『終わりのセラフ部隊』はカウンセラー(仮名)   作:ハマの珍人

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case3 逢川めぐみ

 唐突だけど、神様っていると思う?

山の神、海の神、冥府の神とか自然(冥府は自然?)に関するものや、戦の神、破壊の神、愛の神などといった物体以外のもの。日本でも付喪神とか物にも宿ると考えられている。

 まぁ、大体は『人の手に負えないもの』を神様に当てはめてるって感じだよね。

 例えば洪水。有名なのは『ノアの方舟』とか。あとは雷。『雷=神鳴』とか……これ、海外で通じるのかな? 日本だと納得出来るだろうけど。

あとは人が突然居なくなることを『神隠し』って言うし。

 なんなら災害を治めるために生贄を差し出したりもしてたし、作物が出来たら神様にお供えする、なんてのは現代でも残ってる風習だ。

 

 こうしてみると、神様ってワガママでどうしようもなく思えてくるね。まぁ、神様がいちいちこちらを考慮するわけないんだけどさ。

実際ギリシャ神話のゼウスとかヘラとか理不尽なくらい傍若無人で好き勝手してるような連中だしね。

大概の神話はゼウスのせいまである。

 

 まぁ、ここまで長々と神様について言ってきたけど、何が言いたいかというと

 

「……」ジー

 

「なんやねん、だんまりこいて」

 

 もし神様が居るとしたら、後頭部引っ付かんで目の前の巨乳(肉塊)にぶつけて凹ませたい衝動に駈られている。

 

 

 

 

「えっと……逢川めぐみさんですね~……ご希望は腫瘍の切除ですかぁ?」

 

「いきなり何言っとんねん」

 

 おっと、つい黒い感情が。

3人目はピンク髪、関西出身、巨乳と属性をおっpゲフンゲフン、いっぱい盛りました! というくらいてんこ盛りの逢川めぐみさん。

先ほどの和泉さんに負けず劣らずの胸部装甲に思わず言葉のメスどころか本物のメスが飛び出しそうになった。

余談だけれど、この場合の『メス』は性別の方じゃなくて、手術道具の方ね。

 そしてその最たる属性がーー

 

「サイキッカー……ですか」

 

 サイキッカー。いわゆる超能力者。メジャーなものだと、念動力(サイコキネシス)瞬間移動(テレポーテーション)精神感応(テレパス)発火能力(パイロキネシス)、サイコメトリーやヒーリングなどの能力がある。

超能力、と呼ばれる前はインドのヨーガ(ヨガ)では『シッディー』、仏教では『神通力』なんて呼ばれていた。

まだ分かっていないことも多く、眉唾物と切り捨てる人もいれば人類の可能性の1つともされている。

 

 ボク自身は超能力とか霊的なものとか一般的に信憑性が薄いものも信じてはいる。ただ、お目にかかる機会はそうそうないのでまだ見たことはないけど。

 

 

「なんや自分、疑ってるんか?」

 

 ボクの態度が気に食わなかったのか、威嚇するかのように敵意むき出しな逢川さん。

 

「あ、いえ。ただ、超能力って見たことがなかったもので……」

 

 

「っかー! この天才サイキッカーの逢川めぐみを知らんとか、人生損しとるで!」

 

「す、すみません……」

 

 大袈裟に嘆く逢川さんに、ボクは謝ることしか出来なかった。

余談だけれど、この人の圧が強すぎてまだ敬語なんだけど……

 

「ま、そんなアンタのためにこんなもんもあるんやが」

 

 と、まるで深夜のショッピング番組か、怪しげな訪問販売の人の常套句を言いながら電子軍人手帳(デンチョ)をスッスッと操作し始める逢川さん。

支給されてまだそんなに時間経ってないのにここまで使いこなすのか……

 そうしてお目当てのものが見つかったのかその画面を私に向ける。

 

「これは?」

 

「某有名動画サイトや!」ドヤッ

 

「いや! デンチョでこんなん見れんの!? 初耳なんだけど!?」

 

 確かにスマホみたいな多機能だとは聞いてはいたけれど、こんなのまで見れるとは……

というか、一応軍人なのにコレ見て大丈夫なのか、上層部……

 

「驚くんはまだ早いで」

 

 そういう逢川さんに促され、視線を彼女のデンチョに戻す。

映っているのは今よりもいささか幼い感じがするが、逢川さんだ。

おそらく小学生高学年くらいだろうか?

もはやこの頃から胸部装甲は存在を主張してるんだけれど……ギルティ。

 と、見るべきところはそこではなくてーー

 

「は?」

 

 思わず目を疑った。

動画の逢川さんは目の前のコップに、まるで占い師が水晶にそうするかのように手を翳すと、コップの中の水が波打ち始めた。

最初は地震かと思ったが、水以外のものは動いてないし、逢川さんも慌てた様子がない。

そうこうしている間に水の波紋は大きくなっていき、真ん中からいくつかの飛沫がまるで意思を持っているように持ち上がった。

 その後はさながら水を注ぐのを逆再生で見るかのようにコップから持ち上がっていく。

 

「逆再生……ではないですね」

 

 画面に映っている時計の秒針は正確に動いているのでそんなことはないようだ。

 

「ふふん、まだ驚くのは早いで」

 

 これでもまだ序の口らしい。

そんな自信満々な逢川さんの発言を裏付けるようにーー

 

「え? これ宇宙空間!?」

 

 今度は吸い上げられた水が、球体になってフワフワと浮遊し始めた。

宇宙ステーションからの中継とかをイメージしてもらうと分かりやすいと思う。

もっとも、浮いているのは水だけで逢川さんや映っている家具なんかは浮いていない。

 そうしているうちに、画面の中の逢川さんは辛くなってきたのか、徐々に手をコップに向けて下ろしていく。

すると、それに従って水の球はコップの中に戻っていき、逢川さんが気を緩めると弾けて元の水に戻った。

 

「スゴいですね……」

 

 何度か繰り返し見せてもらったが、怪しい点は見られなかった。もっとも映像編集に詳しくないからその辺は分からないけど。

例えばこれが個体……例えばみかんとかだとすれば糸で吊るなど古典的な方法を疑ったりもするけど、液体を浮かばせる上に形を変えるとなると方法が思い浮かばない。

 

「ちなみに他に出来ることってあります?」

 

 これを見る限り、逢川さんが使える力がサイコキネシスだということにあたりをつける。

もしそうだとすれば何かしらに使えるかもしれない。キャンサーにサイコキネシスが効くかどうかは分からないけど。

 

(というか事例が無いしね)

 

「せやなぁ……ほな、こんなんどないや?」

 

 そう言って逢川さんはボクを指差す。

 

「痛っ!?」

 

 途端にボクの体に変化が起こる。とはいえそれは目に見える変化ではない。体も何の不自由なく動かせる。

 

(何、今の?)

 

 物体がボク目掛けて飛んできたわけでもないし、傷を負ったわけでもない。強いて言うならーー

 

「バチッと来たやろ?」ドヤッ

 

 静電気のようなものだった。

 

「え、しょうもな……」

 

 思わず本音が漏れたボクを誰が責められようか。

 

「なんやて!?」

 

 逢川さんの機嫌を損ねてしまったようだが、そんなことはどうでもいい。

彼女はボクの期待を裏切ったのだから。

 

「いや、さっきの水の流れなんだからもっとスゴいの期待しちゃうでしょ!」

 

 それこそサイコキネシスで動き止めるとかさ。それだったら或いはキャンサーの動きを止められる可能性もあっただろうに……

 

「それがまさかの静電気って……」ハァー

 

 人間だったら驚いて動きが止まるだろうけど、果たしてキャンサーに効果があるやら……

というか、静電気をアテにするくらいならセラフでぶん殴った方が絶対に早い。

 

「こんのぉ……言わせておけばぁ!」

 

 バチッ

 

「いって!?」ビクッ

 

 先程より強めの痛みが体にはしる。それでも静電気の域を出ないけど。

たかが静電気、されど静電気。威力としてはスタンガンほどでは無いにしても、電気であることに変わりはないわけでーー

 

「ふんっ、そんなヒッ、バカのヒッ、とつ覚えっ、喋ってる途中なんだからやめてくんない!?」

 

 自分の意思とは裏腹に筋肉が反射で収縮してしまう。分かりやすく言えば『体は正直』である。

あと、連続で静電気飛ばすの止めれ! めっちゃイライラする。

 

「弱い犬はよう吠えるなぁ! 悔しかったら何とかしてみぃや」ハァ、ハァ

 

 とは言うものの、逢川さんも息が上がってるんですけどね。

超能力も体力やら精神力やらを消耗するんだろう。

 

「一応軍医だからこんなものもあるんですけどね」チャキッ

 

 そう言って取り出したるはーー

 

「な!? 拳銃!?」ビクッ

 

 サイキッカーとはいえ人間。急に拳銃を向けられればさすがに怯む。

そして、一瞬でも隙があればーー

 

ダンッ!

 

「!?」

 

「これで形勢逆転ですね」

 

 片手で逢川さんの両手を頭上で拘束。ついでに胴体に馬乗りになって胴体も固定。これで彼女は無抵抗。

 

「ちなみにですが……この銃は弾は出ません。プラモデルと言っても過言ではありません」

 

 正確には暴徒鎮圧用の空砲だけれど。

 

「んな!? 麻酔銃と違うんか!?」

 

「マンガ、アニメの見すぎです。そんなもの実際にありませんよ……いや、中国にはあるんだっけ……」

 

 麻酔銃自体は『動物用』のならある。

そもそも麻酔というものはそれ自体が医療行為にあたるので当然免許は必要。

加えてシビアなもので、容量を間違えれば2度と目覚めないこともある。

 さらに言えば個人のアレルギーやら耐性やらもあるわけで、簡単にパァンと撃てば寝る、というものではない。

 かといってキャンサーにブッ放したところで効果なんて見込める保証もない。

試すなら己の命を賭けなければならない『ハイリスク・ローリターン(またはノーリターン)』に投資するくらいならセラフの開発した方が遥かに有益だ。

 

閑話休題

 

「さて、逢川さん。因果応報って知ってます?」

 

「急になんや!? ってか、早よ退かんかい!」

 

 ボクの下にいる逢川さんが抵抗を見せるも、それは微々たるもの。

手は拘束してるし、彼女の胴体はボクが膝で挟んでロックしている。

唯一足は自由なので必死にバタつかせているものの、人間の構造上私に届かない。

ボクが腰を下ろせばそれこそ抵抗出来なくなるだろう。

 

「人にやった行いは、いつしか自分に返ってくるものなんですよ。良くも悪くも、ね」ニヤリ

 

「!?」バタバタ

 

 ボクの顔を見て、身の危険を感じたのか更にもがく。セラフ部隊に選ばれたとはいえ、少し前まで(超能力以外は)普通の女の子。

片や多少なりとも医療を学んで、且つ武術の経験もあるボク

そんな彼女にこの状態から抜け出す術はない。

 

「覚悟は決まりましたか?」

 

「ちょま「あ、答えは聞いてません♪」」

 

ツン

 

「ひゃあっ!?」ビクッ

 

 逢川さんの制止する声を遮り、まずはジャブ代わりに脇腹をつついた。

驚きとくすぐったさから逢川さんは甲高い声をあげる。

 

「あ、いい反応ですね。感度は良好っと」

 

「何をっ! ヒッ!」ビクッ

 

「はい、続けますよ~」ツンツンツン

 

 脇腹から徐々に上に……と見せかけてまた元の位置をつついたり、くすぐったり、脇腹をなぞったりした。

逢川さんはその度に身をよじって逃げようとするも、ボクの両膝でロックしてるから思ったように逃げられない。

あとは手の拘束が緩みそうだけど、少なくとも倍返しくらいはさせてもらわないとね。

 

「ちょ……やめぇ……」ゼェゼェ

 

「さすがにこれ以上はマズいですかねぇ」ウーン

 

 少し調子にのりすぎたかもしれない。逢川さんは息絶え絶えで、涙目になってるし、口の端からわずかに涎が垂れている。

 

 

 

「何をされているんですか?」

 

 

 そろそろ解放しようとした矢先、背後から底冷えがするような声が聞こえる。

恐る恐る振り返るとーー

 

「七瀬さん……」

 

 表情を変えること無く、七瀬さんがこちらを見据えていた。

 

「いつの間にいらしてたんですか??」

 

「先程ノックはしたのですが返事がなかったので。それで、何をされているんですか?」

 

「」スゥーッ

 

 表情や声色こそ変わっていないものの、言外に『言え、言わなきゃコロす、誤魔化してもコロす』という姿勢が見てとれる。

 

(というか、よくよく考えたら現状が現状だしね)

 

 涙目で息絶え絶えのいたいけ(?)な少女に覆い被さって拘束してる軍医(カウンセラー)とか、性別が男なら一発アウトだ。

いや、同性でもどうかと思うけど……

 とりあえず逢川さんを解放して、ボクは直立不動の姿勢をとる。

逢川さんはゆっくりと起き上がると、埃を払ってボクから距離をとった。

 

「で、何をされていたのですか?」

 

 もはや某RPGのように同じ質問を繰り返す七瀬さん。

 

(さて……どう答えたものか……)

 

 さすがに社会的にも現実的にもシにたくはない。正直に答えるつもりではいる。

 

『逢川さんに超能力を見せてくれと頼んだ。しかし、思ったのと違ったので口論になった。そこからじゃれあいに発展してこうなった。彼女を拘束したのは超能力の発動を防ぐためで、彼女をくすぐった結果が現状だ」

 

 口にすればそうなるんだけど、仮にそのまま伝えたら七瀬さんも『何言ってんだ、コイツ』となるに違いない。正直私自身そう思っているのだから。

 

「成る程。とりあえず現状は理解しました」

 

「は?」

 

 何故か思っていただけで伝わってしまったらしい。実は七瀬さんもエスパーなのか?

 

「とりあえず今回の件は司令官に報告します。処遇の方は追って連絡します。今は残りの顔合わせを火急的速やかに終わらせましょう。逢川さんは退室して構いません。お疲れ様でした」

 

 逢川さんが戸惑いながらも退室していき、七瀬さんとボクだけが残る形になる。

 

「ここから先は私も監視として同席します。異論はありませんね?」

 

「……はい」

 

 おそらくこの選択肢も『はい』か『YES』しかないのだろう。

 

「それと、先程のように思ったことを口に出さないように気をつけてください」

 

「え? 出てました?」

 

 ボクの疑問に、七瀬さんはため息をついた。

 

「小縁さんが優秀なのは分かってますが、少し不安になりました」

 

「え? ボク優秀って褒められた? やった~!」ワーイ

 

「……前言撤回します」

 

「なんでぇ!?」

 

「次の方、どうぞ」

 

 ボクの疑問を無視して、七瀬さんはドアを開けて次の方を呼び出すのだった。

 

 

※お互いの印象

かなた→めぐみ

打ち解けられなかった(自業自得の部分あり)

超能力はもう少し確認の余地あり?

 

めぐみ→かなた

いけ好かない奴

叶うことなら関わりたくないが、いつか鼻を明かしてやろうと思う

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