テクテクと紹介してもらった店を目指す。
何でだろう。今までは色褪せて見えた町が今では輝いて見える。
汚い路地裏も、汚れた道路も、酔っ払いも、破落戸も、浮浪児も、
皆が私を祝福している。世界は私のものだ。
「♪」
「そこの幸せそうなあなた。酒と食料いりませんか?お代は結構。」
「目的は何?私の体?」
「いりませんよ。どうですか?タダですよ。」
こいつ私の体がいらないのか?!イカれてやがる。
何だか腹が立ってきたぞ。
私を無視してそいつは話し続ける。
「私は聖鉄教の伝道者。聖鉄教に入れば飯と酒をタダであげましょう。」
製鉄狂?何だ製鉄所のスカウトか。
ボス、タダ酒もつけないと労働力が集まらない時が来ているよ。
頑張れボス、負けるなボス。浮浪児を騙して労働力を確保するんだ。
「いらない。これから町の外に出るからね。製鉄所では働けないよ。」
「せいてつしょ?いえいえ、他の町にも信徒はいます。この町の外でも助けになってくれますよ。」
「しつこいなあ。私は行くよ。」
「後悔しますよ。」
パチンと指を鳴らす音がした。
ニヤついた顔の破落戸が路地からゾロゾロ出てきた。
そいつはドヤ顔でまた話し掛けてきた。
「もう一度聞きます。聖鉄教に入りませんか?」
「入りません。さようなら。」
そう言って立ち去ろうとすると破落戸が道を塞いだ。
邪魔なので腹を殴ってあげた。バタリと倒れる。
普段なら半殺しだが今日の私は機嫌が良い。
「なっ、おい!その女を捕まえろ!」
「おっ、おう!やるぞお前ら!」
何故か皆襲ってきた。機械義肢を持つ私に勝負を挑むとは命知らずめ。
右腕一振りで人が飛ぶ。左腕一振りで人が倒れる。
蹴りを入れれば壁が壊れる。ウオオオ!私は戦闘ロボットだ!
命が惜しく無い奴から掛かってこい。
「ヒィィイイ!何だこいつ!」
「お前が何だ。いきなり人を襲わせるなんてイカれてる。」
私は右手でゲンコツを作る。
「ゆ、許してください。」
「金目のものを全部出せ。そしたら許してあげる。」
「は、はいいいい!」
結構金を持ってたみたいで思わぬ収入が入ってきた。
飯と酒も没収だ。浮浪児に配ってやろう。
「お前ら!製鉄所じゃなくて金属掘りで働け!」
「え?何ですか?」
「金属掘りで働かない奴はこうだ。」
私はその辺に落ちていた拳大の石ころを握り潰す。
破落戸共は悲鳴を上げて金属掘りの仕事場に走り出した。
私、スカウトの才能あるかも。
製鉄所のスカウトは衛兵詰所にでも差し出しとくか。
ズルズル、製鉄所のスカウトの首根っこを掴んで詰所に向かう。
グエグエ五月蝿いが逃げられると厄介だから仕方無い。
携行食を買う店からドンドン離れていくが世のため、ボスのため。
こいつを出汁に製鉄所は金属掘りに吸収合併されるんだ。
掘った金属を製鉄して町の経済を支配するボス。うーん、うらやましい。
貰った酒を渡せば衛兵の印象も良くなるだろう。
ルンルン気分で私は詰所に向かった。