Rが歩いた先も、先が見えないくらいに暗い場所だったが、小型のテントがポツンと建てられていた。後ろは森になっているが暗くて探索するのにも勇気が必要だ。しかし探索する勇気が出ないRは、恐怖と寒さに身震いをする。Rはうっすらと明かりが照らされているテントの中にそそくさと入っていく。まるでそれから逃れるように。
テントの中に入ると、いくつかの物資が置かれていた。
・蝋燭のランタン(器具に固定されている)
・果物ナイフ
・500ml程のペットボトルのアーモンドウォーター2本
・マグカップ
・アヒルのおもちゃ
ポワァ…と照らすランタンは、静かに火が揺らいでいる。ランタン前に座り、物資を確認する。
果物ナイフを手に取り、目を細めて無言でじっと見つめていた。前世での記憶がうっすらと蘇る。途端に胸が少し痛くなった。
マグカップを手に取る。調べると陶器で出来ている事が分かった。あとは特に何の変哲もなかった。
陶器のマグカップを置き、アヒルのおもちゃを手に取る。よくお風呂とかで浮かんでそうな黄色のおもちゃ。軽く指を動かすと『グワワッ』と鳴いた。何故だかおかしくて、静かにふふっと微笑んだ。
たまに地球の事を思い出すが、前の時より帰りたいという気持ちが薄れてきている。永住したいという気持ちではなく、諦めに近いような。死ぬのも嫌だから生きてるだけ。体操座りして、ランタンを見つめ直す。明かりはいつも優しく照らしてくれる。うっすらと涙を浮かべた。アーモンドウォーターを飲みながら、少し俯く。Rの心の中を覗く事は出来ない。
右手に力が入り、ペットボトルに近い物が少し歪む。気持ちがぐしゃぐしゃになる。誰にもぶつけられない思いが爆発しそうになっている。置いてあったアーモンドウォーターも含めて、全てお腹の中に流し込むように、涙を流しながら一気に飲み込む。
プハァッ!と息をし直す。味はあの時と変わらない。500ml近くのアーモンドウォーターを一気に2本も飲んだものだから、少しクラッとする。
落ち着く為に、ランタンの近くで横になって丸くなる。丸くなりながら、ランタンの火を見つめていた。何も知らない火は、ユラユラ揺れながらRの身体や顔を優しく照らしてくれる。体勢を整える為に身体を動かす。切ない気持ちに近いような…そんな気持ちを抱えながら、孤独に眠りについた。
Rが眠りについた頃、どこか遠くでオオカミが遠吠えをしている。2匹がお互いに鳴きあっている。背を向けていたRは知らないが、たまに外に人影が横切っている。お互いがお互いを認識しないまま、夜中のまま時が流れていく。ランタンは変わらずに明かりが灯っている。空に浮かぶ満月は、優しい光で地上を照らしている。
【目覚める】