【The back rooms】   作:T@ma

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Rは赤の観覧車に乗り椅子に座る。

ゴンドラの扉が閉まり、ゆっくり上に上がっていく。

 

中も赤色だが、原色よりかなり薄めな色になっている。少しだけ目に優しい。この観覧車は一際どの観覧車よりも目立っており、存在感が一番大きかった。だからこそ乗ってしまったと言われたら、否定も出来ない。

 

今迄に不思議な事を沢山目に焼き付けてきたせいでもあるのか、すごく疲れが増した。身体中が騒ぎ出しそうな程に暑く感じる。

生きてきた中で一番暑く感じる。

 

少しでも身体を冷やそうとRは上着を一旦脱ぐ。

パーカーを脱ぎ、椅子に置こうとして少し腕に違和感を感じる。

腕をチラッと見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の腕から血が出ている。

 

 

 

 

勢いあまって上着を椅子から落とす。

だがそんな事はどうでもいい。反対の腕も見る。

 

 

 

腕から血が流れている。

 

 

 

しかも一箇所に限らず、あちこちにぶわっと血が出ている。

どういう事だ!?これは何なんだ!?

 

 

 

 

焦りから汗がドバッと流れる。

その汗が口の中に入る。

 

あのしょっぱい味はしない。代わりにするのはドロッとした感触と血の味。手の甲で額を拭ってパッと見る。

 

 

 

手の甲にびっしょりと血がこびり付いている。

 

 

 

声にならない声を喉の奥から出す。

Rは着ている服を脱ぎ身体を見る。

落ちた服にも血痕がびっしり付き、身体中には傷もないのにどこからか血が流れ溢れ出ている。

 

 

 

いきなり現れた理解不能の現象に混乱する。

 

この観覧車に乗ったら急に血が出てRの身体を覆うとしているのだ。自身の身体はまるで違う何かの生き物にでも乗っ取られてしまったかのような感覚に陥る。

痛みは無い。

傷もなければ初めに感じたあの違和感以外何も起きていない。ただ真実として叩きつけられているのは、全身からくまなく血が流れ床に落ちている事である。

 

 

全身確認の為に立っていたRは急にフラッと身体に力が入らなくなり、その場に座り込む。その間にも血は留まることを知らずに、ドボドボ溢れていく。

 

Rの身体からあらゆる血液が抜けている。血が足りなくなってきている。貧血に近いような症状。しかし再び立つ事は出来なかった。足に力が入らない。どこかに力を入れてやろうとしても、身体が動かない。

声が出ない。

 

 

観覧車は止まらない。

 

 

 

 

やがて床一面に血の水溜まりが出来た頃には座る力も無くなり、前屈みに倒れ込んでしまった。顔も動かす力が残っていないRは、自身の血の水溜まりに顔が浸る。その瞬間も血は出続ける。

朧気な目をしたRは、口を閉じる事も出来ずにただ自身の血に溺れていくのだ。

 

 

 

もう呼吸も出来ない。息をしようにも顔が動かせない。

口の中に血が入り、喉に襲い絡む。

吐き出す力もない。Rはとうとう血の海に溺れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観覧車は変わらずにゴンドラをゆっくり回している。

ただ一つのゴンドラだけ、血をぽたぽた流しながらその空間を赤黒い何かで満たしている。

あれが何なのかは、この遊園地以外誰も知らない。知る由もない。

 

 

 

 

 

【END 血:栄養豊富なゴンドラ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの観覧車から降りる

 

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