『終わりのセラフ部隊』はカウンセラー(仮名) 作:ハマの珍人
最初の1人からいきなり時間掛けてしまったけど、このペースであと5人……なんとかなるのか? ボク……
(待たせてるのもなんだし……ベンチとか設置しなきゃいけないかなぁ?)
『面談時間を削る』という考えは持っていない。今回は顔合わせだけれども、もしかしたら深刻な悩みを抱えていることだってあるだろうし、行列のできる店じゃないのだから回転率云々は全く考えていない。
(色々考えなきゃいけないことも出てきそうだなぁ……)
そういった意味では今回の顔合わせは有意義な体験ではある。
コンコンコン
「あ、は~い。どうぞ~」
思考の海に没頭しそうになったところをノックの音で現実に戻される。
「失礼します」
本日2人目のゲスト(?)。薄い青色の髪、キリッとしたお顔、メガネ……もう見た目からして『出来る女』感が滲み出ている。
そしてーー
(デカイ!)
立派でたわわな胸部装甲をお持ちだ。思わず自分の胸に手を当ててしまったボクは悪くない!
「!?」
そして案の定あちらも硬直。うん、想定どおり。
先ほどの茅森さんと同じように着席を促し、ボク自身の自己紹介と共に、敬語は不要だと伝える。
「ホントに軍医なのかよ……」
うん、期待どおりの反応ありがとう。茅森さんの時は予想外の反応されたけど、その反応が欲しかった!
「と、言ってもメインはカウンセリングなんだけどね~」
コーヒーを準備しながら会話に応じる。
ちなみにカップは1つ分。ボク、コーヒー苦手なので……ギリギリ飲めるとしてコーヒー牛乳なのよ。
「どうぞ~」
コーヒーとソーサーにティースプーン。一緒にシュガーポットとコーヒーミルクも差し出す。
「というか、ここ診療室だろ。飲食厳禁じゃないのかよ。頼んどいてアレだけど……」
「メインは
納得いったようないかないような微妙な顔をしながら彼女はコーヒーを口にした。
古の時代には『呑みニケーション』なるものが存在したし、呑めば腹割って話せるとかじゃないかな? 未成年だから知らないけど。
(あとは飲み物で物理的に口を滑らせるとか? 口が裂けても言えないけど」
「口に出てるからな」
「は!?」
まさかの思考が駄々漏れだった。飲み物のんでないのに、口滑らせてるわ。
「警戒するのもアホらしいわ」
「あ、そうなの?」
どおりでこちらをジッと観察するように見てたわけだ。
まぁ、そういう意味では意図せずに正解を引いていたわけだ。
「さて、本題に入ろうか。和泉ユキさん……で間違いないよね?」
もっとも、顔写真付きの資料を見たわけだから間違いはないだろうけど、確認は大事。
「あぁ」
カップをソーサーに置いてから肯定する。
和泉ユキ。9月17日生まれ。天才ハッカー集団『オーキッド』に所属し、第三次世界大戦を未然に防いだらしい。
見た目に違わず頭脳派か。まぁ、軍としてはこういう子がいた方が咄嗟の作戦立案だったり、電子機器扱う場合も重宝しそうだよね。
先ほどの茅森さんはどちらかといえば感覚派だと思うし、サポートするとすれば彼女か……それとも『こっちの子』か?
「ご出身は新潟なんですね。米処だね!」
「気にするところそこなのか!?」クワッ
「……和泉さんはパン派だったかな?」
「そういうわけじゃなくて!」
「……ツッコミ気質ありっと」メモメモ
「その情報いるか!?」
「どんな些細な情報も、いつかなにかの役に立つかもしれないし「アタシからしたら全く必要ない情報なんだが?」
ボクの回答に不服そうにため息をつきながら答える和泉さん。
どうでもいいけど、腕を組むと立派でたわわな胸部装甲が一段と主張してくる。……本当にどうでもいいんだけどね!
「情報戦、という意味ではハッカーとしては普通のことだと思ってたけど」
あくまでもボクの偏見ですが、と付け加える。
「……やっぱり油断できねぇな」
あ、逆に警戒心高めちゃった。何か小粋なジョークを……
「あ、知ってる? 和泉さんが所属していた『オーキッド』。一般的には『蘭』のことを言うんだけど、ラテン語ではーー」
言いかけて、ふと気づく。これ、ジョークじゃないし、初対面の人に言うことじゃないなと。
「ラテン語では?」
「あ、あはは。失礼。別なモノと勘違いしてた~。何でもないや、気にしないで」
「なんなんだ?」
しどろもどろに誤魔化すボクをジト目で見る和泉さん。
さらに警戒レベルが上がった。
「気を取り直して……和泉さんは何か悩んでることある?? とはいえ、まだ配属されたばかりで色々分からないことや不具合は多いとは思いけど……」
部隊内での衝突とかは、まだ顔合わせしたばかりだからそうそう起きないとは思う。
それに関してはこれから起きてくることだろうし、集団で生活する上で仕方のないことだとは思う。
起きる前から心配したところでどうしようもないし、その杞憂が別なトラブルに発展することもあるだろう。
後手に回るようではあるけど、起きた後で相談してほしい。
今重要なのは、和泉さん自身の悩み事だ。
一応送られて来た情報を見る限りは大きなケガや患っている病気はないようだけれどーー
「悩み……強いていうならか「肩が凝るのでしたら、その大きなお荷物を切除致しましょうか??」何でだよ!」
あれ? 違った? 持ってないボクからしたら、何でこの人でっかい的抱えてるんだろうってなるんだけど。
「今までこんなに身体動かしてこなかったから、身体中あちこち痛くて……」
「あー……」
確かに偏見かも知れないけれど、後方支援……支援? 的なハッカーから、いきなり戦場の最前線だもの。そりゃ筋肉痛にもなりますわ。
「……たんぱく質でも摂ります?」
「いや、そういうのは求めてねぇんだよ」
というかあるのかよ、という呟きには半ば呆れも入っている気がする。
「まぁ、しばらくすれば慣れるとは思うけど……もし辛いんだったら、マッサージでもする?」
「いや、そんな時間ねぇだろ」
「さすがに今じゃないけど、自由時間の時に来てもらえれば出来るよ? カウンセリングもそうそう来ないだろうしさ」
自分で言ってて少し悲しいけど、まぁ、裏を返せばそこまでの悩みがないってことだろうし。もっとも、自分への信頼度は考えないものとする。
「というか、普通に聞いてたけどマッサージとか出来るのかよ」
「軍医ですから!」
「軍医も万能じゃないぞ」
とジト目付きで突っ込みをいただいた。
「まぁ、そうなんだけどね。軍医とカウンセラーの掛け持ちだから治療だけって訳にもいかないしね」
そもそも軍医とは言うものの、医療部門のトップは別にいるためメインはこっちになるわけだけれど。
「とりあえず使えそうなものは、時間が許す限り片っ端から免許やら資格やら取ってたから」
懐かしいなぁ……ルームメートの肩揉みから始まって、ツボだのアロマだの独学で勉強したっけ。
『カナタはどこに向かってるの?』って真剣な顔で言われたから、『遥か彼方』って答えたけど、そのジョークは通じなかったっけ。
まぁ、海外の人に日本の駄洒落が通じるわけはないんだけど。
「アンタは何を目指してるんだよ……」
「遥か彼方だよ!」
「……あ、そう」
つい反射的に答えてしまったが、和泉さんの反応は圧倒的なまでの塩だった。
「こほん。と、とにかく! 自由時間の間なら基本的にはここにいるから、和泉さんがしんどいなら来るといいよ。ボクのゴッドハンドで楽にしてあげるから」
「アンタの手はどんだけ凄まじいんだよ……」
誤魔化すように冗談交じりに言うと、これまたジト目で返される。
「それと……胸部の腫瘍は切除することをオススメしますよ」
「アンタの胸に対する嫌悪感はなんなんだよ!」クワッ!
和泉さんの突っ込みが診察室内に響いた。
お互いの印象
かなた→ユキ
部隊の参謀(&苦労人)ポジになりそう
突っ込み適正◯
赦すまじ(一部を凝視しつつ)
ユキ→かなた
つかみどころがない
油断ならない相手
時々命の危険を感じる