【コミカライズ連載開始】迷宮狂走曲~RPG要素があるエロゲのRPG部分にドはまりしてエロそっちのけでハクスラするタイプの転生者~   作:宮迫宗一郎

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43.「オカン」は地上最強の生物

《表》

 

「よし、ここまでの図鑑埋めは順調だな」

 

【海中エリア】の攻略を始めてから最初の休日。俺は自室の机で行っていた【モンスター図鑑】の編集作業をいったん終えると、ゴキリと固まった肩を解して食堂へと向かった。

 

「やー、大将。今から昼か?」

 

「そうだな。そっちも昼休憩か? 店番お疲れ様」

 

会釈してきたアーロンに会釈を返し、自分の席に着く。すると、俺の手元にある【図鑑】を見てアーロンが怪訝そうな顔をした。

 

「そりゃ【モンスター図鑑】じゃね? おいおい、ギルドの本は貸出禁止だろ? まさか勝手に持ってきたのか?」

 

「いや、ちゃんとギルドの許可は取ってある……っていうか、むしろギルドから話を持ちかけられてな」

 

というのも、ここ最近は俺がダンジョン下層から帰還する度に膨大な情報提供をするもんだから、一気にギルド職員の負担が増してしまったみたいなんだよな。

 

【アヘ声】では敵と戦うだけで勝手に【図鑑】に情報が登録されていたが、この現実世界ではそうもいかない。情報の精査に始まり、【図鑑】の編集作業、情報更新に伴う各種手続き、および冒険者への告知などなど……いくつもの手順を踏んでようやく【図鑑】が更新される。

 

で、どうやら今までこんな頻繁に【図鑑】が更新されることなんてなかった*1らしく、『情報提供には感謝いたしますが、現行の制度では処理が追いつきません。申し訳ございません……』と言われてしまったんだよ。

 

「そういうわけで、ギルドの方から『【図鑑】の編集作業を請け負ってみませんか』って持ちかけられてな」

 

「マジか。ギルドもずいぶん思い切ったことを……たしか、過去に冒険者が問題起こしたせいで【図鑑】の編集には慎重になったんだろ?」

 

「そうみたいだな。だから今の俺は、いちおうギルドの臨時職員ってことになってるぞ。これがあれば面倒な手続きをスッ飛ばせるらしい」

 

「(ギルド幹部のバッジと同じ色じゃねーか。大将、アンタいったいどこへ向かってるんだ???)」

 

ほら、とギルドの臨時職員であることを示すバッジを見せると、アーロンは『おぉう……』と外国人みたいな声を出して天を仰いだ。

 

まあ、俺も最初【図鑑】を好きに編集していいと言われた時は驚いたよ。なにせ、俺が悪意を以て【図鑑】を書き換えれば、冒険者に壊滅的な被害をもたらすことだって可能になってしまう。長年冒険者をやってて経験則で戦える人たちはともかく、新人冒険者なんかは全滅させられるだろう。【図鑑】編集の権限とか、一個人が持ってていいものじゃないと思う。

 

それでもなおギルドが俺に【図鑑】編集を委託してくれたってことは、俺も上位の冒険者として結構信用してもらえてるってことなんだろうか?*2

 

まあ、実際は俺が悪意を以て書き換えたところで犯人は明白なので、すぐに指名手配できるからってのもあるんだろうが。それでも、少しでも俺のことを信用してもらえてるなら、その期待には応えたいとは思う*3

 

悪意を以て書き換えれば容易く他者を破滅させられるということは、逆に言えば俺が正しい情報を提供すれば多くの人たちの命を救えるかもしれないってことだ。やり甲斐のある仕事だろう。

 

 

 

 

 

なにより、マジックアイテムでもある【図鑑】の編集作業が、前世でやってた【アヘ声】攻略W○Kiの編集作業にちょっとだけ似てたので、わりと楽しいからな!!!

 

 

 

 

 

いや、最初はHTMLだのなんだのと意味不明すぎて攻略Wi○iの編集に難儀してたんだが、慣れてくると意外と楽しいんだよなアレ。自分の手で整えたWebサイトのページを見ては、達成感で充実した気分になったもんだ。

 

そういうわけで、娯楽が少ないこの世界において、【図鑑】の編集作業は俺の数少ない趣味の一つになってたりする。

 

「(休日に部屋に閉じこもって何してるのかと思えば、仕事かよ……。ここまでくるとワーカホリックというよりも自己犠牲の類い*4なんじゃねーか?)」

 

「ほら、大将! ごはんできたから【図鑑】を閉じて! 食事の時は食べることに集中しないとダメだよ!」

 

と、楽しくてつい待ち時間も【図鑑】を弄ってると、キッチンから昼食を運んできてくれたチャーリーに怒られてしまった。うーん、相変わらずオカンっぷりが加速してるな。今じゃすっかりキッチンに立つチャーリーのエプロン姿にも慣れてしまった。

 

作ってもらった料理を味わって食べないのはさすがに失礼なので、【図鑑】を閉じて昼食をとる。その後は部屋に戻って再び編集作業だ。

 

“うわっ、またやってる。いったい何がそんなに楽しいんだか”

 

と、昼過ぎになってからようやく目を覚ましたルカが鉢植えからズボッと飛び出すと、【妖精の羽根】で飛行して俺の肩に着地した。

 

……悪いとは思ったが、なんとなくペットのインコっぽくて少しだけ笑ってしまった。それを見たルカが不機嫌そうに肩をバシバシ叩いてくる。いや、悪い悪い。べつにルカをペットだと思ってるわけじゃないから安心してほしい。

 

「やってみると思ったより楽しいぞ」

 

なんだか呆れたような目で俺を見てるような気がしたので、ルカにそう言ってみた。感覚的には、アイテムを全て集めて種類別にソートした時の達成感に近い。もしくは、フィギュアや食玩、グッズなどをコンプして、部屋に納得いく配置で飾ることができた時の達成感か。たぶん、これらと攻略Wik○の編集の楽しさは根本的に同じものだと思う。

 

“えー……理解できないなぁ。それの何が楽しいの?”

 

「いや、俺の見立てでは、ルカも素質あると思うんだがなあ」

 

『やれやれ』と言わんばかりに首をすくめてみせるルカだが、ルカもわりと俺の同類っぽいところがあると思うんだよな。ゴーレムとか好きだし。たぶんこの世界にゴーレムのフィギュアとかあったら、買い集めるんじゃないかなあとか思ってたりするんだけどな。

 

「……ふむ。ルカも趣味の1つくらいあった方が良いんじゃないか?*5

 

いちおうゴーレムの設計とか、レムスを始めとしたゴーレムたちの整備とかをしてることはあるんだが……なんというか、完全なる『趣味』ではなくて、何割かは『仕事』でやってるような感じなんだよな。ゴーレム弄りは『ノームとしての習性』なんだろうか?

 

なので、ルカにはぜひとも他に趣味を持ってもらいたい。現状だと寝るか仕事するかしかしてないので、このままだと不健全な気がするんだよな*6

 

 

そうと決まれば、まずはルカと一緒に街へと繰り出し、何か興味を引かれるものがないか探すとしよう。

 

「という訳で、たまには出掛けようかと思うんだが」

 

「やー! そうかそうか! ようやく大将も外に興味が出てきたか!」

 

……で、それをアーロンに話すと、なぜか『引き籠もりの家族がようやく外に出る気になった』みたいな反応をされてしまった*7。失礼な、毎日のように家から出てダンジョンに潜ってるだろうが。

 

「(それは引き籠もり先が部屋からダンジョンに変わっただけなんだよなぁ……)」

 

「なんだ、急に黙り込んだりして。俺に言いたいことでもあるのか?」

 

「やー、なんでもない! なんでもないから気にしないでくれよ!」

 

まぁいいや。アーロンに話しかけたのは、なにも外出する旨を伝えるためだけじゃない。この街の面白そうな施設とかを教えてもらおうと思ったからだ。

 

アーロンはイケメンだしモテてるだろうから、女の子とデートしたりすることも多いだろう。なら、この街の娯楽施設には詳しいんじゃないかって思ったわけだな。

 

「んー、さすがにある程度の方向性は欲しいな。娼館巡りとかストリップ劇場ツアーとか――」

 

「あ、そういうのナシで」

 

……なんか勘違いされてるみたいだったので速攻で訂正したら、『マジかこいつ』って顔をされてしまった。というか実際に言われた。ほっとけ、俺はあのしつこく表示される広告みたいなサブリミナルエロ施設は絶対に利用しないと決めてるんだよ。

 

「あー……そうなると行き先がかなり限られてくるんだが(デートスポットに大将を単騎突撃させるワケにもいかねーし*8)」

 

「じゃあ、とりあえずショッピングできる所をいくつか教えてくれないか? こう、特定の物を売ってる店じゃなくて、色々なものを幅広く扱ってる大型の商店みたいな感じの」

 

「まっ、それが無難な選択か……」

 

アーロンにいくつか店の名前とそこへの行き方を教えてもらうと、俺は感謝の言葉を述べてから街へと繰り出した*9

 

 

 

 

 

「――で、その結果がコレ?」

 

……そして調子に乗って色々と買ってしまい、チャーリーに溜息をつかれてしまった。

 

現在、俺の部屋は緑色と茶色で埋め尽くされていた。世界各地からやってきた行商人の手によって持ち込まれた観葉植物たちが所狭しと並べられ、腐葉土やら肥料やら農薬やらが入った袋が部屋の隅にうず高く積まれている。

 

い、いやあ、なんていうか、ルカが唯一興味を示したのがコレだったんだよ。【ノーム畑】に奉仕する種族だったからか、土弄りとか植物の世話とか好きなんだろうか。

 

で、ルカは他に金の使い道もないしってことで色々と買ってるうちに、気づいたらこんなことになってしまった次第でして……。

 

「そのうち飽きて、結局おれが世話することになる……なーんてことにはならないよね?」

 

あ、ヤバい。これ呆れられてるんじゃなくてマジギレされてるわ。ガキの頃にカード目当てで買った魚肉ソーセージがマズくて結局食わなかった時に母親にブチギレられた時と同じトーンだわ。

 

“ボ、ボクが趣味で買ったんだから、むしろゴリラ三男は触らないでよね*10

 

ルカはまるで『飽きないから! ちゃんと世話するから!』と抗議する子供のように俺の背中をペシペシと叩いてきたが、そういうのは俺の背中に隠れてやるんじゃなくて本人に直接やってくれないだろうか。

 

「もし放ったらかしにして枯らしたりしたら――分かってるよね???

 

“ヒィッ!?”

 

「あと、掃除の邪魔にならないようにすること。虫が湧かないようにすること。それも分かってるよね???

 

「い、イエス、マム!!!」

 

思わず後退りした俺とルカを一瞥すると、チャーリーは夕飯の仕込みのために食堂へと帰っていった。俺とルカは顔を見合わせると、同時に安堵の息を吐く。

 

「……こ、こええ……マジでオカンじゃん……」

 

“……あ、ある意味で最強の存在だね……”

 

最終的に、俺は空き部屋の一室をルカの部屋とし、庭に腐葉土とか肥料を入れておくための倉庫を設置することにした。なんだかんだでルカも楽しそうに観葉植物たちの世話をしてるようだし、まあ終わり良ければ全て良し、ってことで……。

 

俺は監視するような鋭い目で見てくるチャーリーに気づかないフリをしつつ、今日もダンジョンへと向かうのだった……。

*1
モンスターを見敵必殺する奴などこいつくらいのものである

*2
ある意味では正解

*3
なお、モンスター絶対殺すマンとしての信用である模様

*4
勘違い

*5
アーロン「お前が言うな」

*6
アーロン「お前が(以下略)」

*7
残当

*8
英断

*9
ルカは胸ポケットに突っ込んだ

*10
震え声

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