不死身の俺は最後を見届けられたい。 作:曇らせ好きの一般男性
「久しぶり、っていうべきなのかな。それとも3日ぶりだね。って言えば良いのかしら。」
「あのー、ステラさん。何故ここに。」
分からない、本当に分からない。俺は確かに目の前で死を演出したはず。
そしてそれが簡単に見破られるものでは無いと自負している。
しかし、目の前には私の生存を確信していたような顔で笑顔を浮かべている元相棒、いや相棒が居る。
「"ステラさん"なんて今更よそよそしいわよ。それに、なぜ私がここに居るか分からないって顔してるね。」
笑顔は崩れない、崩れる気配が無い。俺はこの状態の相棒をよく知っている。
(あ、これマジギレしてる。)
10年以上の付き合いだったが故に分かる。
これは本当に、冗談抜きで怒っている顔だ。
「色々言いたいことはあるけど、なんで私がアトリが生きてるか分かった理由を教えてあげるわ。」
そう言って指を2本立てる。
「まず1つ目、アトリのおっぱいを触ってる最中に心臓の鼓動を確かめてたの。
私が離れる最後まで触っていても心臓の鼓動自体に何も変化も、異常もなく正常だったわ。
そして2つ目、これは会った時から言わないようにしていたのだけど、アトリ、貴女悪巧みが上手くいくとニヤけるわ。」
嘘だろ。
全部俺のポカじゃん。
「この2つを持って、私はアトリが生きていると確信をして、誰にも言わずに3日間アトリの墓に通ってたわ。」
「こっわ。」
「殴ることは確定だけど、殴る回数を追加してもいいのよ。」
「すんません。」
でも実際怖い、生きていると知っていても棺桶から出てくる保証もなければ、別の場所に転移してた可能性だってあるんだぞ。
それなのに3日間も墓の前に出張ってくるのは怖い。
「さて、じゃあ私に言わないといけない事、あるよね?」
「いやもう本当に申し訳ございませんでした。」
「よろしい、なら鳩尾を出しなさい。」
「顔よりきついんですけど!」
10発殴られた。
「それで、どうして私の前で死んだフリなんかしたの。」
腹の中の物を全部出し切って伸びてる俺は当然の質問を投げ掛けられる。
(どうしよう、仲良くなった人の前で死ぬのが趣味なのでやった。なんて言えない。)
そう、言えないのだ。言ったら最後、必然的に余罪もバレて死ぬよりキツい目に合わされる。
「いやぁ、もうあのキッつい奴らとも決着も着いたし、そうなったら戦う理由も組織に入ってる理由も無くなることだし。
折角なら死んだって事にしてゆっくり余生を過ごそうかなぁって。」
それっぽい嘘である。
「そう、なら私には話してくれても良かったじゃない?」
「それはー、あの瞬間に閃いちゃったから言うタイミングが無くて。」
嘘である。
「へー、うん、分かった。なら、そういう事にしてあげるわ。」
バレバレなのである。
どうしてか分からないが、いつも相棒に嘘を吐くと絶対にバレるんだよなぁ。
「で、これからどうするつもりだったの?」
「んあー、とりあえず遠い国、私の事を知らない遠い辺境に行って余生を暮らそうかなって思ってた。」
これは本当である。
一応世界を脅かす存在を倒したのだから、国に帰ったらどんちゃん騒ぎで祭り上げられ身の丈の合わない生活を送らないといけなさそうだからってのと。
俺の存在を知らない相手と仲良くなって目の前で死んだ方が良い顔見れそうだからっていう理由である。
「ふーん、じゃあ行こっか。」
「いやいや、相棒はあの国に居なきゃ色々成り立たないと思うけど。」
「別に、私はあの国は嫌いだったし、それに、あっちの国王も私の固有魔術については知ってるからどの道ひっそりと門前払い喰らってるわよ。
なら、アトリと一緒に旅に出た方が身の安全も確保出来て、アトリと一緒に居られるからそっちの方がいいわよ。」
言ってる事は全て分かるし、筋も通ってる。
あー、どうするかな。もうちょっと付き合って良い具合のところでまた目の前で死んでみるのも一興な気がしてきた。
次は遺言書だけ残してチリも残さず消えてみるか。
「ん、ならいいよ。一緒に行くか。」
絶対に次こそはトラウマ残して死んで飯食う度に俺の顔が出てきて吐くまでにさせてやる。
意外に好評で調子に乗りました。
次話投稿は気が向いた時に投稿します。何年後かに。
感想を頂けるとニヤけます。