不死身の俺は最後を見届けられたい。 作:曇らせ好きの一般男性
視界は赤に覆われていた。
あらゆる物を燃やし、空さえも覆い尽くす煙炎、
人の叫ぶ声、横たわる人だった灰。
居るだけで喉を乾かす炎に、水を水をと喘ぎ祈る老人。
燃え盛る瓦礫の前に座り込み、延々と誰ともしれない名を叫ぶ女。
中央には全身を燃やしてもなお、立つ人影。
いきなりだった。それらは全て、唐突だった。
「なんで」
目の前に広がる地獄絵図に掠れた音が口に出る。
「どうして」
目の前の、燃える人影を見て憎悪が増す。
「許さない」
消えるはずのない憎悪は殺意に変わり、あいつを殺すと元凶に手のひらを向け。
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「トリ……アトリ……?」
両頬が柔らかい感触で挟まれる。
転移は終わり、視界に広がるは相棒の、心配に染った表情だった。
どうやら俺は今、木陰に寝かされ膝枕を堪能していたらしい。
「悪い、転移酔いをしたっぽい。」
今も尚、ムカムカする胸とぐわんぐわんする頭、正直相棒が寝かしてくれてなかったら倒れていただろう。
「本当?大丈夫?転移が終わったあと物凄く顔色も悪くて不安だったのよ?」
そう言いながらよっぽど心配してるのか、全身を触って異常がないか調べてくる。
頬、額、頭、頬、肩、胸、胸、胸、む
「待て、なんでそこばっか触るんだ。」
「だって、前みたいにそういう演技かと思って鼓動を確かめようとしたのよ。」
「とは言っても限度もあれば揉む必要はないと思うが。」
「そうね、そこは私の趣味よ。」
おい待て、認めんな。
「まぁここまで会話が出来てるなら本当に問題無さそうね。良かったわ、これでアトリに何かあったら私は多分、見たことも無いほどに取り乱すわ。」
「大丈夫だって、多少酔ったぐらいでは死なないよ。」
いつまでも心配そうに胸を触る相棒の腕を退かして、返事をするといつもの表情に切り替わり、その後は体調が回復するまで2人でそよ風を楽しんだ。
「んで、馬車を借りるんだっけか。長旅になるから相当な金が掛かるけど持ち合わせはあるのか?」
体調も回復し、今後の脚である馬車を借り出してくれる店を目指している道すがら、今後の資金についての疑問を聞く。
「あるわ。あの一件以来お金については生涯心配しなくても良いぐらいにはね。」
「ほぇ〜、そんなに。じゃあ馬車を借りる前に少し贅沢なお店でご飯食べない?」
「いいわね、そうしましょう。」
2人で道を歩く。頭の片隅で想像してた相棒とのなんて事ない日常を、暮らす。
正直、悪くは無いと思う。だが、曇らす。絶対にだ。俺は相棒が俺を思って泣いて心に傷を負うところみたい。
だから今は、今は、下積みとして、何気ない日常を。
相棒と2人、俗に言うレストランの前に着く。「こんなに豪華な初めてだわ。」相棒は店の外観を見て、少し嬉しそうな声色で言う。
だから今は、
唐突に襲い来る熱く焼けそうな風を背中で感じた瞬間、俺は相棒を横に押し出した。
それは突然だった。
次話は出ます。何年後かに。