校門前でのやり取りが無事(?)に済み、理事長室に案内された俺たち。
まだ、早い時間だったからか在校生、新入生共にそんないてなかったのが救いか?
理事長「どうぞ、入って頂戴」
雄「失礼します」
理事長「それでは改めまして入学おめでとう、神谷雄君。私は花咲川学園の理事長をしています天久香(あまひさかおり)です。神谷君のお父様から話は伺っていると思うのだけれど何か聞いてる?」
雄「おや・・・父からは花咲川と羽丘の理事長が父と知り合いだというのと両校共に共学化のテスト生を探していると聞いています」
何を聞いても答えてくれなかったし、これ以外の情報ってないんだよなぁ。
理事長「概ねその内容で間違いないわ。この辺りも少子高齢化が進んで今年からの共学化の案も出たんだけど、急に共学化というのも今の在校生や新入生も思うところがあると思ってね。そこで、共学化のテスト生を募集して3年間様子を見て判断するって方向になったの」
公子高齢化は今やどこでも聞くけどここまで及んでいるとはね。
でも、解せないな。テスト生の募集ならもっと早くにやっていただろうに、その情報すらないっていうのもおかしな話だよなぁ。
理事長「理解はしたけど、納得までは少し足りないって顔ね」
雄「そんなに顔に出てましたか?」
理事長「それはもう存分に。ねぇ、氷川さん?」
紗夜「そうですね。すごく分かりやすく顔に出てましたよ」
マジか~
皆、よく俺の言いたいこと当てるなぁとは思ってたけど、そんなに顔に出てたか。
理事長「神谷君の言いたいことも理解してるわ。正直、この案件は共学化する派閥としない派閥で分かれちゃって決まったのが1ヶ月半ほど前。時期が時期だけに入試を行うことは出来ないから入試に落ちた子を入れる案もあったのだけれど、素行不良な子ばかりで入学させるには不安材料しかなかったの。そこで白羽の矢が立ったのが先ぱ・・・あなたのお父様よ」
ん?今、先輩って言い掛けたよな?
雄「もしかして理事長ってうちの父と学生時代の知り合いだったりします?」
理事長「よく分かったわね。あなたのお父様は大学時代の先輩よ。ちなみに羽丘学園の理事長も同じね」
なるほど、それで変に弱味やらを握られとるんやな。
何したんやホンマに。
雄「ということは、共学化の方針は決まったはいいけど肝心のテスト生が見つからない。パッと思いつく心当たりが花咲川、羽丘共にあるところと考えた時に俺の父が出てきたと」
理事長「えぇ、その通りよ」
雄「じゃあ、仮に俺が意地でも行かないという時はどうしていたんです?」
理事長「その場合は最終手段、実力行使ね」
笑顔で答える理事長だが、目は笑っていない。
あまり下手に聞き出さない方が身のためとはこの事だろうか。
紗夜「ちなみに実力行使の場合はどうされたのですか?」
その事に下手に突っ込みたくない雄にとってまさかの伏兵である。
そこで理事長からとんでもない言葉を耳にする。
理事長「弦巻家に頼ろうと思っていたわ」
雄「ヒェっ!?」
世界中で弦巻家を知らない人間はほとんどいないだろう。
家具や家電は勿論、遊園地やデパート、リゾート地などあちこちに弦巻家が出資しており、TVのCMや広告塔で目にしないことは滅多にないほどである。
世界が誇る弦巻家が相手となると、俺がどう足掻こうがどうしようも出来ない。いや、出来る訳がない。
だが、理事長がなぜ弦巻家とコネがあるんだ?
いくら理事長の立場といえどそれでどうにかなるわけでもなし。
いや、親父との繋がりを考慮すると学生時代に何かあったという線も・・・
理事長「色々試行錯誤しているみたいだけど、弦巻家との繋がりは簡単。今年の一年生に弦巻家のご令嬢が入学するからよ」
はい?
弦巻家のご令嬢が入学?
今年の一年生の中に?
理事長「ちなみに弦巻家から花咲川学園に出資頂いていてそれも縁に繋がっているわ」
話が大きくなりすぎてついていけない(泣)
頭痛が痛いと言いたくなるのはこういうことか・・・
こういう時は素直に降参するのが吉だ。
雄「分かりました。入学の件については他に質問はありません」
理事長「話が早くて助かるわ。そろそろ入学式も始まるだろうし講堂に移動しましょうか」
体育館とは別に講堂があるとは流石女子校。元々行く予定だった阿茶局(あちらの)高校はそういうのなかったしな。
理事長「そうそう、新入生挨拶の一貫で神谷君からも軽く挨拶してもらうつもりだから」
はい?
紗夜「理事長。その話は生徒会側も知らされてないのですが」
生徒会側も知らないってことは理事長及び教師陣だけに連絡が行ってたのか!?
理事長「おかしいわね。生徒会長には連絡していたはずだけど?」
生徒会長さーん!!!何しとんねん!!?
理事長「まぁ、簡単な原稿はあるし大丈夫よ」
あ、原稿はあるのね。良かった、今から約5分以内に話す内容考えなきゃとか思っちまったわ。
紗夜「明らかに安心した顔をしてますね」
そこ、ツッコまないで!!
なんやかんやしている間に講堂に到着し現在、舞台袖にて待機中。
今は校長のありがたいお話を横で聞いてるわけなんだが・・・
やっぱどこの学校でも校長のお話は長いですなぁ(遠い目)
もう1人で二十分近く喋ってるぞ。在校生はおろか新入生まで何人かうたた寝してるし・・・
いや、在校生はまだ分かるが新入生はもう少し頑張ろうぜ。
校長「話しすぎたかな。時間も推しているようだし次お願いしますね」
ようやく終わった~。
そんで次は何やったっけ?
理事長「続きまして新入生挨拶。新入生代表、市ヶ谷有咲さん」
新入生挨拶か〜。代表に選ばれるならすっごい人が来るのかと思われたが・・・
理事長「市ヶ谷さん?・・・市ヶ谷有咲さーん!」
まさかのブッチかい!
周りの先生方も呼ばれても出てこない市ヶ谷さんに大慌てで何人かが講堂から足早に探しに出て行った。
マジで何やってんだ・・・
理事長「仕方ありません。時間も限られているので次に進みます。続きまして本年度より共学化のテスト生で入学しました神谷雄君、壇上へお願いします」
市ヶ谷さんのおかげで予定が繰り越されて俺に回って来たじゃんか!
ちなみに何故取り乱しているかというと・・・
『アドリブで頑張ってね!☆』
期待させといてこれはいくらなんでもないやろうがよぉ!!
校長のありがたいお話の間に準備出来たんじゃねぇかって?あんなの聞いてたら頭が回る訳ねぇやん。
うだうだ考えても仕方ない為、原稿を小さく持ち壇上に上がる。
雄「皆さん初めまして。本日より花咲川学園のテスト生として入学しました神谷雄です。在校生、新入生の皆さんは2週間前まで女学院だったのが急に男子が入学すると聞いて驚いたかと思います。正直、僕も入学の一ヶ月前に聞かされて驚いています。お互いに不慣れな部分があり、トラブルがあると思いますが宜しくお願いします!」
パチパチパチ!
簡単な挨拶だが、これで終われると思っていたがそうは問屋が卸さなかった。
理事長「神谷君ありがとうございます。ちなみに神谷君は一ヶ月周期で羽丘学園にも通ってもらう予定なので宜しくね☆」
は?
俺だけでなく在校生、新入生共に同じ顔をしている。
というか、どういうこと?
理事長「あら、さっき渡した紙に記載してないかしら?」
さっきの紙ってこのクソ当てにならん原稿か?
言われた通り、よく読むと・・・
『アドリブで頑張ってね☆
追伸、羽丘学園にも一ヶ月周期で入れ替わりで通ってもらうから頑張ってね☆』
な・・・な・・・
雄「なんじゃこりゃぁぁぁ!!」
そんな話聞いてないよ!?