【コミカライズ連載開始】迷宮狂走曲~RPG要素があるエロゲのRPG部分にドはまりしてエロそっちのけでハクスラするタイプの転生者~ 作:宮迫宗一郎
《表》
「さて、ここが下層か」
【背約の狩人】を狩り続けること数週間、固有ドロップ品をいくつか確保しつつ、下層の攻略に必要なスキルを準備し終えた俺たちは、ようやくボス部屋を突破して31階層へと降り立った。
いちおう31階層へと続く扉に触れてショートカット自体は作成してあったんだが、今まで使ったことはなかった。わざと毎日30階層まで徒歩で移動することで、道中の敵を倒してモニカたちのレベリングをしてたからだ。
【門番】を倒しても
で、そういう諸々の準備が全て終わったので、ようやく下層の攻略に乗り出した、という訳だな。
「や~、ここが下層ですか。まさか1度は冒険者を辞めた私が、こんな短期間でここまで到達できるとは思ってもみませんでした。人生何が起きるか分かりませんね……本当に……」
いつも通りHPを3割まで減らしたモニカがしみじみと呟いている*1のを聞きながら、俺は周囲の様子を窺った。
辺りの風景はまたしても一転し、目の前には大海原が広がっている。ただし空は分厚い雲のようなものに覆われ、今までの階層と同じく太陽が見えず薄暗い。
ダンジョン下層は3つのエリアに分かれており、31~40階層が「海岸エリア」、41~50階層が「海中エリア」、51~60階層が「海底洞窟エリア」となっている。
で、この海岸エリアはたくさんの小島や浮島からなり、基本的には浅瀬を渡ったり木を倒して橋の代わりにしながら進んでいくことになる。
現在、俺たちはこのエリアで最も小さな島に立っていて、背後には30階層へと繋がる扉だけがポツンと存在している。扉を開ければ中には樹海が広がっているため、まるで「どこ○もドア」みたいだ。ダンジョンの仕組みはいまいちよく分からん。魔術的な何かが働いているのだろうか?
まあそれはともかく。この階層からは「
なので、パーティメンバーをこれまで以上に特定の分野に特化させ、それぞれが有利に戦える敵と戦うことで攻略を進めていくのが【アヘ声】での定石だった。
そのため、下層では魔術による攻撃に特化したモニカと、【即死】で数だけは多い雑魚を蹴散らせるレムスを固定のパーティメンバーとし、
罠解除担当&
罠解除担当&
一撃の火力に特化した物理アタッカーのカルロス
手数で勝負する物理アタッカーのフランクリン
を適宜入れ換えながら攻略していくことになるだろう。
また、俺も出現モンスターに応じて装備を付け替えることで被害を減らしながら戦う。物理攻撃が得意な敵が出てきたら
本来なら下層は【
が、皆に「誰か1人、サブの壁役をやってくれないか」と頼んだところ、「大将と同じことやれって言われても無理」とか「大将の真似なんてできる気がしない」とか言われて断られてしまった。
うーん、ステップ踏みながら味方を庇うだけの簡単な仕事なんだけどなあ。まあ別に無理強いするつもりはないから構わないんだけどさ。
その代わりと言ってはなんだが、最近高性能な【拡張魔術鞄】を買った。こいつは念じるだけで装備の付け替えが一瞬でできるという優れものだ。これがまた特撮ヒーローみたいで楽しくてな。ポーズ決めながら鎧を身に纏うとすっげえテンション上がる。まあ人前でポーズ決めたりはしないけど、実は心の中では毎回「変身!」とか叫んでみたり……。
こういうのは【アヘ声】には存在してなかったんだが、【アヘ声】では戦闘中に装備品を付け替えることができるので、もしかすると原作主人公はこの【鞄】を標準装備してたのかもしれないな。
“ふーん、これが海かぁ。ノームにとっては処刑場扱いだったけど、こうして見るとただの大きな水溜まりだね”
「ひと昔前ならきっと『海だ~!』ってなってましたけど、今はいまいちテンション上がりませんね……自分の水着姿を想像すると、ちょっと……」
「オレは嬢ちゃんくらいの体型が健康的でいいと思うんだけどなぁ。そんなに気になるってんなら一緒に筋トレとかどうだい?」
「スプーンとフォークより重いものは持てないので遠慮しときますね」
“この前、ずっしり重たいワンホールケーキを買ってきて
今日のパーティメンバーは俺、モニカ、レムス、ルカ、フランクリンだ。会話が成立するメンバーが2人だけなんだが、それでも以前より賑やかになった気がする。フランクリンも口数が増えたし。やはりモニカみたいな明るい子がパーティにいるとメンバー全員の雰囲気が明るくなるな。
「……っと、さっそくモンスターどものお出ましか」
初回なのでまずは軽く周囲を探索しようということで、すぐ近くの島へ移動した俺たちだったが、その行く手を複数の影が遮った。
「皆、それぞれの役割は分かってるな? よし、それじゃあ手筈通り行くぜ!」
“はいはい、分かってるよ”
「オレの力を見せる時が来たようだな!」
「や~、私にお任せあれ! ですよ~!」
俺の号令と共に真っ先にレムスが飛び出して行き、【即死耐性】のない雑魚モンスターの首を問答無用ではね飛ばしてその数を減らした。まずはこれで敵の数に圧殺される危険性をなくす。
「おっと、やらせねえよ!」
レムスが戻ってきた直後に俺が前に出て、生き残った厄介なモンスターどもの攻撃を全て受け止め、時間を稼ぐ。
“…………”
「…………」
「…………」
その間に残りのメンバーは【超集中】を行う。
【集中】とは、強力なアクティブスキルを使うための準備みたいなものだ。他のゲームとかでも「次のターンの攻撃力を2倍にする」みたいなのがあるだろう? それと似たようなものだ。
そして【超集中】はその上位版みたいなもので、「ダメージを受けるまで【集中】状態を維持する」という効果がある。つまり、俺が全ての攻撃を引き受ける限り、1度でも【集中】を発動すれば以降はずっと強力なスキルを使い放題ということだ!
“…………!!!”
「――――ッ!」
「~~~!!!」
そして次の瞬間、カッ! っと目を見開いた3人が次々と大技を決めていく!
ルカは【
フランクリンは【
モニカは【
数分後には、もはやドロップ品と宝箱以外にモンスターどもがここにいたという痕跡は残っていなかった。
我々の完全勝利である。
「……え~……ナニコレ……。下層のモンスターたちが下級の魔術で蒸発したんですけど……。自分でやっといてなんですが、火力高すぎません???」
「オーバーキルすればドロップ品がよくなるんだぜ!」
「えっ!? そうだったんですか!?」
「そ、そう言われてみれば、いつもよりドロップ品がいいような……?」
“ただの「
ルカが俺のことをジト目で見てきているような気がする。い、いや、これに関してはちゃんと他にも意味があるんだって。
【アヘ声】だと戦闘が終了すると【超集中】状態が解除されるので、戦闘ごとに毎回いちいち「【超集中】→次のターンでスキルを選択」といった手順を踏む必要があり、何度も戦闘を繰り返しているうちに操作が面倒くさくなってきてしまうので、雑魚戦ではいまいち使い勝手がよくなかった。
だが、この世界だと自分で解除するまでずっと【超集中】状態でいられるんだよ。その代わり長時間維持していると極度の疲労に陥ってしまうが、適度に休憩を挟むなどのケアを怠らない限りはずっと大技を使い放題なんだ。これを利用しない手はないだろ?
“……まぁ、ボクが何を言っても無駄なのは分かりきったことだけどさ”
なにやらやさぐれた会社員のような雰囲気を出している(ような気がする)ルカを元気づけようと
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《裏》
当たり前の話であるが、この世界には【狂人】たちの他にも冒険者が存在している。それはつまり、同じ階層に複数の冒険者パーティがいるというのも決して珍しい状況ではないということである。
彼らの中には、経験値が美味しいモンスターが無限湧きするような場所を「縄張り」と称して独占する
するのだが……【狂人】たちがそういった場面に出くわしたことはほとんどない。なんなら他の冒険者の姿を見ることすら稀だ。【狂人】はダンジョン攻略に夢中なのでそういうことには無頓着だが、アーロン以外の人間はダンジョンに潜る度に不思議そうにしていたりする。
「ひ、ひぃぃぃ……!」
「バ、バカ野郎……! 声を出すんじゃねーよ……! 気づかれたらどうする……!」
理由は簡単。他の冒険者たちは【狂人】の高笑いが聞こえてきた瞬間に物陰に隠れてやり過ごすからである。*2
「ハハハハハ! その程度の攻撃で、この完璧な装備品の組み合わせを突破できると思うなよ!!!」
「…………」
「…………」
“…………”
“…………”
「なんだあいつら……目がイッてやがる……!」
「やべぇよ……! ぶっちぎりでイカれてやがる……!」
そりゃあそうだろう。どれだけ攻撃を食らっても高笑いするばかりでビクともしない奴を先頭に、後ろから目にハイライトがない奴ら*3とモンスター2体が無言で付き従っているとかいう、そんな見るからにヤバい集団には誰だって関わりたくないのだ。
そんなのが近づいてきたら、誰だって「縄張り」なぞ放り出して逃げるに決まっている。彼らが通りすぎた
「あ、あれが【迷宮狂走曲】だってのか……!」
「噂に違わぬイカレっぷりだぜ……!」
そういう訳なので、【狂人】どもが凶悪なモンスター扱いされるのも
最近では、「【狂人】一味」全体を指して【迷宮狂走曲】なる謎の異名が広まりつつある始末。アーロン以外はそんな呼ばれ方をしているなどと露知らず日々を過ごしているが……そのことを知れば、特にカルロスあたりは胃に穴が空きかねないので、きっと知らない方が幸せなのだろう。
そんな感じで、「【狂人】一味」はトラブルとは無縁な冒険者生活を送っている。美味しそうに朝飯を食べるアーロン以外、彼らはいつも通りに笑顔の絶えない冒険を繰り広げていたのだった……。