ゴロゴロと荷車の車輪が転がる音がする。
荷車を引っ張るのは私。報酬に色を付けてくれるらしい。
ボーッと引っ張っていると向こうから何かがこちらに向かって来た。
「虎が出たぞー!」
「迎撃準備ー!」
虎?あれは人じゃないのか?!
顔と耳、手足が4本に毛が生えて、ニャーっと鳴く生き物。
「あれって人じゃないの?」
「頭イカれてんのか?どう見ても虎だろ。」
「でも、顔と耳に手足が4本、毛が生えてるから人だよ。」
「……お前に色々教えた奴は大変だったろうな。」
まあ良いや。人じゃないのか。
前に虎の肉を食べた時は人を食べてしまった罪悪感で夜しか寝られなかった。
そんな事を考えていると虎が私達の目の前まで来ていた。
おっ、こちらから仕掛けるみたいだ。
頑張れ、負けるな、私の仕事を減らせ。
「ニャー!」
「オラオラ!4対1で勝てると思うなよ!」
グサグサと槍や剣が虎に突き刺さる。私の出る幕は無さそうだ。
戦いを眺めていると商人に話し掛けられる。
「パワーさんは戦われないのですか?」
「うん。まだその時じゃない。」
あ、1人やられた。情けないなあ。
また商人に話し掛けられる。
「その時では?」
「仕方無いなあ。」
面倒だけど、私はその辺にあった石ころを掴んだ。
石投げのコントロールには自信がある。
そこに私の力が加われば虎なぞイチコロ。石ころだけに。
トリップしていると商人に急かされる。
「ニヤニヤしてないで早くやって下さい。」
「はい。」
ブンッと石ころを虎目掛けてぶん投げた。
ナイスコントロール!虎の頭に見事命中して血の花が咲いた。
近接戦をしていた人からは非難轟々だ。
「危ねえだろ!俺達に当たったらどうするんだ!」
「分け前が増えるからヨシ!(助かったから良いじゃん。)」
「クソアマ!覚えてろよ!」
助けてあげたのに、何で起こるんだろう。
荷車引っ張る時に落としてやろうかな。
「痛てて、死ぬかと思った。」
「包帯巻いとけ。」
私達の体にはナノマシンが流れているらしく、少々の怪我程度は簡単に治る。
千切れた手足も傷跡に手足を当てておけば治る。
怪我よりも餓死する人の方が多いくらいだ。
「後どのくらいで着く?」
ガラガラと荷車を引っ張りながら訊ねる。
「日が落ちるまでには着きます。」
「了解。」
取り留めのない話をしながら私達は進む。
倒したロボットとか動物とか盗賊とか、自慢大会だ。
男っていつもそう。自慢話ばっかり。
そう思っていると話し掛けてきた。話しかけるな。
「クソアマは何か倒したことあるか?」
「ロボットと虎。」
「意外とやるな。確かに力は強えからなお前。」
力だけは自信がある。機械義肢が無くても虎くらいなら狩れたと思う。
それにしても退屈だ。速度を上げて良いか聞こう。
「速度上げて良い?」
「あまり飛ばさないで下さいよ。」
「よっしゃ。」
私は全速力で走った。後ろから悲鳴が聞こえるが気にしない。
暫くすると遺跡が見えてきた。報酬が楽しみだ。