【コミカライズ連載開始】迷宮狂走曲~RPG要素があるエロゲのRPG部分にドはまりしてエロそっちのけでハクスラするタイプの転生者~ 作:宮迫宗一郎
《表》
いったん店に帰ってチャーリーに「外食するから夕飯はいらない」と伝えた後、俺はルカと共にとある酒場に来ていた。
この酒場は大衆食堂も兼ねており、冒険者ギルドの近くにあるため多くの冒険者が行きつけの店としている。かく言う俺も宿屋暮らしをしていた時はよくお世話になっていたもんだ。
最近はチャーリーの飯が美味いから利用しなくなったが、食にうるさい日本人だった俺でもそこそこ満足できるくらいには、ここの店主はいい仕事をしていると思う。
「なんだよーセンパイ! 【
ここの店主はいい仕事をしていると思う(現実逃避)。
……うん、まあ、なぜか分からんが、憲兵に自首しようと思っていたら、気づけば推しと一緒に飯を食うことになっていたんだよな。さっぱり状況が分からん。
彼らにストーカーしてしまったことについて謝罪しようと思っても、
「君たちに謝らなければならないことがある」
「謝らないでください。きっと(姉さんが亡くなったのは)どうしようもなかったんだと思います」
などといったやり取りを経て、あっさり許されてしまう始末。ちょっと性格がよすぎないかこの子たち??? さすがは俺の推しなんだよなあ。
「ほらセンパイ! 遠慮なんかいりませんって! あ、俺【
「お前が遠慮しなさすぎるだけだ、馬鹿者」
「う、うるさいなぁ……。ホラ、アレだよアレ! 俺たちがガッツリしたもの頼めば、センパイだって遠慮しなくて済むだろ?」
「なに取って付けたようなこと言ってるのよ。どうせアンタが食べたいだけなんでしょ?」
「へへっ、バレたか」
オアッ(尊死)
なんだこの仲良し3人組。お互いに扱いがぞんざいだったり、わりと口が悪かったりするのに、険悪な雰囲気が一切ない。むしろ遠慮なんかしなくていいほど仲が良いんだろうという感じがひしひしと伝わってくる。まさしく「気の置けない友人」のお手本みたいな関係だ。
えっ、いや、彼らの間に俺が挟まるのはダメだろ。こんな完成された関係に異物混入とか、彼らのファンとして許されざる大罪では???
“そういうのいいから注文しなよ。さっさと食べ終わってくれないと帰れないでしょ”
はっ、いかんいかん。また3人から変な奴だと思われてしまうところだった。俺の不審者ムーブを快く許してくれた*1どころか、律儀に助けたことに対してお礼までしてくれるような、そんないい子たちの前でこれ以上の無様を晒す訳にはいかない。
今はルカの気安い態度が非常にありがたく感じる。俺の頭をペチペチ叩くことで、トリップしかけてもこっそりと現実に引き戻してくれる*2。俺だけだったらまともに彼らと会話できる気がしないぞ。
「えっと……じゃあ、俺も君と同じものにしてもいい……ですか?」
「だから敬語はいらないって言ってるじゃないですか。私たちの方が後輩なんですから。名前だって呼び捨てでいいんですよ?」
「……そうか……今は俺が先輩、なのか……」
なんだろうなあ……不思議な気分だ。まさか【
「(やはりこの御仁にも思うところがあるのだろう。かつて『先輩と呼ぶ立場』だったのが、今は『先輩と呼ばれる立場』になったのだから)」
「(しかも『センパイ』って呼んでた人の妹から『センパイ』って呼ばれてるんだもんな。なおさら感慨深いもんがあるんだろうなぁ)」
「(私だって奇縁だと思うもの。センパイも不思議な気持ちでしょうね)」
よし。そういうことなら、これからはファンとしてだけじゃなく、冒険者の先輩として彼らに接するとしよう。【先輩】も【アヘ声】で「先輩は後輩を助けるものだ」って言ってたしな!
「そういうことなら、ここの支払いは俺に任せろ! じゃんじゃん頼んでいいぞ!」
「うぇっ!? いやいや、どういうことですか!? 俺たちが出しますって!」
「なに言ってんだ! 先輩なのに後輩に飯を奢らせる奴があるかよ!」
「いや、だからお礼なんですってば!」
「礼なんていいんだよ、どんどん俺に頼ってくれ! 『その方が先輩冥利に尽きる』ってもんだ!」
「(……やはりこうなったか……)」
「(姉さんも生前は似たようなこと言ってなかなかお礼をさせてくれなかったし……)」
「(もう、1度言い出したら聞かないんだから……。いくら姉さんに師事してたからって、そんなところまで姉さんに似なくてもいいのに……)」
つーか、そもそも後輩に飯をたかるほど金には困ってないんだよな。いや、こんなことを言うと色んな人たちから顰蹙を買うだろうが、事実として俺の財布には日々の生活費やらダンジョン攻略に必要なアイテムの購入資金やらを抜きにしてもかなりの金額が入っている。
というのも、この世界には俺の求める娯楽がダンジョン以外にほとんど存在していないため、金の使い道がなくて貯まっていく一方だからだ。
なんというか、【ミニアスケイジ】の娯楽はエロ方面に偏り過ぎなんだよ。「どこぞのレビュアーズの世界かよ」ってくらい娼館の種類が豊富だし、本屋には官能小説が堂々と陳列されてるし、劇場も半ばストリップショー*3じみている。
中心街の方は特に酷く、どこを歩いてもエロ関連の店が常に視界の端にチラチラと写り込んでくる。まるでページを読み込む度に何度も何度もしつこく表示されるネット広告のようでクッッッソ鬱陶しい。あまりにも鬱陶し過ぎたため、俺はこの手の店は絶対に利用してやるものかと心に誓ったほどだ。
かといって他の娯楽を探そうにも、この都市はエロ方面以外の娯楽に乏しい。エロゲ世界ゆえか、それともこの都市が特殊なのかは分からないが、ここまで偏ってるとうんざりしてきて「都市で休暇を過ごす」という行為そのものに魅力を感じなくなってきた。そんなものよりダンジョンに潜ってた方が楽しい。*4
うーん、【アヘ声】をプレイしてた時は常に金欠なくらいだったんだがなあ……。
ダンジョンRPGには「お金を経験値に変える施設」というのが存在するパターンが結構あって、それは【アヘ声】も同様だった。役所で【出資する】を選んで【ミニアスケイジ】に金を落とせば、その分だけ経験値がもらえてレベルが上がるようになってたんだよな。
だから【アヘ声】では消費アイテムの購入といった必要経費を除き、出費を極限まで減らすのが定石だった。俺も【アヘ声】をプレイしていた時は、宿屋は利用せず無料で利用可能な馬小屋で寝泊まりしたり、武器の強化とかも自力でやったりしたもんだ。
そうして確保した金は全て【出資】に回して、経験値に変えてパーティを強化していたわけなんだが……当然ながら、この世界では「金を使っただけで強くなれる」なんていう都合のいい現象が起きるはずもなく。
そのくせモンスターから手に入る戦利品は【アヘ声】と同じなので、換金アイテムとか素材とかを売り払えば金は貯まる一方だ。*5
パーティメンバー全員で山分けしようとしても、ウチのメンバーは無欲なのか「給料だけで十分だから残りはパーティ全体の共有財産として管理してくれ」と断られる始末だ*6。ルカに至っては興味すら示さない。
老後の備えとして貯金しとけばいいのに、と思うんだが……世界が滅亡の危機を迎えているからか、それとも冒険者といういつ死ぬか分からない職業柄か、そういう考えは一般的じゃないらしい。
そういうわけなので、いっそ店の運用資金にしてしまおうと思ってアーロンに共有財産の管理を
現代日本にいた頃は大金ゲットして遊んで暮らしたい、なんて思ったこともあったけど、それも「豊富な娯楽」という金の使い道があってこそだ。使い道がないなら札束なんて紙切れ同然だろう。
かといって悪人どもに渡す気はないし、富の一点集中はこの世界の経済に大変よろしくないだろうし、本当にどうしよう……と思っていたところに現れたのが、
「それにな、こういうのは順番なんだよ。俺に恩義を感じてくれたなら、俺に何かを返すのではなく……いつか君たちが先輩になった時に、君たちの後輩によくしてやってくれ」
とはいえ、そんな俺の懐事情を口外するつもりはない。俺に他意はないとはいえ、事情を知らない他人からしてみれば「お前より金持ってるからお前に奢ってもらう気はない」って意味に取られかねない。どんだけ嫌な奴なんだよって話だ。
「そうやって『人間の意志は受け継がれていくもの』なんだからな。まあ、これは俺が【先輩】と仰いでいた人の受け売りなんだけどさ」
なので、ここは1つ【先輩】の教えを説きつつ、目の前で実践してみせることにした。そうすれば彼らは何も言えなくなるだろう。普段からアリシアに口酸っぱく言われてることだろうからな。
「……ああ、もう、分かりましたよ……。(
「……そうだな。(確定的、か。やはり、この御仁は……)」
「……分かりました。ここはご馳走になります。(でも、いつか絶対、ぜ~~~ったいに恩返しさせてもらうんだから!)」
よしよし。狙い通りだ。俺は追加で飲み物やら小皿やらを注文すると、ワイワイと騒ぎ始めた彼らの姿を合法的に