衛兵詰所にイカれ野郎を渡しに行った。
「何だこいつは?」
「製鉄所のイカれたスカウト。」
聞かれたので答える。製鉄所の人です。
製鉄所は金属掘りに吸収合併される!
「製鉄所?……せいてつしょ……聖鉄教か!でかした!大手柄だ!」
「せいてつきょう?製鉄所のスカウトじゃないの?」
「違う。」
違うらしい。まあ良いや。金属掘りの労働力は増えた。
ボスは私に感謝するだろう。
衛兵を見るとガサゴソと机を漁っている。何だろう。
「報酬だ。持ってけ。」
ドサリと革袋が置かれる。最近同じ光景を見た気がする。
「そんなに危険人物なの?」
「上の話ではそうらしい。無政府主義者の親戚みたいな者だとよ。」
「それは危険だな。」
「危険、危険。」
私は人知れず町の平和を守っていたらしい。
そのうち私の像が町の中央に建つだろう。
朝昼晩、私の像の方向を見て皆が拝礼する様になる。そうに違いない。
◆
大分遠回りになったけどスクラップ屋の店長が言っていた店に向かう。
道を進むと何とも言えない匂いがしてきた。
匂いを辿ると乾いた何かが店先に並べられている場所に着いた。
「やあやあ!我こそは!」
「黙れ。小娘。」
失礼な奴だ。語り部から聞いた格好良い挨拶なのに。
まあ良いや。携行食を買って、この町からオサラバしてやる。
「お前がスクラップ屋の言ってた小娘だな。」
「小娘?私はお姉さんだよ。」
「そうか。携行食を買いに来たんだろ。この中から選べ。値段は同じ、味は好み。」
乾いた肉、魚、四角い何かの携行食が並べられている。
「試食出来ないの?」
「出来ない。」
「そっか……試食出来ないの?」
「出来ない。」
「そっか……「出来ない。」。」
必殺の繰り返し口撃が効かない。ボスと店長の知り合いは強者だらけだ。
良く分からないから全部買おうかな。
……思い付いた!一番不味いやつ買えば消費が抑えられる。
「おじさんが一番不味いと思うやつは?」
「全部不味い。」
「そんなもの売って稼いで悲しくならない?」
「ならない。」
全部不味いならどれ買っても同じか。全部ください。
「サービスしてやるよ。」
「は?不味いものサービスされても……」
「サービスしてやるよ。」
繰り返し口撃を受けて、私は負けてしまった。
不味い携行食が増えた。
沢山あって困るものではないけど何か嫌だ。
「在庫処分してるだけじゃない?」
「違う。それに俺の携行食は消費期限が無いから不良在庫は存在しない。」
そんな訳あるか。こいつはイカれてる。
イカれた知り合いしか私にはいないのか。
町の外に出たら、まともな人と知り合いになりたいな。
「じゃあもう行くよ。」
「おう、死ぬなよ。」
「携行食が不味くて死んだら化けて出てやる。」
「期待してるぜ。」
早く門まで行こう。やっと私の冒険が始まる。
ふと空を見上げる。いつもと変わらない空が輝いて見えた。
……さっきの町並みと同じだね。何でも輝いてるよ。ぴかぴか。