【書籍版二巻発売中】迷宮狂走曲~RPG要素があるエロゲのRPG部分にドはまりしてエロそっちのけでハクスラするタイプの転生者~   作:宮迫宗一郎

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19.「妖精の羽根で飛ぶ男ども」は悪夢の光景

クソ妖精

妖精というか悪魔

ピンクの悪魔

ピンクは陰険

トラウマ製造機

魔術狂い

かわいいは作れる

メスガキ種族

わからせて殺る

腹パン実装はよ

顔パン実装はよ

すり潰してスムージーにしてやる

羽虫

害虫

不快害虫(文字通りの意味で)

蝶のように舞い、ゴキブリのように不快

(見た目)きれいな(中身)ゴキブリ

うざいメタルス◯イム

お前はもう黙れ

用意したティッシュを口に詰めてやりたい

 

――【アへ声】プレイヤーからフェアリーへ送る渾名・罵倒集より抜粋

 

 

──────────────────────

 

 

《表》

 

【アへ声】における雑魚敵としてのフェアリーは、AVDが非常に高くて物理・魔術を問わず単体攻撃を仕掛けても回避されることが多い。

 

さらに、フェアリーは【マジックゴーレム】という全身ピンク色に塗装されたメルヘンチックな見た目のゴーレムと一緒に出現するんだが、このゴーレムが【バンガード】持ちであり、ゴーレムの後ろに隠れてバカスカ魔術を撃ってくるので非常に鬱陶しい。

 

そして苦労して【マジックゴーレム】を倒すと、次のターンで「笑いながら逃走していった!」とかいうクソ行動を取るAIが組まれていた。つまり、さんざん魔術を撃ってきたことへの報復をする暇もなく、こちらを馬鹿にしながら逃げていくって訳だな。

 

しかも他のゴーレム系モンスターは鉱石製だったり金属製だったりするためドロップ品が美味しい奴らが多いのに対し、【マジックゴーレム】は「魔術で生み出されたゴーレム」という設定のためか倒したところで金も素材も落とさない。挙げ句、固有ドロップ品の名前は【ゴミクズ】。もちろんハズレアイテムだ。どこまで人間を馬鹿にしたら気が済むんだろうな。

 

反面、フェアリー自体の経験値やドロップ品は美味しく、固有ドロップで【妖精の羽根】という浮遊効果のある装飾品を落とす。それによってプレイヤーからは【うざいメタルスラ◯ム】と呼ばれることもあった。

 

なので、慣れたプレイヤーにはパーティ全員分の【妖精の羽根】をドロップするまで狩られる運命にある。ただし、経験値が美味しいからといってフェアリーでレベリングするのは非推奨だ。「こいつよりも経験値効率がいいモンスターはたくさんいる」というのもあるが、理由の大部分を占めるのは「うざい」「めんどい」「顔も見たくない」からなのは言うまでもない。

 

そんでまあフェアリーの倒し方についてだが、別にそこまで特別なことをする必要はない。ようするに「さっさと【マジックゴーレム】を始末し、そのターン中にフェアリーまで一気に倒す」を達成すればいいだけなので、パーティメンバー全員で範囲攻撃をブッパしていればいい。

 

【アへ声】においては、壁役が範囲攻撃から味方を庇った場合、庇った回数だけ壁役にダメージ判定がある仕様になっている。そのため、パーティメンバー全員でフェアリーに範囲攻撃をブッパすると、それを庇った【マジックゴーレム】に攻撃が複数回ヒットし、メンバー3~4人くらいであっさり沈めることができる。そのまま残りのメンバーの範囲攻撃でフェアリーまでまとめて倒すことも不可能ではない。

 

「みんな、【爆風の杖】は持ったな!? 行くぞ!!!」

 

つまり、複数の【商人】で囲み、ノーコストで使える【爆風の杖】をブッパ。この手に限る。

 

という訳で、今日だけ店を臨時休業にして【商人】4人に来てもらった。ついでに言うと、当初はこの階層でルカに活躍してもらうつもりだったため、ルカも【商人】を極めていたりする。なので今の俺たちは【爆風の杖】25連射が可能なのである!

 

「な、なぁ……ホントにやるのか……?」

 

「ほら、見ろよ……無邪気に蝶と戯れてるだけじゃないか……」

 

「なにも殺さなくても……」

 

さっそく油断しきっているピンク頭を3匹も発見したので、先手必勝……と思ったのだが、なにやら3人組の士気が低い。

 

「やー、だから何度も言ってんだろ? アイツら可愛い顔してやることなすこと全部えげつないぜ?」

 

「でもよ……」

 

実際に中層を突破したことのあるアーロンが経験者として諭しているが、いまいち効果が薄いみたいだ。

 

まあ気持ちは分かるんだよ。人間に似た生物、それもまだ幼く可愛らしい顔つきの美少女にしか見えないような生物に武器を向けるのは気が引けるよな。

 

だが可愛らしいのは見た目だけで、その本性が人間を主食とする恐ろしいモンスターであることを忘れてはならない。しかも奴らは自らの容姿が人間にとっても魅力的であることを自覚しており、それを積極的に利用するタチの悪いモンスターなんだよな。

 

ノームも似たようなもんではあったけど、あっちは最初から自分の顔を疑似餌だと割り切ってるからまだマシなんだよ。フェアリーに関してはもっと酷い。自分の容姿が優れていることを鼻にかけてるうえ、その優れた容姿を保つためなら平気で他種族を犠牲にしたりするからな。

 

「とはいえ、3人の気持ちも分かる。口で言われただけじゃピンとこないんだろ? こういうのは実際に見ないと納得できないもんだろうし。ということでルカ、頼めるか?」

 

“いいよ! 奴らの化けの皮を剥いでやればいいんでしょ?”

 

俺がいつでもルカを庇えるように構えると、ルカは黒いマントをはためかせて*1フェアリーの下へと飛んでいった。

 

『あっれー? おっかしーなー? 地べたを這いずり回るしか能のないアリんこがいるよー?』

 

『ホントだー! アリんこのクセに飛ぶなんてナマイキー! てか、きったない労働者ふぜーがアタシたちに近寄んないでくれるー? 土くさいのが移っちゃーう!』

 

『知ってるよー? 冒険者にだいじなだいじな畑を燃やされちゃったんだってー? かわいそー! でもよわむしのノームにはみじめな姿が似合ってるねー?』

 

『キャハハハ! ざぁこ、ざぁこ!』

 

ルカが近寄った途端、3匹の羽虫どもがルカの周囲を煽るように飛び回りながらうざったい口調で話し始めた。フェアリーの言語は魔術によって他種族にも理解できるようになっているのだが、その理由が「他種族を煽って遊ぶため」であるあたり、マジで性格悪いんだよなこいつら。

 

「あ、あれ……なんか、思ってたのと違うな……」

 

「いや、まさか、本当に……?」

 

カルロスたちが動揺しているが、こんなものは序の口だ。奴らの本性はあんなもんじゃない。ヤバいのはここからだぞ。

 

“ねぇ、キミたち”

 

『えー!? もしかしてアタシたちに話しかけてるー!? きもーい! アリんこのぶんざいで――』

 

“キミたちって、なんだか【キラービー(蜂のモンスター)】に襲われて卵産みつけられてそうな顔だよね(笑)”

 

『………………テメェ!! もっぺん言ってみろやこの◯◯(ピー)が!!!』

 

『ここから生きて帰れると思うなよ! 魔術の実験台として◯◯(ピー)して◯◯◯(ピー)してやる!!!』

 

『テメェの最期は◯◯◯◯◯◯(ピーーーーー)だから覚悟しとけよ!!!』

 

相変わらず俺には無言にしか見えないが、ルカがモンスターの言語でなにか挑発でもしたのだろう。瞬間、フェアリーどもの顔面が作画崩壊したかのように歪み、言葉にするのも憚られるような顔芸を晒して本性剥き出しでルカに掴みかかろうとした。

 

「おおっと! やらせないぜ!」

 

『あ゛? なんだテメェ!』

 

『邪魔しやがって! 新型ゴーレムか!?』

 

『こっちもゴーレムを呼べ! ◯◯◯(ピー)してやる!』

 

すかさず間に割って入ってルカを庇い、反撃で【遺恨の槍】を振るう。さすがAVDが高いだけあって掠りもしなかったが、牽制にはなったようでフェアリーどもと距離を取ることに成功した。

 

「……な? 言っただろ? 俺が前のパーティにいた頃、フェアリーが稼働させてた魔術研究所の1つに入ったことがあったんだが、ありゃ酷いもんだったぜ?」

 

「うへぇ、魔術の実験としてそんなことまですんのか……」

 

「こえーんだな……女って……」

 

「まぁモンスターだけど……」

 

フェアリーの本性を知ったことでようやく殺る気を出してくれたらしい3人組が、アーロンと共にジャキンと【爆風の杖(ガトリングガン)】を構える。ルカもいつの間にやら臨戦態勢だ。

 

「今だ! 殺れ!!!」

 

「「「「サー! イエッサー!」」」」

 

“落ちろカトンボ!!!”

 

『『『がぁぁぁぁぁッ!?』』』

 

フェアリーが3体の【マジックゴーレム】を呼び出すも直後に【爆風の杖】の効果が炸裂し、15発目あたりで全てのゴーレムが木っ端微塵になる。そして残りの10発がフェアリーに襲いかかった!

 

『お、おねがい……もうやめてよぉ……』

 

『ゆるしてぇ……! あやまるからぁ……!』

 

「嘘泣きだ! 手を緩めるんじゃねえぞ!」

 

『クソがァ! こんな美少女の涙に無反応とか◯◯◯(ピー)ついてんのかよォォォォォ!!!』

 

その言葉が断末魔の代わりとなり、この世から害虫が3匹消え去った。わりと倒すのがギリギリだった気もするが、今回はわざと時間を与えたせいでゴーレムを3体も召喚されたのが原因だ。次回からは不意討ちするから余裕をもって倒せるだろう。

 

『ねーねー、おにいさんたち――ギャアアアアア!?

 

『ちょっと頼みたいことが――ぐおぉぉぉぉぉ!?

 

羽虫どもをサーチ&デストロイしていく。中にはハニトラを仕掛けてこようとした羽虫どももいたが、こいつらの甘言に引っ掛かったら散々利用されたあげくバッドエンド直行なので、何か言われる前にさっさと始末するに限る。

 

【アへ声】でも、こいつらに依頼されて羽虫どもの天敵である【キラービー】の巣を排除するサブイベントがあったんだが……依頼を達成した後でどうなるかはお察しである。

 

ところで、こいつらの死に様になんか見覚えがある気がするんだよな。あっ、思い出した。アレだ、「エイの干物」だ。生前は可愛い顔してるけど、死後はすんげー形相になるところとかそっくりだよな。まあエイのアレは顔じゃないらしいけど。

 

「な、なぁ大将……やっぱり話も聞かずに殺すのはマズいんじゃ――」

 

『こっちが下手に出りゃあいい気になりやがって! 豚の分際でナメてんのか!? テメェら生きたままミンチにして食肉に加工してやる!!!』

 

『脳ミソと内臓ブチ撒けて箱詰めしてゴーレム用の電池に加工してやるからな!!!』

 

『そっちの糸目はイケメンだから殺すのは勘弁してやる! ただし【牧場】で死ぬまで種馬だがなァ!!!』

 

「……すまん、なんでもねぇわ」

 

「分かってくれたようでなによりだ」

 

人間を加工する技術を持っていたり、「【牧場】で種馬」などという発言から、羽虫どもが普段からどのような所業を行っているのか察したのだろう。カルロスたちは無表情で【爆風の杖】を連射し始めた。

 

3人はちょっとだけ甘いところがある*2ものの、冒険者として様々な修羅場を潜ってきただけあって、こういう時の切り替えの早さはさすがだな。

 

“その修羅場の大半は、たぶん主と出会ってから経験したんじゃないかなぁ……”

 

そうやってフェアリーどもを駆逐していると、ようやく【妖精の羽根】が全員に行き渡った。が、いくつか予備が欲しいので羽虫狩りは続行だ。

 

『なんだコイツら!? 変態どもが編隊飛行してきやがった!!!』

 

『やめろやめろォ! 似合わねーんだよ! 目が腐るわ!!!』

 

『フェアリーに対する最低最悪の侮辱だぞ!!!』

 

うーん、酷い言われようだ。まあ身長10cmのルカやイケメンのアーロンはともかく、男である俺や筋肉達磨のカルロスたちが背中に蝶みたいな翼つけて飛び回るのは確かに酷い絵面かもな。

 

「罠に引っ掛からなくて済むとはいえ、こんな格好でダンジョン探索するはめになるとは……!」

 

「くそっ、とうとうオレたちも【狂人】の仲間入りかよ……!」

 

「やー、顔が暗いぜアンタら? せっかく大将の厚意でレアアイテム配布してもらったんだから、有効活用しなきゃ損だぜー?」

 

「テメェはいいよな……イケメンだから何でも似合うもんな、ド畜生が!」

 

「でも空飛べるのはガキの頃の夢が叶ったみたいでちょっと楽しいかも……」

 

“ボクは見た目が羽虫どもに近づくのなんて真っ平ごめんなんだけどなぁ”

 

カルロスとフランクリンが悪態をつき、それに対してアーロンが軽口を叩いて、最後にチャーリーがボケてルカがヤレヤレと首を振る。やはり6人(フルメンバー)で冒険すると賑やかで楽しいな。

 

もちろん油断はしていないし警戒も怠っていない。アーロン曰く、適度に雑談を交えて探索することで戦闘によるストレスを解す効果があるらしい。俺はほとんどソロで駆け足気味に中層まで到達したため、こういう知識が足りてない。助言してくれるアーロンには頭が上がらないな。

 

「っと、これで10個目の【羽根】だな。じゃあ、そろそろメインディッシュといこうか!」

 

“いよいよ羽虫どもの最期だね! ワクワクしてきたなぁ!”

 

俺は仲間に号令をかけると、今日をフェアリーという種族の命日にすべく歩きだしたのだった。

 

目指すはこの階層の中心部。羽虫どもの本体である大樹だ!

*1
アーロンに配慮した結果であり、顔もフードで隠している

*2
【狂人】の所業に「やめたげてよお!!」ってなってるだけ


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