転生チートトレーナーvs転生チートウマ娘   作:アリマリア

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 お久しぶりです。
 7月中投稿しようと思ってたらすっごいギリギリになってしまって申し訳ない……!

 今回は〈チーム・ポルクス〉出陣の話。





ポルクスメンバーを紹介するぜ!

 

 

 

 歩さんの組んだ競走ウマ娘チーム、〈チーム・ポルクス〉。

 ついに、その初陣の日が来た。

 

 いやまあ、ただ校内でそれぞれ模擬レースに出るってだけなんだけどさ。

 

 テイオー陣営から持ちかけられ、歩さんが企画した今回の戦いは、4つのレースに分けられる。

 

 1つ。公募したドリームトロフィーのウマ娘+私とテイオーによる、中距離レース。

 2つ。同じく公募した、トゥインクル、シニア級のウマ娘とブルボンちゃんによる、マイル距離レース。

 3つ。テイオー陣営に加入したナリタブライアンちゃんと、ウチのローレルちゃんを筆頭とした、クラシック級による中距離レース。

 そして4つ目が……。

 

「ばっ、バーカバーカ! アホトレーナー! こんなの大差どころの騒ぎじゃないでしょ!

 ルビー先輩とレースなんて無理に決まってるじゃん! 私トゥインクルのジュニア級だよ!? 並走すら烏滸がましいレベルだよ!!」

「…………」

 

 ……内ハネのベージュの髪を振り乱して歩さんに意見する我がチーム最後の一人と、当チーム最低身長にして最高学年であるルビー先輩による、短距離疑似レースだ。

 

 必死に現実を否定しようとする彼女の名は、ブリッジコンプ。

 歩さんが拾ってきた、〈チーム・ポルクス〉5人目のメンバーである。

 

 彼女がチームに入って来たのは、つい3週間前のこと。

 歩さんが趣味の釣りに出かけた際に堤防でたそがれてたらしく、歩さんをあの「堀野歩」と気付かないままに、「トレーナーが決まらないんです」「私もトゥインクルで走りたいのに」と愚痴を零したらしい。

 

 一方歩さんの方も歩さんの方で、今年はもう一人担当を取らなきゃいけないのに、なかなか決まっていなかったんだよね。

 逆スカウトはかなりの数来てたんだけど、なんかこう、「これだ」って子が見つからないんだとか。

 

 偶然にも巡り会った、トレーナーのいないウマ娘と担当の決まらないトレーナー。

 これも巡り合わせということで、歩さんは彼女をその場でスカウトしたんだとか。

 

 まあそんな流れだったから……チームメンバーの顔合わせとして、〈ポルクス〉のチーム室に入ってきた時は、彼女はそりゃもう愉快な反応を見せてくれた。

 リアルに「ひっくり返ってぶっ倒れる」なんてリアクションを見たのは初めてだったね。

 

 

 

 ぶっちゃけ〈チーム・ポルクス〉は、現在のトレセンでも最強級の精鋭チームだ。

 

 私ことホシノウィルムに、ダイイチルビー、ミホノブルボン、サクラローレル。

 私は勿論最強だし、ルビー先輩はドリトロ短距離区画最強級、ブルボンちゃんも無敗三冠達成済みと来て、ローレルちゃんは半年遅れた本格化にも負けず今度のG1ホープフル最有力候補。

 

 では、残されたブリッジコンプこと、ブリちゃんの才覚の程はと言えば。

 

 ……まあ、程々、というところだった。

 

「あのねぇトレーナー! 私はホシノウィルムじゃないの! そんなに才能とかない、多分重賞にも出られないウマ娘なの! 本来〈ポルクス〉にいていいウマ娘じゃないの!!!」

「そんなことはないぞ、ブリッジコンプ。君は走れるウマ娘だ。実際、この前のメイクデビューは20バ身差付けて勝てただろう」

「私がすごいんじゃなくてトレーナーがすごいんだよ!!! 私自身なんであんなに走れるかわけわかんないんだよ!!」

 

 グラウンドに連れて行こうとする歩さんに、ブリちゃんは必死の抵抗を見せる。

 いやまあ、言うて人の力にずりずり引きずられてる辺り、本気で抵抗してるわけじゃないだろうけど。

 

 そもそも、これは日常茶飯事。

 〈チーム・ポルクス〉のメンバーにとっては見慣れた光景だった。

 なので、私たちは気にせず、先にグラウンドに向かって歩き始める。

 

 多分ブリちゃんの才能は、本人の言う通り、めちゃくちゃすごいものじゃあないんだろう。

 歩さんと私の前世の記憶、そのどちらにも引っかからない、推定モブウマ娘。

 彼女は私の直感的優駿センサーにも引っかからなかったし、適正距離が一致するルビー先輩も「トゥインクルで走るには十分な素質でしょう」と……雅言葉を翻訳すれば、上を目指すには足りないだろうと言っていた。

 

 けど……。

 

 私という、勝手に自主トレとかしだす変則的なウマ娘。

 ブルボンちゃんという、適性外の距離で戦おうとするウマ娘。

 ルビー先輩という、完成された短距離マイル指向のウマ娘。

 ローレルちゃんという、同時期に競えるジュニア級のウマ娘。

 

 数々のウマ娘を支え、育成に関するデータを蓄積していった歩さんの手腕は……なんかこう、普通とか常識とか当たり前とか、そういうのをぶっちぎりに超越してしまったらしい。

 

 歩さんが付いてから、おおよそ3週間。

 今のブリちゃんは、ぶっちゃけだいぶ強い。

 多分ジュニア級短距離マイル路線では、五本の指に入るんじゃなかろうか。

 

 かつては何も響かなかった私の直感は今や、「この子将来私を楽しませてくれるかも!」と──まあ適性距離は離れちゃってるから、実際には難しいだろうけど──叫んでいるし。

 ルビー先輩は、いつも泰然自若なあの人としては珍しく、「……目覚ましい成長速度です」と目を見張ってた。

 

 圧倒的な、異次元の成長速度。

 それに誰より驚き戸惑っているのは、きっとブリちゃん自身だろう。

 

「あああもう契約解消だよ!! 理事長に直談判だよ!! このままじゃ私がおかしくなっちゃうよ!!」

「落ち着けブリッジコンプ、わかった、少しペースを落とそう。ところで次走の阪神ジュベナイルフィリーズに勝った後のプランなんだが……」

「ペース落ちてないよなんでG1レースに勝って当然って思ってるんだよ私の器を越えてるんだよ!!! 今度こそ契約解消してやるからなー!!」

「まあまあ……あ、もう時間ないな。じゃあそろそろ時間だから行くぞ、皆」

 

 うわーん、と暴れるブリちゃん。

 この契約解除芸も、もはや恒例行事である。

 

 ただ、今は模擬レース前。

 歩さんから号令もかかったし、そろそろ行かないとだ。

 

 というわけで、チームでも中核的な立ち位置にいる私とルビー先輩が声をかけた。

 

「ブリちゃん戻ってきなー? ()()歩さんが言うんだからG1だって勝てるってば」

「ブリッジコンプさん。……あまり、()()トレーナーにご迷惑をおかけせぬよう」

「う、うう……はい……」

 

 ブリちゃん、トレーナーにはあんまり興味ないタイプだけど、流石にホシノウィルムとかダイイチルビーのことは知ってるからね。あんまりこっちの言葉を無下にもできない。

 彼女は渋々と、歩さんの袖から手を放し、歩き出した。

 

 ていうかルビー先輩、後輩を後目に牽制するのやめてくださいよ。歩さんは私の男なんですケド。

 

 

 

 グラウンドに出ると、いつも通り、たくさんの視線と歓声に出迎えられた。

 グラウンドも校舎の窓も、ウマ娘やトレーナーさんたちで埋まっている。

 

 ま、私が模擬レースをやるってなったらいつものことだ。

 G1レースに出るようになれば、この何十倍という重圧がかかるし、既にそれを経験している私とブルボンちゃん、そしてルビー先輩は慣れっこで。

 私たちは軽く手を挙げてそれに応えながら、ざざっと割れた人混みの中を歩く。モーセの気分だね。

 

 一方で、そういったコトにまだ慣れていないのは、ジュニア級のローレルちゃんとブリちゃん。

 ローレルちゃんは一瞬ピクリと体を揺らしたけど、すぐに(少なくとも見た目の上では)平静を取り戻して、私たちに続き。

 ……ブリちゃんは大いに取り乱してたけど、歩さんに「ほら行くぞー」と背中を押され、ずりずりと引きずり出されていた。

 

「い、胃が痛いぃ。こんな衆人環視の中でルビー先輩と走るとか……!」

「……ブリッジコンプさん。あなたは〈チーム・ポルクス〉の一員。あまり、無様は晒さないように」

「はっ、はいいぃ……!」

「あ、今のは『あなたも私たちと並ぶ優駿の卵なのですから、そう卑下することはなく、胸を張ってこの戦いに臨みなさい』って意味だぞ」

「トレーナーさんはルビー先輩翻訳機か何かなの!?」

「兄代わりだ」

 

 相変わらず不器用な人だなぁと、相変わらず無表情のルビー先輩に苦笑してしまう。

 

 

 

 ……ルビー先輩が歩さんの下に付いてから、数か月が経って。

 それだけ一緒にいれば見えてくる物もあるわけで。

 私はなんだかんだこの人のことを、結構気に入ってしまっている。

 

 ダイイチルビーというウマ娘の人となりを一言で言うのなら、「真面目すぎる」ウマ娘だ。

 歩さんと同じように名家に生まれ、けれど「堀野のトレーナー」というあり方から離れた歩さんと違って、名家の末という定義を第一と置く少女。

 

 歩さんとルビー先輩、二人して共通しているのは、その鬼のようなストイックさ。

 自分の余暇など必要ないと言わんばかりに、二人は予定表にはぎっしりと自己研鑽や鍛錬、レッスンを詰め込んで、不満一つ零すことなくそれを実行する。

 すべきことじゃなくてやりたいことに熱中しがちな私からすれば、ちょっと恐ろしいくらいに真面目だ。

 

 ただ、だからといってそんな考え方を押し付けて来たりすることもなければ、逆に驕り高ぶったり、「庶民」とか「凡人」とか見下してくるってこともなく。

 名家の者として相応しくないと判断すればすっと一歩退くものの、基本的には相手の思考とか方法論を尊重でき、そしてその精神が尊敬に値すると思えば素直に認めもする。

 ただ、多分余計な感情を表に出して隙を作らないようにって判断なのか、それが表情や言動に現れにくいのでわかりにくいところが玉に瑕かな。ルビーだけに。

 

 とにかく。 

 そんな、普通な女の子でもあり、カッコ良い先輩でもあるのが、ダイイチルビーという名の私の先輩だ。

 

 尊敬に値する、というか尊敬する他ない、素晴らしいウマ娘だと思う。

 ……これで現在進行形でゴリゴリに歩さんをスティールしようとしてくるシーフじゃなきゃ、私も先輩として素直に慕えるんだけどね。

 

 

 

 そうして、グラウンド中央。

 私たちを出迎えてくれたのは、2人のウマ娘とそのトレーナー。

 

「待ってたよ、ウィルム!」

「…………」

「どうも、今日はよろしくお願いします」

 

 トウカイテイオー、ナリタブライアン、そして彼女たちのトレーナーさんだ。

 

 テイオーはいつも通り、自信ありげなテイオースマイル。

 トレーナーさんはこれまたいつも通り、感情を読みにくい穏やかな笑顔で。

 一方でブライアンちゃんはと言えば……やや不満そうに、ぶすっとしている。

 

「あら、どしたのブライアンちゃんは」

 

 テイオーに聞いてみれば、彼女は苦笑いで答えた。

 

「あー、ボクやウィルムとレースできないのが不満みたい」

「…………ああ、うん、なるほど」

 

 テイオーの言葉とブライアンちゃんの表情から、大体の事情は呑み込む。

 

 今回のレース、勿論、お互いの鍛錬の成果確認とかモチベーション確保の意味もあるけど……。

 あっちとしては、ブライアンちゃんに現実を教えるって意味合いが強そうだ。

 

 ブライアンちゃんは、強い。

 これはもう、明確な事実だ。

 

 私のライバル探知センサーもビンビンに働いてるし、テイオーの才気なら気付かないわけもない。

 彼女は確かに、並のクラシック三冠程度なら余裕で取れるだけの才能を持ってる、私やテイオーの同類。こっち側のウマ娘だ。

 

 が、しかし。

 現実も見えてないようじゃ、才能は花開かない。

 

 いや、ある程度半端になら開くかもしれないね。

 それこそ私がいない場合の、もっと刺激のないトゥインクルシリーズでなら、三冠くらいは取れるかもだ。

 

 でも残念、ここには私がいる。

 君の慮外の怪物がいる。

 そして、そんな私と一緒に競ってきた、私を目指して追いかけて来たウマ娘たちが、たくさんいるんだ。

 

 「最強と言われていても、どれだけ速かろうと、自分ならいずれ越えられる」……。

 積み重ねて来た成功体験から、そんな根拠のない妄信を抱き続けているようなら、君に未来はない。

 その重みに耐えられず、沈んで溺れるばかりだ。

 

 ……が、私たちとて先輩であり先達。

 そんな彼女に、ある種の非情な現実ってヤツを理解らせ、成長限界を取り払って未来を切り開くのも、私たちの役割であった。

 

「ふふ、テイオーも先輩っぽくなったねぇ。自分でやるんじゃなくて、ちゃんと方法考えて他人に任せてるの、偉い偉い」

「どこ視線なのよ、それ? ぽくっていうか、実際先輩だしね、ボクも」

 

 テイオーはこともなげに言うけど。

 私としては、彼女の成長が伝わって来て、友人として嬉しいばかりだ。

 

 わかるよ。ブルボンちゃんが後輩になった時の私もそうだったけど、そういう後進が身近にいると、色々考える様にもなるよね。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 そんなこんなで、私たちはそれぞれの模擬レースを走ることになった。

 

 第一レース、ドリトロ級中距離レース。

 

 本来ドリームトロフィーのレースは、半年に一度しか行われない。

 それが見られるとなれば、多くの人が盛り上がってしまうのもやむなしというものだ。

 いっそオオトリにすべきじゃないかって意見もあったけど、外にアピールする模擬レースではなくあくまで内々でやるトレーニングの一環ということで、初っ端からこれが始まった。

 

 出走メンバーは私とテイオー、そしてもはや定番メンバーと化しつつあるルドルフ先輩に、今のホシノウィルムに挑みたいと言ってくれたオグリ先輩。

 

 ……そして、なんと!

 

「久しぶり、ウィルムちゃんっ!」

 

 そう言い、黒鹿毛を揺らして可愛らしく笑ったのは、この世界の主人公にも等しいウマ娘。

 あるいは、私が一番弱っていた時に道を示してくれた、尊敬する先輩。

 もしくは……私が公式レースでただ一度敗北を喫した、いずれ越えたいと思っていたライバル。

 

 スペシャルウィーク先輩も、今回のレースに参加してくれた。

 

「お久しぶりです、スペ先輩。

 今日という日を……ええ、とてもとても、楽しみにしておりました」

「ふふ、私もだよ! 今日は……じゃ、ないね。今日も、良いレースにしよう!」

 

 いつかの日、世界を信じて走ることを教えてくれた先輩。

 負け知らずだった私を負かして、どうしようもない悔しさと同時、これから先も走れる希望もくれた人。

 

 そんな尊敬できる人だからこそ、勝ちたかった。

 最高の走りを以て、その恩に報いたいと思った。

 

 そして、今日がその日だ。

 私は、全身全霊の走りを以て……この人の流れ星すら、灰に焼き尽くす!

 

 

 

 果たして、第一レースの結果は……。

 

「ふーはっはっはっは!! リベンジせいこぉーう!!

 ついに! ついに!! ルドルフ先輩とオグリ先輩とスペ先輩と、あとその他たくさんのドリトロの先輩方に、勝てたぁーっ!!!」

 

 1着、ホシノウィルム。

 2着、シンボリルドルフ。

 3着、スペシャルウィーク。

 

 ドリトロの先輩方が展開した疑似二重領域や進化した領域を、私が全部燃やし尽くして灰にし。

 ルドルフ先輩に、2バ身の差を付けた勝利と相成った。

 

「くぅ……! 私もドリームトロフィーリーグで鍛錬を積んだつもりだったんだけどなぁ……!

 ウィルムちゃん、次は負けないからね!」

「望むところです……何度でもやりましょう、スペ先輩!」

 

 私はスペ先輩と握手を交わし、再戦を誓う。

 ドリームトロフィーに行くには今少し時間がかかりそうだけど……いつかは公式レースでも勝ちたいね。

 

 いや、勝ちたい、じゃないな。

 

 次も、勝つ!

 

 

 

 * * *

 

 

 

 歩さんの隣で、渡されたタオルで汗を拭きながら、今出て来たグラウンドを見やる。

 

 今から始まる第二レースは、ブルボンちゃんを筆頭とするトゥインクルのシニア級メンバーによる、マイル距離のレースだ。

 

 去年の有記念以降、脚の安全を取って春を休養に充てていたブルボンちゃん。

 彼女は、これからのシニア級を走るにあたって、クラシック級の頃の中長距離路線から、マイル中距離路線に切り替えることになっている。

 

 そもそもあの子が適性距離ではない長距離を走ってたのは、ひとえに抱いた夢たる三冠確保と、その際背中を押してもらったファンのため。

 夢が現実のものとなった今、その路線に拘る理由は残っておらず。

 「マスターと共に走れるのなら、場所は問いません」というなんか若干卑しい発言によって、彼女の本来の適性距離に路線を移すことが確定したんだ。

 

 私の最適距離は長距離、それも長ければ長い程有利なので、彼女とは走る道がズレちゃった。

 ブルボンちゃんのライバルであったライスちゃんも、メインは長距離路線なのでそうなるね。

 そこは少し寂しいけど……。

 

 ま、今更だ。

 

 競走ウマ娘がその道を違えることなんて、珍しくもない。

 そもそもテイオーは最適距離が2000メートルくらいで、ネイチャも2400から2800。

 最たるライバルの三星メンツですら、3200以上の私とは路線が違う。

 

 今、一番雌雄を決したいシーフ系ウマ娘こと、ルビー先輩となんてもっと酷い。

 中長距離路線と、短距離マイル路線だ。被る距離、走れるレースすらありゃあしない。

 

 それを悲しく思わないかと言えば、嘘になっちゃうけど……。

 でも、世界ってそんなもの。

 

 ままならなくて、悲しいこともあって、けれど奇跡みたいなことも起きて、嬉しいこともある。

 だからこそ、毎日の小さな奇跡を大切にしなきゃいけないし。

 そんな世界だから、今が愛おしいのだと。

 

 色々あった私は、今はそう思うのです。

 

 

 

 ……と、話は逸れたけど。

 ブルボンちゃんの走るマイルレース、当然ながら一番人気はブルボンちゃん。

 無敗三冠を獲った世代王者、彼女がマイル距離でも通用するのかと皆が注目してるだろう。

 

 では、あの子以外の注目株はと言えば……。

 

「ブルボンさん、今日はよろしくお願いしますっ!」

 

 まずはやっぱり、今ブルボンちゃんと話してる、ニシノフラワーちゃんだろう。

 

 私は交友がない、おしとやかで物腰柔らかなちびっこウマ娘ではあるが……。

 彼女は、ブルボンちゃん世代の歴とした優駿の一人だ。

 

 他のウマ娘と比べてひときわ体躯が小さいが、それもそのはず。

 初等部の頃に本格化が始まったため、飛び級でトレセンに入学することを許されたという、異彩を放つ経歴の持ち主らしい。

 

 その経歴からも察せるように、彼女の早熟っぷりは凄まじいものがある。

 短距離マイル路線のウマ娘である彼女は、ジュニア級のG1阪神ジュベナイルフィリーズを征し、クラシック級では桜花賞、スプリンターズステークスと、順調にタイトルを確保している。

 

 一般的に、トゥインクルシリーズ現役の間にG1タイトルを2つも取れば、十分歴史に名を残す優駿だ。

 あのスペ先輩ですら、ラストランも含めて4勝であることを考えれば、クラシック級終了時点で3つタイトルを取っていることのすさまじさ、そのずば抜けた育ち方がわかるというものだろう。

 まあ私は6勝してたけど。クラシック級までで。

 

 ブルボンちゃん世代の中長距離の主人公がブルボンちゃんとすれば、短距離マイル路線の主人公は間違いなくニシノフラワーちゃんだ。

 実際、今年のURA賞、最優秀クラシック級ウマ娘はこの2人だったしね。

 表彰の時ちょっと話したけど、いやー良い子だね、フラワーちゃん。イロモノ……じゃなくてキャラの濃い子が多いウマ娘界隈の清涼剤だよ。

 

 ともあれ、そのふんわりほわほわな空気に対して、実力は本物だ。

 心優しい性格でありながらも、真摯に全力でレースに臨み、勝利をもぎ取りに来る……成長の果てが楽しみな優駿である。

 

 

 

 そして今回はもう一人、面白い……というかユニークなウマ娘が参戦している。

 

「お二人には負けませんよー!! バクシンバクシーンッ!!」

 

 歩さん曰くアプリの方のネームド、短距離の鬼。

 去年のスプリンターズステークスではフラワーちゃんに敗北を喫したけど、それ以外の短距離レースは敗北したことがないという、なかなかにすごい戦歴を持つウマ娘。

 サクラバクシンオーちゃんも、今回のブルボンちゃんのライバルだ。

 

 ……ただ、ちょっと心配なのがこの子、マイルに出るとあんまり戦績上がってないんだよね。

 

 歩さんも「短距離のバクちゃん委員長はバクシンだからな……」とかよくわかんないこと言ってたけど、確かに短距離のサクラバクシンオーは強い。

 快速のスタートから渾身の逃げでズバッと勝ち切る姿はターボに近い全力全開、見ててとても気持ち良い。

 

 が、ターボと同じ走りってことは、ターボと同じ弱点を持ってるってことで。

 距離が伸び、必要なスタミナが増えると……どうしても体力が追い付かないわけだ。

 

 彼女にとってのその限界は、多分短距離区画内だと思うんだけど……。

 何か、深謀遠慮な考えがあるんだろうか。

 

「長距離G1レース勝利を目指す第一歩!! まずはこの模擬レースでバクシンです!!!」

 

 特になさそうだ。

 

 

 

 ともあれ、だ。

 ミホノブルボンが……私の歩さんにバッチリ支えられたウマ娘が、負けるわけもない。

 

 ルビー先輩との並走で、しっかり時間をかけて培ってきたマイル勘。

 「常時上限の120%の速度で走行する」とかいう、とんでもない脳筋新戦法。

 常に上を目指す、獰猛なまでの闘走本能。

 

 その全てが噛み合った今のブルボンちゃんは、まあ並大抵のウマ娘ならぶっ飛ばせる力を持ってる。

 

 今回も、2着のフラワーちゃんに1バ身半の差を付けての、堂々勝利。

 見守っていた観衆の歓声に一度、歩さんと私の方に一度礼をして、彼女は勝利を締めくくった。

 

 ……うん、次に彼女と走る時が楽しみだ。

 なんならそのためにも、歩さんにお願いして、私もマイル適性培ってみようかな?

 

 

 

 







 短くまとめようと思ってるのに、気付けば長くなってしまう!
 後日談にしてまさかの前中後編です。
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