貴重な原作死亡キャラ生存ルート
「え…えぇ…な、なんでこの場所に…!?」
「おぉ…すごくかっこいいな…」
【七つの大罪】の世界を生き延びて地球へと帰還した男
規則正しい食事と適度な修行(辰巳視点)によりメキメキとセレナの実力が伸びていく。
暗殺ならともかく真正面からの本格戦闘経験は少ないだろうが、実力が一定以下の相手であれば一人であっても多人数戦闘はこなせそうである。
魔術を用いて衣類もある程度操作できるように自分から独自の特訓も行っている様子で、気づいたら衣類がクラシックタイプのメイド服に改良を加えた形になっていた。
本来ならロングスカートタイプなのだが、戦闘面を考慮してか左側に大きくスリットが入っていることで綺麗なおみ足がのぞく形になっている。
彼女曰く見られてもいいように中はスパッツらしい。この世界にもあるようだ。
なおこれに関しては辰巳が思わず脚をガン見してたらセレナから伝えてきたものだということを記しておく。
辰巳自身もただただセレナとの修行に付き合っているわけではなく、己の技量をあげるべく魔力を一から練り上げて即座に魔術を発動する基礎訓練を手が空けば行っている。
まともに魔力を操れるようになって
最も魔術だけでなく近接戦闘や道具作成なども並行して行っているため、のめり込む時間は限られているので成長速度はまずまずといったところか。
最近は別の技法を知ったため、それも含めて練習中なのである。
そんな成長を続ける彼らの眼前には大きな体躯をした一匹の竜がいる。
好意的に接する。なんてことはなく、明らかに敵意をもって彼らと相対しているのは他者から見ても明らかだったであろう。
だが相対している二人…厳密にいえば一人はずいぶんとのんきな感想を述べていた。
「に…逃げるんだ君たち!」
「あの竜は我々を狙っているんだ!離れないと巻き込まれるぞ!!」
辰巳達の背後から叫ぶ声がする。
彼らは護衛を任された冒険者であろう。
一番後列にいる男を庇うようにして隊列を組んでいるため、彼の護衛を任された小隊と言ったところだろうか。
自分たちが襲われているというのに、部外者である自分たちを見殺しにする選択肢は彼らには無さそうである。
護衛対象と共に走りながら逃げている冒険者達もだが、
そのまっすぐな想いと姿勢に好感を持った。
辰巳は
後方には今にも目に映る物全てを破壊しつくさんと言わんばかりの熱量を有したエネルギーをため込む一匹の竜。
「危ない!後ろだァ!」
「大丈夫だ。“
山を吹き飛ばさんとする轟砲が放たれると同時。辰巳は即座に魔術を構築して起動する。
選んだ魔術はリオネス王国の聖騎士内でも護りに長けた力有した男の魔力。
本人曰く降り注ぐ星屑であっても破壊不可能である協力な魔法障壁。それを後方の人間を含めて護るために範囲を広げて展開した。
半透明のバリアが大きく張られるその様は、まさに城を護る城壁の如し。
「な…なんだこの莫大な魔力は…!!」
「まだだ!次の攻撃がくるぞ!」
放たれた強力なブレスと防壁がぶつかり合い、激しく轟音を鳴らす。
防壁で護られている彼らは無事にやり過ごすことができているが、攻撃の余波によって周囲の木々が吹き飛び、地面が勢いよく抉れている光景を目の前で見せられた冒険者達は、自分たちが仮に被弾した場合の悲惨な死を明確に脳内で理解できた。
そんな砲撃すらも護りぬいてしまうほどの防御魔法を有した彼は一体何者なのか。
そんな考えが口から出てしまうのも仕方がないと言える。
「…連発してくるか」
「ガアアアアアアアァァァァアア!!」
撃ち終えたと思った数舜後に追撃のブレス。
一般的な冒険者であればすぐにその身を蒸発させていただろうが、生憎その場にいる男は只の冒険者では断じてない。
正面から突破して来ようとするブレスをそのまま受け止めて防ぎ切った。
「だ、大丈夫ですか主様!」
「問題ない。セレナは後ろの冒険者一行を一か所に集めててくれないか?散らばられると流石に護りにくい」
「わかりました!」
言葉を受けてすぐにまとまるように促すセレナに感謝しつつ、辰巳は冷静にブレスを吐き続ける竜を見据えた。
(…後方の冒険者たちを殺すとしても明らかに様子がおかしいな。妨害している俺を見てない…洗脳か、操られているか…)
観察すれば竜の瞳の奥から薄暗い魔力を感じ取ったため、それが原因だと判断する。
その後はすぐに見切りをつけて行動するために魔力を練り上げた。
魔神族と女神族の力が混じった自分の身体に微量とはいえど異常が出るため好んで使いたくはないが、一番効果的だろう。
「主様!集めました!!」
「よくやったセレナ!そのまま動くなよ“
集まった彼らに手を翳す。
すぐに
これは王国一の魔術師といわれたビビアンが用いた魔術結界。
術者が認めた者以外の侵入を拒み、いかなる攻撃も跳ね返す立方体の結界だ。
先ほど使用した“
これであれば今のところは安心と言ったところだろう。
“
「む…」
竜はその隙を見逃さない
ブレスを吐きながら、大気を操り風はたちまち刃と化す。
“
「主様!!」
「無問題だ」
だが切り離された腕から黒々しい魔力が生み出される。
辰巳と切られた腕の魔力がくっついたと思えば、一人でに腕が宙へと浮かんで腕が繋がった。
セレナたちは初めて見たため驚いている様子であるが、『十戒』と呼ばれる魔神族達が持っている基本能力でもある。
彼らは心臓が何個もあり、多少腕が落とされても魔力を用いれば接着させるのは容易なのだ。
「…主様!私も戦います!」
「冷静になるんだセレナ。確かに強くなった…が、流石にこのレベルはまだ早い」
「しかし!」
「ただ眺めろとは言わない。が、相手の動きを見ることも立派な戦略だ。どんな動作をしてくるのか、どんな攻撃を使ってくるのか。脳内で考えながら自分ならどうやって対応するかを瞬時に判断できるようにこの戦いを見ておけばいい。それがこれからの戦いでも必ず役に立つ」
「…わかりました!」
セレナは少し思う所があったのだろうが、素直に返答する。
彼女自身も理解している。自分が戦いに加勢したとしても大した戦力になっていないことが。
彼女の固有魔法を用いて回避することはできるが、あの竜に通じる攻撃力を有していないセレナには確実に見向きをしない。
攻撃を防いでくる辰巳に漸く邪魔な存在だと判断されて攻撃が来るようになったぐらいなのだ。
故にセレナは素直に見る戦いへとシフトする。
背後で不安に感じている彼らのことは無視するのは、彼女にとって既定路線のようであった。
「さて…長引かせてもこの地形が大きく変わっちゃうか」
距離を離せば咆哮によるブレス。
近接であれば先ほどの“風刃”だけでなく、雷の魔法による迎撃。
シンプルに打撃を叩き込んでもなかなかに装甲が硬い。
辰巳のステータスでは筋力が5000あるのだが、それでも大したダメージになっていないことを考えれば、相手の耐性はそれ以上だということだろう。
攻撃を何度も往なしながら辰巳はつぶやく。
魔術によるゴリ押しでもいいのだがセレナに観察するように言った手前、それはちょっとと考えた。
ならばどうするか。
簡単である。相手を拘束して、洗脳を解く。
そのためにはまず機動力をそぎ落とす。
「―――ヒュゥゥゥ…」
「!!」
「いくか。“ワール・ショック”!!」
眼前に風の渦を作り出す飛び道具。
激しく回転する風の渦が竜の頭へと迫るが、そんなものは知らんと言わんばかりに突貫してくる。
元より風を操る竜だ。この程度の風はそよ風と何ら変わらないかもしれない。
だがそれは辰巳も想定内。それでも使用した理由は至極単純。目くらましだ。
一瞬視界から消えたことで移動を開始。
いまだに飛んで攻撃を繰り返している竜の右足側へ瞬時に移動。そのまま魔力を練り上げる。
竜側からすれば一瞬視界から外しただけで姿が消えたように感じているだろう。
此方の魔力を知覚して視線を向けるが、すでに魔術構築は完了している。
「そろそろ地面で休みな。“
判断して行動するよりも早く、大地を隆起させて竜の下半身を岩でがっちりと固定する。
本来ならもっと頑丈にできるのだが、そこまで行くにはまだ練度が足りていなかった。
だが下半身が動かなくなり、行動が制限された事実は戦いにおいて致命的な隙を作り出す。
「“
「ガァアアア!」
瞬間移動により背中へ移動。そのまま
まだまだ精進する身であることを自覚しているが、魔力操作においてこの世界では負けない自負がある。
竜の魔耐がどれだけ高いのかは知らないが、無防備になっている状態で直に凍結させれば耐性を抜けると判断したうえでの行動だ。
如何にか逃れようと抵抗するが、その奮闘むなしく、首から下はがっちりと氷漬けにされて動かなくなった。
「グガアアァアア!」
「効くかは試しだが…“
手元から光を生み出し、竜の頭へ当てる。
目元を隠してしまいそうになるほどの光量を宛てられた竜の後頭部から、黒いもやが現れ…そのまま光に呑まれて消滅した。
光が収まった後、辰巳は竜から感じる敵意がなくなったことを確認するとセレナたちを守っていた“
◇
「本当に助かりました!」
『ありがとうございました!!』
「成り行きだったんでそこまで感謝されても逆に困りますよ」
「いえ…情けない話ですが、私たちだけでは護り切れずにこの土地で死んでいたでしょう。成り行きであったとしても命の恩人であることは変わりありません。本当にありがとうございます」
無事に竜の襲撃を抑えた辰巳達に頭を下げる冒険者一行。
辰巳の戦いを見届けた…のはおそらくセレナだけであり、彼らの動体視力ではとりあえず高速戦闘が起こった。そしてそれを制した。といった認識なのだろう。
腕がくっついたことやセレナが魔人族であったことは一部は察しているかもしれないが、今はそこまで気にしてはいない様子だ。
「ところでなんですが、どうして貴方方は襲われていたので?竜の巣に潜り込んだとかだったら呆れるしかないですが…操られていたことを考えるとそうではなさそうと考えてもよろしいですかね?」
「えぇ…それは」
「僕が貴族の息子…だからだと思います」
「君が…?」
当然の疑問を提起すれば彼らが護衛していた青年が名乗りを上げた。
20歳ぐらいの青年は育ちの良さを感じさせる端正な顔立ちだ。
「僕はウィル・クデタと言います。クデタ伯爵家の三男です」
「これはご丁寧にありがとうございます。私は
「はい。僕が言うのもあれですが、父は…グレイル・クデタは
クデタ伯爵の三男…ウィルが言うには三男とは言えど、魔人族からすれば彼を殺害すれば中央都市を混乱させるには十分な影響力があるとのこと。
上層の子息を仕留められたとなれば護衛に付いた者達や組織の在り方が問われ、戦争時にもモチベーションとしても少なくない影響があるだろう。
故に彼は操られた竜によって殺害されかけたのではないかということ。
魔人族自ら手を下さなかったのも魔人族から引き金を引くような行動を見せたくなかった可能性がある。
それと同時に竜を操れるほどに高度な魔法を有していることも間接的に証明されたことは人間族からすればかなりの痛手だろう。
この情報は後程冒険者ギルドにも伝えることになるらしい。
ちなみに彼らが辰巳達と出会ったのは本当に偶然であり、命からがらここまで逃げきれてたらしい。
(今回の経緯をギルドに伝わった場合面倒なことになるか…?)
辰巳はここで自分たちの存在が広まった時のメリットとデメリットを考える。
メリットを挙げてみれば命の恩人という形に収まって色々とコネクションなどが得られる可能性がある。
旅をするとしても人とのつながりは持っていて損はない。各地域の情報なども集めやすくなるだろう。
デメリットは協会に目をつけられる可能性が大きく増えるという所か。
冒険者ギルトと教会がどういう関係を有しているのかはそこまで理解していないが、貴族側から教会へ話が向かう可能性も考えられる。
そうした場合、竜を単独で退けられる人物を教会が把握していないことがわかり、確実に接触しに来るだろう。
あんなに胡散臭く、何より信用ならないトップ相手にそこまで立ち回りたくないのが本音だ。
「なるほど…では再度襲われても対応できるよう私たちも
「本当ですか!それは助かります。正直ここまで逃げてくるために物資も結構放棄していて結構厳しい状況だったんですよ…それで、条件というのは?」
「簡単な条件です。送り届けた際、私達が竜を退けたことはギルドにも、そして協会にも秘匿していただきたい」
「…?それはどうしてですか?」
「簡単な理由ですが、私は協会が嫌いでしてね。彼らに自分たちの情報を知らせたくないのですよ」
なので条件という形で、率直な意見を伝えた。
エヒト神なるものとは自分を巻き込んだこともあり、
その関係上、エヒト神を信仰する教会と関わらない…ということはないだろうがそれでも今から関わるつもりはない。
流石に探りを入れられたら魔人族であるセレナが危ない。少なくとも彼女の一人立ちしても問題ないレベルに成長しない限り極力出会いたくない。
ちなみにであるが冒険者達がセレナは魔人族であることに気づいていないのは軽く認識阻害をかけているためである。
「…しかし今回の一件を報告しないわけにはいかないですし…」
「その通りです。竜に襲われた報告をした後、どう撤退できたのかを伝えられなければ…」
当然の反応を返す彼らにそれならばと提案を行う。
「それでしたら…皆さん、鍛えましょうか」
『へ?』
その内容に、冒険者一行の声が木霊した。