感想を下さった皆様ありがとうございます
この話ではオリキャラの登場です
能力値の話は完全に独自設定ですのでご容赦を
「どうするの南雲くん…?」
「正直、すぐに帰りたい気持ちはある」
衝撃的な事実を突きつけられた生徒達は回答は後日聞くこととなり解散した。
普通であればありえない。
だが目の前で空間を開けて自分たちの見慣れた学校が映し出されれば否応なしに認めざるを得ないというもの。
すぐにでも帰りたい生徒たちもいる中で、なぜ誰一人帰らずに解散したのか。
それは彼が今帰った際に起きる問題をあげたからだった。
一.特定の人物のみが帰還した場合、確実に数か月はメディアの都合の良い飯の種にされること
一.他に帰って来ていないのか、生徒関係者が確実に関わってくることもあり、自由に外へ出ることもできない可能性がある。
一.これが最も厄介だが、帰還したことがエヒト神とやらにバレた場合、呼び戻される可能性があること。
最も面倒になるのは三つ目。
強制的に呼び戻された場合、それこそ二度と戻れないように境界を繋げれなくなる可能性があること。
ゆえに帰還する際に地球へ繋げるのは大多数が集まった時だけ。
呼び戻された際は流石に彼もどうすることもできない可能性があることを言われてしまえば自分だけ帰りますとは言えない。
なお一度万部は地球に帰還していることは誰にも察されていない。
というより一緒にトータスへ来てたんだと改めて認識されたのであった。
ゆえに今回の『オルクス大迷宮』の実践訓練を経てから、今後どうするのかを呼ばれた生徒達だけで話合うことになっている。
だがここで疑問が浮かぶのは彼らに呼ばれていない生徒達だ。
愛子先生が確認した疑問に万部は…
「ん…あいつら?当然放置するに決まってるでしょ」
あっけらかんと言い放った。
絶句する先生に追撃の言葉。
「あの小悪党組は正直地球に戻したって問題行為しか起こさねぇ。普段の態度見てりゃわかる。なら死んだ扱いとしてこの世界で頑張ってもらったほうがこの国のためになるだろ。実際あいつらゲーム感覚でこの世界を楽しんでるんだから互いにwinwinだな」
「あ…天之河君たちは…」
「坂上とかは自ら戦うことを宣言したんだろ?だったらやらせてやればいい。余計な雑念があるとそれこそ危険だ。他の戦う意志を自ら言い出したやつらもな」
「…わ、私は…」
平然と見限る発言をした万部に、ならばなんで私がこの場に呼ばれたのかと問う生徒が一人。
天職は剣士で天之河や坂上と共に戦うことを言い出した一人だ。
長髪をポニーテールにしている172cmの高身長が魅力的な美少女でもある。
今の理屈であるならば自分がこの場にいるのがおかしいと暗に伝える。
「お前はただただその場に流されただけだろ。天之河の傍でいつも周囲にフォローをしていたお前なら、アイツが参戦表明した時点で尻拭いのために戦うことを希望したってことは大体想像がつく。だからこそ今回はチャンスと思えばいい。
「待ちなさい!天之河君はどうなるんです!?」
「アイツだけは何があっても俺は生きて地球に帰すつもりはない」
断言。
それは完全な拒絶であった。
「ど…どうして…」
殺していいなら地球に帰す。
そんな言い分に何度目かわからない絶句をしながら愛子先生はなぜかを問う。
生徒の普段見せる授業態度は愛子も理解している。
確かに小悪党組と言われる彼らは素行も悪かったが、天之河は別だ。
授業態度もしっかりしてるし、普段から周囲の者たちから慕われているリーダー的存在。
なぜここまで万部が天之河をここまで言うのか理解できなかった。
「簡単なことだよ」
ゆえに彼女は彼の真意をこれからも理解できないだろう。
「俺が最も嫌いな考えを持っているからだよ」
◇
「ここが『オルクス大迷宮』…なんだかお祭り会場みたいだ…」
先日のやり取りがあってから“神の使途”たる召喚されたクラスメイト達は実践訓練を行う大迷宮へと赴いていた。
ただ迷宮と聞いて想像していた場所とは違っていた影響か、ハジメはそんな感想をつぶやく。
確かに大迷宮というほどなのだから、結構な秘境にあって道のりが厳しいものと想像していたものがしっかりと舗装された道があり、その過程で屋台や宿泊施設などもあればそのような感想も出てくるというもの。
『オルクス大迷宮』は危険極まりない迷宮ではあるもの、自分の実力を高める場所としてはうってつけであるし、何より時折貴重な鉱石やアーティファクトが出土する可能性も有していると考えればこのように設備を十分に備えて一つの観光資源として扱ってしまったほうが効率的ではあるのだろう。
現に明らかに力自慢や受付を行う者達の和気藹々とした場面も見受けられる。
「よーし、お前らそろそろ中に入るから準備整えておけよ」
大迷宮を初めて見たことで騒がしくなっているところに声をかける男。
彼はメルド・ロギンス。ハイリヒ王国の騎士団団長である。
王国最強と謡われる実力者であり、ステータスが低く「無能」のレッテルが貼られていたハジメに対しても熱心に教育してくれた人格者である。
それ以外にもハイリヒ王国が所持する騎士団団員らが数多く護衛についてくれているため、ハジメ達が大迷宮へ足を踏み入れる人員としてはかなりの大所帯になっていた。
特に問題が起こらずそのまま大迷宮へ足を踏み入れた一向は、1階層の魔物たちと肩慣らしに戦闘を行いつつ、魔石の回収や鉱石の種類、魔物の特徴や習性などを教えてもらっていた。
と言っても最初から実戦ではなく、騎士団らが弱らせた魔物を仕留めるところから始まったのだが、昨日集まった生徒でも一部は多少顔色を悪くする。
今はまだいいが“魔人族”と戦うことを今後の課題する自分たちは、己の意思で決断をしておかなければならない。
地球の、それも平和を謳歌している日本に住む自分たちでは経験などできるはずもない戦闘経験。
命の大切さを学ぶ場としても、科学世界の住人としての魔法を操れる極めて貴重な機会と見ても、今回のトータス召喚問題は悩ましいメリットとデメリットを抱えていた。
だが彼が言い放った一言が、彼ら生徒達の選択に大きな影響を与えているのは間違いない。
『折角の魔法を学び、扱える貴重な機会だ。もしかしたら…いや、もしかしなくてもここで学んだ知識と技術は丸々地球で使えるだろう。人生に一回あるか無いかの大チャンス。先ほどサインしてもらった契約で、確約するがお前らは死にさえしなければ地球へ帰す。どちらの選択をしたとしてもな。なら経験できるときに経験したほうが後悔はしないと思うぞ。まぁ死ぬ可能性は当然あるからそこは自己責任だが』
確かに今回のはほぼ事故のようなものだ。
だけどそれ以上に僕たちにとっても貴重な機会であることは間違いないのだ。
ハジメも将来ゲームクリエイターの一員として父親が運営する会社で働こうと考えていた。
ならば今回の経験はまさに今後のハジメの人生に大きく活用できるだろう。
「でも万部くんは私たちと一緒に迷宮には来なかったね」
「うん。まさか冒険者ギルドに登録してるとは…」
万部はハジメ達と合流して大迷宮に挑むのではなく、冒険者として別行動をとっていた。
彼曰く早急にハイリヒ王国以外の周辺事情の把握と基本知識の収集にプラスして観光がてら動き回るらしい。
この2週間もの間に独自にそこまで動いていたのもだが、彼は協会から完全に存在しないものらしい。
最初は偶然だが、最近はあえて協会側に姿を見せないように行動を起こしているとのことで、自分の存在も教会関係者には決して語らないように念を押されている。
教会の人間とエヒト神と呼ばれる存在はハジメも信用できないものとみているため納得済みだ。
「――――――…?」
そんな中でなにか視線を感じたのだが、周囲は木々が群生している風景しかない。
こちらを見ている冒険者たちもいるがそれはクラスメイト+メルド率いる騎士団という大人数で来ているためであって、決してハジメ個人を見ているようなものではなかった。
「どうしたの?」
「いや…気のせい…かな。なんか見られていたような気がして…」
白崎の問いにそう返すものの、小さな不気味さをぬぐい切れなかった。
「団長!準備が完了しました!」
「おう!んじゃお前ら!今から気を緩めるなよ。ここから先は魔物が出現する。不意をつかれねぇ様にしろよ」
『 はい! 』
そうして彼らはオルクス大迷宮へと足を踏み入れる。
この遠征において、各々の認識の甘さと現実の厳しさを受けて死亡扱いを受ける生徒が出ることなど、今の彼らは考えもしなかったのであった。
◇
「…行ったか」
彼らが全員迷宮内へ入ったのを確認していた者が空にいた。
先ほど軽く話題に上がった
前日に彼らに集会を開いた後に全員に落ち着かせる効果と今回の遠征に対して前向きになる効果を持たせた暗示をかけておいたのだが、それが功を奏したのだろう。
そもそも“魔人族”が王国内にいるだけで本来はOUTなのだ。
捕まえていたやつがどういった経緯で捕まえていたのかなど聞かれたら面倒この上ない。
特に生徒達を思う気持ちは本物である愛子先生であれば何も対策を取っていなければ確実に答えるまで説教へと会話がシフトしていただろう。
(なんだかんだで勢い?に呑まれちまうんだよな…口論においては“あっち”の世界でも十分通じる気がする)
あの小ささから想像もつかない勢いと気迫に押されてしまうのは、大罪世界でもあまり経験したことがないものだった。
現に地球にて居眠りをしてた際に説教を食らったことで認識阻害をかけ始めたこともあるのだ。
彼女より年上で、さまざまな経験を経ている彼であっても受けたくないものは極力受けたくないらしい。
ちなみに年上というのは彼が大罪世界において“女神族”と“魔神族”による三千年前の戦争から魔神王との決戦までを間接的ではあるが経験しているためであり、地球に帰還した後にわざわざ姿を変えて高校生活を始めていたのは世間の一般常識と地球世界の知識を再度理解するためであった。
記すと長くなるためその話は後程とさせてもらうこととする。
「むぐぅ…」
「さて…こいつはどうするべきか…」
脇に抱えている存在は前回生徒達にお披露目した魔人族である。
魔人族の彼女は怨みがましくこちらをにらみつけてきているが、完全に拘束しておりしゃべることも許可しなければ口元の拘束具も取れない仕様。
暴れないように魔力吸収装置をくっつけて魔力電池への充電にも充てているため、このまま手元に置いておいてもいいのではあるが流石にお荷物になるのが現状だ。
(護衛対象を狙った経緯は大体読み取らせてもらったし、向こうへ帰して全然問題はないんだけど…実験に活用しても良さそうではある)
色々と使いたい術もあるためかそういった考えも出てきたが、頭の片隅に追いやった。
それはこのような最初の段階では早い。
彼自身、魔人族だから敵対する、といった思考ではないためである。
人間であっても、魔人族であっても、はたまた亜人族であっても一様に同じ対応を取り、義には義で返すと決めている。
敵であれば相応の準備を行うものの、彼女は敵対というより
ちなみに安定の『バロールの魔眼』による鑑定によれば【闘級】は155。
内訳は
【魔力】50
【武力】25
【気力】80
といったところか。
ステータスプレートでいう6つの性能。
【魔力】は魔力と魔耐
【武力】は筋力と俊敏
【気力】は体力と耐性
これらに振り分けられているのではないかと考えている。
大罪世界の下級魔神の中でも一番弱い
人間族の初期平均数値と比較しても、魔人族の中でも大分下位の存在なのではないだろうか?
「ずっと呻かれるのもあれだし…口だけは解除しておくか。もうしゃべっていいぞ」
「くっ…私をどうするつもりだ人間めが!」
「どうしようか悩んでいる最中」
口を開くとそう聞いてくる魔人族であるが、その扱いに関して悩んでいるためその通りに伝えた。
記憶をいじったところで自分の
実験台にするのも候補なのだが、先ほど述べたように魔人族に深い恨みがあるわけでもなく、それで実験台にするというのは流石に人の心を失いすぎているというもの。
…まぁすでに人ではないのであるが。
「そういえば聞いてなかったから、聞いておく。俺の名前は
「……そんなもの聞いてどうする。なぜ殺さない」
「場合によっては殺すかもだが、今のところは敵対する気はないから。名前を聞いたのもずっとお前呼ばわりは嫌でしょ?だから聞いた。名前はなんていうんだ?」
「―――……セレナよ」
「セレナか。一つ聞きたいんだが、このまま魔族領へ帰ったとして、セレナはどんな扱いになるんだ?」
辰巳の問いに答えたセレナ。
対人関係が一歩前進したことにひとまず安堵した辰巳はそのまま次の問いに答えた。
場合によってはこのまま帰す選択も取れたのであるが、
「そんなものはないわ」
彼女は眼下にある『オルクス大迷宮』を見下ろしながらそう呟いた。
そんな彼女を見た辰巳はある考えが浮かぶ。
「私のような魔人族は下も下…。任務に失敗した以上、すでに死んでる扱いよ。帰ったところで相応の扱いなんて受けないわ」
「流石にそりゃ行き過ぎてないか?いくら魔人族でも貴重な人材だろう?なんで切り捨てるような方針を取ってるんだ」
「知らないわよそんなの。アルヴ神の教えなんじゃないの?」
自分の居場所はもう存在しない。
そう伝えるセレナの口から気になる単語がでてきた。
「アルヴ神?エヒト神と似たような存在か?」
「そっちは人間が信仰してるやつでしょ。魔人族は“アルヴ神”とやらを大多数が信仰してるの。選民思想を持った者のほぼすべてが信仰者ってレベル」
「結構他人事のように言うんだな。セレナは信仰してないのか?」
「信仰して、腹が膨れるのかって話よ。私のような下の存在が許されてるのも魔人族だからって話。どっちが勝ってても下位の存在には変わらない環境ってだけ」
「ほーん…」
顎に右手を添えて考える。
辰巳は大体は一人で行動してやりくりするタイプであるが、人手の重要さはしっかりと理解している。
ゆえにセレナが置かれている環境は彼にとってある意味で理想的であり、悪く言えばとても都合の良い存在だった。
「ならばさ、俺と共に色々行動してみないか?」
「は?何を言ってるのアンタ…」
提案に対して意味が分からないという表情のセレナ。
まぁこの反応は分かっていた。故に
「俺はこの世界に来てたったの二週間程でな。色々と調べているとは言っても全然世界を知らないんだ。だからセレナの感性や考えも貴重なものでね。一人旅も悪くないけど、共に行ける仲間的な存在もありがたいのさ」
「それにわざわざ私を選ぶの…?アンタ、人間なのに一緒に旅する相手がいないってわけ?」
「やめてくれ。その言葉は俺に効く…やめてくれ」
その言葉は、辰巳の心を傷つけた。
シンプルに投げつけられた言葉の刃で初ダメージを食らいながらも彼女に語り掛ける。
仕方ないことではあるが、明らかに疑ってかかっている様子だ。
「私の環境を聞いて同情したって訳?慰めものにでもする気?」
「いや、ただ単純に互いにメリットがあるってだけだ。俺はエヒトやらアルヴやらの神は信仰してないんでね、信仰者じゃない相手を選びたかった。それに人間魔人どちらにも怨みや思い入れがないのなら、動きやすいってのもある」
「…それで私のメリットって何よ?」
「俺がセレナ…お前を鍛えあげる」
「はぁ?」
露骨に馬鹿にするような表情を見せてはいるが、嫌悪の表情はしていない。
セレナ自身は少し投げやりになっているところもあるかもしれないが、貴重な魔人領の人材だ。ここで手放す気にはなれなかった。
「簡単なことを言えば強くなって、他の魔人と相応以上に戦えるようにするのを条件に提示しよう。それなら仮に別れることになっても十分すぎるメリットにならないか?」
「アンタが私を?冗談も大概にしてくれない?私みたいな雑魚は相応の対処がとれるようだけど、他の魔人族にも勝てるって言いたいわけ?」
「あぁ、勝てる。…多分ね」
「…っ!」
セレナが言い放った言葉に即答する。
彼女が言う魔人がどのレベルなのかはわからないが、辰巳自身それこそ<四大天使長>や〈最上位魔神族〉でない限りはある程度やりあえる自負があった。
「嘘よ」
そんな辰巳を信じきれないのか、セレナは下唇を噛みしめながら否定した。
彼女自身、これまでの人生で思う所が多々あった。
勧誘されるようなことを今まで受けてこなかったのかもしれない。
否定した言葉は少し震えていた。
「嘘じゃないさ」
「信用できないわ…」
「なら信用に足り得る証拠を提示するだけさ」
彼女を脇に抱えたまま、辰巳は移動を開始する。
目的地は人間と魔人族であってもそこまで向かわないであろう魔物が多くいる未開の大地――“北の山脈地帯”である。