メゾン・ド・チャンイチの裏事情 作:浅打
俺、誕生
ここは黒崎一護の心象世界、青空を貫かんとばかりに伸びたビルの群れが無数に存在する場所。
俺は黒崎一護の心象世界が好きだ、遮る物の無いこの開放的な世界は何より居心地がいい。
この横たわった世界で右手を天壌無窮に広がる青空に向ければ左には底の見えない永遠無限の闇が広がっている。
ここはメゾン・ド・チャンイチ、名前は俺が勝手に付けた。
かつての俺は藍染によって改造虚、個体名ホワイトとして産み出された。
しかしそこからは散々だった、目覚めたら目の前に怪しい男共がいて現世で死神に寄生してこいなんて雑な命令を受けて何も感じないと思うか?
そうだよ何も感じなかったよ、生まれたばかりで意思が脆弱だったもんでな。今となっては大層ふざけた事を命令してくれたなと恨んではいるが。
有無を言わせずに現世に送り出されるとすったもんだの末になんと滅却師の女──黒崎真咲に止めを刺されてしまい、消滅の危機を感じた当時の俺は本能的に黒崎真咲に寄生してしまった。
しかもその後に黒崎一護の父である志波一心が黒崎真咲の心象世界まで追っかけて来て、あげく奴に成敗されて浦原喜助に封印される始末。
結局殆ど何も出来ずに封印されたままで居たが、いずれ産まれるであろう黒崎一護が死神と虚の力に目覚める解放の日を俺は只管に待つ事にした。
志波一心と黒崎真咲が結ばれた数年後には彼女は一護を妊娠していた、それと同時に俺という自我もまた再構築されていった。
一護の未熟な魂魄には霊王の欠片が宿っており、それをきっかけにして虚が黒崎真咲を襲う事が何度かあった。
いずれ俺を内包するだろう器である一護の為に助けてやろうとも思ったが、そもそも俺の能力は黒崎一心の死神の力によって封じられているから手の出し様が無かった。
「怖い思いをさせて、ゴメンね。もう大丈夫だからね」
黒崎真咲は強かった、滅却師の力を振るって危機を乗り越えるといつもその場にへたり込み、幾許か膨らんだ腹を撫でて安堵すると共に謝るのだ。成程、一護はやはり愛されているようだった。
封印を表す鎖に全身を縛られながらも黒崎真咲の心象世界の中で漂いつつ様子を観察していると俺の傍にはいつ間にか黒衣を身に纏った
「特異な者よ、お前はこの世界を壊したいと思っているのか」
「今更出てきやがって何の用だよオッサン。言っておくが俺は今更暴れてやろうなんてつもりはないぜ」
「お前は危険な存在だ。お前が黒崎真咲を害する可能性がある限りお前の存在を許容する事は出来ない」
「安心しろよ、
「その言い方、黒崎真咲の辿る運命を知っている様だな」
「ああ、知ってる」
黒衣の男──後の斬月のオッサン──は敵意をしまい込み、なんとも言えない雰囲気を溢れ出させた。
「……黒崎真咲は憐れだ。お前をその身に宿した彼女は異端と見なされ『聖別』の対象に選ばれるであろう、同じくして産まれる黒崎真咲の子も同じく死にゆく定めにある」
オッサンは知らないかもしれないが黒崎一護とその妹達は生き残るのだ、唯一黒崎真咲だけが命を落とし残された家族に深い傷を残す事になる。
「元はアンタの能力だろ、なんとかならないのか」
「ならないだろうな。私の力はあの男と同一ではない、あの男と同種かそれ以上の力を持つ者でなければ打ち消せまい」
つまりは実質的に不可能という事だ、直接で無くともYHVHから与えられた滅却師の力はいずれあの男によって刈り取られる定めにある。
オッサンの存在自体がYHVHとの繋がりの証であり切り離せない滅却師の力そのもの、それが黒崎真咲を死に至らせる刻印。
一方で今の俺が何かをしようとした時点で滅却師の体には虚化という猛毒が回る、千年前から決まっていた運命なのだからこればかりはどうしようもない────本当にそうか?
正しい歴史を追いかける事は簡単だ、しかしそれは
「俺は例外を知ってる、しかもそいつらは聖別の後も生き残っている」
「……何だと?」
聖別による死は大きく分けて二つ、滅却師の能力どころか全てを奪われて死亡する場合と聖別の後に体内で精製される静止の銀によって引き起こされる血管の梗塞によって死亡する場合。
前者はまだ回避出来る可能性がある、実際黒崎真咲の直接の死因はグランドフィッシャーによる致命傷なのだから。
しかし後者が厄介で、これは物理的かつ精製を妨害する手段が無い為外科的な処置が必要となる。
直近で行われるであろう聖別においては死ぬのは混血統の滅却師と例外で黒崎真咲、生き残ったのは黒崎家の子供と石田家の子である石田雨竜。
千年血戦篇においては純血統の滅却師であっても死に、霊王の欠片を保持していてもジェラルド・ヴァルキリーは聖別によって死亡している。
虚の抗体を持たない者≒滅却師である為、恐らくYHVHは滅却師として覚醒していない子供達を聖別の対象から省いた可能性もあるが石田雨竜は聖別を跳ねのけた功績を以てYHVHの後継者に指名されている。
結局の所全ては謎であり、聖別の基準はYHVHの胸先三寸で決まり、あの男が死すべしと命ずれば即ちその通りになるのだ。
「純血統の滅却師、あるいは霊王の欠片を持つ者、あるいは死神と虚と滅却師の力を併せ持つ者、そもそも滅却師ではない者。これが『聖別』による即死を回避する条件だ」
「成程、確かに即死を回避するだけなら一度は何とかなるだろう。しかし同じ手は通用しないぞ」
「一度でいいんだよ、同じことが二度起きればそれこそ運命だ」
「……それで、黒崎真咲の即死を回避する策はあるのか?」
「たった一つだけ思いついた」
俺は俺を縛り付ける鎖を手の中で遊ばせながら作戦をオッサンに伝える。
「俺本当は、初めては小柄で黒髪ボブカットの美少女の手で胸元に日本刀を突き刺されたかったんだよなぁ……」
「気は確かか?」
しみじみと呟く俺に、オッサンは少し引いたような目で此方を見ていた。
ネタが被るとはこの『A』の聖文字でも見えなかった…。(不安)
今後の方針
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コメディっぽい方が良い
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今まで通りでいい