現代世界で生きるポケモン達へ   作:ファ○通の攻略本

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なんか日間ランク入りしてるんですけどぉ?!?!

巡回してたら見覚えのあるタイトルがあって草生やしました。マジ?
とりあえず……サクッと書いたけど、いる?


じゅわり燃ゆる

「じゃり じゃりりり じゃり」

 

真夏の炎天下、太陽の光を浴びて黒光りする黒鎧が彷徨っていた。

蝉がうるさく鳴く声がどこからか聞こえる中、彼は周囲からの視線など気にせずにせかせかと歩く。

燦々と日光は彼へと吸い込まれ、彼の身体はより一層熱く熱されていくが、中身の無い鎧にとってはその温度は心地よいものらしい。横を通る者が、熱に当てられたのか、「……焼きおにぎり食べたい」と溢した。

或いは、醤油の体臭がする彼の影響かもしれない。

横断歩道が赤から青になるまでしっかりと待ち、そして横断歩道を片手——あるいは刃——を上げては、これまた急ぐようにハキハキと歩きだす。

路地裏へと入れば、彼を奇異の目で見る人だかりも次第に少なくなっていった。そのまま彼は、人がポツポツといる程度の道路を歩いていく。

かちゃり、かちゃり、と金属が擦れる音が小刻みに周囲に響く。

 

そうして、しばらく歩いていた彼は、ようやく目的地へと辿り着き、足を止めた。そこは巨大な工房だった。

刃で傷をつけないよう、慎重にインターホンをカチリ。

 

『はいはーい………っておや、きみかい』

「じゃりりりり」

『入っておいで。きみたちのおやつも用意してあるよ』

 

「おやつ」という言葉に目を輝かせた彼……「ショウユ」は、工房の扉を我が物顔で開けると、そのまま中へと入っていった。

従業員が生活するスペースまでとことこ、がしゃりと歩いていくと、「ショウユちゃんまた来たのぉ」と呼び止める声。ショウユが振り向いた先には、やや小太りの中年男性が居た。

首元に垂れる汗を拭きながら、彼は笑顔でショウユの元へと歩み寄る。

 

「有難いけど、トレーナーちゃんにまた怒られるよぉ?最近太り気味なんじゃないのぉ?シャンデラちゃんから仕事奪ってぇ」

「…………」

 

「ちょっとよくわかりませんね」。そんな顔をしてしらばっくれる事にしたショウユにケラケラと笑うと、ショウユの肩を叩いて、「いやあっつ!」と手を戻した。

日光の光を充分に吸収し切った彼の身体は、最早全身凶器と言っても過言ではないレベルで熱されていて危険である。

 

「まぁでもこれだけ熱いなら充分か……。ショウユちゃん、消毒したら中においで」

 

その言葉にコクリ、と頷くと今度は工房内へと歩み出した。

ここは関西にある、醤油工房の一つだ。

自分自身と同じ名前を冠する場所に、彼が鏡面を通って反転世界を抜け出してきたのには理由がある。

————勿論、醤油だ。

 

彼はアルコールスプレーをポルターガイストで持ち上げると、全身にくまなく噴射する。もちろん、足裏の消毒もしっかり忘れずに。

とどめに、体の中の虚な炎を稼働させ、全身を殺菌すれば完了だ。

彼は慣れた顔で工房内に入ると、大樽に入った醤油になる前の液体の前まで彼は近づいた。

 

生揚醤油、と言うべきそれらの前に立つと、ショウユは自身の熱された剣を中へと入れ、ぐるぐるとかき混ぜる。

彼が今行っているのは、火入れという作業だ。

充分に発酵させた諸味から絞り出した生揚醤油に火を通す事で微生物を失活させ、香り付けを行う、重要な作業の一つだ。

醤油の香ばしい香りが周囲に漂う。馨しい香り、剣から感じる、醤油独特の旨みと塩味。そして、なんといっても…………万を超える菌が自らの手で死んでいく、背徳感と心地良さ。ぶつり、ぶつり、と絶えていくいのちの欠片にショウユの瞳は愉悦に歪む。

 

彼が、ここにいる理由はひとつ。「ポケジョブ」である。

ポケモンが仕事の手伝いを行う、それが「ポケジョブ」。ポケジョブに参加し、日本国内で働いているポケモンはショウユ以外にもいる。

植物園にて剪定作業等を行い、植物の管理を行うジュプトルの「シンク」や、工事現場にて作業を行うバシャーモの「ノホホホホ」。他にも、ウーバー○ーツとして東京の空を飛ぶムクホークの「むちゃん」。

ショウユがこの工房にポケジョブとして派遣されたのは、「醤油の色をしているから」という実に身も蓋もない理由ではあったが、ショウユ本人はこの仕事を実に気に入っていた。

意外と、醤油が美味しいのである。

ぷちぷちと灼かれて音のない悲鳴を上げる麹菌に、巻き上がる薫りのなんと芳しいことか。

わずかに感じられる味も、複雑な味わいがとても好ましかったのだ。

 

醤油工房側としても、「ポケモンが作った醤油」として非常に人気のある品を売り出せているので、win-winの関係性であった。

何よりも、自分たちの作る醤油のファンがここに居る、という事実がとても喜ばしかったのである。

 

菌を殺し尽くしたショウユは「じじ」と一言鳴くと、剣を樽から出した。醤油を纏ったその剣を、すぐ横の水道で洗い流していく。ショウユは、この工程が非常に勿体なく感じていた。

そして、壁にかけられたタオルで水気を丁寧に取ると、これまたポルターガイストで青く大きなバケツを浮かせて、生活スペースへと戻った。

きょろりきょろり、と周囲を見渡してから。そっ、とバケツの蓋を開ける。

四角く裁断された茶色い布のような何か。それが、バケツの中に入っていたものの正体である。

 

醤油粕。彼が行うポケジョブのお礼品にして、「おやつ」だ。

 

大豆に小麦を絞った残りカスには、食物繊維と塩分が豊富だ。そして何よりも、微生物が生きたまま中に存在している。いのちを食べるゴーストタイプや、毒タイプとしては、ご馳走のようなものだった。

一番大きいかけらをプスリ、と剣に刺して頬張る。

実にうまそうな顔で、カスをポロポロと床に少し零しながら、ショウユは咀嚼する。

…………うっかり全部食べても………、バレないか……

欲を抑えきれないショウユは二切れ目に刃を伸ばそうとして、首元を掴まれて不意に止まった。

 

「…………」

「りん」

 

眼鏡をかけた、美しき白い獣。

白銀に輝くチェーンを揺らしながら、その獣——フェローチェは、無機質な目でショウユを見下ろす。

ふと、昨日トレーナーから言われたことを思い出した。

 

「最近不健康気味だから、おやつはしばらく食べちゃダメ!約束を破ったら————」

 

地獄突き。

ドタマを思い切りかち割るようなその一撃に、ショウユは撃沈する。

 

「…………あれ?帰るの?まだいっぱい中身残ってるよ?」

「あれ、おやつ食べさせないようにって連絡来てなかった?」

「えっ、本当に?」

 

そっ、と静かにバケツの蓋を閉めてから、バケツの上に小さくなったショウユを乗せ、それを抱き上げるフェローチェ————ヴィクトリア。

一礼すると、お邪魔しました、と森の羊羹をそっと机の上に置いていって、彼女達は帰るためにその場を後にした。




ショウユ ♂
せっかちな性格。
パルデア地方から
時間と空間を越えて
やってきた。
体が丈夫。
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