メゾン・ド・チャンイチの裏事情 作:浅打
雨は嫌いだ、俺の大切なモノを全て洗い流していく。
どうせ全てが流れて消えるなら、この悲しさを消してくれればいいのに。
雨は嫌いだ、流れる涙がまるで誤魔化されているようで。
俺の血が雨でぼやけて側溝に流されていく、意識もまるで溶ける氷の様にあやふやだ。
俺は再び護られた、誰かの命を犠牲にして。
寒くて痛い雨の中、俺は意識を失う。
ルキアが連れ去られた、俺の家族を救ってくれた人が死刑になるとあの死神は言った。
そんな事は許せないのに、俺は負けちまった。しかもルキアが兄と呼んだ男には文字通り手も足も出なかった。
悔しい、辛い、鬱々とする、悶える、悔しい、悲しい、何より弱い自分が許せない。
――――許せないのに、俺は死んじまうんだ。
死ぬってもっと怖いもんだと思ってた、痛くて苦しくてもっと寒いもんだと思ってた。
だけど今は暖かい、あんなに雨で冷えた体がどこも寒くない。
「ここは……どこだ」
見知らぬ天井、俺は知らずに布団に寝かされていて、俺の体を起こそうとするもどうも重たく鈍かった。
「井上……?」
俺のクラスメイトの井上織姫が何故か俺の腹の上で眠っていた、井上とはかつて俺が井上の兄を殺す事となってからは話す機会が増えたがその程度だった。
実は井上の事は昔から知っていた、井上の兄が交通事故で運ばれて来たのが何を隠そうウチの診療所だった。
井上と井上の兄が喧嘩した、それでも井上は寂しくて悲しくて自分の兄貴を迎えに行って目の前で事故が起きた。
血塗れの兄貴を背負ったガキが兄を引き摺りながらウチに辿り着いた時には最早瀕死で、俺の親父がデカい病院に移す前に死んじまった。
その時の栗毛のガキが井上で、たつきの親友であった事は後で知ったがその時の井上の姿は覚えている。
井上が兄に縋って泣いていた、何度もごめんなさいって謝りながら泣いていたんだ。
「あれ……黒崎クン…?」
「……おはよう、井上」
「―――黒崎君!!!」
「イタタタタタタ!!」
「ああ!ごめんなさい黒崎君!!!」
井上が俺に飛びつく、俺の体の傷が僅かに開いたようで痛みに悶絶している事に気付いた井上が体を離すが痛みが俺の意識を覚醒させた。
「俺、死んだんじゃないのか」
「ううん、黒崎君が怪我したって聞いて急いで来たの。私の能力で黒崎クンを治して欲しいって言われて―――」
「そうそう、せっかく彼女が助けてくれたんだから感謝しないと」
神出鬼没のゲタ帽子、廃病院の時も、母さんの仇の時も、ルキアが居なくなった時にもコイツがいつも現れた。コイツが俺の知らない何かを知っているのは確実だった。
「アンタが俺を助けたのか」
「おや?まるで死にたかったかのような言い方だ」
「……石田はどうなった、ルキアの事もアンタは知ってるんだろ」
「ああ、石田雨竜は斬られましたが命に別状はありません。井上さんに治して貰ったらすぐに帰りましたよ、黒崎サンを私に託してね」
『黒崎をお願いします。僕では誰も助けられなかった、そんな自分が何よりも許せない』
『黒崎を助けて下さい、僕も朽木ルキアに借りがある。だけど朽木ルキアを助けられるのは僕じゃない』
「朽木ルキアを助けられるのは、彼だけだ―――とね」
石田雨竜、かつては嫌いながらも背中を預けた同じ心境を共にした者。
「俺だけか……俺だって何も出来なかったんだ。それにルキアは尸魂界に連れてかれちまった」
己の不甲斐なさに傷だらけになった体が強張り更に傷が開いて包帯を血で染めていく、それでも後悔と自分への怒りに心境の吐露は止まらない。
「何も出来なかったんだ!尸魂界に行く方法もない!俺は弱い!これ以上俺にどうしろって言うんだ!!」
『教えてやろうか、一護』
「お前……!」
思えばコイツも神出鬼没だった、当時は母親の仇で頭が一杯だったがコイツは己を
『穿月じゃ俺らしくない、俺の事は
「―――知ってるのか、尸魂界に行く方法!!」
『……知ってるぜ、そこのゲタ帽子がな』
「そこは私に振るんですか…」
「教えてくれよ!尸魂界に行く方法を!!」
『駄目だね』
俺を助けてくれた白い少女はそっけなく俺の頼みを拒んだ、その瞳はゾッとする程の冷たさを湛えていた。
『お前が死んだら、俺が真咲に合わせる顔がねぇ。それにお前を生かした朽木ルキアに背く行いだ、お前は全てを忘れて日常に帰れ』
「俺は死なねぇ!!」
『人は簡単に死ぬんだよ!』
ハクと名乗る少女が抜いた刀が俺に向けられ、刀という凶器が俺を傷つけた事実を思い出させる。あれが俺に刺されば俺は死ぬのだと目に見えて示している。
『お前が弱いからだ!お前が弱いからお前は何も護れねぇ!』
「それは―――!!」
「―――違うよ、ハク様」
何時の間にか井上が俺の背に手を当て体を支えてくれていた、その掌から伝わる熱が暖かくて俺の不安が薄ら和らいでいく。
「黒崎君は私を助けてくれた、ちゃんと護ってくれたよ」
『………』
「ハク様、私が黒崎君を護ります。だから黒崎君を助けてくれませんか」
「井上!」
『お前も弱い、このままだと黒崎と一緒に死ぬだけだぞ』
「強くなります、黒崎君と一緒に」
何故彼女は自分の為にここまでしてくれるのだろう、俺は井上を戦いに巻き込む為に助けたんじゃないのに。
石田もだ、俺に一体何を期待しているんだ。俺はお前に何かをしてやれた訳でもないのに。
それでも護られっぱなしは癪に障る、井上がそこまでの覚悟を見せたのに俺が意気地なしじゃ男じゃねぇ!!
「…頼むハク様!井上を俺が護るから、俺を強くしてくれ!!」
『――――ハァ…浦原、コイツら本気だぞ』
「いやぁ青春ですねぇ、……ボクも年を取ったかな」
そう言い合うと白い少女は刀を仕舞って一度下がった、代わりにゲタ帽子が俺の傍に寄ると俺の髪を鷲掴み俺の眼を覗き込んできた。
「黒崎サン、貴方は死神の力を失っている。まずはそれを取り戻す必要があります」
「おう」
「尸魂界では極囚を処刑するまでに一月の猶予期間がある、僕が七日で尸魂界への門を作ります。それと同時並行で三日間の治療期間を含めた七日間でホワちゃんが貴方を苛め抜き、残りの二十日以内に朽木ルキアを奪還する。今ならまだ充分な余裕があります」
「七日間で俺は、強くなれるのか」
「貴方の魂に嘘が無ければ、貴方は誰よりも強くなれる」
『俺がお前を最強にしてやるよ』
ゲタ眼鏡の手が俺から離れると懐からドクロのマークが描かれた薬瓶を取り出す、おどろおどろしい見た目に恐れながらもそれを受け取った。
「まずは傷を治しましょ、井上サンには黒崎サン以上に修行が必要です。霊力は温存してそれぐらいの傷は自分で治しましょう」
「分かった」
「それじゃあまた後日お会いしましょう」
『飯も食えよ!!』
白昼堂々とした二人きりの帰り道、学校をサボって二人で自宅に向かって帰路を進んでいた。
「井上、さっきはありがとな。だけど一つだけ言わせてくれ、死神は危険だ、今ならまだ止められる」
「大丈夫だよ、さっきの人が私と黒崎君を強くしてくれるんでしょ?」
「まぁ……そう言ってたけどよ」
「だけど黒崎君、どうして朽木さんを助けたいの…?」
そう言えば井上はルキアが死神だという事は知らなかった筈だ、ルキアが持っていた変な機械*1で記憶を改竄されていたから。
しかし俺が助けに行った事を覚えているなら改竄は上手くいっていなかったのか?
「ルキアは俺の家族を助けてくれた、その代わりでアイツが死刑になるんだとさ。だったら今度は俺が助けてやらねぇと」
「黒崎君が死ぬかもしれないのに、それはやらなきゃいけない事なの?」
「それは……」
「―――ううん、ごめんなさい。今のは忘れて」
それからは無言のまま道を歩いた、気づけば井上の家まで既に辿り着いていたようで井上がアパートの階段を昇って上がっていく。
「黒崎君、良かったら家に寄っていかない?」
どうせ家に帰ってもアホの親父が居るだろう、不良で通っている自分が帰っても叱られるだけで面倒なだけだ。
どの道一蓮托生の仲だ、親交を深めておくのは悪くない。
「……お邪魔してもいいか?」
「うん!!」
一護達が浦原商店で後にした時、その中では浦原とホワイトが
「お願いします、俺にも姉さんを助けられる力を下さい!!!」
見ろよこの評価バーの形
命を刈り奪る形をしているだろ?
皆様のおかげでささやかながら日間ランキングに乗ることも出来ました…(大歓喜)
誤字報告、とても感謝しております。
今後とも評価と感想お待ちしております。
今後の方針
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コメディっぽい方が良い
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今まで通りでいい