翌日、ボスの馴染みの傭兵がいるという食堂に私は向かった。
食堂なんて生まれてこの方利用したことがない。
利用したのは店の前で匂いを嗅いだ時くらいだ。
お金は外に出るために貯金していた。
だから何の肉か分からない串焼きすら食べたことがない。
傭兵は金属掘りや小作農家等の雇われ人に人気の仕事だ。
自由気ままに旅をして、酒を飲んで、好きなものを食べて、
好きな時間に寝られる、夢の仕事。実際は死と隣り合わせの危険な仕事だ。
町の外に出れば暴走したロボット、盗賊、凶暴な動物……等と戦い、
生き残る必要が有る。力こそ全ての、この世界に最も相応しい仕事。
考え事をしている内に目的の食堂に着いた。
ボスはその傭兵の事を見れば分かる格好と言っていたが、どの人だろう。
私はボスの馴染みの傭兵ですとでも書いているのかな。
「小娘、何見てやがる。注文しないなら出ていけ。」
私は飯を食いに来た訳ではない。出て行きたくもない。
くそう、どうすれば……その時、私に天啓が舞い降りた。
完璧な回答だ。恐れ慄け。
「傭兵ください。」
「……あいつが言ってた奴はお前か。」
そう言うと店主は店の奥にいる男を指差した。
髪が前半分しかない奇抜な男だ。確かに見たら分かる。
ボスもお人好しの変わり者だけど知り合いも相当な変わり者だな。
「どうも。」
「君が彼の言っていた人かな。短い間だけどよろしく。」
何だこいつ。見た目の割に物腰が柔らかい。
これが話に聞く、紳士というやつかな。
やっぱりボスもボスの知り合いもイカれてる。
「早速教えてあげよう。まずは外で生きるための知識から。」
見た目はあれだけど、こいつの知識はためになった。
携行食の選び方、水場の探し方、火の起こし方、食べられる草木、危険な地域などなど。
知識は力とか格好良いことも言っていた。見た目はあれだけど。
「次は戦いについてだけど、君のほうが多分強いからなあ。心構えだけ教えるよ。」
曰く、機械義肢がなくても化け物みたいな強さの人はゴロゴロいるらしい。
上には上がいるから油断だけはしないようにと言われた。後は無政府主義の人たち。
彼らはイカレてるから近づくと碌な目に会わないらしい。
平等を謳っているらしいけど、そんなの力が強い奴にとっては無意味だ。
「こんなところかな。後は実践あるのみだ。とにかく水と食料は多めに持っていくこと。」
「ありがとうございました。」
私だってお礼は言える。普段は言わないだけだ。
そうだ。これだけは言っておかないと。
「困ったことがあったら言ってね。助けてあげる。」
「……それは僕のセリフなんだけど。」
準備することが増えた。お金足りるかな。
そう思いながら金属掘りの現場に私は帰る。