転生チートトレーナーvs転生チートウマ娘   作:アリマリア

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 今回は別視点で、最強ステイヤーの一角たるあの子の視点。





肺にちっちゃい換気扇入れてんのかい!

 

 

 

 最近、メディアに多く取り上げられるにあたって、私はとある疑問をぶつけられることが増えました。

 それ即ち、『どうすれば長い距離をスタミナを切らさずに走ることができるのか』。

 

 どうやら私ことメジロマックイーンは現在、世間からホシノウィルムさんに次ぐか、あるいはそれに並ぶ現役最強のステイヤーとして認められている様子。

 だからこそ、なのでしょうね。

 多くの方々が、ステイヤーを目指すウマ娘のために、長距離を走る際のコツを聞こうとしてくるのです。

 

 勿論その度に、走っている最中の心持ちや息の入れ方について話させていただいているのですが……。

 

 正直に言えば、それらはただの誤魔化しにすぎません。

 歯に衣着せず言うと、私の走りに「コツ」などというものは存在しないのです。

 

 メジロマックイーンの走りは、極めて王道的な、先行からの好位抜け出し。

 セイウンスカイさんやナイスネイチャさんのように、自らの走りによって他者に干渉し、誘導するものではなく。

 トウカイテイオーのように、抜群のセンスによって導かれる最適解の走りというわけでもなく。

 ホシノウィルムさんのように、異次元の脚で空を飛ぶようにターフ上を駆けるわけでもない。

 

 ただ、優れた持久力を以てハイペースでレースを進め、他の子たちが限界を迎えて垂れてしまうまで、どこまでも走り続けるのみ。

 決して複雑な戦術ではない。ただその力を証明するだけの走り。

 自らの持って生まれた素質を……メジロの血を、走りによって知らしめているに過ぎない。

 

 故に、私の走りに、コツは存在しないのです。

 ただどこまでも己を鍛え、己に相応しい走りをするのみ。

 私はそれしか知らず、そしてそれこそが私の走りなのですから。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 そうしてその日もまた、私は自らを磨くトレーニングに没頭していました。

 

 世間的には良くも悪くも大いに賑わった大阪杯の翌日、4月6日月曜日。

 私たちはアスリートであると同時に学生でもあるので、午前中は素直に校舎で授業を受けて、午後からトレーナーさんとのミーティングを経て、本格的にトレーニングを開始。

 

 本日取り掛かるのは、脚に適度な負荷をかけながら肺活量を伸ばす、プールトレーニング。

 私は学園公認の水着を着込み、プールの中を懸命に泳ぎ続けていました。

 

 メジロマックイーンの持つ最大の強みは、やはりそのスタミナ。

 他の出走ウマ娘が付いて来れなくなるハイペースでレースを進め、ただ1人だけ快速のままゴールする。

 それが、私の勝ちの黄金パターンです。

 

 ……しかし、次走である天皇賞で当たるのは、同じくスタミナ自慢であるホシノウィルムさんと、レースの天才トウカイテイオー。

 とてもではありませんが、これまでと同じように走って勝てるとは思えません。

 

 故に、私は少しでも自らの長所を伸ばすために、こうして脚を休めながらスタミナの増強ができるプールトレーニングに努めているのでした。

 

 

 

 プールの壁に手を付け、完走……ならぬ、完泳を果たして。

 私は腕で体を持ち上げてプールサイドに上がり、ストップウォッチを握っているトレーナーさんの方に目を向けました。

 

「ふぅー……! トレーナーさん、タイムは?」

「マイナスコンマ8秒。伸びてるし、まだ余裕もありそうだ」

「それは、幸いですわ。こんなところで止まってはいられませんものね」

 

 疲労感はありますが、それ以上に、少しずつ自分にできることが増えていく充実感が心を満たします。

 次はもっと速く走れる。次はもっと強く走れる。

 そうして一歩ずつ一歩ずつ、小さな歩みを積み重ねて……。

 きっとその蓄積こそが、私たち競走ウマ娘を勝利に導くのです。

 

 そうして、自らの積み重ねた研鑽で勝ち獲った勝利こそが、きっと私の走る意味。

 過たず、メジロの血の証明となるでしょう。

 

 

 

 軽く柔軟をしながら疲労を抜いていた私に、トレーナーさんは少し気遣ったような声をかけてくださいました。

 

「……うん、良い調子だ。正直ちょっと心配だったけど、あのニュースの直後なのに、良く集中できていると思う」

 

 あのニュース、とは……まぁ、疑うべくもなく、ホシノウィルムさんのことでしょうね。

 

 私のライバルである彼女が、昨日の大阪杯の完走後に倒れ込み、嘔吐までしたという知らせ。

 確かにあれは、かなりショッキングなニュースでした。

 

 ウマ娘にとって最も重い障害は、やはり競走人生に直結する、その脚のもの。

 しかし、それに次いで重いのが、脳の障害です。

 

 時速70キロメートル弱で走る私たちは、下手に転倒したりゲートやラチに頭をぶつければ、その勢いが故に重い脳の障害を発生させかねない。

 故にホシノウィルムさんのそれも、下手をすれば競走能力の喪失まで考えられる、恐ろしいものだったのですが……。

 

「確かに驚きましたが、正午に本人から『大丈夫』と連絡がありましたから。それに……」

「それに?」

「彼女が、私のライバルであるホシノウィルムさんが、その程度で挫折する子だとも思いませんわ。

 たとえ障害に脚を取られようと、必ず乗り越え、むしろ強くなって戻ってくると、私は信じています」

「……そう言いながらも、朝は『大丈夫ですわよね!?』ってワタワタしてたけど」

「信じるのと心配するのは別なのです! もう忘れてくださいまし!

 それに、トレーニング中はきちんと切り替えているのですから構わないでしょう!」

 

 お恥ずかしい話ですが……正直に言えば、確かに朝は動揺していました。

 

 なにせホシノウィルムさんは、私にとって、ただのライバルというだけではない。

 あの子と、そしてあの子のトレーナーさんに、私は救われたのですから。

 

 

 

 去年の、京都大賞典の日まで。

 私は、度重なる敗北と、上手く走れない自分の不甲斐なさで、精神的に追い詰められていました。

 

 名家メジロの血をこの身に宿しているというのに、天皇賞にも宝塚記念にも勝つことができず、何度もファンの皆さまの期待を裏切ってしまい……。

 まるで曇天の下、雨でぬかるんだ地面に足を取られるように、私はどうすればいいのかわからなくなっていたのです。

 

 そして、そんな私の暗闇を晴らしてくれたのが、あの2人。

 ホシノウィルムさんと、そのトレーナーである堀野トレーナー。

 

 堀野トレーナーの助言によって、私は真の意味でトレーナーさんと共に、一心同体で歩む覚悟を固めることができて……。

 そして、私の前を楽しそうに走るホシノウィルムさんの背中があったからこそ、これ以上ない全力でレースに向き合うことができたのです。

 

 勿論、実際に立ち上がったのは私であり、それを支えてくれたのはトレーナーさん。

 しかしきっと、あの2人がいなければ、私は今も暗闇の中でもがいていた。

 

 ホシノウィルム陣営は紛うことなく、メジロマックイーンとそのトレーナーの宿敵でもある。

 しかし同時に、私たちになくてはならないライバルであり、私たちを救ってくれた恩人でもあるのです。

 

 そんなホシノウィルムさんに、事故が発生したかもしれない。

 彼女の勝負への熱情が、道半ばで折られてしまったかもしれない。

 ……もう二度と、彼女と走れないかもしれない。

 

 そんなことになれば、誰だって動揺もしようというものでしょう?

 

 たとえ競走ウマ娘としては決して珍しくないことだとしても、それが大事な友人のこととなれば、やはり話は別で。

 驚愕と、悲嘆と、それから不安が押し寄せました。

 

 彼女は、誰よりも走りを楽しんでいる。

 今を走ることを、誰かと競うことを、誰よりも喜んでいるのです。

 そんな彼女が、こんなところで不意に終わってしまうなんて、考えたくもない。

 

 

 

 そして何より……。

 まだ私は、彼女にリベンジを果たせていないのです。

 最大の壁にして、最強のライバルである彼女に、ここで立ち止まってもらっては困るというもの。

 

 私はまだ、彼女たちへの借りを返せていない。

 あの日助けてもらった恩に、私は報いねばならない。

 故に、強者との、燃え上がるような全力のレースという、彼女が最も望む形で以て……借りも、雪辱も、全てを果たさせていただきます。

 

 同時に……。

 今度こそ、その高すぎる壁を越える。

 灰の龍を、必ず討ち果たしてみせましょう。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ……と、そんな明け透けな想いを語るには、少し人の目が多すぎますわね。

 トレーナーさんと2人きりの場所でなら、この想いを吐き出すこともやぶさかではないのですが。

 

「宝塚記念では3と半バ身差、ジャパンカップでは半バ身、有記念では2バ身弱……私はウィルムさんに負け続けています。

 全力を出せる彼女に勝ちたいと思うのは、おかしなことではないのではなくて?」

 

 少しむくれながらトレーナーさんに言い返すと、彼は苦笑して「ごめんごめん」と謝ってきた後、ふと真面目な顔をして言ってきました。

 

「しかし、ホシノウィルムも勿論恐ろしいけど……次回の天皇賞には、トウカイテイオーも出走予定だ。

 有記念の時は振るわなかったが、大阪杯を見るに今の彼女は超一流のウマ娘だろう。

 まず間違いなく、君とホシノウィルム、そしてトウカイテイオーによる三つ巴の戦いになるな」

「えぇ……そうですわね」

 

 トウカイテイオー。

 無冠の帝王として知られる、もう1人の私のライバル。

 

 彼女もまた、春の天皇賞に出走予定なのでした。

 

 日本ダービーでのウィルムさんとの激戦の末に骨折が発生し、長期間の療養と新たな走りの模索に追われて、有記念では今一歩振るわなかった彼女ですが……。

 昨日の大阪杯では負傷前の全盛期を超えたと思う程の走りを見せてくれました。

 名実共に、トウカイテイオーは最前線に復帰したものと思っていいでしょう。

 

 勿論、個人的な交友関係を持つ私は、彼女が未だ恐るべきライバルであるとは認識していましたが……。

 それにしても、まさかあれ程とは。

 

 まさしく、小さな帝王。

 やはり彼女は……あの日見た通りに、恐るべきウマ娘なのでしょう。

 

「あのテイオーと……ついに、競うことになるのですね」

 

 

 

 まぶたを閉じると、今でもあの日の光景が脳裏に過ります。

 

 私がテイオーと知り合ったのは、彼女の入学直後。

 すさまじい才を持つウマ娘の噂を聞いて、彼女の選抜レースを見に行った時でした。

 

 この目で見たトウカイテイオーは、確かにとんでもない傑物でした。

 圧倒的な脚力と、素晴らしく柔軟な足腰の関節。

 途轍もない瞬発力で、彼女は3番手の位置から大外を一気に追い上げ、結局ゴールした時には2着に大差を付けての1着を獲得。

 

 悠々と、余裕で勝ち切った彼女を見て、背筋にひやりとしたものが走ったことを覚えています。

 アレはまさしく、真正の怪物。

 最強に至り得るウマ娘の誕生を、私はこの目で見てしまったと、そう思わされたのです。

 

 その後、少し機会があって彼女と話すことがあり、交友関係を持つに至ったのですが……。

 

 実のところ、私とテイオーは、今までに同じレースを走ったことがなく。

 そこにホシノウィルムさんまで交えたレースともなれば、それはもはや今後あるかもわからない、空前絶後のレースと言えるでしょう。

 

 なにせ、競走ウマ娘のアスリート人生は、そう長くない。

 同じメンバーでもう一度走ることなんて、私たちにはできないのですから。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「……しかし、改めて考えると、恐ろしい運命ですわね。あの灰の龍と無冠の帝王が同じ世代とは」

 

 一昨年の私は、この目で才を確認したテイオーこそが覇権を握ると疑わなかったものですが……。

 実際は、そうはならなかった。

 ホシノウィルムさんという、誰もが予想しなかった伏兵が、帝王の覇権を崩したのです。

 

 実際のところ、当時の私はウィルムさんの噂は聞きこそすれ、あの日に見たテイオーの走りを超える程とは思っていませんでした。

 しかし、彼女の持っていた才気もまた、私の予想を大幅に上回っていた。

 葉牡丹賞とホープフルステークスの大差勝ちを以て、ウィルムさんは私たちに、そして世間に、その実力を見せつけました。

 

 灰の中より生まれた、恐るべき蛇。

 あるいは、被った灰すら振り払った、輝ける一等星。

 彼女は油断していた帝王の喉元を食い千切り、慢心を捨て去った帝王さえ激闘の果てに討ち取った。

 

 結果としては、皐月賞と日本ダービーの2つ、どちらともホシノウィルムさんが勝ち獲った形。

 しかし、もしも彼女たちが別々の世代に生まれていれば、きっと……いいえ、間違いなくそれぞれどちらも、2つの冠を独占していたでしょう。

 

 私の意図を汲んでくれたか、トレーナーさんも頷いてくださいました。

 

「間違いない。あんな才能の塊が同じ世代に2人いるとは、つくづく三女神様は悪戯好きだよ。

 というかそもそも、あのトウカイテイオーがまだ重賞未勝利という時点でおかしいんだ。本来は彼女の実力なら、それこそ無敗三冠だって夢ではなかったくらいなのに」

「そうですわね。……それこそテイオーがG2に出走すれば、簡単に重賞も勝ち獲れるのでしょうが」

「トウカイテイオーはその道を選ばないだろうね。彼女が勝ちたいのは重賞ではなく、ホシノウィルムだ。彼女と真正面から戦っての勝利を望むはず」

「えぇ……そうでしょうね」

 

 その気持ちは、わからないでもありません。

 なにせ、私とて同じ気持ちなのですから。

 

 トゥインクルシリーズに燦然と輝く一等星、ホシノウィルム。

 シンボリルドルフに続く無敗三冠、現世で新たな神話を紡ぐ龍。

 彼女程に今、多くのウマ娘たちから「勝ちたい」と思われるウマ娘は、他にいないでしょう。

 

 そしてそれは、テイオーや私もまた、例外ではなく……。

 ……えぇ、そう。

 私もまた、ウィルムさんに勝ちたいと望むウマ娘の1人。

 

 彼女とは世代が違うこともあって、菊花賞や秋の天皇賞は勝ち獲ることができましたが……。

 正直に言って、そこにホシノウィルムさんがいれば、必ず勝てたとは思い辛い。

 

 テイオーと同じように、激戦を強いられて……。

 ……いいえ、これまでの私では、きっとそこまで行くことすら難しかったかもしれませんが。

 

 

 

 ホシノウィルムというウマ娘を本当に追い詰め切ったウマ娘は、これまでにたった3人だけ。

 サイレンススズカさんとスペシャルウィークさん……そして、トウカイテイオー。

 

 その中でも、完全な状態でのホシノウィルムさんを追い詰め切ったのは、トウカイテイオーただ1人。

 

 私もこれまで、宝塚記念とジャパンカップと有記念で計3戦、ホシノウィルムさんと競いましたが……。

 あの時でさえ、彼女は底の底を見せなかった。

 

 無論、全力ではあったのでしょう。

 確かに彼女は、彼女の持つ全ての力をぶつけて来た。

 あの抜群のスタートダッシュも、不可思議な前傾姿勢も、彼女の持ちうる全てを。

 

 ……けれど、全力以上の、限界を超えたものではなかった。

 去年と昨日モニターを通して見た、トウカイテイオーとの戦いで見せたような、自らの負傷やダメージすら顧みない恐ろしい程の走りではなかったのです。

 

 勿論、そうして無理に走り、故障することが正しいわけではありません。

 ありませんが……しかし、それだけの覚悟をぶつけられたわけではないのも、また事実。

 

 あのジャパンカップの時。

 私は彼女まで1バ身の猶予を保たれ、そしてその差は決して縮まらず、逆に伸びもしなかった。

 完璧に速度を合わされ、何があっても問題ないように「対処」されていたのです。

 

 それはつまるところ、あの時、ホシノウィルムさんが明確に力をセーブしていたことを意味します。

 

 私は彼女に全力は出させることができても、死力までは尽くさせられなかった。

 それこそが、それだけが、私の前に残酷に立ち塞がる真実でした。

 

 

 

 ……ですが、それらはあくまで、中距離レースでのこと。

 

 宝塚記念は2200メートル、ジャパンカップは2400メートル、有記念でさえ2500メートル。

 ステイヤーである私にとって、得意な距離とは言い辛いものがありました。

 

 本来メジロマックイーンの戦い方は、高い持久力を活かしてハイペースでレースを進めるというもの。

 そういう意味では、来たる春の天皇賞は、これ以上ない機会と言っていいでしょう。

 

 舞台は淀の坂の立ち塞がる京都レース場、3200メートル。

 G1レースとしては最長の距離であり、コース自体も非常に消耗しやすいもの。

 つまるところ、高いスタミナを具えるメジロマックイーンにとっては、最も有利な条件での戦いとなるのです。

 

 ここでならば、あるいはホシノウィルムさんさえも……。

 

 ……と。

 ここまで考えて、私は思わず自らの思考に苦笑を漏らしてしまいました。

 なにせ「最も有利な条件」などと語りながら、私は去年、天皇賞に勝つことができなかったのですから。

 

 

 

 去年の天皇賞、私の前に立ちはだかったのは……。

 黄金世代の一角、トリックスターの名を冠する、セイウンスカイさん。

 

 正直なところ、1年半という本当に長い期間の療養の果ての参戦、まさか彼女があそこまで衰えず、どころか力を蓄えているとは思っていませんでした。

 あるいは、今思えばこれすらも、セイウンスカイさんによって思考を誘導されていたのかもしれませんが……。

 

 とにかく、私はセイウンスカイさんの策略にまんまと乗せられ、天皇賞で敗北を喫しました。

 そしてそのセイウンスカイさんに、ウィルムさんは宝塚記念で勝っているのです。

 

 更に言えば、何も長距離を得意とするステイヤーは私だけではなく。

 ホシノウィルムさんもまた、高い持久力で周りを磨り潰す生粋のステイヤー。

 春の天皇賞において有利なのは、彼女もまた同じで。

 

 総じて言って。

 私とホシノウィルムさんの間には、まだ埋められない差が開いていると言っていい。

 

 だからこそ、宝塚記念でも、ジャパンカップでも、有記念でも、私は彼女に負けたのです。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「…………」

 

 ……私は去年、何度も敗北を喫しました。

 

 確かに、私は現在においても、ホシノウィルムさんに優っているとは言い難いでしょう。

 確かに、トウカイテイオーの才気は、それこそ背筋が凍り付く程のものです。

 

 けれど、それでも……。

 

 

 

 ……いいえ、違う。

 そんなことはどうでもいいのです。

 

 私は私。

 メジロの血を引き、彼女たちに勝つことを目指す1人のウマ娘、メジロマックイーン。

 

 私はホシノウィルムのように、自由奔放に駆けることはできない。

 私はトウカイテイオーのように、天才的な走りをすることはできない。

 

 ただ自らの素質を以て勝利し、メジロの血の強さと在り方を証明して……。

 そうして、盾の栄誉を、この手に。

 

 それこそ、私が……「メジロマックイーン」が生まれ持った、運命なのですから。

 

 

 

「マックイーン?」

 

 気付けば、どうやら私は少し考え込んでしまっていたようで、トレーナーさんに心配げな声をかけられてしまいました。

 いけませんね。熱を上げるのは結構ですが、今はトレーニングの最中。

 ひとまず、目の前のことに集中しなければ。

 

「いえ。改めて、天皇賞での勝利を誓っていたところです。トレーニングに戻りますわね」

 

 そう言って、私が再びプールに戻りかけたところで……。

 ポロン、とトレーナーさんの腰の辺りから音が響き。

 

「……待った、マックイーン」

 

 スマホを見た彼に、私は呼び止められました。

 

「なんでしょう?」

「これ」

 

 そう言って手渡された彼のスマホには、ウマッターのホシノウィルムさんのアカウントが表示されており、そこには……。

 

 

 

『ご心配おかけしました、私です。

 色々と精密検査にかかったのですが、結論としてはオールオッケー、一切問題なしです。

 次回天皇賞(春)も勿論出走しますよ。テイオーとマックイーンさんとの戦い、勝つのは私です!』

 

 

 

 ……あぁ、やはり。

 来てくださるのですね、ウィルムさん。

 

 私と、テイオーと、そしてあなた。

 三つ巴の……運命の戦いへ。

 

「……さぁ、改めて勝ちに行こうか、マックイーン」

「えぇ。今度こそ、勝利をこの手に」

 

 

 







 次走天皇賞(春)は、TM対決ならぬHTM対決。もしくはWTM対決?
 ネイチャとミーク先輩を除けば現役三強と呼んでいい3人での戦いになります。
 果たして、帝王は、名優は、龍を討つことができるのか?

 ……なんかいつの間にか、ウィルが魔王みたいになってきてるな?



 次回は3、4日後。トレーナー視点で、立て直しと次の戦いの話。



(追記)
 誤字報告をいただき、わざとでない部分は訂正させていただきました。
 天皇賞の春と秋を間違えたのはこれで2度目です。なんでこんな間違いするんですかね?
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