不死身の俺は最後を見届けられたい。   作:曇らせ好きの一般男性

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絶望の焼け跡。

地面がうねり、形を変えて角材状の柱となって魔族の少年へ突撃する。

が、少年は余裕の笑みを浮かべ右へ左へ縦横無尽に動き、避けていく。

(素早い、なら動かさない!)

攻撃の手を緩めず、動かしていなかった左手を広げて少年へと向ける。

すると、少年が立っていた地面が流砂の如く柔らかくなり、足を沈めていく。

そうして身動きを封じた少年の八方から柱が押し潰さんと殺到する。

 

「凄いなぁ、こんな事も出来んだね。」

常人なら生を諦める状況。

だが、少年は態度を崩さず、不気味に笑う。

「でもね?それだけじゃあ僕は殺せないよ。」

直後、殺到していた柱は少年を覆い被さり、重々しい地響きを立てていく。

並大抵の魔族なら即死とまでは行かないが、致命傷を負うほどの暴力を休めること無く次へ次へと柱を叩きつける。

時間にして数秒。

砂煙が辺りを包み込み、少年の姿も、周りの喧騒も見えなくなった時。

ふと、異臭が鼻腔を突く。

焦げた臭い、あるいは何かが溶けている臭いが辺りに充満する。

瞬間、爆音と共に、炎が爆ぜる。

周囲の砂煙は一瞬にして燃え上がり、余波である炎の熱風と共に撒き散らされる。

咄嗟に少年へ向けていた左手の正面に土の壁を作るが、熱風に当てられるとすぐさま溶けだし左手を焼いていく。

激痛と熱で意識が飛びかけながらも冷静に溶けていく毎に壁を追加していき、

自身は余計な熱が体に当たらないよう俯せになって炎による暴力が収まるのを待つ。

 

体感1分、時間にして10秒。

地獄の様な暴力が収まり、盾にしていた壁はボロボロと崩れて視界が開けて周囲を見渡す。

そこには先程まであった人々や建造物は消え去り、爆発地点を中心に黒く焦げた不毛の大地となっていた。

 

「んんー、スッキリしたね。建物多くて窮屈だったんだよねー。」

軽い口調の声が透き通る。

唖然と周囲を見ていた視線を声のした方向へ向ける。

 

「あ、君生きてたんだ。凄いなぁ、そこまでしぶといと嫌われちゃうよ?」

かすり傷ひとつも無い無傷の少年が立っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

三度目の爆発。

二度の攻撃を受け、損傷が激しい身体の再生を待っていた時、それは起こった。

幸い二度目の爆発で遠くに飛ばされたおかげで肌が多少焼ける程度で済んだ。

が、

(おい、まじかよ。)

砂煙が吹き飛び、晴れた視界が映したのは左手に酷い焼傷を負った状態で倒れ伏している相棒と、

相棒の攻撃を受けてなお角の生えた無傷の少年が倒れている相棒に近づいて行く姿だった。

「てめぇ!この野郎!」

未だ左手の再生を終えていない身体を起こして相棒を追い詰めた少年へ走り出す。

「‘‘右手の我が血は槍となり”」

ぐずぐずの左腕を抑え、詠唱を行う。

「‘‘眼前の魔族を貫く聖槍とならん!”」

右手を後ろに振って詠唱を終える。

ごっそりと魔力と血が減っていく感覚でよろける身体を鼓舞して走る。

後ろに振り払った右手に全身の血と魔力が集まり、赤黒い槍に変わり、手中に収まる。

「‘‘我が手中に収まる聖槍は闇を晴らす光となり”」

続けて詠唱する。

短時間での二回詠唱、普段ならば自傷行為を伴うそれを、躊躇いなく行う。

「‘‘我が願いを叶える流れ星となる!”」

一回目の詠唱時点で魔力は底を尽き、二回目の詠唱が終わると同時に左の横腹の肉が黒く腐り、

ぼとりと落ちた事を合図に目の前に三つの赤黒い魔術陣が形成され、目の前に縦列する。

右手の槍を握りしめ、倒れない限界まで上体を仰け反らせ槍投げのように少年へ放つ。

放たれた槍は、縦列した魔術陣を突破し音速を超えて光り出して閃光となり、

「じゃあそろそろ愛しのアイツの元に送ってあげーーー」

相棒に手を翳し、魔術を発動しかけた少年の横腹を貫き吹き飛ばす。

魔力が尽き、血もほとんど無くなり、意識が朦朧として視界が暗くなり膝を着く。

(流石に、不死とはいえ苦しいな。)

もはや歩くことも立ち上がる事すら出来なくなった身体で這いつくばり、倒れている相棒の元へ向かう。

(生きててくれ、相棒。死ぬならせめて俺を看取った後、でも死ぬな。長生きしてくれ。)

数分、相棒に手が届く距離まで這いずったあと、相棒の焼けた左手を握る。

「ア、トリ?」

患部を触られた痛みで目覚めたのか、寝ぼけた表情で此方を見る相棒を見て、

(あぁ良かった、生きててくれた。)

安堵で全身の力が抜けていき、急激な眠気が襲い来る。

「アト、リ。いや、だめ死なないで。」

身体に柔らかい重さが加えられ、相棒の泣く声が鼓膜を揺すり、ますます眠りへと誘われていく。

「お願い、置いていかないで、ねぇお願い。」

「大丈夫だ、相棒。私は、死なないよ。だって私は、」

余りにも弱々しく、何かに縋る声にぼんやりと返事をし終える前に意識が途切れ、深い眠りへと落ちる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

血にまみれたアトリを抱きしめて、座り込む。

腕の中のアトリは外見とは裏腹に穏やかな表情で寝ていた。

その事実に驚きよりも安心と嬉しさが勝り、より強く抱きしめて生きている実感を噛み締める。

「クソッ!してやられた!あいつまだ生きてたんだ!」

聞き覚えのある声が何も無い街に響く。

(まだ、居たのね。)

その声に驚き、声のした方へ首を向ける。

「なんだよ、君も意識があったんだ。あーあ、失敗しちゃったな。」

そこには髪が乱れ、口から血を流した少年が居た。

抱きしめたアトリをそっと置いて立ち上がり、右腕を構える。

「ちょちょ、待ってよ。もう戦う気は無いって、見てよこの身体、そこの女にやられた傷で戦えないって。」

「なら尚更ここで仕留めるわ。」

(とはいっても、私もさっきの詠唱で魔力がないのだけれどね。)

雀の涙ほどしか残ってない魔力と、後ろに居る眠って動けないアトリを守りながら状況で倒せる気も、戦える気すら起きないが、守るべきものが後ろにある以上、立ち向かわなければならない。

その一心で魔術式で作り上げた土の柱が少年へと向かっていく。

「だから、僕はもう戦う気はないって。」

そう言いながら向かい来る土の柱へ炎を放ち、衝突で生まれた砂煙が周囲を隠し、姿が見えなくなる。

「今回のところはお互い痛み分けっていうことにしときましょう。ではまた、会いましょう。」

声と共に暖かい突風が周囲に吹き、煙を散らして視界が開ける。

未だ警戒を解かず周囲を見渡すが、既に少年の姿はなく、徐々に傷が癒えていくアトリとステラスだけが取り残されていた。

この襲撃以来、地図からセレ街が消えた。




補足説明。
アトリが詠唱した魔術の内容は「自身の血を一点に集中して槍を作り、そこに魔力を混ぜて対魔族を入れて無理やり聖槍を作る魔術詠唱」です。はっきりいって荒業です。
常人なら魔力分と血液の分で人ふたりを触媒にしないといけません。
もう1つは「空間に投擲物を加速させる魔術陣の生成」です。常人でも魔術陣を描いて詠唱すれば触媒なしで発動できます。
ただし、今回は2連続の詠唱となったので、尽きた魔力の代わりに自分の血肉を触媒にして無理やり発動させてます。
※その他疑問に思ったこと、ここ説明不足なのでは?等の指摘を感想に書いて下さると出来る限り返信します。(普通の感想も歓迎してます。書いて下さると糧になります。)

蛇足。
長らくお待ちしてしまいました。言い訳させてください。
今回は戦闘回という事で、あまり書いてこなかった戦闘描写に苦戦してしまい、
加えて、行き当たりばったりに書いてきたものが、戦闘描写を書くことになって色々な設定を整理しながらの執筆となってしまった事により遅くなりました。
申し訳ございません。
改めまして、大変長らくお待たせしました。
次話は出ます。何年後かに。
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