タイトル名未定   作:はゅこ

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第2話

 

 

 

 

 

「ただいま……っと。」

 

背中に背負ったリュックを下ろし、家のドアを開ける。もう日も傾いている時間だった。

階段を登り、フラフラと引き寄せられるようにソファに倒れる。

埃が同時に舞ったが、ソファの包み込んでくれるような柔らかさに目を細めた。

 

「んんーっ!やっぱり、ここのソファは格別だなぁ〜…」

 

今日の疲れもソファに染み込んで行くように蕩ける。

 

「(…にしても、ちょっと埃が気になるな……)」

 

それもそのはず、周りを見渡すと様々なものが埃がかっていた。

本棚ももちろん、机や小物の上にも少しあった。

 

 

 

 

…実はこの事務所、おじいちゃんから引き継いだものだ。それも引き継いだのはつい最近。

僕が一人暮らしをしたがっていた時に話をされたのだった。

 

「一人暮らしをしたい?…ああ、それなら私の事務所を使えばいいさ。」

「えぇ?…でもあそこ、おじいちゃんの仕事場なんじゃ?」

 

当時はとても人気な事務所だった。

南街区の人だけでなく、北からも西からも東からも、なんなら外国からも依頼されてたぐらいの有名さだった。

…けど、急にこんな事を言われてしまった。

 

「私はもう辞める。だから、クレアがちゃんと一人暮らしできる年になったらあの事務所を使いなさい。」

「おじいちゃん……うん、分かった!」

 

 

 

 

……って、去年の成人したあの日に受け渡されたって訳。

はーあ、なんであの時軽く言っちゃったんだろ。

まさか事務所の家を貰うだけじゃなく、事務所の仕事まで僕に回ってくるなんて……

 

あれ以来僕はここの事務所を動かそうとは思っていなかった。…ただ、やっぱりおじいちゃんが受け渡してくれたこの場所、この仕事を…大切にした方がいいよね。ってなって今に至る。

 

思い出に浸った所で、ゆっくりと寝ますか。

掃除はまた今度ね、どうせ客は来ないし。

 

……と、疲れて重たくなった瞼を閉じようとした時だった。

ここにいても聞こえるぐらいの、慌てたような足音が聞こえる。

 

「ク、クレア!ちょっと……って、のんびりしてる場合じゃないわよ!」

「……んぅ…今、寝る所だったんだけど。それ寝てからじゃだめなの?」

「これを聞いたら、きっと眠気だって覚めるはずよ。」

 

遥ちゃんは、僕の肩を大きく揺らしながら、目を見開いて真剣な表情で見つめる。

 

「……い、いい?落ち着いて聞きなさいよ?」

「お、落ち着いてないのは遥ちゃんでしょ!」

 

肩を揺らされすぎて目が回ってきた。

「あらごめんなさい」と言って急に手を離す。

 

「それもそうね、深呼吸するわ。すぅー……はぁ………あ、あのね?……来たのよ。ついに。」

「来たって…なにが?」

「………………依頼が、依頼が来たのよ〜っっ!!!」

 

手を大きくあげて遥ちゃんは喜んだ。

 

「い、依頼…?依頼ねぇ…………はぁぁぁ!?!?」

 

 

 

 

 

♢

 

 

 

 

 

「けほっ、けほっ……ね、ねぇ、ここってどれぐらい掃除されてないのよ?」

「うーん……何年かなぁ?あっはは……」

 

依頼がついに僕の所に舞い込んできた。

どうやら総合組合に貼ったあの貼り紙が幸をなしたらしい。

うきうき気分で依頼者さんが来る日を待とうとしていた。

 

が、それより先にする事があった。

それが掃除だ。

 

「こ、こんなんじゃ終わりそうにないわ…へ、へっくち!……私、1階の掃除してくる。」

「はーい、お願いしま〜す……」

 

羽ぼうきを片手に、物を整理しつつも埃を取る作業をしていた。

なんで大掃除並にしてるのかって?

だって、お客様が見えた時に『ここの事務所は汚い』なーんて噂が流れたら……恐ろしくってしょうがない。

僕は一生懸命に掃除をした。

 

机や椅子周りを掃除した後は、周りに綺麗にダンボールが積まれた本棚を掃除する。

ダンボール、なんでこんなにあるんだろ……

一つずつ退かしながら掃除をした。

しかし、ダンボールの中身は空っぽだった。

 

「(……なんでこんな空っぽのダンボールが?)」

 

少しずつ、少しずつダンボールを退かしていった。

すると…本棚の全貌が見えてきたのだ。

 

「え……こ、これは……」

 

ダンボールはただ積まれていたんじゃない、それを隠されていたのだった。

その『それ』というのは――

 

「歯車が、こんなに沢山…」

 

ガラス張りになっている向こう側には、沢山の歯車が並んでいた。

大きな歯車、小さな歯車。

歪な歯車にギザギザの歯車……とても沢山の歯車が隠れていたのだった。

 

「うわぁ、すっごいなこれ。どうしてこんなにいっぱいあるんだ?……この本棚、機械仕掛けの何かだったりするのかな。」

 

目を見張るような光景で、僕も興奮していた。

そして…ここでまた、僕の悪い癖が出てしまった。

 

「……お宝が眠ってる予感っ!」

 

そう、何を隠そう僕はトレジャーハンター。

何かが潜んでいそうな物にはめっぽう弱かった。

機械仕掛けの扉だったりするんだろうか、すぐさま僕はスイッチらしき物を探した。

しかし、いくら探そうにもそれらしきものは見つからない。

 

「うーん、なにも見つかんない。……やっぱり今は掃除が大切だよね。後にしよっと。」

 

本棚の方の扉を開け、1冊ずつ綺麗に掃除をした。

その時、上の方にあった本が崩れ落ちてしまった。

 

「ありゃ、なんか落っこちちゃった。」

 

本を拾い上げその本を確かめる。

古そうな皮の本で、タイトルは汚れ霞んで見えない。汚れを取ろうと手で擦ったが何も見えなかった。

 

「(なんなんだろ、これ……)」

 

本は分厚いしずっしりと重く、両手で持つのが精一杯だった。

しかも本を開いてみようにも鍵がかかっていた。

本に鍵をかけるなんて……よっぽどの物なんだろう。

何より本から少量の魔力が流れていたのだった。

 

生命でない限り、魔力が流れる無機物なんて相当……

 

「ま、いっか。今は開けないんだし。」

 

先程挟まっていた場所に差し込み、掃除を再開した。

 

 

 

 

 

♢

 

 

 

 

「よし!掃除おーわりー!」

 

手を腰に置く。

思ったより時間がかかっていて、もう夜だったがやっとの思いで終わらせた。

 

「ね、ねぇ……ふぁぁ、これやっぱり1日で終わらせなくても良かったんじゃ?」

「いーのいーの!また明日やるか〜ってなったら、きっとやらなさそうだもん。…遥ちゃんもお疲れ様!」

「お母さんに心配される……どうやって帰ろうかしら。」

 

あと少しで門限を過ぎてしまいそうな時間。歩いて帰ったら多分間に合わない時間だ。

ちょっと意地悪言ってみちゃおうかな。

 

「魔法とか使えばひとっ飛びじゃん。」

「あのねぇ、あたしが魔法使えないって事分かって言ってる!?」

 

そう、遥ちゃんは魔法が使えない。

魔力もほとんど感じられず、せっかく学力はいいのに魔法が全くなもんでこうやって大学も三浪していたのだった。

 

「あっははごめんごめん。でも、そこまでして僕の学校に入りたいの?嬉しいなぁ〜」

「はぁ!?ち、ちが……そういうのじゃないんだから!」

 

顔を赤くして怒り出す。

なんていうか、遥ちゃんは分かりやすいね。

笑顔で僕は見つめていた。

 

「な〜にニヤニヤしてんのよ気持ち悪い。もうあたし帰るからね!」

 

遥ちゃんは荷物を持って勢いよくドアを開いた。

 

「足を早くする魔法かけてあげようかー!」

「い、ら、な、い!」

 

未だにぷんぷん怒りながら走っていった。

僕は戸締りをして、一体どんな依頼が来るんだろう。と密かに楽しみにしていた。

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