3章 1話
道に迷いました。
クソったれな虫人の町を飛び出したのは良いけど、絶賛迷子中だ。
川はどこだ、川はどこだ、川はどこだ。
金払うから教えて欲しい。確かあっちから来たから……あれ?こっちか?
分からない。私はどこだ?
「アアアアアアアアア!」
大声で叫ぶ。メンタルリセットだ。
横から話し掛けられてるみたいだが無視だ。
「あのう……」
「アアアアアアアアア?」
「もしもし?」
「アアア?」
「すみません……」
「何?」
「喋れたんですね。」
「当たり前だ。」
誰だコイツ。急に出てきた。ちょうど良い、道を聞こう。
「川はどこ?」
「川ですか?あちらの方角ですよ。」
あっちでもこっちでもなくてあちらだった。
危なかった。余計に迷うとこだった。
そう思っていると話し掛けられる。
「もう遅いですから私達の集落に来ませんか?」
「集落?」
「はい。ご飯と寝床もありますよ。」
「行く。」
「はい。行きましょうか。」
あれ?町以外の集落は気を付けろって誰か言ってた気がする。
えーと……無政府主義者だ。無政府主義者。
こいつもそうなのか。思わず声に出す。
「無政府主義者か?」
「は?あんなのと一緒にしないで下さい。」
「そう。」
「鉄十字教です。十字の下に人は平等なのです。」
「ふーん。」
あっ!平等主義者!飯と寝床あるって言うし、一晩だけなら良いか。
泊めてくれた恩に、力の下に人は平等と言う事を教えてあげたい。
◆
そいつの案内で集落に到着した。門兵に挨拶している。
いつまでもそいつじゃ可哀想だ。案内人とでも呼ぶかな。心の中で。
「戻りました。」
「応!後ろの奴は誰だ?」
「迷い人です。」
「集落に入れて大丈夫か?」
「大丈夫。」
「……お前に聞いてない。まあ、大丈夫そうだな。」
私は大丈夫らしい。当たり前だ。さっさと飯を持って来い。
飯を待っていると案内人から話し掛けられる。
「来て早々すみません。水汲みして頂いても?」
「任せろ。」
ガラガラと滑車が鳴る。サービスだ。沢山汲んであげよう。
よいしょ、よいしょと水を汲む。案内人は笑顔だ。
「おお、ありがとうございます。水汲みは重労働でして。」
「力仕事は得意。」
結局、樽5杯分くらい水汲みした。
そんなこんなで働いていると飯の時間が来たようだ。
「ご飯にしましょう。」
「やった。」
広場に大きな鍋がある。あそこで煮炊きしてるみたいだ。
今日のメニューは何だろう。案内人に訊ねる。
「今日は何?」
「肉と野菜を煮たものです。」
「肉!」
皆1列に並んでいる。私も後ろに並ぶ。早くしろ。
配膳のババアに皿を突き出す。
「あんたが客人だね。はいお食べ。」
「肉くれ。」
「はいはい。」
肉沢山。何の肉だろう。旨ければ良いか。
たまらん。お代わりは出来るかな。
「お代わり。」
「1人一杯までだよ。」
「は?私は客人だぞ。パワーさんだぞ。」
お代わりくれないと暴れるぞ。私は肉食獣だ。
駄々を捏ねていると案内人が助け舟を出してくれた。
「すみませんがもう一杯あげてください。水汲み頑張って下さいましたし。」
「やった。」
結局5杯お代わりした。話せば分かるじゃないか。
食後の一服はたまらない。パイプを吹いていると話し掛けられた。
「パイプですか?良いですね。」
「はい。」
「……ありがとうございます。欲張りな人かと思ってました。」
パイプを吸いながら案内人が言う。
欲張り?私は人より沢山食べられるだけだ。断じて食いしん坊ではない。