ゼノブレイド3のノアミオの過去、NとMの話。ノアとNが一つになるとき、Mすら知らなかったNの過去が明らかになる。

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 後半のネタバレ注意!
 話の整合性をつけるためにちょっとメインストーリー弄ってます。


 具体的にはNとの最終決戦の地をオリジンではなく、究極の船完成の間近、シティに襲撃をかけてきたという形になっておりますのでご了承ください。



想い紡がれて

 

 

 メビウスNとの決戦は何の因果かシティで行われた。発端となったのはオリジン突入のための究極の船だ。渦を突き抜けるほどの性能を持つその船はメビウスの本拠地、オリジンに到達しうる危険な存在であった。

 メビウスがそれを許すわけもなく、Nがシティを襲撃したのである。シティは移動可能の鉄巨神で補足は困難と思われていたが、究極の船を作るための部品探しのため、人の出入りが今まで以上に激しくなっていた事から、足が付いてしまったのだ。

 技術者さえ残っていれば船は何度でも作れこそするが、ノア達は究極の船を何が何でも守り抜かなければならなかった。今代のウロボロスであるノア達はシティの人ではなく、ケヴェスとアグヌスの者、10年しか寿命を持たない者達だ。このチャンスを逃したらノア達の寿命が先に来てしまうかもしれない。Mから体を貰ったミオだけは大丈夫であろうが、一人だけ生き残っても意味がないのだ。

 

 世界をメビウスから解放するための負けられない戦いの最中、ノアはやりきれない思いを抱えていた。リ・ガード刑務所で初めて戦った際、Nは恐ろしい程に強かった。ウロボロスになってもその圧倒的実力差は埋まらず、軽くあしらわれるほど。あの時彼の気が変わっていなかったら全滅していたに違いない。

 ミオを失いかけた事と言い、Nの強さに恐怖と絶望を与えられたノアだったが、今は不思議と恐怖を覚えなかった。Mから貰ったNの記憶、Nの強さが悲しみの果てにたどり着いたものだった故に。

 たった一回だけでも絶望しかけたノアだからこそ分かる。何度も何度もミオを失うという地獄のループ、ノアは断言できた。もし自分がNと同じ経験をしたら彼と同じようになっていただろうと。

 悲しみという言葉すら忘れてしまったN、悲しみの果てに虚無となった彼の斬撃は潰れてしまいそうなほど重い。一撃一撃が悲鳴にも似た叫びを伴っている。そのすべてを受けきって、ノアはとうとう一太刀浴びせた。

 これまでずっと届かなかった一撃が、届いた。たった一度の攻撃であったが魔剣ラッキーセブンにとってはそれで十分、勝敗はここで決した。

 

 正直、ノア自身何故勝てたのかは良く分からなかった。

 

 もう失うまいと必死だっただけで、実力差を埋めるだけの何かができたわけじゃない。

 しいていうなら魔剣ラッキーセブンという切り札があったが、命の火時計を斬る事が出来るほどのキレ味を誇るそれも、当てられなかったら意味がない。結局のところ、使い手の技量がものを言う。

 しかしノアには特訓なぞしている余裕はなかった。ミオの寿命に関してはMの体を貰った事で問題なくなったが、ノア含む他の皆の寿命問題は相変わらずだし、倒さなければならないメビウスは至る所にいる。悠長に鍛えている時間なぞあるわけもない。

 しかも今は解放したコロニーの件もあるのだ。解放されたコロニーは命の火時計の呪縛こそなくなるが、メビウスとしては戦う意志を失ったコロニーに価値はない。物資などの補給は止まってしまうため、メビウスの加護なしで生きていくためには、各々のコロニーで自立しないとならないのだ。

 アイオニオンは広大なため、自分たちが解放したコロニーを再度見に行く事自体は難しいが、ニイナの作ったコレペティア情報を逐一確認しては、必要な物を送る。それはコロニーを解放して回るノア達が自分達に課した最低限の責任であった。

 そう、ノア達は世界をより良くしようと動いていただけ。強くなるために特別な何かをしたわけじゃない。ただがむしゃらに進んできただけだ。しかしノアとしては一つだけ心当たりがあった。

 

 Nの世界が閉じていったのに対し、ノア達の世界は広がっていった。ノア達は途中で出会った数々の仲間達の生き様を知った。武もまた然りだ。二刀流で苛烈に攻めるエセルや、弱点を付く事(クリティカル)に特化したニイナの剣は、同じ剣使いのノアにとって良い刺激だった。

 ランツにはアシェラ、タイオンにはイスルギと言ったように仲間達も、出会う人々からの教えを受け、成長していった。リ・ガード収容所ではまだ追いつくほどではなかったが、それでも最初シティを目指した頃から比べて、段違いに強くなっていたのは間違いない。

 そしてノア達の成長はあの苦い敗北の後も続いていた。現実という絶望を知り、生の喜びをより深く知ったノア達はこれまで以上に世界に真摯に向き合った。絶望を知るからこそ、より強固になった想いが行動となり、行動から生まれた新たな輪がノア達をさらに強くする。

 

 悲しみであろうと喜びであろうと想いの積み重ねは力となる。

 Nの強さもまた悲しみの積み重ねの果てにあるもの。それ故に強い。

 

 だがNは止まってしまった。

 

 止まってしまった者と、時を刻み、成長し続ける者、例えどれだけ実力差があろうとも、いずれどこかで逆転するのは必然であった。

 

 ノアはそれを一言でまとめる。『運が良かった』だけと。自分一人だけじゃこうならなかった。人との巡り合いがノア達を強くしたのだ。そして人との出会いは欲して得られるものではない。そのすべては時の運なのだ。

 

 

「一緒に行こう」

 

 ノアは項垂れるNに手を伸ばす。今の自分の記憶がNを癒す事が出来ればいいと。彼の悲しみの記憶を俺が受け入れられればいいと。そして二人の手が触れ合った瞬間、Nは光となりノアへと溶け込む。

 

 異変はその直後に起こった。

 

 

 

「あ、あああ、あぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ノアは崩れ落ちるように膝をつき、顔を覆った。溢れんばかりの感情に翻弄され、涙が止まらない。かなしくてかなしくてかなしくて……

 ノアの異変にたまらずミオが駆け寄る。

「ノア!?」

「あぁぁぁぁぁ……」

 力なく項垂れるノアにミオは何度も声をかけるが反応はない。ミオにはそれが何であるかは察しがついていた。ミオがMの記憶を引き継いだように、ノアにもNの記憶が流れ込んだのだと。

 ミオの心の中のMが叫ぶ。Nの悲しみの深さを理解したくてもMにはできなかったのだと。何故ならMは何時いかなる時もNを置いていく側であったから。

 もし先にNに先立たれていたらMはどうしていただろう? 想像もしたくない話だ。だがNはそれを繰り返し繰り返し体験してきた。そして繰り返すたびにNから笑顔が消えていく、Mは己こそが彼を曇らせる原因であり、救う事が出来ない現実に絶望したのだ。

 このままではノアも絶望に染まってしまう。そうはさせてなるものかとミオはノアを背後から抱きかかえ、必死に呼びかけた。

「大丈夫、大丈夫だよノア。私はここにいる。ここにいるから」

 

 

「一体何がどうなってやがる?」

 変化が急激すぎたのだろう。人目もはばからずに泣くノアに唖然としているランツであったが、比較的冷静さを保っているタイオンが指示を飛ばした。

「大体察しはついているが、確かめるより先に僕達はやる事がある。N以外のメビウスがいないとは限らない。周囲の安全を確認してノア達を安全な場所まで退避させるぞ!」

「あいよ! うちの参謀殿は冷静で助かるぜ」

「茶化すなユーニ! セナ、頼む。ミオと一緒にノアを支えてやってくれ!」

「分かった!」

 

 

 こうして何とかノアをシティ内部の宿舎まで連れ帰り、部屋まで運んだタイオン達であったが、ノアに付き添ったミオを除いた四人は外の休息所に集まっていた。話す事はもちろんノアの異変についてだ。その口火を切ったのはランツであった。

「それでタイオン、説明してくれよ。一体ノアはどうしちまったんだ?」

 憶測だがと前置きを置いてタイオンは説明を始めた。

「ミオはMの記憶を引き継いだと言っていた。きっとノアにも同じことが起きたんだろう」

「ていうとあれか。Nの記憶を引き継いじまったと」

「あくまで推察だがな……」

「どれだけきつかったかは何となく分かるぜ。何せ俺らはNのあの淀んだ眼を知っているし、Mが消えた際の狼狽ぶりを知っているからな。だけどよ」

「ああ、言いたい事は分かる。ノアはミオからすでにNが辿ってきた道を知っている。そして受け入れていたように思う。きっとノア本人だってミオのように記憶を見せられる可能性について、予期していたに違いない」

 ノアはそれこそNのすべてを受け止めるつもりであったのだろうと、タイオンは推測していた。それこそ相当な覚悟を持って触れたはずだ。にも関わらずNに触れた後のノアは一人じゃ歩けないほどに焦燥し、呆然自失となっていた。つまりはノアにとってNの過去は想定以上だったという事になる。

「知っていると実際に見たは全然違うぜ。少なくともあたしはそうだった」

 ユーニは過去の自分の躯を思い出しながら言った。吹っ切れるまでどれだけ時間がかかったか。他人の事なのか自分の事なのか、それによって全然感じ方が変わってくるのは間違いない。

「それはそうなのだろう。だけど僕はちょっと違うと思っている」

「というと?」

 セナの問いにタイオンは例のごとく眼鏡をくいっと上げた。

「ノアが知ったNの記憶は結局のところ、Mから見たNの記憶でしかないという事さ」

「そーゆー事かよ」

 タイオンの言わん賭している事を理解したユーニは面白くなさそうに頭をかいた。

 皆が皆沈痛な面持ちになった。Nの悲惨な過去をタイオン達も一応は知っている。だがそれはN本人から聞いたものではない。Nは一体何を見て、何に絶望したのか。本当のところは本人にしか分からないのだ。

 思い返すのは同じメビウスとなり立ちふさがったシャナイアの存在だ。己の命を絶ってまで彼女は過去の自分を消し去ろうとした。誰にも必要とされないという、あの悲痛な叫びは今でも耳に残っている。とりわけセナにとってシャナイアは他人事じゃなかった。シャナイアの存在は誰にも出会えなかったセナと言っても良い。

「ノア、心配だね」

「あいついっつも抱え込んじまうからなぁ」

 セナとランツは思わず頭を抱えた。元気づけなければならないと思ってこそいるが、事が事である。簡単にはいかなそうな事は一目瞭然であった。そんな重い空気を吹っ飛ばしたのが我らがノポン、マナナだ。

「悲しい時は美味しいご飯が一番ですもー!」

「マナナ、そんな単純な話じゃないも」

 そこにリクのツッコミがセットで入ってくる。

「いーえ、ここは絶対ご飯ですも! 体に元気がないと気分が落ち込むですも! つまりお腹が減るから悲しくなるんですも!! これは真理ですも!!」

 マナナは燃えていた。彼女は忘れていなかった。牢に囚われていた一ヶ月間の事を。皆笑顔を失った一ヶ月だった。調理器具さえあれば、素材さえあれば、あの時無力感を感じたのはマナナも一緒であった。

「あはは、そうだね。美味しいご飯作ってノアに元気になってもらおっか」

 マナナなりの一生懸命さに笑顔になったセナは、彼女を手伝うために立ち上がる。

「あながち嘘じゃねーよなぁ。ケヴェスの兵士だった頃はそーでもなかったけど、今じゃ食べる事が楽しみになってるしよ。くたくたになりながらやっと休めるところに辿り着いてさ。皆揃って食べる飯は格別だった。だからかな? あたしらが牢に閉じ込められていた時、1人欠けた状態の飯は最悪だったぜ。飯そのものが不味いってのもあったけどよ」

「そう言えば牢屋から無事に出る事が出来て、ミオが帰ってきた直後の食事の時、真っ先に泣いたのはユーニだったな」

「ああ、泣きましたよ。悪いか!?」

「いーや、君が泣かなかったらきっと僕の方が泣いていたさ」

 ユーニは思う。タイオンのこういうところがずるいと。普段ひねくれているくせに優しさは人一倍だ。しかも何時だって不意打ち気味。何だかむず痒い気分になってしまう。ちなみにこれはタイオンが思っているユー二感と一緒であった。

「食事をするのは僕も賛成だ。せっかくだから味だけでなく、最高の栄養バランスを……」

「「ランツ!!」」

「応ともよ!!」

 セナとユーニが同時に叫ぶと同時にランツはタイオンを取り押さえた。

「ランツ!? 一体何をする!?」

「お前さんに料理をさせるわけには行かねぇ! それこそノアがまたNになっちまう!!」

「失礼なっ!! というか僕の料理はそこまでか!!?」

「タイオン、信用してほしかったらまず調味料代わりに栄養剤出すのをやめるも」

「ぐぬぬぅ!!」

 

 結局タイオンとランツは買い出し兼、モニカへの報告係となり(実際は体よく追い払われただけであるが)、残った女性陣2名とプラス1ノポンは、マナナの調理を手伝う事となった。

 マナナが気持ち良く鍋を振るっている最中、宿舎からミオが出てきたのが見えたセナは、思いっきり手を振ってここにいますよアピールをした。

「ミオちゃん! ノアは大丈夫?」

「何とも言えない、かな。ノア、泣き疲れて寝ちゃったんだ」

 ミオの表情は暗く、ユーニは詳細を尋ねる。

「相当に重症だな。話は聞けなかったのか?」

「うん。でもノア、ずっとごめんって言い続けてた。大丈夫。心配ないって何度も言ったんだけど届いていないみたいで」

「ごめん……か」

 ユーニは考える。ごめんとは一体何に対してなのだろうと。ミオの過去であるMに心当たりはないようであった。そうなるといよいよもってタイオンのNだけが持つ過去説が濃厚になってくる。

「タイオンが言っていたよ。NにはきっとMが知らない過去があるんじゃないかって」

「Mが知らないNの過去?」

 ミオは顔をしかめる。基本的にゆりかごからの転生時は、ケヴェス、アグヌス共に前世の記憶は引き継がない。それまでの記憶を思い出したのはメビウスになってからであった。それ故にショックはとてつもなかったが。過去の悲劇が同時にまとめてやってきたのである。到底普通ではいられなかった。

 Mがまだミオだった頃の記憶に、ノアがいなくなってしまった記憶は一度たりともない。その裏が意味するものは、ミオは何時だってノアを一人ぼっちにしてきたという事だ。ミオの死の積み重ねの先にNがいる。

 過去の自分を恨む事はできない。全力を尽くした結果なのは分かっているから。それでも何かできなかったのかと考えてしまうのは未練なのか。過ぎてしまった過去はどうしよもないのに。

「あんまり深刻に考えない方が良いぜ」

「え?」

「本当はあたし達以上の付き合いっぽいし、すでにミオは知っていると思うけど、ノアは抱え込んじまうタイプだ。Nとなったノアはそれこそ抱え込みすぎてメビウスになっちまったんだろう。でも今は違う。ノアはちゃんとさらけ出してくれた。苦しい、悲しいってあたし達に伝えてくれた。これって大きな進歩だって思わないか?」

「それは……確かに」

「助けてほしいって言ってくれたんだ。それはきっとあたし達を信頼してくれたからだろ? だったらいくらでもやりようがあるさ」

「ユーニ……ありがとう」

 カラカラと笑うユーニにミオは深く感謝した。勇気づけてくれる友の何てありがたい事か。きっとミオとノアだけだったら行き詰っていたのかもしれない。支えてくれる仲間の存在の有無、これが今のノアとミオと過去のNとMの差なのかもしれない。

「って事ではい、ミオちゃん!」

「わっとと、セナ?」

「料理を手伝って。ノアって何だかんだでミオちゃんの味付けが一番好きなんだから」

 セナの言葉に思わず赤面してしまうミオであったが、一番という言葉が悪かった。一流の料理人として自負があるマナナの心に火がついたのだ。

「それは聞き捨てならないですも! 料理人として一番は譲れないですも! ミオさん勝負ですも!!」

「ええっ!?」

「僕も参戦するぞ! 今ここで汚名返上して見せ……」

「「「だからタイオンは料理禁止」」」

「なんだとぉ!?」

 ちゃっかり報告を終えて帰ってきていたタイオンは、再起の機会を伺っていたのであるが、彼の名誉が回復するチャンスは訪れなかった。

 

 

 その日の夕食は豪華そのものであったが、結局肝心のノアは起き上がってこず、ミオ達は1人欠けた寂しい食事をせざるを得なかった。ミオとしては残念な気持ちはあったが、それでもユーニの『信頼しているからこそさらけ出してくれた』という言葉に勇気づけられ、また明日頑張ろうと心に決めた。

 いつもなら女性陣と男性陣で部屋割りがされているのだが、今日という日に限ってミオはノアと同室にしてもらっている。仲間達が気を利かせた結果であった。寝ているノアの表情はすぐれない。何度か拭ったにもかかわらず彼の頬はまた涙で濡れていた。

「ノア……」

 悲しみの淵にいるノアの様子にたまらなくなったミオは、ベッドの中へと潜り込んでノアを背後から抱え込む。そして優しく囁いた。彼が安心して眠れるように。

「大丈夫、きっと大丈夫だから。私はここにいるよ」

 それからもミオは同じ言葉を繰り返し、ノアに温もりを与え続けた。自分の想いが届きますようにと願いながら。

 

 

 ずっと抱え込むようにしていたからか、暖を失ったミオは程なくしてノアの不在に気づいた。Nとの激しい戦いの後で、ミオ自身の疲労も溜まっていた事もあり、そのままの態勢で眠ってしまっていたらしい。

 ミオは今の時間を知ろうと窓の外を見るが、シティは完全に屋内施設である事から今が昼か夜かは判別がつかない。時計ではなく真っ先に外を見てしまうのはずっと旅をしてきた故の癖であった。こうした何気ない癖でも愛おしく思ってしまうのは、癖というものが己の積み重ねの象徴であるからだ。

 ミオは実感する。私は今生きているんだと。

 すぐに時計の方へ視線を移すと時刻は午前3時を指しており、真夜中である事が分かる。状況を理解したミオは上着を羽織るとすぐさま外へと繰り出す。今の消え去ってしまいそうなノアを一人にするのは避けたかった。

「ノア、どこに行っちゃったんだろう」

 しかしシティ内部は巨大だ。コロニー何個あっても足りないくらいの大きさだから驚きだ。しかもシティは鉄巨神でもあり、その巨大な体ごと動けるのだ。正直シティが動くなんて非現実すぎて今でも信じられないほどだ。

 とにかくこれだけ広い場所をしらみつぶしに探すのは非効率的だ。ミオは今のノアが行きそうな場所を考える。しばらく思案顔になった後、ミオは一つだけ思い当たる場所があった。シティの中央にある死者をまつる慰霊碑だ。理由は定かではないが、確信だけはある。それは不思議な感覚であったが、ミオは己の直感を信じ、行く先を慰霊碑へと決めた。

 

 

 宿舎から慰霊碑への道はそう遠くはない。広場へ通じる階段を降りると慰霊碑はすぐそこだ。ミオが思った通り、ノアは慰霊碑の前で佇んでいた。

 ノアは両手を重ね、目を閉じた姿勢でじっとしていた。ミオはそれに覚えがある。「祈り」というシティ流のおくり方だ。ノアは一体誰を想って祈っているのだろう? ミオは疑問に思った。しかしここまで真剣であるからにはきっと大切な人だったに違いない。邪魔をするのも無粋だと思ったミオはノアが祈り終わるのを待ってから言葉をかけた。

「ノア……」

「ミオ……」

 いつもなら阿吽の呼吸で会話する二人であるが、この時ばかりはどう話せばいいか分からずに沈黙してしまう。ミオとしてはノアが祈りをささげていたのは誰かを知りたかったが、ミオの好奇心よりも重要なのはノアの方だ。しかしどういう言葉をかけてあげるのが正解なのか分からず、ミオは言葉に詰まってしまう。結局初めに言葉を発したのはノアの方であった。

「その、ありがとう。ずっと一緒にいてくれたんだな」

「それしか出来なかったから」

「でも、嬉しかった」

「どういたしまして。ちょっとは元気出たんだね」

 泣きはらした目は真っ赤であったが、僅かでも笑みを見せてくれたノアにミオは安堵のため息を漏らす。ノアが引き継いだであろうNの過去は壮絶であった。過去のMはそれを支えられなかった事を後悔していたのをミオは知っている。

 ミオは悩んだ。今度こそ私はノアを支えられるだろうかと。聞くべきか、聞かざるべきか、一歩進むのを躊躇してしまうミオに勇気をくれたのはユー二の言葉であった。ノアは悲しいと伝えてくれた。苦しいと伝えてくれた。きっとそれはノアが助けてほしいと言っているから。

 ミオは思った。支えられてばかりの人生であった。いつも助けたいと思っていても10年の寿命という呪いは残酷で。Mは、かつてのミオはミオ自身が先にいなくなってしまう運命を変えられなかった。でも今の私ならできる。ノアの力になる事が出来る。

 

 ミオは意を決してノアに聞いた。

 

「何があったか、聞いても良いかな?」

 

「……ミオは知らない方が良いと思う。辛い話だから。とっても」

 しかしノアからの返事は拒絶であった。ノアからの拒絶は予想はしていたがそれでもショックであった。今までのミオならそこで下がっていたのかもしれない。しかしそうして下がってしまった結果を今のミオは知っている。だからこそもう遠慮なんてしていられなかった。

「それでも私は聞きたい。聞きたいよ」

「ミオ……」

「私はノアから一杯大切なものをもらった。一杯助けてもらった。だからお願い。私にもノアを助けさせてよ! 私をもう一人にしないで!!」

 ミオにとってそれは切実な願いであった。守られているだけは嫌なのだ。ミオが望むのは対等な関係であり、ノアのパートナーとして隣に立つ事だ。もう心が離れ離れになるのは二度とごめんであった。ミオの抱えていた想いの深さ、それはまごう事なき彼女の本音で、ノアは目を見開く。そしてノアは気づいた。ミオを思っての行動が、かえってミオを傷つけていると。

 ノアは目を伏せ一考した後、どこか遠慮がちにミオに尋ねた。

「ミオ、俺は君に甘えてもいいだろうか……」

 一瞬呆気にとられたミオであったが、直後満面の笑みを浮かべた。

「当たり前でしょ! 私は君のパートナーなんだから!! それこそずっとずっと遠い昔から! 今更遠慮されても怒るんだからね!!」

 ミオはノアの手を取りまくしたてるように言う。それはもちろんミオ自身の喜びであったが、それ以上にMの喜びであったのかもしれない。今のノアはNと同化した存在であり、そのノアが歩み寄ってくれたという事は、Nがノアに戻ってきた何よりの証拠であったのだから。ノアを取り戻したMもようやくミオに戻れる。気づくとミオの眼に涙が溜まっていた。

「ミオ!? 泣いて?」

「違うの。ただ嬉しくて。ノアが私を見てくれる事が……」

 儚く笑うミオは美しくて、ノアはミオが隣にいる幸せをかみしめる。

「ごめん、心配……かけたよな」

「いいの。分かってるから」

 ノアとN、ミオとM、過去の自分と今の自分、記憶が混ぜこぜになっているはずなのに、不快感は不思議となく、ノアとミオはやはりNとMが自分自身であると再確認する。いつしか二人は抱き合っていた。お互いの温もりを確かめ合うように。

 その後二人は慰霊碑近くのベンチに隣同士で腰掛けていた。お互いしばらく無言のまま、その静かな時間を楽しんでいたが、ふとお互いの視線が合わさったところで二人は頷き合う。

 そしてノアは徐に話し始めた。自分の身に何が起こったのかと。

 

「Nに触れた時、Nの記憶が流れてきたんだ。ミオがMの記憶を引き継いだから、ひょっとしたら俺もそうなるかと思ったんだけど。案の定だった。記憶の引継ぎは同じ存在であれば誰でも起こるらしい」

「皆そう言っていたよ。きっとそうじゃないかって」

「そうなのか? いや、当たり前か。俺取り乱していたもんな。でもそうなるしかなかった。悲しみに押しつぶされてしまいそうで……」

 ミオがノアの手を握ると、ノアは大丈夫と笑い返す。そしてノアはとうとう核心について話始めた。

「ミオ、Nはさ。Mに一つだけ語っていない過去があるんだ」

 ミオは黙って頷く。それは皆と話して想定していた。問題なのはNだけしか知らない過去が一体何であるかだ。でもどんな過去だって受け入れて見せる。ミオの決意は固かった。

 

 しかし、

 

「俺達の子供のその後だ」

 

 答えはミオの予想の遥か上を超えていく。

 

「……え?」

 

 

「俺は、メビウスになる前のNはずっとMと一緒だった。でもあったんだ。たった一回だけだけど。ミオが現れなかった世界が……」

 

 

 そしてミオは頭が真っ白になった。

 

 

 

 

 ミオにとって信じたくない事実であった。ミオは信じていたのだから。自分はいつどの時代だろうとノアと出会い、一緒になるのだと。心の拠り所を覆されたショックは大きい。

「………っ」

 咄嗟に言葉が出ず、ミオは動揺を隠せない。不安に押しつぶされそうなノアのためにも堂々としていなきゃと思えば思う程、焦ってしまい余計に混乱してしまう。

「ミオ、気に病む必要はないよ。責任があるとしたらそれを黙っていた俺、Nなんだから」

「それでも、私は……!!」

 ミオ自身、ノアを支えたいのに自分がぐらついてしまっているのが情けなくて。

「大丈夫。とても悲しかったけど悪い話だけじゃないんだ」

「ノア……」

 終いには励まされる始末である。しかしミオはノアが嘘を言っていない事を理解していた。ミオだけが知るノアが嘘をつくときの仕草をしていなかったから。

「ミオにも聞いてほしい。俺達の自慢の子の話を。俺が経験した奇跡を」

 ノアの慈しむような顔にミオはかつての幸せを思い出す。命の制約がある自分達でも子を成せた、初めて我が子を見た時のあの言いようもない幸福を……

 

「分かった。教えてくれるかな? 私が知らないノアの話」

 

 ノアは快く頷くと、ゆっくりと話し始めた。

 

「その時の俺にあったのは途方もない空虚さだった。それもそうだよな。直前の俺は君と子供を成し、寿命で君を失って、自分もまた子供を置いていくしかできない、無力さの中で消えていった俺だったから。記憶は失っても想いは引き継がれてるんだ」

 記憶は失えども想いは引き継ぐ、ミオにもあった事だ。記憶がなかろうともミオは必ずノアを見逃さなかったし、ノアだってミオを見つけてくれた。そうして出会う度に喜びと悲しみが増していったのだ。

「相も変わらず兵士だったけど、もう戦うなんて考えられなくて。記憶を失ってケヴェスとアグヌスの真相なんて知らないのに、その俺は戦えなかったんだ。だから一人終わりない戦いの世界を抜け出し、旅に出た。今になって思えば、ミオとあの子を探しにいこうとしてたんだろうな。心の空白を埋める何かを求めていたんだから」

 ミオは自分がノアに出会えなかった事に、引っかかるものを覚えつつもノアの話を聞き続ける。

「でもいくらミオを探したいって言っても一人でコロニーを巡るなんて事は出来ない。遠目で戦場を眺めるのが精一杯だった。きっとこの空白は埋められない。会いたい人に二度と会えない。そう諦めかけていた時だった。シティーに辿り着いたのは。すごく心が踊ったのを覚えている。ここならきっと会いたい人が、ミオがいるんじゃないかって」

 それまでのノアとミオは必ずシティーに辿り着いていた。子を持とうと思い至った一回を除いては。二人でいられる場所を探して見つけたシティーは、二人にとって希望そのものであり、思い出も多く残っている。何もかもが新鮮でノアとミオは、戦わなくてもいい人の本来の暮らしに魅せられた。

「でもミオはそこにもいなかった。もう愕然としたよ。ここならきっとって信じていたから」

 それを聞いてミオは悲しくなる。一体その時のミオは何をしていたんだと。孤独を抱えたままのノアの心境を思うといたたまれなくなった。しかしノアの悲痛な表情はそこまでであった。

「でももう一人はいたんだ。一目見てすぐに分かったよ」

 

「この子は俺達の子だって」

 

 当時のシティーの長から紹介された青年、彼を見たノアは絶句した。理屈抜きに分かってしまったのだ。それと同時にかつての記憶が溢れかえってくる。奇しくも青年となった我が子との再会は、本来あり得ない前回のノアの記憶を呼び覚ました。

 成長したノアの子は人懐っこい笑みを浮かべてノアへ自己紹介をした。

「初めまして、だな。俺の名前は○○」

「○○……」

 かつての記憶が鮮明に蘇る。待望の子供が生まれた時、ミオに名付け親を頼まれたが、名前をつけるのが苦手だったノアは困ってしまって、結局ミオが名付けたのだ。彼が語った名はその愛しき名と一字一句違わなかった。

「俺はあんたの案内役だ。ようこそシティーへ! あんたの名前は?」

「お、俺か? 俺は……ノアだ」

「ノア、か……」

 名前を呟き黙ってしまった○○に、ノアは焦り気味に聞く。

「……何か変だろうか?」

「いーや、良い名前だと思う。これから宜しくなノアさん!」

「あ、ああ! こちらこそ!!」

 差し出された手に一瞬戸惑ったノアであったが、それが握手を求めてのものだと理解すると、慌てて彼の手を握り返す。その瞬間であった。

「あれ? おかしいな……」

 ノアの瞳から涙がこぼれてきた。実感してしまったのだ。この子はちゃんと生きていると。ミオとノアがいなくなっても、ちゃんと生き抜いてくれたのだと。手から伝わる温もりにノアはたまらなくなる。

「お、おい? どうした? 手をきつく握りすぎたか?」

「ごめん、今更だけど安心しちゃったみたいだ。ずっと一人で旅してきたからさ」

 しかしながら今のノアは己の正体を明かす事はできない。抱きしめたい衝動を抑えながら、ノアは○○に尋ねた。

「ちょっと変な事聞いていいか?」

「なんだい?」

「○○の年齢は? 今何歳なんだ?」

「22歳。ノアさんはケヴェス兵なんだっけ? ゆりかごから生まれる人は10歳から始まるって聞いたから、22歳は12期って事になるかな?」

「22歳……そうか、22歳か!」

 ノアは歓喜した。子を産むときミオが心配していたのは寿命の事だ。もしも子供が10年の寿命を引き継いだらと思うと気が気でなかった。でも○○に10年の制約はなく、ノアの2倍以上も生きている。

 この時ばかりは周囲もはばからず叫びたくなった。ノアは子の成長した姿は見れないと覚悟していた。親としての責務がを最後まで果たせなった無責任な自分が、こうして成長した子と出会えた奇跡。

 

 ノアは天を仰ぎ、生まれて初めて神に感謝した。

 それからノアに訪れたは夢のような日々であった。

 

 ある日は訓練をした。

 

「ノアさんびっくりするくらい強いな! どうやったらそんなに強くなれるんだ?」

「戦いは相手あってのものだ。自分を鍛えると同じくらい、相手を見ると良いよ。例えば○○は前足が開き気味に構えていると……」

「うわっ!?」

「横薙ぎの合図ってね」

「あっちゃー癖読まれてたかぁ……じゃあ今度は……よし! ノアさん、もう一本!」

「もちろん!」

 

 

 ある日は出来もしないのに最強の料理に挑戦してみた。

 

「なあ、ノアさん。これってやり方合ってるか?」

「……多分」

「見た目えげつない事になってるんだけど」

「見た目は悪くても味は分からない。ちょっと味見してみるよ……ごふっ!!」

「ちょ、ノアさん!!? ノアさんがぶっ倒れたぁぁぁぁ!!」

 

 

 ある日は素朴な疑問をぶつけてみた。

 

「そういえば○○、なんでノア『さん』なんだ? 俺の方が年下だよな?」

「ノアさんだって俺に敬語使わないじゃないか」

「それを言われると……弱いんだけどさ」

「別に今から変えても良いけど、どうする?」

「……今のままでいいかな」

「ふふ、なんだそれ。りょーかい」

 

 

 ある日は訓練に夢中になりすぎてボロが出まくった。

 

「ウロボロスになっても勝てないって……」

「んっもぉぉ、ノアさん強すぎ……」

「ウロボロスだろうと何だろうと、強さの源は積み重ねって事さ。さらに言えばウロボロスのインタリンク時は二人の意識を共有している。だからお互いを信頼しないと判断が遅れる事がままあるんだ。そして戦いにおいて判断の遅れは致命的だ。ウロボロスにいくらパワーがあっても、それを操るのは○○、そして□□(○○のパートナー)だ。今後は鍛えるだけじゃなく、心を通わせる努力もして見る事」

「ノアさん、昔ウロボロスになった事ある? いくら何でも詳しすぎるような」

「え、それは……知人が……」

「ケヴェスにもウロボロスがいたんだ!? どんな人なの?」

「あ、その……うん」

 

 

 ある日は何もせずオンセンに浸かり、まったりした。

 

「「あぁー、生き返るぅ」」

 

 

 ノアはいつも○○と共にあった。思い出は色あせる事無く、次から次へと言葉が出てくる。一方でミオはノアの語る○○を一字一句聞き漏らすまいとしていた。少ししか一緒にいられなかったが、ミオにとっても子供は特別だし、愛していると断言できる。自分の手を握ってくれたあの幼き手を忘れた事はない。

「シティーについて以来、俺はずっと○○と一緒だったんだ。ずっと一緒に訓練して、遊んだりもして。正体を明かせないのは心苦しくもあったけど、それでも幸せだったよ。○○はとっても良い子でさ。シティーの若手ではトップクラスの実力だったし、人望もあった。ミオに似たんだろうな。何より優しかった。何せ得体のしれないはずの俺の世話を焼くくらいだし。俺なんかよりずっと立派でさ。○○の頑張っている姿は、輝いて見えて、何よりも誇らしかった」

「なんか私、今だけMの事が嫌いになりそう」

「どうしたんだ急に?」

「だってノアだけずるいんだもん。私だって○○にすっごく会いたかった! お腹を痛めたのは私なんですからね。どうしてこの時の私はノアに会いに行かなかったのよ!」

 私怒ってますといった様子のミオであったが、どこか可愛らしくてノアは癒される。でもその裏にある悲しみにも気づいていた。

「でも、そっか。○○、本当に頑張っていたんだね。私も見たかったなぁ。ノアと○○と一緒に楽しく暮らしていけたら……あれ? ごめんなさい。ノアを元気づけるはずなのに私が泣いちゃあ駄目だよね」

「そんな事ない。俺だって何度も願ったよ。ここにミオがいてくれたらって。ミオさえいてくれたらひょっとしたら……」

「ノア?」

「大丈夫。続けよう」

 

 

 信じられないような幸せの時を過ごしたノアであったが、何時か終わりが来る事を知っていた。メビウスとの決戦が近づいていたからだ。ノアは閉じられた輪の中、何度もメビウスとの決戦を経験してきたが、これはノアとミオがウロボロスとして高い素質を持っている事による。

 ノアとミオはいつの時代だってシティーの最大戦力なのだ。その証拠としてノアとミオは何体かのメビウスを見事撃破している。しかしそんなノア達でも最後に現れるメビウス、Zだけにはかなわなかった。Zだけは常識を逸した強さを誇り、並の兵士はその姿を見ただけで命を吸われ、絶命するほどだ。

 今代ではミオがいないため、ノアはウロボロスとなれなかったが、代わりに○○がウロボロスとなっており、高い素養を示していた。でもノアには分かっていた。まだまだZには届かないと。だからこそノアは決めていた。

 

 決戦の時は自分が戦い、○○を逃がすと。

 

 今はまだノア達の強さまで届いていない○○と□□であるが、二人はノア達と違う。ノアとミオは寿命がないために玉砕覚悟で行くしかなかった。でも○○達にはノア達に比べて6倍以上の寿命があるのだ。時間さえあれば○○達はまだまだ強くなれる。○○と□□ならきっとZにも届く。

 

 ノアは年齢は9期後半、どうせ後一年足らずで光となって消える。愛する子を守るためならこの命惜しくはない。自分はいなくなってもノアとミオ、二人の希望は残り続ける。○○と□□に明るい未来を与えられるのであればそれでいい。

 

 

 覚悟を決めたノアは未来のために用意周到に準備を進めた。○○達を含め、今代のウロボロス達は誰もが良き若者であった。きっと大人達が囮になると言っても納得しないであろう。だったら騙すしかない。

 大人達に希望を守るために一緒に死んでくれというのは心苦しかったが、シティーにはノアと同じ敗北の記憶があった。彼らもきっと勝てないであろう事は薄々感じており、だからこそノアの希望を守るための自己犠牲に賛同してくれた。

 そうして秘密裏に集められたのがネムリタケだ。○○達には決戦となる翌日に備え、英気を養うための食事会と偽り、ネムリタケを混入したスープを飲ませた。効果は覿面だった。後は輸送機で安全な場所となるシティーへと送り届けてもらうだけ。

 出発まで後30分となったところ、ノアは最後となるであろう○○の顔を焼き付けていた。

「……良く寝てるな」

 ネムリタケを摂取した時の眠りはとても深い。だからこそ起きる心配もなく、ノアは愛しき我が子の頬を撫でた。そしてゆっくりと語り掛ける。

「○○、俺はお前に救われた。ミオに会えなかった事はとても悲しかったが、その寂しさをお前は埋めてくれた。どうにもならない運命を恨んだりもしたけど、この世界でお前は強く生きてくれた。未来への可能性を示してくれた。○○は俺に勇気をくれたんだ。お前は俺の、俺達の希望、そして誇りだよ」

 

「○○……愛している。父さんが、絶対守って見せるからな」

 

 そしてノアは強く祈った。ここにいない最愛の伴侶に。

 

 ミオ、俺にこの子を守る力を貸してくれと。

 

 

 メビウス達との決戦は壮絶を極めた。ウロボロスのいない異例の戦いであったが、ノアはそれでも鬼のような強さで、何人かのメビウスをたたっ斬って見せた。メビウス達は己の絶対的優位を疑わない。故に油断する。

 勢いというものは大事で、一度取ったイニシアチブは覆る事なくずっと続き、メビウスの数が一人、また一人と減っていく。ただノア達の表情は固かった。ここまではいつもの事なのだ。

 突如感じる身の毛もよだつ恐ろしさ。ノアは理解した。あいつが来たのだと。直後西側にある自陣に爆発が起こり、多くの仲間が吹き飛ばされた。もくもくと昇る黒煙からゆっくりと表れたのは一見老人であった。しかし穏やかな外見とは裏腹に纏う空気は想像を絶するほど冷たく、周囲の遺体から残された命を吸いつくす様は死神を連想させる。

 ノアの握るブレイドが手汗で一杯になった。体が訴えている。早く逃げろと。こいつには絶対勝てないと。だがノアは不敵に笑って見せた。

 もう輸送機はすでに飛び去った。希望であるウロボロス達はすでにメビウスの手に届かないところにいる。ノアは見事自分の役目を果たして見せた。先の死は見えている。しかしノアは自分が誇らしかった。

 最後の仕事はこの目の前にいるメビウスに一太刀浴びせるだけ。最後の力を振り絞り、ノアはブレイドを持って駆ける。Zはそれを見越して徒手の構えを見せた。その時ノアは悟った。俺はこれに貫かれて死ぬと。でもノアの予期した死は訪れなかった。

 

「ノアさん!!」

 

 この場にいるはずのない者達の声が聞こえた時、ノアの心が悲鳴を上げた。

「○○!? □□も!? ……そんな、どうして」

 うろたえるノアを見てZが邪悪にほほ笑む。それに気づいたノアは己の失策を呪った。この悪魔に自分の弱点をさらけだしてしまったと。

「皮肉としか言いようがないな。結んだ縁が深すぎるが故に断ち切れなかったとは」

「やめろ! Z!! お願いだからやめてくれ!!」

「ほう、我の名前を覚えているとは。今回の君は優秀なのだな。ノア、今日の事は君にとって良い教訓になるだろう。希望というものはだな。大きいほどまだ絶望は深いのだと!!」

 その台詞でZの狙いが○○達だと理解したノアは、間髪入れずにZへと斬りかかった。

「させるかぁぁぁぁぁ!!!」

「甘いな」

 Zはノアの決死の一撃をいなし、その無防備な背後に一撃を加えようとする。 

「ノアさんをやらせるかぁぁぁぁぁ!!!」

 そこに○○は飛び込んでしまった。それがZの罠とは知らずに。

「火に飛びいるなんとやら、だな」

「え?」

 Zの突き出した拳はウロボロスとなった○○のコアを正確に撃ち抜いていた。コアの消失とは命の消失と同義。強靭であるはずのウロボロスの体にひびが入り、体が欠けていく。

「あ、ああああ……ダメだ。それだけはダメだ! ○○! ○○!!」

 ノアの必死の呼びかけもむなしく、ウロボロスとなった○○の体は見る見るうちに崩れていく。そしてインタリンクが解け、姿が人間に戻った時、○○と□□はすでに虫の息であった。ノアは一目散に○○へと駆け寄る。

「○○、どうして。どうしてここに来たんだ……どうして? 俺はお前さえ生き残ってくれれば良かったのに……」

「ごめん……ノアさん。ノアさんが正しいのは分かっていたんだ。でも見捨てられなかった」

「なんでだよ! 〇〇にとって俺はただの他人だろ!? 無視してくれて良かったんだ!!」

 ノアは初めて○○の優しさを憎いと思った。彼の、この温かささえなければこうした悲劇は起きなかった。ノアの葛藤を知ってか知らずか、○○は残された力を使ってノアの顔に手を伸ばす。

「他人じゃない」

「……え?」

「俺、分かってたよ」

「な、何を……」

「ずっと待っていたから。きっとシティーに来てくれるって」

「っ!!? ○○、まさか」

 ノアはありえないと頭を振る。そんな事、あってはならないと。

 

 

「父さんを2回も失うなんて耐えられるわけないじゃないか……」

 

 

「○○、そんな……知っていたなんて……」

 ○○はすでに知っていたのだ。ノアが○○の父の生まれ変わりであると。真の意味での再会がこんな悲しい場になるなんて間違っている。本来ならもっと幸せで、幸せの絶頂で起きなければならないはずなのに。一体どうして?

「言いつけ破ってごめん父さん」

 ぐったりする○○にノアは必死に懇願した。

「○○、頼む! 逝くな!! お願いだよ!! 父さんを置いていかないでくれ!! 頼む!!!」

 ひたすらに叫びつつけても粒子化は止まらなくて。刻一刻と近づいてくる死、それでもノアは○○を胸に抱き、叫び続けた。

 

「父さん、ありがとう。愛しているよ」

 

 そして○○は光の粒子となって消えた。

 

「○○! ○○!! ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 一方その頃他のウロボロス達はZと戦っていた。しかし一撃でリーダー格であった○○がやられた衝撃は大きく、統制を欠いた彼らは徐々に追い詰められていく。

 Zの表情は余裕そのもので、楽しんですらいるようであった。圧倒的実力差、ノアとミオの前に何度も立ち塞がってきた絶望がそこにある。だが今のノアにそんなものは関係なかった。抱えきれない悲しみ、溢れんばかりの憎しみでノアは吠えた。

「ゼットォォォォォォォォ!!!」

 全てを込めたノアの一撃はZの肩を貫く。

「ほう、とうとう我へと届いたか。執念とは恐ろしきものよ。だがここまでだな」

 しかしZもまたノアへと致命の一撃を叩きこんでおり、ノアは命はここまでであった。絶命したノアを愛おしそうに見つめ、Zは言った。

 

「次は良い返事を期待しているよ、ノア。次こそは永遠の今を、共に行こう」

 

 

 

「俺は、ノアはこうしてNになったんだ。Zの事は憎くて憎くてしょうがなかった。でももう耐えられなかったんだ。失う事に……」

 一緒に居てくれなかったミオを恨んだ。作戦通り○○を止めてくれなかったシティーを恨んだ。そして何よりも、

 

 己の無力さを恨んだ。

 

 未来を望んだからこんなにも苦しい。悲しい。もうこの世からいたくないくらいに。でもノアは何度死んでも蘇る。本人の意図に反してノアはアイオニオンに立っている。先にある道は悲劇しかないのにも関わらず。

 

 死ねないのなら望むしかなかった。永遠の今を……

 

「ノア……」

「ミオ、俺……最低だよ。守れなかった。俺達の子、守れなかった!! あんなに、あんなに良い子だったのに!!! 俺の力不足が原因なのにミオやシティーの皆のせいにして!!! 最後には裏切った!!! シティーには○○との思い出も詰まっていたはずなのに!!! 俺は……俺は!!」

 ミオは泣きじゃくるノアを抱きしめる。

「ごめんなさいノア! ごめんなさい!!」

 そんなミオも泣いていた。悔しくて悲しくてたまらなかった。ミオはノアが話したNの過去について、手助けできないだけでなく、知りもしなかった。

 Nが何かを抱えている事は分かっていた。それが枷になっている事も。だからこそミオは、Mになってから何度か聞こうとした事があったが、彼の頑なな心を開く事は出来ず、何時しか聞くのを諦めてしまった。

 ミオは思う。どうしてそこで諦めてしまったのかと。Mは諦めるべきじゃなかったのだ。時は心の傷を癒す。その言葉にMは甘えていた。永遠の今を生きるメビウスに時の流れなどないと言うのに。結局Nの心は凍てついたまま、来るところまで来てしまった。

 ミオは心の中で叫ぶ。何故、どうして? ノアが一番苦しかった時に私はそこにいれなかったのか。もしもその場にミオが存在していたら○○がウロボロスになる事はきっとなかった。ウロボロス候補の筆頭は決まってノアとミオなのだから。例え○○が嫌がっても、後から決戦の地にやってくるだけの力は得られなかった。二人いれば少なくとも○○は守れたのである。

 ミオだってノアと心は同じである。たとえ死んでも○○さえ守れたらきっと満足して逝けた。呪いの10年の寿命を超えた奇跡の子、ノアとミオが生き抜いた証、愛しき我が子のためなら死ねる。そう断言できた。

 でも現実は残酷だ。ミオは舞台に上がる権利すら貰えなかった。何もできなかった事が悔しくて悔しくてたまらない。

 

 二人は泣いた。泣き続けた。

 涙は枯れる事無く溢れ続ける。

 

 ノアもミオも分かっていた。お互い最善を尽くしていたのだと。最善を尽くしてこの結果だったのだと。それが余計に悲しくて。

 

 二人にできた事は涙で悲しみを洗い流す事だけであった。

 

 

 

 それからどれくらい泣いていたであろうか。ようやく落ち着きを取り戻した二人は呆けた様に椅子に座っていた。あれだけの感情の荒波をぶちまけた後である。それも無理はない。

 悲しみは未だに癒える事はないが、すべてをさらけ出したノアは不思議と前より心が軽くなった気がしていた。ミオもミオでどこか安心したような表情を浮かべている。ミオは甘えるようにノアの肩に顔を乗せ、ノアにお願いした。

「ねえ、ノア?」

「なんだい?」

「もっと○○の話、聞かせてほしいな」

 

 

 

 

 

 その日の午後、ノア達はシティーの作戦司令部に集まっていた。二人は決めたのである。皆に全てを話すと。そこにいたのはランツ、ユーニ、セナ、タイオンの仲間達と、シティーの長であるモニカ、その娘であるゴンドウだ。ついでに副官トラビスもいた。

「これが俺達の知るすべてだ」

 ノアとミオが話し終えた後の仲間の反応は一様に同じであった。二人の凄惨な過去に怒りをあらわにする。皆が特に許せなかったのは○○の事だ。シティーの人達以上に子供という存在は、ノア達にとって特別であった。

 初めて赤ん坊を見た瞬間、自分たちが求めていた全てがそこにあったのだから。10年の寿命の呪縛がなく、何者にもなる事が出来る赤ん坊は、兵士としての運命を決められていた皆にとってはまさしく希望である。

 元ケヴェス兵と元アグヌス兵が子を成した。成す事が出来た。それが如何に尊いか。仲間がようやく得た幸せを、ぶち壊しにしたメビウスに怒りを覚えるのは当然のことであった。

 しかしシティー側から見れば話はちょっと異なる。何せNは過去のシティーを襲撃した張本人なのだから。

「モニカ、シティーを裏切ったのは俺だ。信用出来ないと思ったら何時でも追い出してくれても構わない。ただミオ達は、仲間達は残してほしい。絶対力になってくれるはずだ」

「ノア、君は一体何を言ってるんだ!」

 タイオンは納得できないと声を荒げる。チームで参謀をするタイオンだからこそ理解していた。全てはZの策略であると。ノアを得るためにZは永遠ともいえる時間を使って、ゆっくりと絶望へと叩き落したのだ。2度と這い上がる気を起こさせないレベルまで。

 反吐が出るほどの邪悪さにタイオンの怒りは収まるところを知らない。絶対ノアを守らなければと必死にモニカへと懇願する。女王を助けるために一緒に旅をしていたゴンドウもそれに続いた。

「モニカ! シティーに多くの犠牲者が出たのは聞いている! でも待って欲しい! ノアは……!!」

「おふくろ!!」

「案ずるな」

 モニカは分かっているとタイオンを手で制した。

「私はあいつらのやり口を知っている。そんなのは百も承知さ。それに私はな。過去ではなく今を見る。そういう訳だノア」

「え?」

「お前の過去は関係ないと言っている。今お前はウロボロスとして私達と共にメビウスと戦っている。それで十分だ」

「モニカ……ありがとう」

 丸く収まった事に安堵する皆であったが、モニカはなおも考え込むような仕草を見せた。ノアの話した過去がモニカの遠い記憶を呼び起こしたのだ。

「縁とは馬鹿にならないものだな。あるいはとは思っていたが……」

「モニカ?」

「ノア、ミオ、これから二人に見せたいものがあるのだが、今からついてきてくれないか?」

「あ、ああ」

 

 

 ノア達は様子がおかしいモニカに戸惑いながらも、彼女の後へと続く。途中ゴンドウにそれとなく伺ってもモニカの真意は伺えず、訳が分からないまま後を追った。

「おい、ここって……」

 到着した場所を見て困惑の声をあげたのはゴンドウであった。

「ゴンドウ? 知っているの?」

 セナが尋ねる。

「知るも何も……アタシん家たよ」

 

「「「えええーーーっ!?」」」

 

 予想外の場所に皆が驚きの声を上げる中、モニカは淡々と歩を進める。6氏族だけあってモニカの家は大きく、贅沢とはほど遠い生活を送ってきたノア達にとっても、他の家と比べて格式が高いという事がすぐに分かるほどであった。

「はぁー、すっげえなぁ」

 感嘆するユー二にモニカは苦笑する。

「私は別に質素な家でも構わないんだがな。だが長としての面子もあるし、代々継いだ家でもあるからそうはいかない。ゴンドウ、皆を客間に案内していてくれ。私は取ってくるものがある」

「一体何だってんだよ。OK、分かったよ。お前らこっちだ」

 モニカの家は客間も豪勢であったが、肝心な目的が分からないため、楽しむよりかは皆の頭の中を多くの何故が占めていた。それはゴンドウも一緒で、まるで見当がつかない事が面白くなく、ふてくされている。

 何とも居心地の悪い時間を待っていると、モニカは古い木製の箱を抱えてやってきた。中に入っていたのは機械のようなものと丸い円盤である。見た事ない機械の用途が分からずランツが疑問を口にした。

「この丸い奴は何なんだ?」

 機械の設置作業を始めたモニカの代わりに、ゴンドウが説明をする。

「また随分と古いもんを。これはな。ディスクと言って映像を記憶できるやつなんだ。今となっちゃ瞳に直接送れるから使わなくなったけど。要するに骨董品だな」

「へー」

「こんな骨董品にノアとミオに関するものがあるってのか?」

 モニカがあまりにも真剣のため、ゴンドウは余計に訳が分からない。NとMの記憶からノアとミオが古くからシティーと付き合いがあったのは知っている。しかしノアとミオの過去はもうすべて明かされたはずだ。これ以上何があるというのか。もう二人は十分に苦しんだ。これ以上の情報はいらないだろう。それがゴンドウの本音であった。

 準備ができたらしいモニカが振り返ると、ノアへと声をかける。

「ノア、一つ聞きたいんだが」

「なんだ?」

「Nの記憶の中に△△という人物はいたか?」

 ノアは戸惑いながらもNの記憶を辿る。ノアは時代を繰り返してシティーにやってきたため、知人の数は相当だ。すでに色あせてしまった記憶も多く、顔も思い出せない人も数多だ。どうしたものかと一番色濃かった○○との記憶に戻った時、△△の顔が突如として浮き上がった。ノアは確かに△△を知っていた。

「△△……△△……それって○○の親友だった?」

「そうだったのか。△△は○○の……だから……」

「モニカ?」

 ノアの問いかけに対し、モニカは衝撃的な事実を告げた。

 

「△△は私の遠い祖先だよ。彼のフルネームは△△・ヴァンダムだ」

 

「んなっ!? 祖先って……」

「モニカの親のさらに上って事? つまりゲルニカよりも? それがノアとミオちゃんの子供の親友って、えええ!?」

 余りの驚きにタイオンとミオは素っ頓狂な声を上げてしまう。ユー二とランツは声こそあげなかったが、口をパクパクさせていた。

「ヴァンダム家にはな。代々引き継がれてきたモノがあるんだ」

「おい、そんな事アタシは知らなかったぞ!!」

「そりゃそうさ。当代は私だからな。もし私が引退するまでノア達が現れなかったら、その時はゴンドウに引き継いでいたさ。これを受け継いだ時に一緒に伝えられたのは『いつか来る親友の大切な人へ伝えてほしい』という願い。受け継いだ私としては情報がなさ過ぎて訳が分からなかったが、ゲルニカは良く言っていたよ。時が来れば自ずと分かるって。そんな事あるわけないと思っていたが、こうも理解させられてしまうとはねぇ」

 モニカとしてはノアを初めて見た時に感じるものがないわけではなかったが、まさか当人達とは予想外も甚だしかった。きっと△△はこれを見越していたのだろうと思う。ノアは何時だって外から来る。ケヴェス兵という実情を知っていたのなら、別のノアが来る可能性は十分にあったのだ。

「この箱を開ける事になるのは私でもなく、ゴンドウでもない。遠い未来の話かと思っていたんだが、世の中分からないものだね。さあ、ノア受け取ってくれ。過去から今のノアに向けた△△からのメッセージだ」

 

 

 モニカが再生ボタンを押すと、ノアは固唾を呑んでモニターを見守る。画面に現れたのはかつてのゲルニカのようにしわくちゃの顔の男であった。でもノアはその瞳を知っている。年を取り、貫禄も増していたが、彼はまさしく△△であった。

 モニカとゴンドウも初めて見る己の祖先の姿に神妙な顔つきになり、ノア以外の皆は一回り小柄なゲルニカと言った様子の△△に興味津々であった。

『はじめまして、じゃないか。久しぶりだなノアさん』

「うわ、すっげー違和感」

 ゲルニカの声でノアをさん付けで呼ぶ△△にユーニは思わず呟く。

『いつかあんたがまたシティーに来てくれると信じて俺はこの映像を残している。俺はこんな老いぼれになっちまったけどまあ元気にやっているよ。正直メッセージを残すか迷った部分もある。新たにやって来たノアさんは俺達の知るノアさんじゃないかもって。むしろこのメッセージがノアさんを縛っちゃうんじゃないかって。それっでも伝えたいと思ったのは、あの時の○○の思いを伝えたかったからだ』

「○○の……」

『ノアさんも俺の姿を見て分かっていると思うけど、俺はノアさんも○○もあの世に旅立っちまった後の世界にいる。もう40年になるかな? シティーも一度滅びかけたが何とかやっている。こうして俺が生き残っているのが何よりの証拠だ』

 ノアは顔をしかめた。何せその実行犯はNとなったノアだったのだから。

『と言ってももう老い先短い身だ。やり残した事がないかを考えていたんだが、ふとノアさんと○○の事を思い出したわけだ。もしもノアさんにあの時の記憶が残っているのだとしたら、きっと悲しんでいるんだろうな。あれから俺も親になったから分かるんだが、ノアさん、○○が自分の子供だと知っていたんだろ?』

 ノアは唖然とした。ノアが○○の本当の父であるのは誰にも話した事はない。

『今にして思えばノアさんが○○に向ける視線は家族に向けるそれだった。だからこれから俺はノアさんが知っている前提で話を進める事にする。俺が話したい事は○○が当時何を考えていたかって事だ。ノアさんがそうであったように、知っているのは○○も一緒だったんだ。何せあいつ、最初からノアさんが自分の父親だって気づいていたからな』

「そんな……嘘だろ?」

 信じられないといった気持ちで一杯であった。ノアとしては親とバレてしまったからこそ最後に失敗してしまったと、縁を断ち切れなかったと後悔していた。そしてどこでバレたんだろうとずっと考えていた。まさか最初の時点で知られていたなんて。

『あいつはシティーに来てケヴェスとアグヌスの事を知った。そして自分の両親がそうであったに違いないと確信していたんだ。両親が早死にしてしまった理由を知った時、あいつは深い悲しみと一緒に希望も得た。あいつは信じていた。何時か両親の生まれ変わりと出会えるはずだと。その話を聞かされていたから俺もすぐ分かったよ。ノアさんが初めて来た時のあいつの喜びようは凄かったから、言わずとも察したさ。ノアさんと○○の雰囲気も何となく似ていたしな。あいつがノアさんの案内役になったのは偶然じゃない。あいつが志願したからこそなんだ。普段から明るい奴だったけど、ノアさんが来てからはもうずっとはしゃいでいたな』

「そうだったのか……」

 ノアは何でもかんでも教えてくれようとしていた○○を思い出した。きっと複雑だったであろう。父は父でも○○はノアが記憶を失っていると考えていたはずだ。それでも○○はノアと新しい関係を始めようと努力していた。歩み寄ってくれた。

 ○○が死んでしまったのは縁が強すぎたこその悲劇であるが、親子の縁をここまで強く覚えてくれた事は嬉しい以外の何物でもなく、そのいたたまれなさに胸が締め付けられる。でも今ここにはノアを引き戻してくれるパートナーがいた。

「○○、お父さんとそっくりだね」

「ミオ? そうか?」

「だってそうじゃない。ノアは○○を私達の子供と知っていたけど、○○を混乱させちゃいけないって素性を隠していたんだし。○○だってきっと同じだったんでしょ? ノアを守りたかったからこそ新たな関係を探したんだと思う。ノアは○○が私に似ているって言っていたけど、私から見ればノアに似ていると思うな」

「そんな事……いや、うん。そうだと嬉しい」

 久しく忘れていた親としての喜び、似ていると言われたノアの表情は穏やかであった。

「子供というのは両親の半分ずつを引き継ぐと聞いている。ノアとミオ、片方だけ似ているというのはありえないだろう。きっと二人とも似ているんだ。僕はそう考える」

 そこにタイオンの援護射撃が入り、ノアとミオは顔を見合わせ、そうかもねと笑いあった。

『あいつ、本当にノアさんの事大好きでさ。親友としてはちょっと複雑だったよ。自分の場所がとられたみたいでさ。だからかな? 一度聞いてみた事があるんだ。○○の夢は何なんだって。そしたら何て答えたと思う? メビウスを倒して平和になった世界で、父さんと旅に出るだってさ。そして一緒に母さんを探すんだってあいつは言っていた。父さんと母さんの結婚式を見るのが俺の最終目標だって良く言っていたよ』

 ノアは○○の夢に思いを馳せる。それが現実になっていれば何と素敵な事だったろう。あの時見つけられなかったミオと出会い、3人で気ままに旅をする。こんなに心躍る事はない。だが曲りなりに父としては思う事もあるわけで。

「○○、俺達の事ばっかりじゃないか。こっちは□□とうまくやれるように色々考えていたのに」

「ノア、□□って誰だ?」

 初めて聞く名前にランツが尋ねる。

「○○のウロボロスのパートナーだよ。○○と□□は○○がシティーに来た頃に出会っていて、それから俺やランツ、ユー二のようにずっと一緒だったらしくてさ。凄く仲が良かったんだ」

「なるほどなあ。となるとノアはあれか? その時のノアは○○の□□のけっこんしき? を見るのが夢だったりしたのか?」

「あ、いや……それは。子供を強制するのは良くないし。俺自身はそうなればいいなぁって思っていたけど」

 ランツの指摘が図星だった事にノアはしどろもどろになる。それを見てモニカは笑った。

「ハハ、お互い隠していたと言ってもちゃんと親子としてやっていたんだねぇ」

「モニカ、そう……見えるか?」

「ああ、ノア、あんたは立派な親だよ。母親を捨てた私が言うのもなんだけどね」

 自虐的に言うモニカにゴンドウは反論する。

「おふくろ、あまりつまんねぇ事言うんじゃねえよ。少なくともアタシは今に納得している。普通じゃなくたっていいじゃねえか。当人同士が納得していればよ」

「ゴンドウ……まいったね。娘に説教される日が来るとは思いもしなかったよ」

 決して普通ではないが二人の親子愛もまた本物であった。

『ノアさん、俺はあんたに謝りたかったんだ。俺はあの時、決戦の地に赴く○○を止められなかった。もしも○○が生き残ったとしても、ノアさんがいないのならあいつの心が死んじまうって思ったら。あいつの夢のためにもノアさんはどうしても必要だった。ノアさんと、あいつと、そしてノアさんのお嫁さん、3人が幸せそうにしている光景、その美しさに眼がくらんで現実を見えていなかったんだ。だから俺もそれを望んでしまったんだ。力なき理想が招く悲しみなんて考えずに』

 力なき理想と言う言葉が皆の胸に刺さる。戦わなければならない世界において、己を通すには力がどうしたって必要なのだ。

『メビウスN、あいつを見た時俺は悔やんだよ。マスクをしていたけど俺、分かっちまったんだ。あいつはノアさんの成れの果てなんだって。俺だってノアさんとの付き合いは長かったからな。それと怖かったのかもしれない。○○を行かせてしまった自分が責められるんじゃないかって。○○が愛したノアさんがシティーを壊す地獄のような光景に俺は絶望した。はっきり言って当時は恨みもしたよ。なんでノアさんが裏切ったんだって』

 ノアは思う。恨まれても当然だと。それ程の事をNはしてしまった。しかし△△は憤慨する事もなく、最初の一言以上にノアに恨みをぶつける事もない。彼のその瞳は悲しみをたたえたままであった。

『でも分かっちまった。ノアさんが何に絶望し、シティーを壊したのか。俺は無駄に長生きしたからな。俺の前で何代ものウロボロス達が戦死していったよ。そしてその間、誰もノアさんのようにウロボロスを守ろうと声を上げた者はいなかった。メビウスから世界を取り戻そうと啖呵を切っておきながら、ウロボロスに任せっきりだったんだ』

 ノアが裏に隠し持っていたシティーへの深い失望を、長く生きた△△は理解してしまった。知ってしまったからにはもう恨めなかった。後に訪れたのは深い後悔だ。

『ノアさんに罪があるというのなら俺にだってある。俺らはあまりにも多くのモノをウロボロス達に背負わせちまった。だからノアさん、俺も一緒に背負うよ。あんたの罪を』

「△△……」

『メビウスの力は理の力、理の外にいるウロボロスじゃないと太刀打ちできないのは分かっている。どんなに戦力を整えたって最後にはウロボロスに頼らざるを得ないんだろう。だからといって諦めてしまうのは違う。例えまともに攻撃が通らなくても弾避けになれる。気を逸らす方法だってあるはずだ。いくらだって戦いようはある。俺は決めたんだ。ウロボロスと共に戦うと。それが俺の、ヴァンダム家の覚悟だ』

 モニカとゴンドウは魂が震えるのを感じた。何せ△△こそが新参者であったヴァンダム家が頭角を現し始めた最初であり、長まで昇りつめた今の今まで続いている。△△の覚悟が今のヴァンダム家に続くルーツなのだ。

『ノアさん、今のシティーはどうなっているだろうか? これを見ているのが新たに生まれ変わったノアさんなのか、それともNになってしまったノアさんなのか分からないが、どちらでもいい。帰ってきてくれたのならそれで俺は満足だ。俺はいつかのために、メビウスをウロボロスと一緒になって倒すために残りの人生を注いできた。それこそがロストメンバーズ、やっと形になってきたところだよ。俺が死んでからも俺たちの子孫がロストメンバーズを引継ぎ、ウロボロスと共に戦い続けるはずだ。もう間違わないために。今のシティーがノアさんのお眼鏡に叶っていると嬉しい』

「十分すぎるほどだよ。こんなに心強い事はない」

 相手が映像でしかないのにもかかわらず、ノアは思わず返事を返してしまう。

『ノアさん、メビウスがどれだけ絶望的に強いかは分かっている。俺もつくづく思い知らされた。正直に白状すると、思い返すだけで震えるほど怖い。それでも俺はノアさんに立ち上がって欲しい。身勝手な願いだと百も承知だが、今度は違う。俺達も最後まで戦う。もうウロボロス達だけに任せる事なんてしないさ。そしていつの日か、あいつに花をささげに行こう。勝利の報告をしに。ノアさんのお嫁さんと一緒にさ。俺は既にいないだろうが、まあ俺の子孫にでも行ってもらうかな』

「ああ! ああ!!」

『最後に一つ、ノアさんに渡したいものがある。箱に裏蓋があるんだが、そこに鍵が入っている。それは俺が借りている倉庫のカギだ。そこの中にあるものを受け取ってほしい。きっとそれはノアさんの力になると思う。それじゃあなノアさん! 俺の子孫達を宜しく頼む。もし不甲斐なかったらあの時俺と○○にしたように鍛えてやってくれ!』

 それを最後に映像は途切れた。

「ったく一言多いぜクソジジイ」

 ゴンドウはかつてゲルニカにそう言ったようにクソジジイと言った。しかしその言葉とは裏腹に顔はどこか満足気だ。

「そう言えばゲルニカの言葉を最初に信じたのはノアだったよね?」

 セナの問いにノアは多分そうだと答える。

「きっと何か通じるものがあったのかな。エセルとカムナビがそうであったように」

「そうかもしれない。いや、そう信じたい」

 ノアと○○の悲劇を見て、その後も多くの経験をした△△が組織したロストナンバーズした。そこから巡り巡って△△の志を継いだヴァンダム家のゲルニカが今のノア達に出会った。そしてノアは己の過去と向き合い、△△との再会を果たした。

「偶然にしちゃあ出来すぎてるわな」

「だったら良い様に考えておこうぜ」

 これはもう偶然ではなく必然だとランツとユーニも賛同する。絶望の世界の中であっても決して切れず、繋がってきた縁だと。

「不思議なものだな。僕達の全ては10年で終わる。そんな狭い世界に生きていた。今でもその呪縛はある。にもかかわらず僕らは自分の一生の何十、何百倍の過去に触れている。そしてその過去が僕らに勇気を与えてくれる」

 タイオンの言葉にモニカが頷いた。

「そうさ。私達の、シティーの歴史は敗北の歴史だった。それでも受け継がれてきたものがある。絶望を変えようとする願いがある。ずっと同じままじゃない。ゆっくりと、ゆっくりとだが、それでも着実に進んできたんだ。それこそが人間が本来持つ未来へと進む力。停滞しか望まないメビウスにはないものだ」

「ノア」

 ミオは包み込むような声でノアの名を呼ぶ。

「ミオ、俺、嬉しいんだ。とっても悲しいけれど、とっても嬉しい。△△……ずっと○○の事を忘れないでいてくれたんだな。不甲斐ない俺の事もずっと覚えていて……あんな事をした俺をまだ信じてくれていた」

「うん、うん!」

「行こうミオ。△△が残したものの所へ」

 

 

 △△が残した倉庫、そこにはかつての思い出が詰まっていた。

 

 

 ○○とノアが肩を組んでいる写真や、若き日の△△と○○、そして□□の3人組が訓練している映像。撮影者は彼らの師匠をしていたノアである。動く○○を見れると思っていなかった分感動は大きく、特に○○と接点を持てなかったミオの顔は輝いていた。

 他にもどういうわけか黒歴史として葬り去りたい、ノア画伯が描いた珍妙な絵や、オンセン外出グッズ、釣りセットなど、なんでもかんでも詰め込んだ感が一杯だった。

 そう、ここは△△の倉庫ではなく○○の倉庫、当時のシティーはNによって滅ぼされてしまったが、人がいなかった倉庫街はあまり被害はなく、ある程度原型を残したまま、海岸へ流れ着いたものが多々あった。○○の倉庫はそのうちの一つだ。△△は自分がそれを運良く見つけられた事に感謝し、助かっていた中の物を新しいシティーへと移設したのである。

 

 回りからすればなんだこりゃとも思われる数々も、ノアとミオにとっては子に繋がるための宝の山だ。そして最後に二人が発見したものは……

 

 

 シティーの慰霊碑に二つの笛の音が響く。儚くも美しい、そんな音が。

 

 ノアとミオ、二人が持っているのはいつもの笛ではなく、すでに色も落ちかけている古い笛であった。それは今ではないかつてのノアとミオが使っていたものだ。

 

 

 ○○の倉庫で最後に見つけたもの、それは両親の形見として○○が大切に保管していた二人の笛であった。これを見つけた時、ミオは号泣した。

 ノアと違ってミオが○○と思い出を紡げたのは極僅かな時間でしかない。次の生でも再会できなかった。それでも○○はミオの事を大切に思ってくれていた。覚えていてくれた。○○の深い愛情に触れてミオは己の中に隠していた、不安を吐き出した。

「私、ずっと不安だったんだ。ねえ、ノア、私、あの子の母親でいいのかな? 何も出来なかった私でもあの子の母親である事を誇っていいのかな?」

「そんなの分かりきった事だろ。何せ○○は世界をメビウスと解放した後、ミオを探しに行くつもりだったんだぞ? ダメなわけがないじゃないか!」

 感極まった二人は抱きしめ合う。残された笛は○○が必死に家族の絆を繋ぎとめようとしていた証であった。

「会いたいな。○○に」

「ああ、俺もだよ」

 

 

 こうして二人で音を奏でていると、心の傷が癒されていくようであった。ノアとミオだけじゃない。二人の中にいるNとMすらも微笑んでいた。NとMはもうメビウスではない。二人はただのノアとミオに帰ってきた。もうどちらが本物など関係ない。今のノアとミオも、過去のノアとミオも全てひっくるめてノアとミオだ。

「不思議だね。私達はずっとメビウスに負け続けてきた。これからの戦いも厳しいものになると知ってる。もしかしたらまた駄目なのかもってすら思っている。でもね、全然怖くないの」

「ミオ、俺もだ。俺はもう間違わない。あの子が信じてくれる限り戦い続けるさ」

 ノアはぐっと己の拳を握りしめる。そこには多くの想いが詰まっていた。ノアはもうこぼさないと覚悟を決める。

「ところでミオ」

「何、ノア……っ!?」

 ミオが気づくとノアの顔がすぐ近くにあった。そして唇に感じるノアの感触。キスされたと気づいたのは顔が離れてようやくであった。

「の、ノア。いきなりキ、キスなんて!」

「ごめんミオ。我慢できなかった」

「我慢できなかったってもう!」

「もしかして嫌だった?」

「その聞き方はずるいと思う! 嫌なわけないじゃない。でもいきなりはやめてよ。心臓に悪いから」

「ほんとにごめん、でも今まで慌ただしくてミオにちゃんと伝えていなかったからさ。すでにお互いの気持ちを知ってはいるけども、今回の俺はちゃんと口にしていない。だから今言うよ」

 

「ミオ、愛している」

 それはノアの心からの言葉であった。

 

「君って人は本当にずるいね。私を何度泣かせれば気が済むの?」

「どうしても今伝えたかったんだ。ほら、○○を早く安心させたいだろ?」

「そこで○○を使うのはどうかと思うなぁ。でも言ってくれてありがとう」

 

「私も愛しているよ、ノア」

 ミオは花咲く笑みで返した。

 

 お互いの愛を伝えあった二人の表情は晴れやかであった。

「行こう、ミオ。オリジンへ。全てを終わらせに」

「ええ!」

 

 そうして二人は慰霊碑を後にした。数多の想いを受け取った二人に迷いはない。長い時を経て、闇を打ち払った二人の姿は希望に満ち溢れていた。

 

 

 

 

 




というわけでいかがだったでしょうか? 初めこの作品を書こうと思ったのは、Nの子孫がどうなったのかと疑問に思ったからでした。というのも、あれだけ子を思っていたにもかかわらず、己自ら子孫を根絶やしにしたというのは変だと思ったので。
 だからきっとNの心が完全に折れる何かがあったに違いないと思い、それは子供なんじゃないだろうかと思い至った次第です。ミオもいない。己の継ぐ者もいない。その事にNは絶望したんじゃないかなぁと。子供の名前は今後のDLCで明らかになるかもしれないので、あえて○○でぼかしました。
 きっとノアとミオが新たな世界で再会した世界では、当人からウザがられるほどの子煩悩になっているに違いありません。6氏族に関しては情報が少ないのを逆手にとって、色々と盛らせてもらいました。多分設定的に荒い面もあるかと思いますが、容赦していただければと思います。

 本編で語れなかった裏設定としては、ノアが子供と再開した世界で、ミオに出会えなかったのは、Zがどこから生まれてくるか分からなかったミオをすでに確保していたからです。その目的はもちろんノアを孤独にさせるため。そこにノアが息子が生きていたという情報も知り、ノアの完全に心を折る計画を立てました。下衆です。
 ノアに絶望を与え、メビウスに迎える事ができたZですが、彼に残された絆を完全に断ち切る事はできませんでした。思い出の力を舐めていたわけです。それがZにとって崩壊へと繋がりました。まあノアとミオがNとMになったのに、新しいノアとミオが出てくるなんて思っていなかった部分もあるでしょうが。
 この後、Zはレベル99のノアのアンリミテッドソードでぼっこぼこにされるでしょう。結果としてオリジナル要素の高い作品となりましたが、お楽しみいただけたのであれば作者として嬉しい限りです。

 それではまた次の作品で会いましょう。

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