帰還者、異世界を歩む   作:〇坊主

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ティオいいよね。そんな気持ちでこの小説を書いてました。
ちなみに失踪します(予約)


ありふれ① 序章、異物

異世界に行く。

そんな不思議な出来事なんて事は物語の中ではそう珍しいことではなくなってきている。

たがしかし、実際に行ったことがある。または連れていかれたことがある。

そんな絵空事のような出来事を実際に経験した事がある人物は早々居ないと思う。

 

「みんな教室から出―――」

 

最も今回の様な陣を用いた召喚に対して反応が遅れたことに対する言い訳にもなりはしない。

そもそも先に述べたような経験を実際に体験しているからこそ、この事態には即座に対応できなければならなかった。

 

教室の床全体に浮かび上がる魔術。

爆発するような攻撃的な魔術陣ではなかったものの、そのままされるがままに受け入れた場合のリスクは極めて高い。

故にこの件は全面的に自分への非があったと言っていい。

ちなみに反応できなかった理由は地球での瞬間移動実験とその移動先の座標固定に用意した記録媒体を隠れ家に作り込んでいたせいで、朝のHR(ホームルーム)で爆睡をかましていたことで反応出来なかったという情け極まりないものであった。

全く…師匠にこの件がバレたらなんて言われるやら…

 

「ようこそ『トータス』へ勇者の皆様。お待ちしておりました」

 

これは後で周囲の映像を録画していたのを見直していたからわかったが、召喚された先には権威がありそうな格好をしているおじさんとその側近たち。

なぜ今回クラスメイトたちを召喚するに至ったのかの経緯や崇高な目的が云々、色々有難いお話をしていたのだが、誰一人眠りこけている俺に気づくような事もなかった。

 

教師にとやかく言われないように己に認識阻害と防音の結界を貼っていたおかげであったのだが、目を覚ました時は周囲には誰一人おらずに召喚陣跡を一人で独占していた。

後に抜け出して確認した結果生徒たちには一人一人部屋を割り当てられていたようで、認識されていなかった俺は部屋が割り当てられることが無いままになってしまった悲しい現実が待ち受けていたのだが、悲観よりも安堵の気持ちが先に来る。

これから行動を起こすにあたって機密が漏れないように独自に隠れ家を用意できた方が逆に都合が良かったのもまた事実だった。

最初から存在を認識されていないのであれば、施設内に姿が確認できなかったとしても全く問題のないこと。

 

さて…まずはどのような世界に飛ばされたのやら…。

歴史や思考回路、世界の常識や危険な行為等々は早々に理解しておいた方がいい。

 

そんな風に思考回路を動かしながら行動を開始する。

わざわざ地球へ帰った来た後に基礎知識に齟齬がないか確認するためだけに、魔法で姿を変えて高校生活を始めている身。なんら問題はない。

知らぬ土地で不安を抱いている子供達(生徒達)には悪いが、ちょっとだけお節介をかけた後自由行動をさせて貰おう。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「へぇ…これが“ステータスプレート”か…」

「はい。こちらに一滴だけ血液を垂らしていただければこちらの“アーティファクト”に貴方のステータスが表示されますので、そのままこちらに開示してくだされば冒険者ギルドに登録が完了します」

 

そうして行動を起こしてすぐ、情報を収集整理した後に向かった場所は冒険者ギルドであった。

理由は色々あるが、第一目的は受付嬢が話した“ステータスプレート”である。

こちらは原理は分かっていないらしいのだが、血を媒介にして対象の情報を記入する記録する便利な道具であり、身分証明書になるという貴重品。普通に購入しようとすると相応の値段を要求されてしまうため、ギルドへ申請を行いに来たということである。どの世界でも身分を証明する物は持っていて損はない。

それも冒険者登録を行えば最初の任務や配慮諸々あるのだが、それらを加味しても実質無料でいただけるとあっては登録をしない理由が無いというもの。

 

「ほうほう…だから一緒にちっちゃい針も渡されたのか…ちなみに俺みたいな新人は平均どれぐらいなんですかね?」

「トータスの人間平均数値ですと平均が10となります。ただ元々武芸を嗜んでいる者や恵まれた才を有する方はこの平均から大きく離れますので、参考になされてください」

「ありがとうございます。とても分かりやすかったです」

 

そうして受け取ったプレートに早速一滴。

小さな針がつけた小さな傷口から血が垂れ、プレートへと落ちる。

何かしらの魔術式なのか、プレートに魔法陣が浮かび上がってそのまま自分のステータスを数値化し…

 

(やっべ)

「無事に表示されましたでしょうか?」

「え、えぇ。無事に表示されました」

 

少し数値を確認していると受付嬢から声がかかる。

最初とあって多少の時間は仕方ないが、彼女たちにも仕事がある。これ以上待たせるのも失礼だ。

他人が勝手に見てきたときのために、己のプレートにちょちょっと細工を施して受付嬢へと見せた。

 

「では拝見させていただきます…天職は魔導士…魔導士ですか?」

「…?なにかおかしいところが…?」

 

多少の細工をさせてもらったが何かおかしなところがあったのだろうか?

 

「はい…。普通であれば炎術師や土術師といった自信が得意とする属性が表記されるのですが…もしかして貴重な複数の属性を…?少々お待ちください!」

「あ、はい」

 

突然立ち上がった受付嬢はそのまま奥へ駆けて行ってしまった。

もうちょっと情報を集めてから来るべきだったか?と考えもしたが、後悔しても仕方ない。色々集めた情報を整理する。

 

 

この世界はトータスと呼ばれる世界であり、この国の名前はハイリヒ王国という。

他にも帝国などがあるらしいが割愛。

 

大きく3つの種族がこの世界にはいる。

北の一帯に“人間族”

南の一帯に“魔人族”

東の巨大な樹海に“亜人族”

 

人間族と魔人族の争いが何百年と続いていたがここ数十年大きな衝突はなかった。

しかし魔人族が“魔物”を使役するようになってから戦況が大きく変わっていき、人間族の滅亡を悟った神様が異世界から“神の使途”を呼ぶことになっていた。

王国内でも噂が広まっており、どんな人物なのか、どんな戦闘力を有しているのかが期待されている。

 

人間族の平均的な数値は10。

天職もあることがちょっと珍しいものであり、自分が細工した魔導士すらもちょっとしたレアな職かもしれない…

人間が平均10で戦えていたのなら、魔人族の平均は低いのだろうか…?

いや平均が10というだけで鍛え方次第では100以上、否もっと上になることが可能だろう…

 

「『バロールの魔眼』起動……うん、大体同じぐらい…か」

 

師匠(マーリン)に頼んで作り方を教えてもらった『バロールの魔眼』が映し出した周辺にいる冒険者の闘級は大体合計50~300までを示している。

平均数値と闘級の値がもしも同じぐらいなのであれば、大体のレベルが想定できる。

 

(リオネス王国の聖騎士になるための最低基準が大体300だったっけ…)

 

で、あるならば一般冒険者は大した相手ではないが…

 

ちなみに手元の“ステータスプレート”では能力を6つに分けて表示している。

(筋力、体力、耐性、敏捷、魔力、魔耐)

 

対して今使用した『バロールの魔眼』は3つの合計を闘級とする。

(魔力、武力、気力)

 

これらの合計数値が多少のズレはあれど、大体一致していることを考えると、本当の意味であちらの魔神族と女神族の闘級の高さが本当に頭一つ以上抜けていることがわかる。

彼らの誰か一人でもこちらに来れば即世界を支配できるといってもいいだろう。

まぁ名の通り神の種族を担う者達があくまでも魔人に負けては形無しであろうから当然と言えば当然かもしれない。

 

(あの時に測れた中で一番大きい闘級数値が女神族<四大天使>長 リュドシエルが闘級20万1000…魔神族最上位魔神であるチャンドラーが闘級17万3000だったか…)

 

最も闘級とはあくまで数値化しているだけであって、この数値よりも低くても倒すことが可能ではある。

師である【七つの大罪】の一柱 マーリンがその最たる例。

彼女は闘級はそこまでではない。

数値化するなら4710(魔力3540/武力70/気力1100)程しかなかった彼女は平然と魔神族最上位を手玉に取り、最終的には仕留める直前まで至っている。

 

(どちらにしても警戒して越したことはない。自分の警戒範囲では不審な動きをする奴らはいないし、こちらを監視している奴もいない。今感じる視線は…まぁ新米冒険者を酒の肴にでもして飲んでる酔っ払い達ってところか)

 

周囲を軽く見渡すが食事を楽しむもの、こちらを興味深そうに眺めるもの、クエストが貼られているボードを見つめているもの多くいるがこちらに危害を加えようという意志を持つ者はいなかった。

今後は適宜認識阻害の魔法をかけてこちらに来ることにしようと決めた。

 

「すいませんお待たせしました!――――様どうぞこちらへ」

 

なおわざわざ呼ばれて案内された先で話した会話は彼にとって、たわいない話であったことをここに記しておく。

 

 

 

 

もう理解しているだろうが、彼は別世界から帰還した存在である。

青い惑星と言われている水の星 地球。

地球に存在する国家の一つである日本にある出版社で連載されていた作品『七つの大罪』の世界を経験している存在だ。

 

彼がその世界に足を踏み入れたのは唐突な出来事だった。

気が付けばあたり一面は火の海で、木々は燃え続け、大地は割れる。

かつては数多くの命を有していたであろう川には一兵卒と思われる女神族と魔神族らが絶命し、そのまま捨てられていた。

時間が経てばちょっとずつではあるが自然消滅していっていたのだが、周辺を取り巻く焼け焦げた肉の匂いと吐き捨てられた血が充満し、濃密な魔力地帯となって分解が遅れていたのかはわからない。

ただ彼にとってその世界に来て最も不幸であり、最も幸運だったのは、食料として用いることができるそれら(・・・)があったことだろう。

 

もし他に食すものがあればそちらに手がのびていたであろうが、それでは今日(こんにち)まで生き残れなかった確信がある。

もとより魔力の「ま」の字もなかった存在が、魔法――『魔力』――を扱えるようになるまで、相応の対価や手段があるというもの。

が、この世界でのトップ層を鎬を削れるほどにまで成長できるとすれば、極めて限られた方法しかなかいのだ。

 

彼は喰らった。

最初は死なないためという免罪符を掲げて。

渇きを潤せるものがそれしかなかったからとトマト色をした肉を口にした瞬間、心臓が身体から突き破り走り出すのではないかと思うほどの衝撃を一身に受けた。

どうにかせねばと人に酷似したモノに手を伸ばした。

これに関しては直感だった。理屈なんてものじゃない。

己にはどちらも喰らう必要があったのだと。

 

「ぐ…ググ…グがぁァァァァァああああ!!!???!」

 

咀嚼して飲み込んだ瞬間、一度気を失う。

そんなことがあったものの命を繋ぎとめた。

たがやはり時間が経てばまた腹は減るもの。

そうすればまだ燃え残るモノは喰らい、再び衝撃に襲われ気を失う。

 

そんな生活を続けて気づいた。

いろんなものを喰らって、受ける衝撃に身体が耐えれるようになってきた。

そして己の身体から発せられるものが見えるようになった。

時が経って師となるマーリンに会い、それが『魔力』であると知るまで、なんとなくでそのモノの操作を練習しながら、只々歩いた。

 

髪や髭が伸びながら、洗えない状況で汗や油で全身が汚れていく中で、試行錯誤を繰り返す。

ある時気づいた。己に宿るナニカ。

これを脳内でナニカに役割を持たせられることに気づいた。

 

例えるなら原子と分子。

水素原子と酸素原子がくっつくことで水分子になるように、己のナニカを一つの原子の球として役割を持たせることで似たような結果を生み出すことが可能になった。

 

勿論原理なんてわからない。

脳内でナニカに先ほど例えたように、水分の役割と酸素の役割と分けて練る様に意識したら手元に水が生まれたのだ。

流石にこの時生まれた貴重な水分に感極まり、感謝の涙を流したものだ。

 

水を得ることができればそこからは実験と練習の繰り返し。

時間は沢山あったのもあるが、他にやれることが無かったというのもある。

水量を多く増やせないか。火を起こして熱湯を生み出せないか。土を持ち上げ簡易拠点を作れないか。風を呼び移動距離を伸ばせないか。

頭で思い浮かんだことを実施しては練りあげて切り替え、他にできることがないかを探す日々。

 

そうして日が経ち、一面を彩っていた各々の血肉が消えて新たな命が芽吹いてくる頃になって自分の身体に起きた変化に気づけたよ

環境の空気か、食したモノによる作用か。

身体と顔。具体的にいえば眼と心臓部分が明らかに人の肉ではない物質ができていた。

語ると長くなるが師匠曰く、貴重な実験動物として解剖したかったらしい。恐ろしすぎる話である。

最もあの幼女(・・)は人が寝ている間にも勝手に弄っていそうでありそうなのが事実恐ろしい。

 

 

 

 

 

 

「さって…二つポータルの設置は完了。相互拠点作成成功して異常も今のところは無し。妨害も特になかった…か」

 

そんな回想を終えれば場所は変わって地球である。

学生達が転移してからまだ初日の出来事。

ギルドでのやり取りなどはあったものの、それらを終えて日が落ちるまで自由時間となった彼は地球へと帰還に成功していた。

普通であれば他の世界に行くのは大博打であるのだが、彼は『七つの大罪』世界からこの地球側にやってきている。

すでにある程度の空間移動が確立できていた。

 

最も辿り着けたのは隠れ家に設置している莫大な魔力をため込んだ宝玉のおかげだ。

台座ごと護るように結界を張っているが、彼はどの場所にいてもその宝玉に魔力パスを通じてアクセスできる。

ゆえに大罪世界と地球に事前に宝玉を設置し、空間移動の座標を固定していたのだ。

 

(警戒してなかったのか…?いや普通は警戒しないか。呼んできたのがただの一般学生達だ。空間移動ができる奴がいるなんて例外もいいところか)

 

彼は余りにも妨害が無かったことが気になったが、冷静に状況把握して納得させる。

だが警戒に越したことはないので、これから防衛装置を増やすことを決定した。

 

彼が行った惑星間移動に用いられる魔力消費は4割と言ったところ。

これであれば往復もある程度可能だと判断する。

人気のないこの場所の拠点は富士の樹海の中に作らせた天然の迷宮エリア。

人の手があまり入っていないのもあるが、基本立ち入る者も少ないため人除け・認識阻害の結界と防衛用の自動機構を作っているため、彼にとっては人目を気にせずに作業研究を行える絶好の場所であった。

 

「この場所なら大人数を一度に連れてきても人目に映ることはないだろう…。えー…回復薬(ポーション)類はどこにしまったかな…」

 

突然連れてこられたため手持ちが少なかったのが不安材料だったが、一度拠点に来れればもう安心。

己の空間倉庫へ色々詰め込んでひと眠りで魔力を戻せば準備完了だ。

 

「さて…面倒ごとに巻き込んでくれた分を、エヒトとやらにしっかりお礼を言いに行かないとな」

 

ちょっかいをかけてきた相手には相応の礼を返す。

それが彼のポリシーである。

今後の行動をシュミレーションしながら、彼の意識はそのままゆっくりと落ちたのだった。

 

 

 

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