今日はメインイベントだから出番は後のほう。
酒を飲みながら待つ。準備運動の代わりに踊る。
兵士が呆れ顔で見ている。
「メインイベントなのに大丈夫か?」
「よゆう。酒飲みながらでも勝てる。」
「勝ったら駄目だろ。」
「そうだった。」
勝ったら駄目だった。今日の台本はベビーフェイスの勝ち。それだけ。
毎回思うけど、もっとこう試合の流れとか書いて欲しいな。
「パワーちゃん、出番よお。」
「うす。」
酒を飲みながら入場する。入った途端ブーイングだ。
要望にお応えして、手を振り返す。
開始位置まで来た。手を縛られる。毎回ご苦労さまです。
「きゃー!エル様ー!」
「やったれ!」
「ぶち殺せ!」
黄色い声援が聞こえる。人気だな、何とか君。
1人だけ個室で好きなものが食べられるらしい。許せん。
「君がパワーだね。悪党は成敗するよ。」
「ふーん。」
成敗されます。試合開始の合図の前に前蹴りで腹を蹴る。
鳩尾は避けといた。倒れたら終わりだ。前のめりに倒れる。
審判を見る。困り顔だ。審判に話しかける。
「いくら何でも弱くない?」
「しっ!ちょっと離れてろ。」
審判が倒れた何とか君に近づいて確認する。
やっと立ち上がった。元気そうだ。
「卑怯者め!許さないぞ!」
「すみませんでした。」
「えーと、試合開始!」
試合が始まった。取り敢えず全部の攻撃を受ける。
効いた振りをしないと。
「イタイー。ヤメロー。」
「ハッハッハ!効いている様だね!」
虎先生、上手い負け方を教えて下さい。
演技派と言われた私をここまで苦戦させるなんて恐ろしい奴。
よろけたと見せかけて頭突きを腹に当てる。
やべっ、さっきも腹に攻撃したんだった。大丈夫かな。
大丈夫じゃないっぽいな。
「ウワー。アタマガワレルー。」
「……おい、エル、立て。」
「痛いよ。痛いよ。」
「立て阿呆!」
審判がキレて無理矢理何とか君を立たせる。
私は頭が痛い振り。凄い大変だ。早く終わってくれ。
「喰らえ!」
「ウワー。ヤラレター。」
腹を殴られたので倒れた。これで終わりだな。
帰って酒飲もう。自棄酒だ。
「勝者エル!」
「ハッハッハ!当然だ!」
勝者が決まったので、よっと腹筋だけで立ち上がる。
帰ろう。帰ろう。さっさと帰ろう。
試合は終わったのにコロシアムは静まり返っている。
何でだろう。
「八百長野郎!金返せ!」
「真面目にやれ!」
「パワー!いつもみたいにやれ!」
降り注ぐ罵声と物。やって良いのかな?
審判を見る。頷いている。よし。やるか。
慌てている何とか君に飛び蹴りをお見舞いする。
吹っ飛んで転がった。私も腕が使えないから転がる。
はね起きて、蹴りを喰らわす。伸びたかな?
「勝者パワー!」
「踊って良い?」
「駄目だ。早く帰れ。」
ファンサービスは拒否された。まあ良いや。
これで私も人気者。個室が用意されるに違いない。