不死身の俺は最後を見届けられたい。   作:曇らせ好きの一般男性

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残った傷跡と無くした腕。

「なぁ熱血と剣豪。必ず生き延びて絶対にあの邪龍、殺せよ。」

周囲は燃え盛り、魔族と呼ばれた者たちの屍が転がる戦場の中、邪龍を前に攻撃を庇い、後ろにいる見知った2人へ聞く。

「バカ野郎お前!もう喋んな!いま止血と治療を!」

「私は野郎なんかじゃない。あと、止血と治療が必要なのはどう見たってお前らだろ。」

後ろをチラリと見て、少し呆れながら俺は言う。

「熱血は土手っ腹に穴空いてて何で生きてるのか私が聞きたいくらいだし、剣豪なんて右目やられて左手だってぐちゃぐちゃじゃん。」

「それを言ったら───だって全身毒に犯されて立つのもやっとじゃねぇか!」

「私はいいんだよ。」

今なお食い下がる熱血を諭すように答える。

「いいって、そんな訳ねぇだろ!」

「いいんだよ。だって私は世界を救うほどの力も、才能も、今は持ち合わせていないんだぜ?

それに比べて、あんたら2人は世界を救う力も、才能も持ち合わせている。

だったら、どっちが生き残るのが世界の為か理解できるんじゃないか?」

「っ!」

矢継ぎ早にまくし立てて熱血を黙らせる。

「いいから黙って見てくれよ。私の、人生最後の一番かっこいい場面だぜ?」

その言葉を最後に、合わせていた目線を外し、邪龍へ向ける。

「とは言っても、よくて弱らせる事ぐらいしか出来ないからトドメはきっちり刺してくれよ。」

「分かりました。」

今まで黙っていた剣豪が返事をしたのを聞き、フッと笑い、自身の心臓を右手で引き抜く。

(めっちゃ痛いな、これ。)

本当に痛くて泣きそうだ。

「右手に我が心臓あり、そして眼前に邪龍───、我が心臓をもってかの者を討ち滅ぼさん!」

思わず痛みで震えた声で詠唱し、右手にある心臓が光に包まれ徐々に消えていき、

それと同時に邪龍の頭上に赤黒い魔術陣が現れていく。

身の危険を感じたのか、魔術を詠唱している俺を殺しに口を開けて襲い来る。

「こいよ、クソ野郎。」

それを避ける事も反撃する事もせずに口内へと飲み込まれ、身体が溶けだす。

(まぁ体が溶けても、死なないからあの魔術陣が消える事はないけどな。

惜しむらくは、俺が食われた瞬間の2人の表情が見れなかった事だな。)

ズルズルと体内へ落ちながら場違いな感想を抱き、発動した魔術の赤黒い光が俺諸共、邪龍を包み込み、意識を落とす。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ん、うぇあ。」

お腹に伸し掛る暖かい重みで目が覚める。

(あー、今の夢か。)

久しぶりに見たな。あいつらの顔、今でも覚えてて良かったわ。

 

そーれにしても色々反省点多いよなぁ。途中までは良かったけど食われた瞬間の顔が見れなかったのが1番の悔いだわ。あれ。

やっぱ、攻撃を庇って死ぬシュチュエーションは1番良い顔が見れるけど、場合によって前みたいに最高の瞬間を見逃すこともあって駄目だよなぁ。

といっても、庇う以外の曇らせる方法といってもどうやれば。

「ん、ア、トリ?」

モゾモゾと、布団の中でグルグル考えていた時、お腹の辺りから相棒の寝ぼけた声を掛けられビクリと驚いてしまう。

(あ、やべ。)

「アトリ?アトリ!」

反応が帰ってきた事に気付いたのか徐々に声が大きくなり、突然目の前に相棒の顔が現れる。

「うぉおあ!」

「良かった、生きてる!生きててくれてる。良かった、良かった。」

ポロポロと大粒の涙を俺の顔に落としながら相棒は泣き始める。

(うわ、めっちゃ泣き顔最高。)

「そう泣くなって相棒、私は生きてるんだから笑いなー?」

「でも、目の前で、アトリが、燃えて、それで。」

「あー、はいはい、分かった分かった。」

嗚咽混じりで話し始める相棒の頭を右手で引き寄せて撫でる。

「ごめんな、何も言わずに庇って。けど、ああでもしないと相棒が死んでたかもしないって思ったらつい、な。」

「それでアトリが死んだら、元も子もないよ。」

「私はあの程度じゃ死なないよ。見てただろ?私のお腹にでっかい風穴が空いても死ななかった私だぜ?大丈夫だって。」

「だとしても、目の前であんな事になるアトリは見たくない。」

「分かった。じゃあもうあんな事にならないよう善処するよ。」

(善処するだけ、だけどな。)

 

少しの問答を終えて、数分。相棒を頭を撫でて落ち着いたところで、ずっと気になっていた事を聞く。

「それで相棒、ここって何処なんだ?」

正直見覚えしかない場所だが、知らない風にいく。

「えっと、ここは」

「なんだ、忘れてしまったのか。貴様。」

相棒の話を遮り、後ろから扇子で口元を隠した見覚えしかない女が扉から姿を出す。

「そうか、ならばもう今後面倒を見る必要も無いな。」

「あーあー、思い出した思い出しましたー!思い出したから面倒見てください。歴史屋!」

その一言に慌てて起き上がり弁解を口に出す。

「はぁ、まぁ知っていたさ、しかしお前はどうしてそう直ぐにバレるような嘘を吐くんだ。」

頭を押えて呆れた表情を浮かべる歴史屋の一言に何か言い返してやろうと口を開けた所で相棒が口を開いた。

「ねぇアトリ、歴史やって言ってたけど、知り合いなの?」

「あー、こいつとは」

「こやつが小さい頃から面倒を見てやってた者だ。まぁ面倒と言ってもわえの趣味とこやつの体質が合致した結果、面倒を見ることになっただけだがな。」

「本当に?」

と、歴史屋の説明を聞き、こちらを見る。

「まぁそうだな。今の説明で何も間違ってないよ。だからそう警戒しなくともこいつは何もしてこないよ。」

「なら、いいわ。歴史屋さん、この度は保護していただいて助かりました。」

そう言って肩の力を抜き、頭を下げる相棒を見て、歴史屋はピシャリと扇子を畳む。

「なに、いつもやっている事におまけが着いてきたようなものだ。何も問題ない。それと、わえの名前はストーリアと言う、気軽に呼ぶがいい。」

「分かりました、ストーリアさん。」

「敬語も要らぬわ。」

「分かった、私はステラス・イリアス。気軽にステラって呼んでちょうだい。」

「承知した。」

「して、挨拶も終わったところすまぬが、わえはこやつの傷見る故、席を外して貰えると嬉しいのだが?」

「そう、なら、出ていくわ。」

ある程度の自己紹介も終えた所で歴史屋に退出を促され、相棒は扉へと向かっていく。

「何かあったら必ず呼ぶこと、絶対だからね。」

そう言い残し、部屋を出ていく。

 

「随分、愛されているのだな。」

相棒が部屋を出るのと歴史屋が同時にベッド横の椅子に座る。

「そりゃスラム街で蹲って死にかけた所を助けて10年以上も付き合っているからな。愛されてなきゃ困る。」

「順調そうで何より、しかし、その名前はいつ捨てる。一度死んだのであろう?ではもう死人では無いか。」

「確かに一度死んだけど、まだ捨てられないかな。正直、初めて看破されたからな、もう一度タイミングを見計らってるところだ。」

「ふむ、ならば早めにすることだ。貴様、左腕の再生が止まっているぞ。」

指摘され、布団で隠していた左腕を出す。その左腕は肘から先が無く、肩から二の腕は火傷が酷く、所々皮膚が無くなり肉が見えていた。

「そうだな、ただまぁ私はまだアトリとして相棒と付き合っていくよ。」

「馬鹿者が。どれ左腕を見せてみろ、流石に腕は生やせぬが見てくれだけは良くしてやろう。」

言われた通りに左腕を見せると、手を翳し、掌から出る淡い光が焼けた腕を治していく。

「貴様はその名で死ぬつもりか?」

そうして数分、無言のまま治療が終わるのを待っていると、歴史屋が静かに口に出す。

「どうだろうな、実際のところ、それも良いかなって思ってはいる。それに、相棒の名前を呼んでしまったからな。あの日々を忘れたくないし、潮時かもな。」

「……そうか、ならばとびきり良い記録にするがいい。」

「あぁ、私もお前も満足する記憶にしてやるよ。」

静かな会話を終え、密かに覚悟を決める。




補足説明。
ストーリア(歴史屋)
見た目はThe魔女の格好で紫髪の長髪、ボンキュッボン。ぐらしか考えてません。
主人公とは利害関係が一致して昔から関係が続いている唯一の人物であり、主人公とは違った不老不死。
主人公が成した偉業を伝説として書き上げて世界に流している人物でもある。
※その他疑問に思ったこと、ここ説明不足なのでは?等の指摘を感想に書いて下さると出来る限り返信します。(普通の感想も歓迎してます。書いて下さると糧になります。)

蛇足。
前回に引き続き、1話から読んでくださっている方々へありがとうございます。
自己満足で書いていたの物が自分史上初めての量の評価を頂き、日々の糧にさせて頂いてます。
順調にお気に入りも増えつつある中、期待に応えられるような物を書けているのだろうかと戦々恐々としてますが、それすらもバネにクオリティを上げていきたい所存です。
改めて、小説の閲覧や評価、お気に入り登録などをして下さりありがとうございます。
大まかなこれやりたいって言うラストの描写も思いついたので、色々な設定の明確に定まってきました。
とはいえ、投稿頻度が上がるか?と聞かれたらNOです。
一応次話は出ます。何年後とかに。
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