見たよ、アイドルになったさなぴー   作:ましゅ麻呂

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これは、私にとって忘れられない出来事が起こった日だ。
私が罪を犯した日。友達の愛依を傷付けた日。――



見たよ、アイドルの愛依

 

 

 

「ごめんねーさなぴー、うちの暇つぶしに付き合ってもらって」

「全然大丈夫だよ、私も暇だったし寧ろ誘ってくれてサンキュって感じ」

 

 もう夏休みも手前な休日の街中で、さなぴーこと私、藤堂佐奈は、友達である愛依とタピってある人物を待っていた。

 

「――それに愛依のプロデューサーにも会ってみたかったし」

「おっ、そっかー!それじゃあちゃんと紹介しないとね!」

 

 最近アイドルになった愛依のプロデューサーだ。

 昼から仕事の打ち合わせをするらしく、それまでタピらない?と愛依に誘われたため、タピりながら愛依のプロデューサーを待っている。

 

「――あっ!あれプロデューサーじゃない?プロデューサー!こっちこっち!」

 

 愛依が手を振った先から、愛依のプロデューサーらしい人物が走ってきている。ふーん、あいつが愛依のプロデューサーね。

 

「――ああ、待たせて悪かったな。打ち合わせが押してしまって……」

「いいっていいってうちも友達とタピってただけだし」

 

 待ち合わせ時刻ギリギリに付いた愛依のプロデューサーと愛依が話している。仲は悪く無さそうだ。

 

「あ、紹介するね、うちのガッコの友達のさなぴー。

さなぴー、この人は、うちのお仕事のプロデューサー!」

「よろしく、愛依がお世話になってます。」

「…よろしく」

 

 愛依に紹介されたので、愛依のプロデューサーとお互いに挨拶をする。

 第一印象は、いかにも真面目な仕事人間って感じだ。それに……

――いや、そんなことはどうでもいい。私はこいつに会ったかったのだ。

 

「あ、のんびりしてる時間ないんだっけ?もう行かなきゃいけない感じ?」

「いや、時間に余裕を持ってるからそこまで慌てなくても大丈夫だよ」

「サンキュ!じゃあこれだけ飲み切って――「――……ねえ」ん?」

「愛依にじゃない、あんた……愛依のプロデューサー」

「俺……?」

 

 突然の私の呼びかけに困惑する愛依と愛依のプロデューサー。

 今日初めて会った愛依のプロデューサー、こいつに言わなければならないことがあった。

 

「見たよ、アイドルの愛依、ミステリアスとかクールとか、そんなキャラやらされてるの」

 

 愛依がキャラを作って、アイドルをやっていることについてだ。

 私は、それが許せなかった。

 

「え……?いやいや、やらされているんじゃなくてぇ――」

 

 私が言ったことで更に困惑する愛依と愛依のプロデューサー。

 そりゃそうだ、いきなり初対面でいきなりこんなことを言うんだから。

 

「あんな作ったキャラにしなきゃアイドルやれないの?ここにいる愛依だって、すっごく可愛いのに」

 

 愛依がアイドルになったと聞いた時、私は喜んだ。だって愛依は可愛いし、笑うともっと可愛い。それに誰にでも優しくてとてもいい子だ。そりゃもうすっごく喜んだ。

 絶対人気になると思ったし、友達みんなで応援した。

――でもテレビに出ていた愛依を見た時、私たちの知らない愛依がアイドルをやっていた。

 

「ま、待ってよさなぴー、プロデューサーは…」

 

 静止を求める愛依を横目に私は続ける。

 

「売れればいいの?愛依にずっと嘘なんかつかせ続けて……」

 

 愛依だって嘘なんかつきたくない筈だ。

 売れるためだけにキャラを作るよう言われて無理してアイドルやってるに決まってる。

そうだ、そうに違いない。愛依はこいつに――

 

「愛依が無理やりアイドルなんかさせられているの……

――あんたのせいなんでしょ」

「そんなことない!――あ…………」

「え…………」

 

 私は、愛依に怒鳴られてようやく、愛依の方を見た。

 

「…………え、………あ…………これ、違くて、その……………………っ」

 

――私は、愛依にこんな顔をさせてしまったのか。

 

「…………ごめん」

 

――私は、

 

「今日は、帰るね」

「――っ!さなぴー!」

 

 私は、タピオカミルクティーを片付けて、走ってその場を離れた。

 

 

 

________________________________________

 

 

 

 

「ハッ…………ハッ…………ハッ…………!」

 

 私は、間違っていたのだろうか…………。

 愛依から逃げて、走りながら私は考える。

 

「ハッ…………ハッ…………ハッ………!」

 

 いや、嘘をついてまでアイドルになるなんて間違っている。だって愛依は嘘なんて付かなくても可愛いし魅力的だから。

 愛依が無理してまでアイドルをやる必要なんてない筈だ。

 

「ハッ……ハッ……ハッ……ハッ……」

 

 でも――

 

『愛依が無理やりアイドルなんかさせられているの……

――あんたのせいなんでしょ』

『そんなことない!――あ…………』

『え…………』

『…………え、………あ…………これ、違くて、その……………………っ』

 

 でも――

 

「ハッ……………………はぁぁぁ…………」

 

『そんなことない!』

――愛依のあんな必死な顔、初めて見たなぁ。

 

「はぁ……………………はぁ……………………はぁ……………………」

 

 人通りが少ない路地に出たので膝に手をついて呼吸を整える。

 

「はぁ……………………はぁ……………………はぁ……………………はぁ」

 

 させちゃったなあ。

 

「…………………最っ低」

 

 私の自分勝手さにイライラする。あの場で愛依の気持ちも考えずあんなこと言って、愛依にあんな顔させるなんて。

――――でも、愛依はそれでいいんだろうか、嘘をついてまでアイドルなんて…………少なくとも私は………………

 

「――認めない、絶対」

「女の子がこんな人通りが少ない所に一人でいたら危ないですよ」

「――ッ!?誰!?」

 

 背後から急に声を掛けられたので驚いて振り向くと、スーツ姿の胡散臭そうな顔をした男が立っていた。

 

「おっと失礼しました。驚かせるつもりは無かったのですが」

「誰なの、変なことしようとしたら警察呼ぶから」

「変なことは神に誓っていたしません、少しお話をと思いまして。

 紹介が遅くなり済みません。私、412プロダクションという芸能事務所でプロデューサーをしております。狭間です」

 

 突然現れた男に私が誰か聞くと、男は412プロダクション?という芸能事務所のプロデューサーをしているらしい、狭間と言った。胡散臭っ。

 

「はあ、本当かどうか知らないけど412プロダクション?のプロデューサー?(胡散臭いわね)」

「おや、疑ってますね?こちら名刺です受け取って下さい」

 

 そう言って狭間と言う男から名刺を渡される。

 どう考えても胡散臭いので、名刺の情報をスマホで調べる。

えーと、芸能事務所412プロダクションと。

 なになに、412プロダクションは283プロダクションと同時期に作られたプロダクションで現在は目立った活動はしていないが、一時期伝説となった八雲なみと比べても遜色無いアイドルを出していたことで知られる。ねぇ。

 あっ、412プロダクションのホームページがある。書いてある電話番号一緒だ。

代表取締役社長、それと従業員も少しだけど写ってる。そこにいる胡散臭い男が写ってた。

 ガチじゃん。

 

「ガチじゃん!」

「はい、ガチですよ。最近はスマホで何でも調べられて便利ですよねぇ、今回はそれに助けられました」

「そ、それで、私に何の用なの412プロダクションのプロデューサーが」

 

 少し戸惑ったが、412プロダクションのプロデューサーが私に何の用なのか。

 そもそもこんな人通りが少ない所で声をかける時点で怪しいのだ。それと胡散臭いし。

 私は警戒しながら男に尋ねる。

――だが、次に男が言った言葉が私の運命を変えることになるなんて当時の私は思いもしなかったのだ。

 

 

 

「はい、あなた、“アイドル”になりませんか」

 

 

 




初投稿です。勢いで書いてます。
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