現代世界で生きるポケモン達へ   作:ファ○通の攻略本

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ハロウィンに間に合わせたかったので頑張りました。
あまり得意ではありませんが、戦闘描写を頑張って入れたのでお楽しみください。


より強く、よりしっかりと

10月31日の渋谷は、人が多く居ながらも、珍しく暴徒も存在せず穏やかな時間を過ごしていた。

 

「げんげろげ!」

「カチ・カチ・カチ」

「ノラメシヤ!」

 

渋谷には、トレーナーの手持ちのポケモンが笑顔を撒き散らしながらお菓子の入ったかぼちゃのカゴを片手に練り歩いていた。

マントを付けた♀のゲンガーや、女医(ジョーイ)コスチュームのカラマネロに、パンプキンヘッドのドラパルト。他にも、メイド服のヒスイバクフーンがニコニコとナナの実マフィンを100円で販売していたり、ジャローダが背中に子どもを乗せながら優雅に横断歩道を渡っていた。

今日はハロウィン。本来なら、暴徒が出るのが必須の祭り騒ぎが穏やかなのは、「ポケモンがいるからこそ」であった。

 

「きゅおぉん」

「きゃうーん」

「きょーぉん」

 

ユクシー、アグノム、エムリット。

そのポケモンの目を見た者は記憶が無くなる喪失感を得る。

そのポケモンに触わった者は三日で感情を奪われ、失くす。

そのポケモンを傷つけた者は七日で脳死となり無力となる。

 

知識、感情、意思を司る三神は、そっとその願いを念動力に乗せ東京全域へと行き渡らせた。

 

「どうか きょうは みんな たのしく いられます ように」

 

他人へ対する、思いやりを。

感情的になる者に、理性を。

今日を楽しむための知識を。

 

そんな心遣いがわたり、例年には無いほどの穏やかな一日を都民は過ごす事となったのだ。ポイ捨てをそっとちゃんと捨て直したり、持って帰ろうとしたり、信号はちゃんと守り、性的な欲求もなく心穏やかに「ああ、今日はいい日だ」と、モラルある仮装で写真を撮り……

起こらない、とは言い切れはしないが、ほぼほぼ問題行動が起こる事は無かったのである。

抽選を勝ち取った幸運な地元民が、ポケジョブで思い思いの看板ポケモンを横に店の宣伝をすることで収益が得られ、地元民にも還元は行き渡っていた。

 

だが……今日の渋谷のハロウィンの目玉は、コレだけでは無かった。

 

ところ変わって、代々木公園。

招待された者と、厳正な抽選を勝ち抜いた者らが、代々木公園にある中央広場をぐるりと囲うように各々レジャーシートや椅子を設置してその時を今かと待ち侘びていた。

三角コーンの前には様々なポケモンが警備員代わりとしてずらりと並び、空中にはドローン型ロトムとポリゴンがふわふわと浮かんでいる。トレーナーは、何も持たずにその場に立ち尽くしている。

 

真っ暗な暗がりで灯りに照らされながらざわざわとざわめいていた喧騒は、放送の声を聞くとともに静まり返った。

 

「それでは、これより————特別プログラムを開催します」

 

 

ソラが劈く悲鳴をあげた。

 

空間を捻り切るようにビシリ、ビシリ……セカイに叛逆する何者かがそこにいる。

朱い爪が裂け目を攫む。輝ける瞳は、世界を見下した。

 

深淵は、パッチワークの歪んだ世界を背中にずるりと堕ちる。

 

やがて、六つの爪は翼となり、その龍は六つの脚で地面を踏み締めた。

 

「ビ シ ャ ー ン !!」

 

するりとその背中から降りた存在は、トレーナーに目を合わせると気楽そうに片手を上げ、「招待いただき感謝する、友よ」と口にした。

 

「んにゃ、私も来てくれるとは思ってなかったから嬉しいよ……アカギ」

 

キョロキョロと見知らぬ世界を見渡すギラティナ……ギラくんが綿飴を持った幼女の綿飴を一口つまみ食いするのを眺め、「ギラくんもしばらく渋谷で遊んでていいよ」と許しの言葉を与えれば、「ギギギ……」と喉を鳴らし、重さを感じさせない身軽さで空へと舞い上がる。

黒い服に赤いマフラー、青い髪の痩せぎすの青年は、目尻を和らげながら「こちらの世界でも頑張っているそうだな」と言葉にした。

 

「まぁ、ね……

アカギ、準備はいい?」

「無論、いつでも」

 

青年は、背中で組んでいた手を外し、腰の紅白のボールを掴んだ。同様にトレーナーも、腰のボールからピンク色のボールを掴む。

 

「「行け————」」

 

「ロトム」

「ジュペッタ」

 

VS

 

「ロトロトロト!」

「ケタケタケタ……!」

 

おみとおし

 

ジュペッタ は ロトム の こだわりスカーフ を おみとおし だ !

 

「まさか、お前の世界で初めてポケモンバトルするのが私とはな。喜んで、相手をしよう」

「頼めるかい?ジュペッタや」

 

「ケシャッ、ググゲゲガガガガガガガガガ!!!!」

 

トレーナーは左腕を翳すと、左腕のZリングが光り輝いた。ぐるりぐるりと光は渦巻き、キズナを以てしてそのエネルギーは地へと降り注ぐ。

ジュペッタはそれを喜んで受け入れた。

その痛みは愛たる所以。その憎しみは痛みたる所以。

なればこそ、この身の憎悪を保って我がトレーナーへの愛を証明しようぞ!!

 

「ゲギガガガガガ!!!」

 

メガジュペッタ

 

ジュペッタに取り巻いたエネルギーの光が割れる時共に、ジュペッタの肉体に亀裂が走る。亀裂は黄金の血飛沫を上げ、やがてはジッパーとして瘡蓋になった。瘡蓋はジリリと開き、怨みの籠った紫炎が噴き上がる。呪いの両手足を携えて、ジュペッタは微笑う。紫色の眼は爛爛と光っていた。

トレーナーが見せた、メガシンカに場は盛り上がる。悍ましくも美しいぬいぐるみへの、称賛の声にトレーナーも鼻が高い。

 

「ロトム、ボルトチェンジだ!」

「ジュペッタ、道連れ!」

 

電子レンジに取り憑いたロトム——ヒートロトムはその身に稲光を纏いながら突進する。

ジュペッタへと触れた瞬間に、忽ちボールへと逃げ帰った。

オーバーヒートではおそらく相打ち。こだわりスカーフであるというのがバレている以上、技を固定化させては後続に対応できるとも思えず、ゴースト技を覚えてないが故に相手取るには不十分。そう判断したがこそのボルトチェンジであった。

 

「———ギャラドス!」

「ギャオオオオ!」

 

いかく

ギャラドス の いかくで ジュペッタの こうげきが さがった !

 

控えから現れたのはギャラドス。威嚇の鳴き声を上げるギャラドスにジュペッタは怯むも、そのまま影を相手へと接続した。

ギャラドスの背後のアカギの腕には、Zリングがある!

 

「チッ、戻れ!!」

「此方も相応の姿勢で応えよう——メガシンカだ!」

 

悪戯心による先制により恨みのこもった呪いの影がギャラドスへとぶつかり、ギャラドスは背筋が凍る感覚を感じたが……それがどうした。

自分を呼ぶ、よく知らない声が聞こえる。ガキとかデケェ人間とか、そういうヤツらの歓声だ。わっかんねぇな。こんだけのこと如きで喜んでちゃあ————この先どうなっても知らねぇぞ!!

 

「ガ チ ワ ル !!」

 

メガシンカのエネルギーが解き放たれると同時に、ギャラドスの背鰭は両側へ鋭く裂けた。

胸鰭もより強靭に鋭く伸び、一部の鱗が赤く染まりゆく。感情の発露により、体表の一部は黒く変色した。長く伸びた髭をゆらりと伸ばしながら、滝を越え空を泳ぐ龍は唸り声を上げる。その赤い眼は、嗜虐的な色を浮かべていた。

 

メガギャラドス

 

「そのまま竜の舞!」

 

ぐるり、ぐるり、暴力的な程の威圧感を伴いながら、龍は舞う。より鋭く、より獰猛に、より凶悪に。その身から放たれる風圧は、木々を揺らした。

唸り声を上げ、怒りを宿すギャラドスの前に現れたのは、1匹の白きケダモノ。

 

「がぶりん!」

 

フェローチェ、ヴィクトリア————勝利の名を冠する、トレーナーの信ずるポケモン。

その胸元に邪悪な光を込めた珠を提げて、美しき獣は嫋やかに降り立つ。そして、両手を地面へとそっと降ろすと————獣は飛んだ。

アカギはこの時、ギャラドスにいじっぱりミント(A上昇C下降)を嗅がせていた。それは、ギャラドスにそれ相応に振っておいた耐久に自信を持っているからこその調整であった。しかし、その調整が仇となった。

ようきミント(S上昇C下降)を嗅がせて、かつ素早さを重視していれば、竜の舞を舞ったギャラドスなら先手を取れていただろう。しかし、そうはならなかった。ヴィクトリアはそのまま勢いよく飛ぶと膝を前へと突き出す。そして、その膝は……ギャラドスの頭をぶち割った。

硬いものが割れるような音と共にギャラドスは後ろへと吹き飛ばされ、観客を守るシールドへとぶつかった。

ゆっくりと……音を立てながら崩れ落ちるギャラドスに悲鳴と、ヴィクトリアの目にも見えぬ飛び膝蹴りに、絶句する観客席。

 

「跳び膝蹴り……ナイスだよ、ヴィクトリア」

「がぶ」

 

倒れ、小さく縮こまるギャラドスから、エネルギーが光となって放出される。ヴィクトリアはそれを小さな口でそっ、と喰らう。

 

ビーストブースト

ヴィクトリアの こうげきが あがった !

 

相手をより早く捩じ伏せることを考えた肉体(いじASブッパ)から繰り出される飛び膝蹴りは、外さなければまず相手を倒すことができる。当てて倒すことができる、という信頼だからこその跳び膝蹴りである。

 

「———ロトム!頼んだぞ」

「さて、」

 

再度繰り出されたのはヒートロトム。スカーフ持ちだと見抜かれているロトムだ。

そう、スカーフを持っている……ということは、確実に、ヴィクトリアの上をとっているということ。

オーバーヒートを撃てば、相手は確実に倒せるだろう。しかし、アカギには迷いがあった。相手は交代してくるのではないか、と。交代先がもし、ロトムに相性の良いポケモンであったらまずいのではないかとも。とくこうが下がってしまっては、不利になる可能性がある。なら、放電の方が、後に繋げやすいのではないか、とも。

ロトムは、その電子レンジの中から暴走する炎を————繰り出さなかった。

 

「放電!」

 

指示に従い、ヒートロトムはその全身から有り余るほどの電気を迸らせた。周囲は明るく光、悲鳴も上がる。しかしその電気は、防護フィールドを貼っているポケモン達のおかげで、観客までは届かない。

さて、このフェローチェだが。ほんの少しだけ打たれ強い(余りをHに振っている)。本来ならオーバーヒートで倒せていたであろうが、放電では、たとえ命の球による疲労があろうとも、倒しきれない可能性があった。

そしてフェローチェは、放電を受けてなお、持ち堪えた!

 

「地獄突き!」

 

強烈な一撃がヒートロトムの、電子レンジの扉を貫通する。ぐしゃり、という音と共にロトムは小さく縮こまっていった。そして、勝利の女王もまた、命の珠による激痛で小さく縮こまる。

それでも女王の口元には、勝利へと繋げられた、という確信からくる笑みが浮かんでいた。

そっと、深呼吸。三体という縛りでの戦いにおいて、最後の一体。

震える指先に、かたり、とボールは揺れた。

 

「行け、ダークライ……!」

「……!!」

 

砂嵐を起こしたテレビ画面から鳴るような不協和音。

暗闇から悪夢が這い上がった。悪夢は冷徹な視線でその場に佇んでいる。

ダークライ————悪夢に愛された魔性の獣は、まだ諦めない、と言わんばかりの表情をしていた。

 

「行っておいで、ジュペッタ」

 

再び繰り出されたのはメガジュペッタ。

相手は悪タイプ、故に悪戯心から来る悪戯は、さらなる上手を取られてしまう。ここでジュペッタを出したのは、「相手がどう出るか」という賭けだ。

 

「悪の波動——」

「不意打ち!」

 

きらり、と光ったジッパーに一瞬怯んだダークライの不意を打った一撃。それでもダークライは悪の波動を眼前のぬいぐるみへとぶつける。

避けようがない一撃にジュペッタは、「ケケ……」となき、右手を高く天上へと突き上げ、親指だけを立てるようなサインを出した末に小さく縮こまっていった。

I’ll be backはできないんだよ、回復禁止だから……と思いながらボールへと戻し、トレーナーも同様に最後の一体をそっと優しく撫でた。

これで最後をぶつけよう。

 

「行っておいで……チラチーノ!」

「ラッ、チーノ」

 

白の貴人はそっと大地を踏み締めた。豊満な毛を首筋へと纏わせ、ふわりと微笑む。

アカギは賭けに出た。

 

「催眠術!」

 

手を翳した。

右手からはふわり、ふわり、と柔らかな波動が伝わる。

ゆっくり、ゆっくりとしたその念動に……チラチーノは囚われてしまった。

ゆっくりと前へとこっくり、こくりと揺れ動くチラチーノ。

 

「で……ああクソ!」

「悪の波動!」

 

悪夢にうなされ青ざめた表情の貴人に悪の波動は突き刺さる。毛皮が黒く汚され、客席からは悲鳴が上がった。

 

「そんな、チラチーノちゃん!」

「頑張れー!起きろー!」

 

そのままボールのようにポーン、と飛んでいったチラチーノ「くん」は……応援の声に応えるかのように目を覚ましてダークライの元へと機敏に動いていく!

 

「よくやった、電磁波!」

「ヂヂヂヂヂ!!」

 

傷を負いながらもその身を震わせ、静電気をその場へ発露。バチバチと帯電したダークライへと、チラチーノは頭から伸びる毛を掴み、ダークライへと向け……歯を剥き出しに、小動物とは思えない凶悪な笑みを浮かべた。

 

「タネマシンガン」

 

その毛の中から、重厚な音と共に種が射出されていく。無数の種は、卓越した技術(スキルリンク)によってダークライへ全て当たった。

1、2、3、4、5。

5つを繰り返し砂埃が巻き上がるその場所へとそのまま毛を構え、チラチーノは再びその銃口からとっておきの一撃を喰らわせた。

ダークライは………その勢いあるマシンガンの一撃に怯んでいる!

 

「まさか、王者の印————」

「終わりだ」

 

再度マシンガンは連射される。獰猛なネズミはゲラゲラと高笑いを上げ、その末路を見届ける。

マシンガンの勢いに耐えきれなかったダークライの肉体は、そのまま防護シールドへと突き刺さる。そしてダークライは、動けなくなっていた。

 

「……お前のチラチーノは、少し陽気すぎる。なぜ戦いの愉しさに高揚して高笑いをあげるんだ?」

「さぁ……私も知らない……」

 

勝者、トレーナー。

お互いの健闘を讃える握手……その放送と共に、場は再び湧き上がった。




アカギの手持ち
ヒートロトム(スカーフ)(臆病)
放電
オーバーヒート
ボルトチェンジ
トリック

ダークライ(きあいのたすき)(臆病)
冷凍ビーム
悪の波動
催眠術
夢食い

ギャラドス(メガストーン)(意地っ張り)
滝登り
噛み砕く
挑発
竜の舞

トレーナーの手持ち

ジュペッタ(メガストーン)(意地っ張り)

はたき落とす
道連れ
ゴーストダイブ
不意打ち

チラチーノ(王者の冠)(陽気)
電磁波
ロックブラスト
タネマシンガン
トリプルアクセル

フェローチェ(命の珠)(意地っ張り)
トリプルアクセル
飛び膝蹴り
地獄突き
毒突き
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