現代世界で生きるポケモン達へ   作:ファ○通の攻略本

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フェローチェにメガネをかけてほしい欲望と邪神がシンオウのポケモンのみで課題を終わらせるとは思えねぇ!帰還できない理由そこだろ!!と思った結果の書き殴り


柔らかな瞳

「お願いできますか」

「がぶりん」

 

店内は沈黙で包まれた。

 

此処は、一般的な眼鏡屋の一つ。

駅に直結した大きなショッピングモール内にある、中規模の眼鏡屋。

「目の測定が予約をすれば無料でできる」という謳い文句と共に今日も営業していた場所に、一つの爆弾が落とされた。

店員から「15分ほどで」というアナウンスをされ、「あ、それは大丈夫なんですけど」と真顔で言う女性は、秋に着るには暑いような、男性ものの黒と赤のコートを着ている。

 

「私じゃなくてこの子のお願いしたいんですけどいいですか」

 

と、その言葉と共に取り出したのはピンポンボールサイズのボール。

青い、蜘蛛の糸の様な模様には黄金が沿うように4本。ポチり、とボタンを押せばそのボールは野球ボールのような大きさまで大きくなった。

へ、と声を出す間も無くボールはぱかりと開くと、赤い閃光と共にポン、と軽い音を発して中にその身体を仕舞い込んでいた者の姿を表した。

 

────それは、この世ならざる異邦人。

「美」を冠する白きケダモノ。

 

「フェローチェ」、と誰かがこぼしたのは、その細身の躰が生物とは思えないほど華奢で、その零れ落ちそうな瞳が、紫と青に彩られていたからであろう。あまりにも、特徴的な姿だった。

 

「研究では複眼ではない事とか、構造は判明してるので、人間用でもレフは多分取れると思います。すみません、度数をあっちにいるうちに測っとけば良かったんですけど、出自の都合上診せることもろくにできなくて。」

「…………えっ、と。眼科様に、行かれた方が正確なデータが……」

「「営業妨害はやめてください」なんて門前払いされました。今後、作る時間を取ることも難しくなりそうだから、それなら、騒ぎになる前に作ってあげたくて」

 

(でしょうね)などと思いつつ、店員は必死で考える。店長がいる方向へ顔を向けると、同僚が店長がいるバックヤードへするりと入っていくのが目に見えた。

 

「上長に、確認させていただいてもよろしいでしょうか……」

「無茶な事言って本当にごめんなさい……」

 

そうして、しばらく話し合いに続く話し合いに、さらに上との電話を行うなどをして。

「嘘だろう?」「冗談の様なことを」「そんなわけが」、といった会話を聞いた女性が「あ、よければテレビ通話とかします?」などと言ったりと。

30分後、出た結論としては「やれるだけやってみよう」の一言であった。

 

「それでは、測定担当の店長です。大変お待たせしました。本日は、よろしくお願いします。椅子、滑るので気をつけてください」

 

挨拶と共に、フェローチェはゆっくりと安っぽい椅子に腰掛ける。

軋む音すらなかったことを気にする間も無く、トレーナーであろう女性は「目の前のやつ覗き込んでー」と指示を出す。

 

「赤っぽいの見える?」

「ふぶ」

 

オートレフ*1を覗き込み、返事を行うフェローチェの声を聞きながら、「風や光は出ません、目を開いた状態で、ぼーっと気球……赤い影を見ててください」と測定を行う店長は口にする。

 

「どう?気球はっきりなった?」

「…………!」

 

びく、と動いたフェローチェはぐいぐいと顔を機械に押し付ける。力が入りそうなのをトレーナーが止めに入っているのを眺めながら、店長は「俺何やってんだろ」とぼんやり考え込んでいた。

その場にいた他の客も、その光景に釘付けになっているし、他の店員もその光景をチラチラと横目で見ている。

スマホを構えられていようと威風堂々とした様子のトレーナーとそのポケモンは、測定に集中していた。

 

「はい、ありがとうございます。……測定行えそうなのでこのまま続けさせていただきますね」

 

そうしてまずはひとつ。オートレフから出た結果を基に見れば、プリズムが不要ではあるが、強度の近視である事と、乱視が読み取れた。

トレーナーに両手で窓を作り、フェローチェの顔の前に持っていく様にお願いする。片目を閉じてもらって、視界の真ん中にある遠くのドアが真ん中に見えるのはどちらかを確認すると、フェローチェは左手を上げた。利き目は、左の様だ。

データをフォロプター*2に飛ばし、そのままフォロプターの方へ座ってもらう様に誘導する。

 

「これから測定をさせていただくのですが、絵の向きですとか見え方については……」

「あ、そこは私が代わりに伝えるので大丈夫です。指で方向差してもらったり、叩く回数でどっちが見えるかお伝えしますね」

「承知しました。それでは、測定補助も引き続き担当させていただきます、店長です。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 

測定は何事もなく淡々と続いた。

赤と緑、どちらか見やすいかのテストや、点の集まりのぼやけ、見やすさのテストに、cの穴の空いてる方向を確認するテスト……

日本語の伝わりにくい海外の方向けに検眼を行ったりもしていたのだろう、文言が「cの、穴の空いてる方向はどこか指を指してください」「1と2、どっちの方がみえますか?」「この文字、ちゃんと読めますか?」などとわかりやすく指示を出す店長に従い次々にテストをこなしていく。

 

「はい、お顔外して大丈夫です」

 

いよいよ、仮の眼鏡で見え方を確認する頃合いだ。

レンズを嵌めこみ、トレーナーにそのメガネを手渡した。流石にそのまま触ろうとするほどの度胸は店長にはなかった。

トレーナーは仮のメガネをそっ、と。慎重にかけてあげる。本来なら耳の部分にかけるべき位置を、まるで王冠の様になっている頭の部位に引っ掛ける様にして。

 

「どう?ヴィクトリアちゃんや。見える?」

 

その時、ポケモンに詳しくない店長はそのポケモンの種族名を「ヴィクトリア」と誤認した。

 

しばらく、周囲を見渡して。

ぼんやりとした顔だった。そっと手を伸ばし、隣にいたトレーナーの髪を掴み、そして、そっと、ほぐすように少しずつ手放す。髪の一本一本が流れる様に落ちていく様子を見てから、ゆっくりと。

 

「がぶりん」

 

──笑った。

そして立ち上がると、周囲をキョロキョロとしきりに見渡して、周囲の光景を目に焼き付ける。

先ほどまで覗き込んでいた、無骨な機械。

大きな音を立ててレンズを削る機械に、ソファーからこちらを恐る恐る眺めるご老人。スマホをずっとかざしていた若い男性は、「やばいやばいやばい、こっち見た」などと声を漏らす。

 

「どう?見え方ちょっと辛く感じたりとかする?遠く見える?」

「りぃん」

 

首を振って、遠くを指差した。

そこには、遠くにある違う店の看板。

 

「みえない?」

「がぶ」

「そっかー。ふたつにぶれる?」

「りぃん」

「ぼやぼやする?」

「がぶ」

 

「がぶ」が肯定の意味で、「りぃん」が否定の意味なのだろう。そう察していた店長は、もう一段階上のレンズを取り出した。

仮のメガネを外してもらい、もう一度入れ直してやれば「がぶ」と鳴きながら頷いた。

ああ、よかった。何故かわからないが、視力はなんとか測れたらしい。

 

「今回は、レンズはどうされますでしょうか?追加料金をお支払いいただくとブルーライトカットですとか、色のついたレンズといったものに変えられます。」

「色覚とかは人と変わらないっぽいので、今回は色付きとかはいいです。メガネっていつごろ出来上がりますかね?」

「この度数でしたら今日中も可能ですね。ただ、お日にちいただけましたらレンズを薄くすることもできますが……」

「あ、本当です?!今日中で作りたいです!」

「かしこまりました。……メガネのフレームはまだお決まりではないですよね?」

 

こちらにスマホを向ける男性……正確には、スマホのカメラにじっと視線を向けるフェローチェに対して、気まずさがあったのか、そっと男性はスマホをしまった。

特に怒っているとかではない。たまにトレーナーがこっちに向けていたものはこんな感じの形で、こんな色だったのか、と観察していただけのことである。

「仮のメガネが無いとこの子見えないので、店内にいる間かけっぱなしでもいいですか?」という言葉に対して頷きながら、店長は手が空いてそうな店員を探そうとレジ台あたりを見た。全員一斉に目を逸らした。

手をぎゅっとトレーナーが握れば、フェローチェは「どうしたの?」と言わんばかりにそちらを見る。

 

「メガネ決めようか」

「後程フレームに関してご案内させていただきますね。視力測定、お疲れ様でした」

 

逃げる様にその言葉を言うと、「無茶な願いを叶えてくださりありがとうございます。」とトレーナーは頭を下げた。

そのまま状況がわからないフェローチェに対して、「今つけてるメガネ、どんな形にするか決めようかー」と口にするトレーナーのなんと図太いものか。

そのまま売り場へと向かっていくトレーナーとフェローチェの後ろには、人だかりがあった。

「多分大変なことになるから」と指示を受けたとある店員が、開けっぱなしにしていた出入口の扉を閉めて、「入場制限が……」などと言い人が極力入らない様にしているが、透明なガラス越しに野次馬が集まってきている。

一人、店長に「俺度数入力したりとかレンズ持ってこないといけないからー、ほら忙しいからー……ね?」と無理やり押し付けられ……、もとい、頼まれた店員が案内に向かえば、フェローチェは外の人混みを眺めていた。何かを思い出した顔で手を振れば、外の人だかりからは騒めきやら叫び声やらが上がる。トレーナーは慣れてますと言わんばかりの顔で無視をした。

 

「フレームでお困りですか?」

「メガネのつるの部分って、曲げたりって出来ます?ちょっと、このままかけると引っ掛けにくくてメガネが斜めになっちゃいそうで……」

「えっと、メガネのフロント部分とつるの部分の間に折り畳みする金属部分があるじゃないですか」

「はい」

「ここに力を加えたりですとか、あとはつるの部分を曲げることで調整は可能ですよ」

「あ、なら触角冠にうまいこと引っ掛けられるようにも出来るんですね」

「そうですね、ただ、太いものよりは細いものの方が引っ掛けた時に楽かもしれませんねー。あとはチェーンですとかバンドを使って、後ろで固定するのもいいかもしれないです」

 

(黄色いところそんな名前なんだ……)などと思いながら、案内を行う。

無難に扱いやすい定番物の縁の太いメガネにはサラッと触れる程度で。金属で出来ている、チタン製のメガネをお勧めしていると「ふぃーろろ」と優しい鳴き声を出しながら、一つのメガネを手に取った。

四角いスクエア型の、緑色のメガネ。

細身なそれは、軽くてかけごこちがいいこともポイントだ。

 

「これがいい?」

「がぶ」

 

新品のものを出してもらった後に、「すみません、予備にもう一つか二つ欲しいのでもう少し見させていただいてもいいですか?」と口にするトレーナー。

一番気に入ったのは緑で細身のそれだったが、他にも気になるものがあるか案内を続けていけば、金属部が無い、しなやかで柔軟性のある、頭にフィットしてくれることが売りであるメガネも気に入ってくれたようで、それも購入を決めた。「こっちの貯金、あんまり無いんですよね」と恥ずかしがりながら笑うトレーナーに対して、「異世界帰りですか?」と冗談の様に口にすると、「えぇ、まぁ、」と笑いながらこう言った。

 

「『すべてのポケモンと出会え』なんて、まったく。ひどいことを言うものですよ。シンオウ地方だけじゃ終わらないんですもん」

 

疲れたような声で、そう言う彼女の手は、がっしりと皮が厚かった。

 

それを聞いた店員がセールコーナーへ案内すると、そこにはなんと、ポケモンコラボのメガネが置いてあった。

ひとしきり爆笑したのちに、「フェアリーにエスパーは弱点取られちゃうからね」などと言いながら、最後の一つだったモデルを買うことにした。

 

「出来上がるまでお店の中で待ってていいですかね?ごめんなさい、外に出ると、戻ってこれないかもしれないので」

「……いえいえそんな、大丈夫ですよ。ソファー、お掛けいただいていて大丈夫ですので。そちらでお待ちください」

 

メガネの加工機に向き合い、慎重に、慎重に、レンズを磨き上げる。

ろうでメガネを嵌めやすいようにして、大きさを少しずつ調整して、一つずつ作り上げる。

待っている間は、誰も、トレーナーに声をかけにいくことはできなかった。ソファーに座った途端、彼女は、長いため息を吐いて、そして、目を閉じたからだ。

眠っているにしては、死んでいるかのような顔色で。隣にいたフェローチェは、トレーナーの手をずっと握りしめていた。

 

しばらくして、名前を呼ぶ声が聞こえて目を開いたトレーナーはそちらへと向かう。

付けていた仮のメガネを外して、3本分かけ比べをしてから、見え方を確認して。全部かけて、調整をしてもらった後、フェローチェは満足そうな顔で緑色に鈍く輝くメガネをかけていた。

 

「本当に、ありがとうございます……。なんと言っていいのか。あっちでは、ずっとものが見えてないことを気にしてたんですけども、メガネを買ってあげる暇も無くて。助かりました」

「とんでもございません。本日はご来店くださり、誠にありがとうございました。」

 

パトカーと共に黒い服の男性たちが見える扉へ、手を繋ぎながら歩いていくトレーナーと、そのポケモン。

赤い光を放つそれが気になるのだろう、珍しそうにフェローチェは眺めていた。トレーナーは、覚悟を決めた表情で、一歩一歩を踏み締めていく。

そして、扉は開かれた。

*1
目の測定を行うにあたり、赤外線で大まかな度数を測る機械

*2
cの形の絵の向きや、見え方の明瞭さで度数を決めていく機械




ヴィクトリア

いじっぱりな 性格。
アローラ地方から
時間と 空間を こえて
はるばる やってきたようだ。

ちょっぴり みえっぱり。
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