機械義肢を手に入れてかれこれ3日。漸く町の外に出ることが出来る。
道具ヨシ、食料ヨシ、武器ナシ、完璧な準備だ。
門は町唯一の出入り口。実際には壁の隙間や地面から入ったりする輩もいるけど唯一の出入り口だ。
行商人や傭兵はやましいことが無いから、門からしか出入りしない。
私も今日から傭兵だ。きちんと門から出入りするぞ。
「イカれ小娘、今日は何の様だ?」
「町の外に出る。」
「ほんとにイカれちまったんだな。」
「マジだよ。」
「マジ?」
「マジ。」
この門番は顔見知りだ。暇さえあれば門の外を眺めていたから、
何時の間にか知り合いになっていた。門番は暇なのだろう。
「お前の名前なんだっけ?出入りする奴は記録してるから確認させてくれ。」
「名前は無いよ。」
「マジ?」
「マジ。」
町の中で生活する分には名前が無くても問題ないから気にしたこと無かった。
名前か……イカれ小娘とかアホたれとかはカッコよく無いからなあ。
そう言えば語り部が力のことをパワーと言ってたな。
「今日から私はパワーだ!」
「パワーダ?」
「パワー!」
「分かった。お前は今日からパワー・オブ・テラーだ。」
「?」
「下の名前は出身が分かるようにするんだ。」
「この町はオブテラーって名前だったのか。」
「いやテラーだ。オブは皆付けてるから付けた。」
「テラーか、どうでも良いや。」
町の名前を15年生きて初めて知った。
そんなことより名前だ。パワー・オブ・テラー、何か強そうだ。
ボスに自慢してこようかな。未練がましいから辞めとこう。
「達者でな。パワー。」
「あばよ衛兵。」
「ちょっと待てお前。俺の名前覚えてないのか?!」
「あばよ衛兵。」
私はそう言って、門を飛び出した。
これ以上いたら町から離れるのが辛くなる。サヨナラだ。
◆
ひたすら川沿いを進む。
町は大体川沿いにあるから、まずは川沿いに進めと傭兵に言われたからだ。
待っていてくれ新天地。見つけてやるぞ凄い武器。
暗くなる前に町へと着きたかったが、まだ町は見えてこない。
近くの町まで距離があると言ってた気がするけど気のせいだろう。
でもまあ、機械義肢のおかげで夜目が効くし、疲れも溜まらないから遠くても平気だ。
夜通し歩いているとガサガサと音がした。
周りを見渡すと手足が計4本、顔と耳があり、毛の生えた巨大な人がいた。
見たことない種族だな。何人なんだろう。
そう思っているとそいつはニャーっと襲ってきた。
私はそいつのパンチを躱し、頭にチョップを叩き込んだ。
そいつの頭は砕けた。即死だった。
「町の外は危険だな。私じゃなかったら死んでた。」
そいつの肉を焼いて食べる。日記を書こう。
えーと、今日は初めて町の外に出て、初めて肉を食べました。
美味しかったです。明日も肉が食べたいです。
日記はこの日以降書いてない。