシュを見て、BBがクスクス笑う。
「何を言うか、小娘、この我にトラウマなど出来よう筈も無い」
「そうですか、なら遠慮なくいかせてもらいます」
「ぬ、貴様、よもやそこま――」
ギルガメッシュは全身を絞り上げられたうえ、唯一露出した顔をシェイプシスターの足で
ビシバシとしばかれた。
その様子を見て、やれやれと溜息をつきながらアーチャーは肩をすくめる。
「なに、部外者のような顔してるんですかアーチャーさん、貴方もですよ」
BBがぴしぴしと指揮棒を手に打ち付ける。
「なんだと!?私は違うぞ」
「そんなイチョウの葉一枚で、フルオープンしている人の言い訳なんて聞きませーん」
BBの横に立ち、殺すと顔に書いたまま笑顔をつくるキャスター。
「ふっふっふ、どうやら鍛えに鍛えたこの一撃、一度アチャ男さんにもお見舞いする必要がある
みたいですね」
「ま、待てキャスター、私の話を聞け」
「聞きません♪ タマモ行っきまーす、手前は逝けや」
その日その時、温泉宿の風呂場に珍百景がさく裂した。
しかもその様子を動画撮影されて投稿、
などは流石にされなかったらしい。
「そんなのがサーヴァントなんてセンパイの名誉に係わりますから」
とはBBの談である。
脱衣所の外に設置されている休憩室で、湯疲れとは別の理由で頭がふらつく白野は、
マッサージチェアに深く身体を沈み込ませていた。
「あの、大丈夫ですか先輩」
桜が心配そうな様子で白野の顔を覗き込んだ。
大丈夫と、若干顔を青ざめさせた白野が答える。
「これを飲んでください」
あまり大丈夫そうには見えない白野に、桜は良く冷えたフルーツ牛乳を渡した。
お礼を言った後、白野はフルーツ牛乳を一口飲む。
美味しいね、これ
と、続けてコクコクとフルーツ牛乳を飲んでいる内に、白野も先程の珍百景の衝撃から立ち直ったようだ。
リラックス状態になった白野を見て、桜は良かったと微笑んだ。
「それで先輩、この後は食事となるんですけど、用意にまだ時間がかかりますので、その」
桜はもじもじと少し躊躇った後、白野に手を差し伸べる。
「それまで、私と一緒に散歩道を歩いてみませんか、景色が良いんですよ」
おずおずと差し出された手をちょっと見た後、白野はすぐにその手を取って立ち上がり。
うん、行ってみよう、案内してと、桜の手を引っ張った。
桜は嬉しそうにして請け負い、二人は散歩道をゆっくりと景色を楽しみながら歩いた。
「そろそろ食事も出来上がった筈なので、広間の方へ行きましょうか」
少し名残惜しげな様子を見せて桜がそう言い、白野と桜は食事の用意がされている広間へと
向かった。
広間に入ると、どうやらやって来たのが二人が最後のようで、他の皆は既に座についていた。
「奏者よ、少し遅かったな、もう既に料理は並べられた後だぞ、さあここに座るが良い」
セイバーは自分の隣に置かれている座布団をぽふぽふと叩く。
白野と桜が座につくと、夕食が始まった。
「む、この料理はアーチャーとキャスターが作ったのか」
セイバーは箸で取った煮物をしげしげと見て、感心したように言う。
「はい、皆さんなんだかんだ言って舌が肥えてますし、料理上手で皆さんの好みを良く知っているお二人に作ってもらったほうが良いと判断しました」
「ふむ、しかし二人は良かったのか?わざわざ旅行に来たのに、作業などして」
セイバーは煮物をパクリと口にしながら、アーチャーとキャスターの方を見る。
「なに、新鮮で活きの良い上等な食材を取り扱わさせてもらったのだ、中々楽しかったよ」
「ま、私はご主人様の為だと思えばなんとでもない事ですし」
「それにだ、あの神父に任せて料理にアレが混ぜられたら事だからな」
「アレとはなんだ?」
急に眉を顰めたアーチャーにセイバーが尋ねたが
「・・・・知らなくて良い事だ」
思い出したくも無い事だと、アーチャーは話を打ち切った。
セイバーはその不自然さに、一瞬なんだとも思ったが、すぐにどうでも良い事かと思い直す。
「と、言う事ですのでお二人に甘えさせてもらいました」
桜はこれで調理についての話はお終いですという風に、ポンと両手をたたいた。
「あ、そうそうセイバーさんには特別料理があるんですよ」
食事を続けようとしたセイバーに、キャスターが忘れてましたと料理の乗った新たな皿を
差し出した。
「ん?そうなのか、だが何故だ」
「ほら、セイバーさん温泉楽しみにしてたじゃないですか、だからどうせならとことん楽しんで
もらおう思いまして」
「む、そうか悪いなキャスター、腹黒淫乱狐のお前にも僅かなりとも良い所があるのだな」
ひくっ
キャスターの口端が引き攣るが、それでも笑顔のまま皿をセイバーの食膳に置く。
「ふむ、これはなんだ、刺身のようだが、何の魚だ?」
「フグです」
ぶっ
白野が吹き出した。
「どうしました先輩?」
突然むせた白野の背を桜が撫でる。
「ふむ、なかなか上手いな、」
ゲホゲホ言ってる白野を余所にセイバーは刺身をぱくぱく食べる。
「でしょでしょ、もう、極楽に逝くような味ですよ」
ニヤリと意味ありげに笑うキャスター。
キャ、キャスター、フグ調理免許持ってるんだよね、ねっ
持っているって言ってお願いと懇願するように聞いた白野に、キャスターはニッコリ笑い。
「勿論、持ってません♪、ただぶつ切りにしてそのまま、全部、出しました」
セイバー食べちゃ駄目ぇぇぇ
キャスターの言葉を聞くや否や、縋り付くようにして必死で止める白野に、セイバーは首を
傾げる。
「何を慌てているのだ奏者よ、この刺身美味いぞ、奏者も食べてみるが良い」
えっ!?
白野が驚いて目を丸くする。
キャスターがあわてて二人の間に割って入った。
「駄目です、貴女ご主人様を殺す気ですか、その魚、物凄い毒を持ってい・・・・・
あ、いけない、これ私知らないって事になってるんだった、知らずに出しちゃう、
どじっ娘タマモちゃん、てへ♪」
キャスターは舌をぺろっと出し、自分で自分の頭を軽くこずく。
セイバーの手から箸が落ちた。
「・・・・・・キャスターよ、つまりお前はこの余を毒殺しようとしたと、そういう事なのか?」
怒りにぷるぷる震えながら言うセイバーに、キャスターはぱたぱたと手を横に振る。
「嫌ですねー、そんな事あるわけないじゃないですか、これは悪魔でうっかりです、
毒じゃなくて、たまたま毒になっちゃったんです」
余りに嘘くさいキャスターの言い訳にセイバーが怒りで顔を真っ赤にする。
「そこに直れキャスター、余がお前を狐刺身にしてやるっ」
「殺気立たないでくださいよ、これは座興ですよ座興、こういう宴席の場にはつきものなんです、それにもし当たっても三日三晩苦しむだけになってますって」
「結局、苦しむのではないか!」
「当たればの話です、これは誰に当たるかドキドキなのを愉しむイベントなんですよ♪
ほら今を楽しまなくちゃ」
悪びれることなくあっけらかんと言うキャスターに
「誰に当たるかって、食べてるのが余一人なのだ、余に決まっているだろうが」
当然のように怒るセイバー。
「まあまあ、これは宴席で笑いを取る為ですよ、ご主人様だってこのサプライズにドキドキですよ」
確かに白野はドキドキした、したくなかったが。
「考えてもみてください、当たらなければ、いつ当たるかでご主人さまを楽しませ、当たったら当たったで、ご主人様に膝枕で介抱される、ほら、セイバーさんは立場と味で二度美味しい思いを
するんです」
「ん、そうなのか、いや待てしかし」
なんとなく誤魔化されそうになっているセイバーを見て、白野が秘かに溜息をつく。
「さ、ご主人様にはこちらの毒別料理、じゃなくて特別料理をどうぞ」
この雰囲気で出しますか、キャスターさんと思わなくも無い白野であったが、折角用意してくれた物である。
見もせずに拒否するのはあんまりだと思い、キャスターの出した料理を見て、言葉を失った。
「マグロのかぶと焼きです♪」
デンッとマグロの頭が置かれる。
「待て待て待て、なんだこれは、奏者に捨てる部分を食べさせるつもりか」
悩んでいたのが一転、キャスターに食って掛かるセイバーに、様子を窺っていたアーチャーは、
やはりなと苦笑する。
「ああ、セイバー確かに見慣れない物だと思うが、別にキャスターは嫌がらせに出したわけでは
無い、それはマグロのかぶと焼きと言って、ちゃんとした料理だ、中々の珍味で、頭肉、ほほ肉、目玉、あご肉とそれぞれに味わいがある、まあ見た目は豪快だがね」
「そうですよ、折角海の見える温泉宿に来たんですから、こういう珍しい物を食べてみないと」
先程フグのぶつ切りを出されたセイバーは不審げな顔つきだが、白野はアーチャーも保証してくれたこともあり、マグロのかぶと焼きに箸を伸ばす。
美味しい。
マグロの頭肉を一箸取り、口に運んだ白野が思わずという風に感想を述べると、セイバーも興味をそそられたのか、箸を伸ばす。
これはご主人様のものです、
キャスターがセイバーに手を出すなと威嚇すると、反発したセイバーとの間に険悪な雰囲気が
流れたが。
それならと、白野が自分でマグロの頭肉を取り、セイバーに食べさせてあげる。
「げっ!?くっ、しまった、ご主人様にあーんしてもらうご褒美をみすみすさせてしまうなんて」
キャスターは握り拳をつくり、悔しがる。
白野は、さっきのお詫びも含めてね、と言うと、キャスターは猶更自分の失策を悟って悔しがる。
逆にセイバーは策士策に溺れたなと、ふふんっと鼻を鳴らし、胸をそらす。
さらに食べさせてもらおうと、口をあけるセイバーにもう一度、マグロの頭肉をとってあげようとした白野だが、キャスターが慌てて止めた。
「二度のご褒美なんて駄目です、仕方ありません、セイバーさんもどうぞ」
「ふん、余は奏者に食べさせてもらうから別に良い」
ニヤリと意地悪そうに笑うセイバーにキャスターは、キーッと、ハンカチを噛んで引っ張りそうになるが、
わたしも食べたいから、セイバーも自分で食べてね。
白野がそうとりなし、セイバーもそれ以上キャスター苛めはせずに自分でマグロのかぶと焼きに
箸を伸ばした。
「あ、ご主人様、これどうですか?」
一見すると食べる部分があまりなさそうなマグロのかぶと焼きに、
どの部分を食べたものかと、少し行儀悪く迷い箸をしていた白野にキャスターが椀に取り置いた
マグロの目玉を差し出した。
「なんだこの目玉おやじは、まさか目にもの喰らえというのか」
目玉そのものを進められたので手をつけるのに躊躇していた白野の代わりに、セイバーが言う。
「むう、見た目はグロテスクな感じですけど、トロットロの食感で美味しいんですよ」
チラっと横目で見たアーチャーが頷くのを見て、白野は眼肉を食べてみる。
これも美味しい
プルプルしてるねこれと、顔を綻ばす白野に、すかさずセイバーも箸を伸ばす、わざわざ白野が
取った所と同じ部分の眼肉をとると、ハムッと食べて、同じく美味いと言った。
白野とセイバーが、さっきからどことなく二人の世界を醸し出しているのを見ていたキャスターが少し面白く無いと頬を膨らますが、それに気付いた白野が取り皿に眼肉を取り、
キャスターも食べて
と、差し出すと、すぐに花丸笑顔になる。
どうせなら食べさせて下さいと調子に乗った発言をして、セイバーにデコピンされるが、
白野が、頑張って料理を作ってくれたご褒美とキャスターに食べさせてあげた。
感激するキャスターに今度はセイバーが、むーっと不満げな顔になる。
セイバーとキャスターの相手に忙しい白野を見て、桜はしみじみとした様子で
「先輩も大変ですね」
と同情するが、傍らのBBは面白く無さそうな顔をする。
「かなり自業自得な所があると思うけど、無視でもしてればあそこまで苦労する事も無いのに」
「でもどこか楽しそう」
食べる手を止め、白野達を見た桜が羨ましそうに言う。
「まあ、センパイもどちらかというと奇行好きだから、良いんだろうけど、全く厄介な人」
BBは忌々しげに言おうとするが、どうしてもほっとかれて拗ねてるような口調になってしまう。
そんなBBを見て桜はクスリと笑った。
「ふむ、マグロのかぶと焼きはどうやらマスターの意表をついたようだな」
きゃいきゃいと燥ぐ白野達にアーチャーは満足げな顔をした。
だがその横に居るギルガメッシュはつまらなそうに鼻を鳴らす。
「はんっ、あの程度で満足とはつくづく我がマスターは凡の凡よの」
我は違うぞと言うギルガメッシュに、付き合うのも面倒だが、付き合わないともっと面倒な事に
なると、今回の旅行でギルガメッシュのお目付け役をする事を覚悟しているアーチャーが尋ねる。
「ならお前はどの程度で満足すると言うのだ?」
「知れたこと、このBIGな我様にはBIGな物が良く似合う」
持っている箸をオーケーストラの指揮者のように振り、ギルガメッシュは堂々と言う。
「この我様を満足させたければ、クジラのかぶと焼きをもって来い!」
「・・・・・・」
「ふははははは、この我様のBIGさに言葉も出ぬか」
「ああ、本当にお前はBIG(馬鹿)だな、(呆れて)言葉も無い」
「ふっ、漸く己の分を知ったか、良いぞ雑種」
「ああ、私はこっち側でいい、お前の(アレな)側にはとても足を踏み入れられない」
アーチャーの分を弁えた発言?に、ギルガメッシュは食事の間、終始機嫌が良かった。
夕食も終わり、満足した白野とセイバーとキャスターの三人はお腹ごなしと、温泉宿の一角に
設置されているゲームコーナーへやって来ていた。
セイバーとキャスターは、ぬいぐるみを取るクレーンゲームの台に張り付き、仔リスの人形を
取ろうと奮闘し、白野はそんな二人から離れ、テーブル型のゲーム機の椅子に座る。
この温泉宿の例の従業員の趣味なのか、設置されたコンピュータゲームの元祖であるインベーダーゲームに興味をそそられて、デモを眺めていた白野の後ろに人が立つ。
「楽しんでいてくれているかね」
いきなり背後から話しかけられ、白野はびくりと身体を震わし、振り返る。
「ふむ、どうやらコレに興味があるのかな」
白野に声をかけたのは色々つぶしの効く神父、言峰だった。
「何故こんなゲーム台を置いてあるかと言いたげだな、それはこのような鄙びた温泉宿には
レトロなゲーム機を置くのが良いと、データーにあった為だ、全く単純極まりないゲームだが、
それでもここでしか遊べないと思えば、これはこれで趣があるだろう?」
インベーダーゲームの画面に手を置き、言峰はニヤリと白野に笑いかける。
この神父のこの笑顔を見ると、白野はどうしてもまた何か碌でも無い事をされるのではないかと、思わず身構えてしまう。
「なに、そう警戒しなくても良い、今の私はしがない温泉宿の従業員だ」
そこが分からないと白野は首を傾げる。
聖杯戦争の監督役などをしていた上級AIである言峰が、何でまたこんな事をしているのか?
月の裏側に落とされた時の購買の店員はBBのいやがらせだろうが、これもそうなのかと
疑問を呈する白野に、言峰は否定した。
「いやなに、BBはただ単にその能力がある者に仕事を任せたにすぎない、まあ少々能力過多だが、そこはそれ、好きな人には最大限のおもてなしをされて欲しいという、いじらしい乙女心と
いう奴だな」
BBも普段そっけないく悪ぶっているような態度をとっているが、所詮その心の内は。
と、この転んでもタダでは起きない神父は、一番知られたくない相手であろう白野に対して
そんな事をぬけぬけと言ってのける。
「まあ、私も所詮は中間管理職なのだよ、上司には逆らえぬ、上司が白と言えば黒でも白と言わねばならない、これも中間管理職の悲哀というやつだな」
悲哀・・・・なんて似合わない言葉だ。なんかこれ幸いと何か企みそうな気がする。
そんな感想を漏らしてジト目で見てくる白野を、言峰は気にする風でも無く。
「ふっ、まあ私も任された以上は全力を尽くす、温泉宿の間取りや調度品の配置、気温湿度に至るまで整えた、無論このような温泉場での必須イベントの為の舞台装置もちゃんと用意した」
言峰は演劇の始まりを告げる興行主のように両手を広げる。
ん?必須イベントの為の舞台装置を用意した?
言峰の大袈裟な態度より、その言葉が気になった白野は考え込み、はたと気付く。
そういえば、女湯と男湯を仕切る壁が発泡スチロールかって思うぐらい、妙に脆かった!
ま、まさか、こいつのせい!?
突然湧いた疑惑に白野が目を見開いて見る前で、言峰は続ける。
「そして食事にもサプライズを用意した」
は?サプライズって、
それってフグか!?フグのことかぁ!
「さらにこういう場では、夜には童心にかえって枕投げに興じる事になるだろうと思うが、
なに心配は無用、もみ殻の代わりに、クレイモアイ地雷の鉄球を仕込んでおいた、
存分に殺り合いたまえ」
おいっっっ、何をさせるつもりだ!
「さらにさらに夜も更ければ、年頃の娘達が集まっているのだ、恋バナに話を咲かせる事だろう、無論一字一句漏らさず記録して、ディスクに焼いて旅の記念に配ろうではないか、
ああ、もしかしたら外部にデーターが流失してしまうという変事が起きてしまうかもしれないが、
なに些細な事だ、気にはしないでくれ」
それって絶対確定事項ですよね、地上のみんなにも筒抜けになるって事ですよね、
そしてからかわれるんですね、分かります。
「おや、どうしたのかね、そのこいつコロスみたいな顔は、私は君に楽しんでもらおうと
色々と趣向をこらしたつもりなのだが」
ニヤリと言峰は顔に笑みを浮かべる。
嘘だっ! 絶対自分が愉しもうとしてるだけだっ!
ぐぎぎっと、歯を噛みならす白野を見てはっはっはと笑う言峰。
「いやはや申し訳無い、所詮私はただのAI、融通が効かず見当違いの歓迎をしてしまった
ようだ、許してくれたまえ」
全然誠意の籠って無い謝罪をして言峰は去って行った。
「見よ、奏者よ、この人形何処となく奏者と似ていよう」
満足する戦果をあげたのか、戦利品の人形をほくほく顔で持ったセイバーが白野の元へとやって
来た。
「あれ、どうかしたんですか、ご主人様?」
キャスターも同じくクレーンゲームの所からやって来たが、白野がゲーム機につっぷしているのを見て首を傾げた。
なんか私疲れた。
黄昏ている白野に、理由は良く分からないが、これはいけないと思ったキャスターが白野の背中に手をやり。
「お疲れなら、もうお休みになられたらどうですか?このキャスター添い寝をしますよ、
きゃっ、何時でもタマモは是枕です」
「このピンクはさておき、疲れているのなら休んだ方が良いな、部屋に戻るとするか」
くねくねと身体をくねらすキャスターを押し退けたセイバーに促され、白野達は自分達の部屋へと帰って行った。
部屋に戻った後は白野の気晴らしになればと、キャスターがトランプをする事を提案し、
白野も含めて、皆が同意し、暫く遊んでいると就寝時間となった。
しかし布団に入って、電気を落とした後も直ぐに眠るわけでもなく、
「こうやって大勢で一つの部屋で一緒に寝るなんて、無かったことですから、新鮮ですねー」
キャスターがごろりとうつ伏せになり、上体を起こす。
白野も続いてうつ伏せになり、顎を枕に乗せた。
セイバーは布団の中で腕組みをし、
「ふっ、余はそんな経験は幾度となくあるぞ」
自慢げに言った。
「はいはい、ハーレム乙、そんな爛れたのじゃねーですよ、なんというか、こう修学旅行の夜?」
「なんだそれは?」
「あー、なんて言ったら良いでしょうね、若い学生達の集団旅行のドキドキな夜?」
「ふむ、ハッテン場か?」
「違いますっ!そんな古代ギリシャ的な考えしないでください」
「まあ、難しい事考えず、今のこの雰囲気が楽しいで良いんじゃないですか?」
BBがそう言うと、セイバーが頷いた。
「ふむ、それならなんとなく余も感じているぞ」
「なんとなくでも分かってくれれば良いんですけど」
上手く説明できなかった事に、キャスターは少し不満そうな様子を見せる。
私にも分かる、なんか色々な事話したくなるよね
布団の中から楽しそうな声を白野は上げた。
「なら、話をしましょうか、少しぐらいの夜更かしは、内緒で」
桜が悪戯っぽい顔をして言うと、BBは布団の中で肩を竦めた。
とはいえBBも反対するわけではなく、白野達は取り留めも無い話をし始めた。
やがてキャスターが
「ではでは、次は恋バナと行きましょう」
「ふむ、それは良いな、では聴くが良い、余と奏者の蜜月を」
「はぁ?なに捏造話しようとしてるんですか、そういうのって後で引けなくなって困る事に
なりますよ」
「なんだと、誰が捏造などするが、お前こそありもしない既成事実をでっち上げるつもりだろうが」
「んな事、する訳ねーです、確実に起きる未来だから、捏造じゃありません!」
「どこの誰が確定させた、そんな未来は無い、絶対無い」
ぎゃいぎゃいと言い合う二人に白野は力なく笑う。
このままで行くと、この場から逃げ出したくなるくらいの惚気話を聞かされる事になる。
他人が対象ならまだ顔を赤くするだけで済むが、自分との事を言われては流石に耐えられない。
それにと、白野は思い出す、ゲームコーナーで会ったあの神父の言葉を。
夜のお話会を録音してディスクに焼く。
まさかとは思うが、あの神父ならやりかねない。
ここは二人を止めるべきと、
まあ、そういう大切な思い出は、それぞれの心の中にそっとしまっておいて欲しいな。
そんな事を言って、セイバーとキャスターの頭を冷やそうとする白野に桜も続く。
「そ、そうですよ、本当に大切な物は無闇やたらに他の人に晒さない方が良いですし」
桜の援護射撃に、白野は布団の中で、グッジョブと親指を立てる。
ふむ、それもそうかと納得した二人に白野は胸を撫で下ろし、桜は話題を変えた。
そんな事をしていた女性陣の部屋の隣。
布団の上に胡坐をかいたギルガメッシュが、手に持った枕を畳に投げつけた。
「これはどういう事だ、何故貴様と一緒に同じ部屋で寝なければならないのだ、ふざけるのも
大概にしろ」
「それが温泉宿の楽しみ方だ、皆で同じ部屋で雑魚寝をすると言うのが、こういう場の醍醐味だ」
「たわけ、そう言えば何でも許されると思っていたのか、貴様は」
(流石に何度も通用せぬか)
アーチャーは心の中で舌打ちをする。
正直に言えば、アーチャーもギルガメッシュと一つの部屋で二人きりで寝るなど真っ平御免だが、ギルガメッシュの監視役を自認しているアーチャーとしては共に寝るしか選択肢が無い。
「とにかく貴様は出て行け、確か布団部屋なるものがあったな、そこへ行け」
「それは駄目だな、お前に一人寝をさせる訳にはいかない、お前が(やらかさないか)心配でならん」
「殺られたいのか貴様、この我がその気になれば貴様なぞ」
「ふっ、随分と滾っているなギルガメッシュ、だかそんな強気で良いのかね
身体の方は忘れていないんだろう?」
「ぐっ、貴様っ、この我様に恥を掻かせる気か!?」
などという展開が為されている隣の部屋では。
「あの二人、何を言ってるんですかね?」
隣から聞こえてくるどこか怪しい会話に、何時の間にか自分達の会話を止めて、女性陣が聞き耳を立てていた。
「え、ナニって・・・・えっと」
桜がごにょごにょと口ごもる。
なんの事?
この中でただ一人普通の聴覚を持つ白野だけが、隣から流れてくる会話を良く聞き取れず、
突然他のみんなが息をひそめた事に首を傾げていた。
「ご主人様は、なにも気にしなくて良い事なんですよ」
「うむ、夜も更けて静かにせねばならぬしなっ」
誤魔化された白野は、本当にそれが理由かなと思いつつ掛布団を自分の口元まで引き上げる。
そしてその隣の男性陣の部屋では。
「恥をかかせるつもりは無い、まあアレを一度味わったら、誰でも逆らえ無くなるだろうからな」
「ええぃ、何度何度も人の身体を好き勝手しおって」
「ふっ、癖にでもなったか?」
「誰がなるか! だいたい貴様余裕な態度を取っていられるのも今の内だぞ」
「ほう、ヤルかね」
「ふっ、なーに、隣の女どもに気付かれなければ良い事よ、覚悟は良いな」
その時、女性陣の部屋では。
「なんか隣、凄い事になってません?」
BBが頭が痛いと手で押さえる。
「うわー、仲がハッテンですよ、あ、ご主人さまは耳栓耳栓、腐りますからね、色々と」
安眠用と言ってキャスターは白野の耳に耳栓を装着する。
相変わらず隣の声が聞こえてなかった白野は、何でわざわざと思いながらも、素直にキャスターの言う通りにした。
「まあ、余はどちらともいけるから否定はすまい、だがあの二人では少々絵面がの」
「うう、まさかこんな所で始める気じゃ」
その隣の男性陣の部屋では。
「随分と強気な事だ、どうやらまだ縛られ足りないと見える、二度と忘れられないくらい激しく
身体に刻む込む事にしよう」
「ぐっ、おのれっ、貴様何をするか」
「いや何、こういう時の為にと思ってね用意していたのだよ」
この後、アーチャーがBBから借り受けていた鎮圧用シェイプシスターを展開し、同室は嫌だ貴様出て行けとゴネるギルガメッシュを縛り上げ、これは躾けとばかりにビシバシ叩いたのだが。
その叩かれる音とギルガメッシュの上げる苦悶の声に、隣の女性陣の妄想は頂点に達した。
「まさか、あの二人がそこまで行っているとは、意外と言うかなんと言うか」
「ううむ、倒錯の世界よの」
「そんな、アーチャーさんのクール鬼攻めなんて」
「桜、貴女・・・・」
他の四人の不審な態度に相変わらず訳が分からず首を傾げる白野だった。
そして次の日。
洗面台で顔を洗っていたアーチャーに
「おやおや、昨日はお楽しみでしたね」
ニヤニヤ笑いながら、キャスターが近づく。
「何が楽しい事などあるものか、昨日は奴が暴れて大変だったのだぞ」
疲れを滲ませアーチャーが言う。
「ほうほう随分と激しかったようで」
「ああ、縛り上げて何度も何度も躾けたのだがな、最後まで屈服しなかったよ」
「いやはや、お盛んですね、タマモ照れちゃいます」
「ん?照れる?」
「大丈夫ですよ、もうみんな知ってますから」
「あ、ああ、そうなのか、やっぱり隣まで聞こえてしまったか、マスターは大丈夫だったか?」
安眠妨害はしなかったかと尋ねるアーチャーに、キャスターは心配ご無用と手を胸の辺りまで上げる。
「当たり前です、そんなお耳汚しさせる事はこの私が認めません、ちゃんと耳栓を渡して
何も聞こえ無いようにしてましたから」
「ふむ、念に入った事だな、ところで今朝は妙に他の女性陣から生暖かい視線を送られるのだが、昨日の夜の事がそんなに気になったか?」
「まあ、確かに気にはなりましたけど、大丈夫です、みんなちゃんと理解してくれましたから」
「そ、そうか、なら良いのだが」
どことなくキャスターの会話に違和感を感じるアーチャー。
その違和感の正体は帰宅後に判明するのだが、今はまだ知らぬがブッタ状態であった。
そうして一部誤解を残したまま温泉旅行は終了した。
白野もセイバーも概ね楽しめたようで、帰宅後の騒動をまだ知らない帰りの道中は和気藹々としたものだった。
おまけ
ある日の白野
某ネット上にて
「やれやれ、やっとぷちこれを導入できたよ、これでワカメアバターともおさらばだ、全く何で
僕がワカメ姿なんだ、ほんと訳の分かんない対応だったよ」
「いやいやシンジくんのは納得の伝統芸能だったしょ、それよりジナコさんがハロの姿って、
そっちの方が訳わかめっす」
「・・・・それもある意味納得の姿だって気もするけどね」
そんな二人が作ったアバターは下記のようなものだった。
名前: キナコ
鳴き声: っす。
特殊技能: ゲームの時以外は寝ている廃プレイヤー。
煽り技能は名人芸であり、結構心理戦が得意。
後、持久戦が得意であり、時間の経過とともに強くなっていく。
名前: ワカメ、ではなく、バカメ、でもなく、マキリ
鳴き声: 海藻類に鳴き声などない(只よくフッと鼻で笑う)
特殊能力 アジアのゲームチャンプなだけに実力は折り紙つき、プレイヤーの実力が大きく
物を言うような対戦ゲームではぷちのはまず勝てない、運の良し悪しで結果が大きく左右
されるすごろく系その他などなら、妙な幸運を発揮するぷちのも勝てる。
「・・・・自分で作っておいてなんなんっすけど、悪意を感じるオプションっすね」
「まあ、それはともかくとして、今日はこれでゲーム勝負といこう」
「ぷちこれ専用ソフトっすか、なんかこれとっても地下ソフト臭がするっすね」
「まあ、普通のレースゲームだと白野は絶対僕には勝てないからな、ハンデだよハンデ」
という訳で、本日は水泳レースゲームを行う事になった。
みんな水着に着替えて、用意スタート。
結果は以下の通り。
赤帝 きわどすぎる水着で失格。
キャス狐 ぷちのの艶姿に鼻血噴出してリタイア。
マキリ プールの底に根付く。
キナコ 居眠りして起きず。
ぷちの 無事泳ぎ切り勝利。
「なんだよこのクソゲー、まともに操作出来ないじゃないか、どうしていきなりウォール化
するんだ、変なとこばっかに拘わって、技術の無駄遣いじゃないかよ」
「いやいやいや、このソフトって、どうやらアバターに水着を着せて楽しむのが主な目的らしいっすから、レースについてはおまけみたいなものだったんっすよ、この妙な個性への拘りも、
この手のソフトらしいって言えばらしいっすよねー、こういうの私は好きっすよ」
「くそっ、そもそもこのソフトって男と女で扱いの差か激し過ぎるだろ、
イチョウの葉やカエデの葉やマスクって、こんなの水着でもなんでも無いじゃないか
だいたいなんだよ一番ましなのが赤フンなんて、どこのOTOKO塾だよ」
「だから、そこが良いって言ってるすよ、この男女の差別的扱いがツボっすねー」
ちなみに今日の白野は勝利でご飯が美味しかったらしい。