転生チートトレーナーvs転生チートウマ娘   作:アリマリア

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 本編にわんこそばは出てきません。





新春わんこそば大食い大会

 

 

 

 ある日の昼下がり。

 トレセン学園のトレーナー室には、俺がキーボードを叩く音が響いていた。

 今やっているのはデータ収集である。

 次回に出走する弥生賞と、その先の皐月賞。この2つに出走する可能性のあるウマ娘たちのラップタイムや上がり3ハロン、撮影された動画などのデータを引っ張ってきて纏める作業。

 ……ちなみに今日はもろに祝日だし給料も出ないから、いわゆるサービス残業だ。いや残業じゃないし、正確にはサービス休日出勤? あはは、どうでもいい。

 たづなさんには怒られたけど、休日返上で働くトレーナーは多いらしくて、割と簡単に鍵を渡してもらえた。諦めたような表情が印象的だったな。

 

 とはいえ、ひたすら数字を集めて打ち込む作業はちょっとばかり面倒だ。

 強力なウマ娘のデータを集めるだけなら簡単だけど、その程度では足をすくわれるだろう。

 一見してそう強くもないウマ娘が下剋上を見せることは珍しくもないし、そうでなくともバ群の状況が変わればレースの展開は大きく変動するのだ。

 だから、現時点で皐月賞に出走する可能性のあるウマ娘の情報は全て集める。公式レースの動画は全て保存する。何なら噂話だって重要だ。

 それくらいしなければ、トレーナーは自分の担当ウマ娘を勝利へ導けはしないのだ。

 ……ま、俺にできるのはそれくらいって面もありますケド。

 

「ん、んー……」

 

 あー、目がしょぼしょぼする。エアコン付けてるから室内は暖かくて、思わずあくびが漏れそうになるくらいだ。

 今清潔でふわふわのベッドに倒れこんだら、そりゃあもう気持ちいいだろうなぁ……。叶わない願いだけども……。

 

 ……あー、駄目。流石に集中力切れたなこりゃ。

 気分転換に、纏め終わったデータの上に目を滑らせる。

 皐月賞への出走を予定したウマ娘たちの名前。その中でも、俺の目に留まるのは……。

 

「やっぱり、警戒すべきは……テイオーだろうなぁ」

 

 

 

 トウカイテイオー。

 アプリをやった……というか、ネイチャの育成をやったことのある人間なら、その恐ろしさを理解しているだろう。

 育成開始からそう間もなく強制エンカウントする、高いステータスとスキルを備えた負けイベントみたいな存在。

 強いサポートカードを揃えて育成に慣れてくれば勝利を拾えはするけど……それでも安定しない。

 その脚の柔軟さを活かしてするっとバ群を抜け出し、すさまじい猛追を見せる彼女には、恐怖すら感じるほどだった。

 確か固有もいわゆる「速度すごく」系で、発動さえできればかなり強かったはず。……多分。うろ覚えだけど。

 

 

 

 前世でも強力だったトウカイテイオーだが、この世界でもそりゃあ強い。

 むしろ前世アプリはゲームとして成立するようバランス調整されてたんだなって安心するくらい強い。

 彼女の戦績は今のところ、2戦2勝。

 メイクデビューに4バ身差1着、オープン戦に2バ身差1着。

 その数字だけ見れば、ある意味ホシノウィルムの下位互換だが……。

 

 問題は、それらのレースにおいて、テイオーは「本気」ではなかったこと。

 彼女の動向は逐次調べているが、どうにもトレーニングに熱が入っていない。

 今まで自分がレースで一度も負けていないことに慢心している……というか、「自分が出たレースは自分が勝つ」と思い込んでいる節があった。

 地方から来た地元じゃ負け知らず系ウマ娘にはよくあるヤツなのだが、彼女の場合はそれが事実になるくらいに素質が飛びぬけている。

 

 恵まれた血、環境、そして才能。

 その全てを持ったトウカイテイオーは、デビュー前からそりゃあもう大人気で。

 模擬レースに出るたびにトレーナーに囲まれまくっており、そしてほとんどをすげなくフった。

 「自分はどうせ勝つのだから、どんなトレーナーが付いたところで変わらない」。

 これが大言壮語にはならないだけの力が、彼女にはあったのだ。

 

 なので、当然と言うべきか。

 トレーナー間では、この世代はトウカイテイオーの一強であるという説が主流だった。

 彼女の目標とするクラシック三冠も、そう難しいものではないとさえ言われる程に。

 

 

 

 ……が、時はジュニア級6月、状況が変わる。

 ホシノウィルムという唐突に現れたダークホースが、この世代のバランスを一強から二強に塗り替えた。

 そして極めつけは、メイクデビューの舞台が終わった後に見せたアピール。

 その場でステップを踏み、挑発的な目線で上を指すそれ。

 ……本人曰く「その場で思い付いたアピール」らしいが、世間からは見事にテイオーへの挑戦状と見なされたらしい。

 

 で、最初は気にもしていなかったテイオー陣営だが、その後ホシノウィルムがG1で大差勝ちしたことで、本格的にこちらをライバル視し始めたっぽい。

 皐月賞まで、あと4か月。ようやく自分と競り合えるライバルを得たトウカイテイオーは、飛躍的に伸びてくるかもしれない。

 才能の蕾である彼女には申し訳ないけど、是非ともそのまま眠っていてほしいんだけどな。

 

 

 

 ……というか、俺の個人的な想いにはなるけど、テイオーとはあんまりぶつかりたくない。

 アプリでの生意気なガキっぷりは見ていて楽しかったし、結構お気に入りのウマ娘だったんだよ。引けなかったけど。

 でも彼女が皐月賞に出れば、ホシノウィルムか彼女、そのどちらかは地に膝を突くことになる。

 それを想像すると、何とも嫌な気分だ。

 

 勿論俺も契約トレーナーである以上、担当を鍛えるし応援する。

 ……けど、やっぱりテイオーのことは好きだ。人格も能力も。

 だから負けてほしくない。……どちらにも。

 こんな想い、わがままでしかないのはわかってるんだけどな……。

 

 

 

「トレーナー、こちらは準備できました」

 

 トレーナー室の外から聞こえてきた担当バの声に、ふいと顔を上げる。

 壁の時計を見ると、もう昼下がり。彼女との約束の時間だった。

 

「了解、それでは行くか。少し待ってくれ」

 

 こちらとしてもひたすらデータを集める作業に限界を感じていたし、ちょうどいい。

 保存して終了……っと。

 思わずくあっと欠伸が出かけ、とっさに嚙み殺す。

 ……おいおい、俺。油断しすぎなんじゃないか? 仮にも担当ウマ娘が扉の向こうにいるんだぞ?

 

 どうにも最近、ホシノウィルムの前で気が抜ける。

 G1を突破した安心感からか、1年が始まったという実感のなさ故か、あるいは……。

 

 あの日、ホープフルステークスを突破した夜。

 彼女の頭を撫でた時、何かを感じてしまったからか。

 

 ホシノウィルムはいつも無表情で耳も尻尾も動きにくい、感情の起伏の少ない少女。時々笑う顔を見せるのは、あくまで衝動的なもの……。

 それが俺の見立てだった。

 けれど、あの時の彼女は……なんというか……。

 幼気な子供のような、あるいは成熟した女性のような、何とも言えない表情を浮かべてたんだ。

 

 多分……あくまで多分だけど。

 ホシノウィルムは、感情がないわけではないんだと思う。

 ただ、それが表に出ないのか、出さないのか……。

 出さないとしたら、俺と同じように仮面を被っているのだとしたら、それは何故なのか……。

 最近になって、その下を少しだけ見せてくれるようになったのは何故なのか……。

 

 俺にはまだわからない。

 ホシノウィルムという少女は複雑怪奇だ。そうすぐに理解できるものじゃないのだと思う。

 

 ……だが。いつか必ず、理解してみせる。

 俺は彼女の、トレーナーなのだから。

 

 

 

 と、それはそれとして。

 ぴしゃっと頬を叩いて気合を入れなおし、口を開いた。

 

「よし、終わり。行こうか」

 

 パソコンの電源を落とし、立ち上がる。

 

 

 

 今日は1月3日。

 ホシノウィルムと初詣に行く日だった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 こんなことを今更語る必要もないだろうけど……。

 初詣とは、正月に行われる神事。

 日本において神を宿す神社や寺院に赴き、去年1年間を無事に過ごせた感謝を捧げ、今年1年間を無事に過ごせるように祈願する、国民的な儀式である。

 

 人事を尽くして天命を待つという言葉もある通り、運が絡む仕事に携わっている者にとって、こういったイベントはシャレにならない。

 よって、トレセン学園において初詣というイベントは、非常にメジャーなものとなっている。

 一般的に言って、信心深いウマ娘やトレーナーでなくとも取り敢えず初詣には行くし、勝利を祈願しておくものだ。

 俺も例に漏れず、これでホシノウィルムが無事に走り抜ける可能性が1%でも増えるのならと、去年からこの手のイベントには欠かさず参加している。

 

 で、1月1日。

 ホシノウィルムと新年のあいさつを終えた後、「俺は明後日に初詣に行くが、君はどうする」と聞いた結果、彼女は答えたのだ。

 私も同行してもよろしいでしょうか、と。

 ……あれ、一緒に初詣って、シニア級のイベントじゃなかったっけ?

 

 

 

「よし、寒さ対策はしたな。風邪を引かないよう注意して行くぞ」

「私としては、このようなことにトレーナーの少ない自由時間を使っていただくのは、少し申し訳ないのですが」

「構わない、これもトレーナーの仕事だ」

「……そうなのですか? 本当に?」

 

 担当の初詣に付き添うのは、日々のトレーニングと等しく、トレーナーの大事な仕事である。

 ソースはアプリ版トレーナー。どのウマ娘を担当しても必ず初詣には行っていたので間違いない。

 何故かトレーナーの契約書類やマニュアルにそういった記述はないが、恐らくは暗黙の了解というヤツだろう。

 それを察せない程、俺も馬鹿ではないつもりだ。

 

「しかし思いの外、こうして神社へ向かう人は多いのですね」

「ああ、特にトレセンの周辺は多いな。皆が推し……好きなウマ娘の勝利を願って参拝するらしい」

「なるほど、推しのためでしたか。理解しました」

「お、君も推しという概念を理解しているのだな。少しばかり意外だ」

「…………この前、私が推しだという人に会いましたので」

「早朝ランニングの際か? ふむ、応援してくれる地域の方々に感謝だな」

 

 そんな会話を交わしながら、冬の曇り空の下、近くの神社に向かう。

 

 昼下がりに中等部の女子と大人の男が並んで歩く光景は、他所だと事案モノかもしれないが、トレセン周辺では珍しいものじゃない。

 すれ違う人々も、ホシノウィルムの耳と俺のトレーナーバッジを見て事情を察し、過度に見すぎないようにしてくれる、理解のある方ばかりだ。

 ……それでも少しばかり見られているのは、やはりホシノウィルムの知名度の高さ故だろうが。

 

 ウマ娘によるレース興行は、国民的どころか人類的にメジャーなエンターテインメント。

 勿論日本でも非常に高い人気を誇り、クラシック三冠などは全国民が注目すると言っても差し支えない。

 そんな中で彼女の名前は、世代二強……つまりは、今年の飛び抜けて強い2人として広まっている。

 濃い紺色のコートに身を包み、伊達メガネと穴開きキャスケットで軽い変装をしているはいえ、彼女は現在日本で最も有名と言っても過言ではない存在だ。

 そりゃあバレるし、見られる。

 そこばかりは有名税ってヤツで、俺たちがそれだけのことをした以上、受け入れるべきものだろう。

 

 ……いやまぁ、俺ばかり気にしていて、ホシノウィルムは全然意識してないっぽいけどさ。

 前世では普通の会社勤めだったし、こういう視線が気になっちゃうんだよなぁ……。

 

 

 

 この世界には、日本の八百万の神様たちの他に、3柱の神様がいる。

 いわゆる三女神。ウマ娘たちを導く、彼女たちの始祖と言われる謎の存在である。

 元アプリユーザーとしては因子継承を行ってくれるイベントというイメージが強いが、実のところ、この世界で三女神はなかなかに信仰を集めている。

 イメージとしては、良縁と息災、そして勝利を授けてくれる神様という感じで、ウマ娘やトレーナー、一部の熱心なファンたちに拝み倒されているようだ。

 

 学園内にも像があり、そこで祈るとたまに不思議な力が宿ったりするという中央トレセン七不思議もある。

 いやそれ因子継承のことでは……? 中距離もS目指せるかこれ? そう思い、一度ホシノウィルムを向かわせてみたが、残念ながら何も起こらなかった。

 発生には時期が限定されるのか、あるいは何か条件があるのか、現在調査中である。

 

 ……話を戻そう。

 俺はトレーナーであり、ホシノウィルムはウマ娘。

 勿論祈るべき対象は決まっているので、三女神が祀られたトレセン近くの神社に向かったのだが……。

 

「……想像以上に混んでいますね」

「あぁ、俺もここまでとは思わなかった。」

 

 1月3日、三が日の最終日ともなれば多少は人影が減るかとも思ったが、どうやらそんなことはなかったらしい。

 そこは、数えきれない人とウマ娘でゴッチャゴチャにごった返していた。

 流石はトレセンの最寄り。そりゃあ参拝客は多いよな。……ちょっと舐めてたかなー。

 

「……並ぶのですよね、これに」

「並ぶ。……まぁ、耐えろ。これも根性のトレーニングということで」

 

 ホシノウィルムの耳が、ほんの少しだけへなりと垂れる。

 トレーニングジャンキーである彼女からすると、こんな長蛇の列に並ぶことは苦痛なのだろう。

 何せ人でごった返しているということは、それだけパーソナルスペースが狭いということで、即ちスクワットや腹筋などをする余裕がないということだから。

 ……逆に言えば、スペースさえあれば人目も気にせずそれらを始めてしまうのが、この子の恐ろしいところだ。主に外聞的な意味で。

 

「何もレースを走ることだけが君の人生ではない。気の長い話ではあるが、その退屈には慣れていた方が良いぞ」

「……そうかもしれませんが」

 

 納得はいっていないご様子。

 忘れがちだが、彼女も中等部1年の女の子だ。理屈だけで感情を抑えるのにも限界があるかな。

 

 ……いや、以前までの彼女なら、こんな不満すら見せなかったか。

 無表情で言うことを聞いてくれたよな。聞いた上で無視することも多かったけど。

 一応でも「不満を持ってます」というアピールをしてきたのは、何気に珍しい気がする。何なら初めて見たか?

 少しは気を許してくれたってことなのか。だとすれば、トレーナー冥利に尽きるというものだが。

 

「では、この時間は休憩として数える。帰ったらその分きっちりトレーニングを課すので、しっかり休むように」

「了解しました、休みます」

 

 ……実は現金な子なんだなぁ、ホシノウィルム。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 1時間程しりとりをして時間を潰していたら、ようやく賽銭箱の前まで進めた。

 俺は待つのに慣れていたので平気だったが、ホシノウィルムは自主トレ欲を抑えたのと、人混みに揉まれたので、少しげんなりしている。

 いやげんなりって言っても無表情のままなんだけど、やる気が絶好調から好調に落ちている。

 もしかすると、彼女は人混みの中にいるのが得意ではないのかもしれないな。これから気を付けなければ。

 

「……ええと、順序は」

「賽銭を入れる、鐘を鳴らす、二礼二拍手一礼だ」

「詳しいのですね」

「先程調べた」

 

 現代ウマ娘ともなると、あまり初詣に行かない子も珍しくないか。未デビューの子に限るけど。

 俺はというと、堀野がちょっとばかり古い家だったので毎年通っていたが、神や仏なんて信じない不信心者だったので、形だけ祈っていた感じ。

 ……が、いざホシノウィルムを担当するとなると、縁起物に頼りたくなる気持ちも生まれてくる。

 そんなわけで、俺は今年、しっかりと参拝を行うつもりだったわけだ。

 

「お賽銭は、いくらが良いのでしょうか」

「基本的に5円でいい。ご縁がありますように、ということでな」

「了解しました。……トレーナーも5円なのですね」

「何かおかしいか?」

「……これもトレーナーの仕事だからと、千円1万円を平然と投げ入れるイメージがありました」

「賽銭箱にお札を入れるのはマナー違反だからな。流石の俺もそんなことは……。

 ……ん? ああ、そういう意味か。安心しなさい、既に祈祷料として50万円を別に納付している。君の今年の安全は、三女神が守ってくれるはずだ」

「…………ごじゅうまんえん」

 

 ぼんやりと呟くホシノウィルム。

 彼女は案外吝嗇家というか、寒門の出な上に既に両親がいないせいか、かなり財布の紐が固い。

 効力があるかもわからないお祈りに50万円を放り投げる姿は、カルチャーショックの対象なのかもしれないな。

 俺としては、三女神がホシノウィルムに授けてくれたもので得た金銭の一部を返納しているという認識なのだが。

 

 レース自体に金銭は発生しないが、レースの観戦料や物販の売れ行きの一部はウマ娘側に戻ってくる。そして更にその一部がトレーナーに流れてくるのだが……。

 担当がG1に勝ったりすれば、当然ながら人気はすごいことになり、グッズが飛ぶように売れる。

 結果として、トレーナーにも不定期のボーナスという形ですごい金額が入ってきたりするのだ。

 

 はっきり言って、俺たちトレーナーは担当に稼がせてもらっているようなものだ。

 だと言うのにお祈りでけちけちしていたら、それこそ三女神の不評を買うわ。

 

 

 

 さて、鐘を鳴らして二礼二拍手一礼。瞼を閉じて、去年を無事に過ごせた感謝を捧げ、今年も無事に過ごせるよう祈る。

 ホシノウィルムが勝てますように、とは願わない。ただ彼女が無事故で、悔いなくこのクラシック級を走り抜けられますように。

 それと、彼女がいつか……無敗の三冠を取って絶対的存在となる前に、走ることを楽しめるようになりますように。

 

「……終わりました」

「うむ、こちらも終わった。願い事は他人に言うと伝わらないという話もあるので、黙秘するように。

 さ、行こうか。せっかくだからおみくじも引いて帰ろう」

「はい。……おみくじでも、負けません」

 

 そう言って、彼女はくすりと笑う。

 

 最近のホシノウィルムは、何かとこうして勝負事を持ちかけてくる。

 レースでも垣間見える元来の負けず嫌いが、ついに俺にまで発動し始めたのだろうか。

 正直あの冷たい殺意を向けられたらと思うと、ちょっと怖いんだけど……。

 やはりあの「冷」の表情はウマ娘と速さを競わなければ現れないらしく、今のところ俺の平穏は守られている。

 

 ……事務的な会話ばかりだった去年に比べて、彼女との距離が近くなった気がして嬉しいのは、秘密にしておこう。

 これは堀野のトレーナーとしては、出すべきでない感情だから。

 

 

 

 おみくじの結果は、ホシノウィルムが大吉、俺が小吉。

 ……うん、まぁ、今ノリにノってるホシノウィルムに勝てるわけがなかったか。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「それでは、トレーニングを行ってきます」

「手帳の内容を守るように。それから違和感を感じた時点で連絡だ。破ったら3日自主トレ禁止」

「了解しました、失礼します」

 

 いよいよ限界が来たようで、ホシノウィルムは神社の境内から飛び跳ねるように走り出した。

 あとはお守りを買って帰るだけなんだけど、お守りを売っている社務所に結構人が並んでいるのを見てちょっとだけ耳が絞られたので、解放することにしたのだ。

 一応トレーニングのルールとスケジュールを手帳に書き込んで渡しておいたので、無茶はしないだろう。

 しないはずだ。

 ……多分。

 …………大丈夫だよね?

 

「……早く帰ろう。危険だ」

 

 さて、何のお守りを買うべきか。

 勝利祈願は当然だろうけど、あとは無病息災、厄除け、長寿祈願、それに遠出の際の安全を考慮して交通安全……。

 まぁ、金銭で買える縁起物は買っておこう。それで少しでもホシノウィルムの幸先が明るくなるなら安いものだ。

 

「……ん?」

 

 列に並んでいる内、何か騒がしいことに気付く。

 この神社は表口の他に裏口もあるんだけど、そこで何か騒ぎが起きているのが見えた。

 それも生半可なものじゃない。野次馬が密集して、中が覗けない程だ。

 

 喧嘩騒ぎというには人が多すぎる気もするな。第一、こんなめでたい日に喧嘩が起きる程、この辺りの治安は終わってないと思うし。

 だとすれば、事故か事件、あるいは浮かれたアホ……にしては明るい声が多いな。

 何かイベントか? 神社……いや、境内より外だから、屋台が何かやってる?

 そんなことを思っていた俺の思考は、聞こえてきた声によって吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

「流石は日本総大将、スペシャルウィーク! すさまじい追い上げだ!」

 

 

 

 ……なんでスペちゃんがここにいる!?

 

 

 







 大食い大会司会「流石は日本総大将(からかい半分)、スペシャルウィーク! すさまじい追い上げだ!(空になったお椀を積み上げるペース)」

 残念ながら、スぺちゃんはあまり本編に絡んで来ません。強すぎるので。
 シニア3年目の大先輩であるスぺちゃんに勝てる可能性のあるウマ娘は、トゥインクルシリーズには3人しかいません。
 今のホシノウィルムじゃ勝てません。主人公末脚で差し切られます。



 次回は3、4日後。ホシノウィルム視点で、迫る弥生と最強の話。



(追記)
 誤字報告をいただき、修正させていただきました! ありがとうございました!

(追記その2)
 結構大きめの設定ガバが見つかってしまったので、一部表現を変更させていただきました。申し訳ありません……。
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