【コミカライズ連載開始】迷宮狂走曲~RPG要素があるエロゲのRPG部分にドはまりしてエロそっちのけでハクスラするタイプの転生者~ 作:宮迫宗一郎
《表》
翌日、カルロスたちと共に再びご隠居のもとを訪れた俺は、原作の【食いしん坊大将軍エンド】における主人公の行動をなぞることにした。具体的には、八雲と出会ったことから大将軍に勧誘されるまでの経緯の報告だな。
「なんと……八雲姫からの信用を得たというのか(いや、その怪しげな風貌で他人から信用されるのは無理では???)」
「して、その手鏡はいずこに?」
「あっ、はい、私が持ってますよ」
「(あぁ、なるほどのう。このお嬢さんが手鏡を持っておるということは、姫はこのお嬢さんに手鏡を渡したんじゃろう。つまり
報告が終わると、ご隠居はモニカの方へと体を向けて黙り込んだ。うーん、サナギだからどこに視線が向いてるのかイマイチよく分からん。手鏡の真贋でも確かめているんだろうか?
「(ふーむ、このお嬢さんは
「あ、あの〜……この手鏡が何か……?」
「おぉ、すまんのぅ。つい考え込んでしもうた。トシを取るとぼんやりしてイカンのぅ。して、お主ら……もう少しワシらに雇われてみる気はないじゃろうか?」
おっ、どうやら俺たちのことを信用に足ると判断してもらえたみたいだな。なんとか原作と同じようにご隠居の計画に一枚噛ませて貰えるっぽい。
「姫の信用を得たお主らにであれば話してもいいじゃろう。実は、ワシらは姫に頼まれて大将軍の企みを暴くために行動しておるのじゃよ」
ご隠居の話によると、大将軍は数年前から何か恐ろしい計画を進めているらしい。悪徳商人に便宜を図る代わりに【山吹色のお菓子】を受け取っていることから始まり、明らかに堅気ではない人間(?)を用心棒として雇ったり、さらには怪しげな宗教団体との繋がりが見え隠れしたりと、裏でコソコソと何かを企んでいるみたいだ。
そして、父親が何か恐ろしいことを企んでいることに気づいた八雲は、幼少の頃に親交があったというご隠居を頼り、「父親の企みを暴き、場合によってはその企みを阻止してほしい」と依頼したようだ。
うん、【アヘ声】で聞いた内容とだいたい同じだな。情報を伏せられたりはしていないので、やはりご隠居はこちらを信用してくれているみたいだ。順調に【食いしん坊大将軍エンド】の展開をなぞることができてるな。
「つまり、大将軍の企みを暴くために協力してほしい、ということでよろしいですか?」
「然り。どうじゃ? 引き受けてはくれぬか?」
「承知いたしました」
もしご隠居から新たな依頼を持ちかけられたら引き受けるという話はすでにカルロスたちにしてあるので、俺はその場でご隠居との契約を結び直すことにした。
「では、報酬についてなのじゃが……」
「それなのですが、我々の働き次第では金銭以外にもご隠居にお願いしたいことがございます」
「と、いうと?」
「そうですね……例えば、腕利きの鍛冶師を紹介していただく、といった感じでしょうか」
俺は昨日アーロンに言われた通りの条件を提示した。アーロン曰く、最初からレアアイテムの複製を頼んでも断られるどころか、場合によってはご隠居からの信用を損なう可能性があるので、追加の報酬についてはボカしておけ、とのこと。この条件さえ通してしまえば、最終的にご隠居は大抵の要求を聞き入れてくれるようになるらしい。
そんな曖昧な契約を結んで大丈夫なのか? ってかご隠居に断られないか? と思ったが、「ご隠居とやらと交渉するのが俺だったら確実に断られるが、大将が交渉すれば(相手が勝手に深読みして勘違いしてくれるから)大丈夫」とのこと。まあアーロンの言うことなら間違いないだろう。
「ふぅむ……(なるほどのぅ。
「無論、ご隠居やこの国に不都合が生じるようなお願いをしないと誓いますし、我々の働きが足りない場合は断っていただいて構いません」
「(つまり、
ご隠居は数分くらい考え込んでいる様子だったが、やがて考えが纏まったのか、こちらに手を差し出した。
「うーむ……まぁええじゃろ。お主らの働きに期待しておるぞ」
「ありがとうございます。微力を尽くします」
俺は差し出された手を取り、ご隠居と握手した。さすがアーロン。おかげで無事に契約が成立した。アーロン本人は謙遜してるけど、やっぱりこの手の交渉には強いよな。
「(アーロンの野郎、相変わらず性格がひん曲がってやがんな。えげつない条件を考えやがる)」
「(ご隠居さんは大将さんのことよく知らないでしょうけど、きっと大将さんはサラッとこの国のこと救っちゃいますよ)」
「(そしたらご隠居さん、この国と同価値の報酬を払わないといけなくなるよね)」
“(『君たちの国の価値ってその程度なの?』って言えば何でも言うこときかせられるワケね。ふーん、狐男もたまには役に立つじゃないか)”
……なにやら俺の後ろでカルロスたちが小声で話してるみたいだが……まぁ俺に何も言わないってことは、ただの雑談だろう。
とにかく、これで原作通りの展開にしつつ、レアアイテム獲得の布石も打てたわけだな。あとは俺たちの頑張り次第だ。レアアイテムと、あとついでにハッピーエンドを掴み取るため、張り切っていくとしよう。
「では、さっそくだがお主らには調査を手伝ってもらいたい。大将軍と癒着関係にある悪徳商人、大将軍に雇われた用心棒、大将軍と繋がりがあると噂の宗教団体。どれか1つを選ぶのだ」
「ミ゛イ゛イ゛イ゛イ゛ン゛ッ゛! 今までは
ここで選ぶのは「大将軍と繋がりがあると噂の宗教団体」だ。
基本的に【世直しエンド】と【食いしん坊大将軍エンド】は同じストーリーの流れなんだが、【食いしん坊大将軍エンド】にたどり着くためには正しい選択肢を選び続ける必要があり、1つでも間違えると【世直しエンド】になるので、気をつける必要がある。
まあこの世界はゲームと違って現実なので、本当に選択肢を選んでいるわけでないんだけども。原作で選択肢を選んだのと同じ状況を再現するために、今後はご隠居たちを誘導したり、説得したりしなければならないかもしれない。まあそうなったらそうなった時に考えるとしよう。
「あい分かった。では宗教団体へ探りを入れるのはお主らに任せよう。残りは拙者と
「目的地は地図に印をつけておいた! 確認なされよ!」
「承知いたしました。ではさっそく向かいます」
俺たちはご隠居の部屋を出ると、宗教団体の本拠地である寺へと向かった。その途中で人気のない裏道を通るんだが……ここで「奴ら」がやってくる。
「“Bee” gone……この先は通行止めだぜ」
「昨日はちょいと油断したが、今日は容赦しねェぞゴラァ!」
曲がり角から姿を現したのは、やはりというか【吉良兄弟】だ。ビーンはすでに居合の体勢であり、アントニオもこちらを威嚇するように金棒をブンブン振り回している。やる気十分ってわけだ。
「チッ、また出やがったか。モニカ、さっさと片付けてくれ」
「分かりました! 【ライトニング】!!!」
露骨に嫌そうな顔をしたカルロスの頼みでモニカが魔術を放つ。しかし「キンッ!」という刀を鞘に納める音がしたかと思うと、モニカの魔術は跡形もなく消え失せてしまった。
「ご挨拶だな、Ba“Bee”(カワイコちゃん)。せっかちは損だぜ?」
「嘘だろ……モニカちゃんの魔術が!?」
「ヒュウ! さっすが兄貴ィ! 刀を抜いたトコが見えなかった! 相変わらず恐ろしいほど速い抜刀術だぜ!」
「おいおい、コイツは魔術が弱点じゃなかったのかよ!?」
「フッ、オレの剣に同じ技は通用しないのさ」
そう、ビーンは2戦目以降【打ち払い】の対象に「魔術による単体攻撃」が追加される。戦う度に強くなるとかいう、どこぞの戦闘民族みたいな特徴を持っているのが、この【吉良兄弟】というボスだ。
しかも【吉良兄弟】とは何度も戦うことになるため、最初に戦った時はただのギャグキャラかと思いきや、サブストーリーを進めるうちに気づけばどんどん強くなっていき、最終的には中ボスとして恥じない強さを誇るようになる。
「Don't “Bee” Afraid……痛みはない。気づいた時には死んでるからな」
「今だ!
「
「
まあ現時点では相変わらず範囲攻撃を防げないし、ステータスも低いわけだが。
隠れて奇襲の準備をするよう指示を出しておいたレムスによって【参ノ剣】をモロに食らい、ビーンとアントニオは錐揉み回転しながら宙を舞ってそのまま地面に叩きつけられた。
いや、だって原作知識のお陰でこいつらが待ち伏せしてるかもって予測できてたし。そりゃあこっちも奇襲をしかけるに決まってるじゃないか。
「…………フッ、まさか最後の最後でオレの剣を上回るとはな。さすがだ、と言っておこう」
「なに激闘の末に敗北したようなこと言ってやがる、一撃で倒されただろ」
またしてもHPがミリ残ったのか、何事もなかったかのようにビーンが立ち上がった。いや、「何事もなかったかのように」は嘘だわ、すんげえ足が震えてるわ。
「ここは潔く退くとしよう。だが――I'll “Bee” back!」
そしてお決まりの決め台詞を吐くと、足がガクガクしてるとは思えない超スピードでアントニオを担いで逃げていった。もっとも、足が震えてるせいかすっげえキモい動きになっていたけども。
「……結局、あいつら何しに来たんだ?」
「……オレたちの足止めかなぁ? といっても、あまり意味はなかったみたいだけど」
まあ一芸特化の初見殺しボスなんてこんなもんだろう。こういうのは対処方法が分かるまでが大変なのであって、攻略法が分かってしまえばそれまでだし。
“何度も面倒だなぁ。次に会ったら確実に仕留めよう”
こうして、【吉良兄弟】を退けた俺たちは、再び目的地への道を進んでいったのだった。